民泊新法が成立、登録制で年間180日の民泊サービスを提供可能に

所有する住宅を旅行者らに有料貸し出しする、いわゆる「民泊」の健全な普及に向けたルールをを定める「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が6月9日、参議院本会議で賛成多数で可決し、成立した。

民泊新法の概要については以前にTechCrunch Japanでも閣議決定の際に紹介しているが、同法では、都道府県知事に住宅宿泊事業者として届け出をすることで、民泊サービスを提供可能になる。営業日数の上限は年間180日、また衛生確保措置や騒音防止のための説明、苦情対応、宿泊者名簿の作成・備付けなどが義務づけられている。

ホームシェアリングサービスを展開するAirbnb Japanでは、今回の新法可決に際して以下のようにコメントを発表している。

日本のニーズを反映したシンプルでわかりやすく現実的な本法律が成立したことを大変嬉しく思います。これは、日本のホストコミュニティ、そしてこれからホストになりたいと考えている方々にとって素晴らしいニュースであると考えます。

旅行者にとっても喜ばしいニュースです。日本はAirbnbにとってアジアで最も人気の旅先です。そして、Airbnbを利用して日本を旅するゲストは、ユニークな体験を求めています。

こちらも既報の通りだが、Airbnb Japanが発表したところによると、2016年にAirbnbのコミュニティが創出した利益は4061億円、経済効果は約9200億円(約84億ドル)、標準的なホストの年間収益は約100万円。日本においては、過去1年(2016年6月から2017年5月)で500万人がサービスを利用している(2016年における訪日外国人の利用は400万人)。

知財の可視化、活用を目指すゴールドアイピーが1億2800万円を調達

法律というと難しいイメージがあるが、どの企業にとって知的財産を守ることは重要な課題だろう。ゴールドアイピーはそうした知的財産に関連する課題を解決しようとしているスタートアップだ。3月21日、ゴールドアイピーは総額1億2800万円の第三者割当増資を実施した。引受先は未来創生ファンド、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三生キャピタルだ。

「日本には優れた技術が多くありますが、知的財産を有効活用できていません」とゴールドアイピーの取締役社長を務める白坂一氏は説明する。ゴールドアイピーが目指すのは、「日本発のイノベーションを世界に届ける」ことで、そのためにいくつかのサービスを展開している。最も注力しているのは、知的財産の特許を取得をサポートする「IP Direct」と取得した特許を有効活用するための「IP Cognitive」だ。

「IP Direct」は日本企業が海外での特許出願をサポートするサービスだ。海外で特許を取得する場合、海外の現地法律事務所に特許出願を依頼するが、言語や手間の問題から日本の法律事務所を介して海外の法律事務所に特許出願を依頼することが多かった。日本の法律事務所を通す分それだけコストもかかる。大企業ならまだしも、スタートアップや中小企業がこの方式で特許を取得するのは難しい。IP Directはこの問題を解決するため、特許を出願したい企業と世界中の弁護士や弁理士をつなぐ。ゴールドアイピーは国際法律事務所のDLA Piperをはじめ、複数の弁護士事務所と提携していて、利用企業は適任の弁護士や弁理士を選んで特許出願を依頼できる。また、弁護士や弁理士とのやりとりにもIP Directの専任のコンシェルジュが翻訳などでサポートし、この一連のやりとりはIP Directの専用コミュニケーションツールを使用するという。初期費用は5万円で、別途弁護士や弁理士への依頼費用がかかる。

一方、「IP Cognitive」は知的財産の可視化と人工知能の解析により、知的財産の活用を促進するサービスだ。特許の活用と言うと自社の特許を侵害している企業を見つけて訴えるといったユースケースが思い浮かぶが、それ以外にも知的財産を活用することができると白坂氏は説明する。例えば、開発したものの使っていない技術の特許を取得していれば、それを欲しがっている会社に売却したり、ライセンス提供したりすることができる。ゴールドアイピーは企業の知的財産の取得から可視化、収益化までサポートしたい考えだ。

今回調達した資金ではプロダクト開発やプロモーションに充て、各サービスを広めていく計画だと白坂氏は話す。

白坂一氏はゴールドアイピーを2015年9月に設立した。白坂氏は防衛大学校を卒業後、横浜国立大学院で人工知能による画像解析を学んだ。その後富士フイルムの知的財産本部に8年務め、弁理士資格を取得している。2011年に白坂国際特許事務所(現特許業務法人白坂)を開設した。

 

民泊新法が閣議決定、Airbnbなどの民泊サービスは登録制に

日本でもAirbnbといった民泊サービスをはじめ、物件オーナーの代わりに民泊運営を代行する管理会社なども増えてきている。徐々に規制緩和が進んでいるが、ついに民泊サービスに大きな転換点が訪れるようだ。本日、民泊サービスの健全な普及を図るため、住宅宿泊事業法案が閣議決定された。早ければ2018年1月にも施行される予定だという。住宅宿泊事業法案では、住宅宿泊事業者の届出制度と住宅宿泊仲介業および住宅宿泊管理業者の登録制度を創設する。

住宅宿泊事業者とはつまり、所有する住宅を貸し出して民泊を運営したいと考えるホストのことだ。民泊ホストは都道府県知事に届出を提出することで民泊サービスを提供できるようになる。ただし、1年間で提供できる日数の上限は180日(泊)だ。住宅宿泊事業者には衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示といった民泊運営のための適正な措置を行うことが義務付けられる。

また、Airbnbのような民泊物件と宿泊したいユーザーとをつなぐ仲介サービス(住宅宿泊仲介業)と民泊運営を代行している業者(住宅宿泊管理業者)は登録制となる。住宅宿泊仲介業は観光庁長官に、住宅宿泊管理業者は国土交通大臣にそれぞれ登録する。

政府は訪日外国人旅行客を2020年までに4000万人にすることを目標としているが、そのためには宿泊需要にも対応していく必要がある。政府は民泊サービスの活用を図りたい考えだが、これまで無許可で営業する民泊事業者もあり、近隣住民とのトラブルを防止する制度が整っていなかった。住宅宿泊事業法を整備することで、民泊事業を実施する場合の一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を目指したい考えだ。

物件オーナー側としてはこれまで民泊運営を始めようと思っても、民泊事業は旅館業法に則っていたため、床面積や消防設備などの制約が多く、営業許可を得るのが難しかった。2016年4月には旅館業法の一部で規制緩和が行われているが、住宅宿泊事業法で民泊を始めるハードルが少し下がることになるかもしれない(いくつか宿泊者名簿の作成や標識の掲示などの義務付けはあるが)。

営業日数の上限が180日と決められているのは気になるところが、他の都市の事例を見てみるとそこに関しては特別厳しい規制でもなさそうだ。世界中でホームシェアリングサービスを展開するAirbnbによると、アメリカ・サンノゼではホストが自宅にいる場合は無制限に物件を掲載できるが、留守にする場合は180日が上限だ。ロンドンの上限は年間90日、アムステルダムでは物件を貸切でシェアする場合は年間60日までと決められている。

本日の閣議決定に対し、Airbnb Japanの代表取締役を務める田邉泰之氏は以下のようにリリースでコメントしている。

この度の閣議決定を大変嬉しく思います。

有休資産である空き家、空き部屋の活用により、多くの新たな機会を生み出されます。地域社会に配慮し、持続可能な形で、ホームシェアを含む短期賃貸が日本全国で普及するよう、引き続き日本政府や関係者の皆様と協働させていただく所存です。

ブルガリア、政府調達ソフトウェア(の一部)をオープンソース化する法律を制定

Red neon sign, part of a duty free sign.

フリーでオープンソースのソフトウェア(FOSS)の支持者たちは、ブルガリアではこの先政府向けに書かれるソフトウェアのすべてがFOSSでなければならないという本日発表されたニュースに沸き立っている。これはとても期待を抱かせる前進なのだが、ものごとのやり方が大きく変化することを期待してはいけない。

新しい法律は、同国の電子ガバナンス法に対するいくつかの修正条項の形を取っている。修正条項についてのロビー活動を行った開発者であり政府顧問でもあるBozhidar Bozhanov はこれらの変更点について、自身のブログ上で誇らしげな父親のような態度で発表を行った。具体的には、政府のためのソフトウェア開発の契約に従うならば、開発過程を公開し、オープンソースの定義に適合させ、成果物を制限なく無償で利用できるようにしなければならないのである。

Bozhanovは 「これが意味することは、政府が調達するいかなるカスタムソフトウェアも、すべての国民に対して可視化されアクセス可能になるということです」とMediumへの投稿で述べている。「なにしろ、それらは納税者のお金から支払われているのですから、納税者たちがソフトウェアの内容を見て益を得ることができるようにしなければなりません」。

Bulgaria's awesome coat of arms.

ブルガリアのカッコイイ国章

ここには議論の余地はあまりない ー そしてオープンソースソフトウェアが提供する利点はそれ以外にも沢山あるのだ。とはいえ、新しい法律は政府からの委託ソフトウェアだけに影響を与えるもので、既存のライセンス契約はそのまま残される。このためこの法律をきっかけにUbuntuやLibreOfficeに大量移行するということにはならないのだ。

そして、この種の法律はDiebol 社の怪しげな投票機械のようなものをお払い箱にしてくれるかもしれないという嬉しい期待も抱かせるものの、おそらく期待ほどには上手くいかないだろう。

 

その理由の一つは、新しいシステムを一から開発しオープンソースとして公開するよりも、出来合いのシステムをただ買う方が安上がりで簡単だと政府が判断する可能性があること。また別の理由としては、新しい戦闘機や核施設のためにコードをオープンソース化する政府を実際に思い浮かべることができるだろうかということである(治安ならびに諜報機関は、ブルガリアの法律の適用対象外である)。

例外のリストは、かなりの長さになる筈で、実際にオープンソースライブラリに置かれるものはおそらく、とても平凡なもので、かつ非公開に開発されたソフトウェアが関係しないか、実用的ではないプロジェクトに関係したものばかりになるだろう。

私自身は、FOSSがニッチであることよりも、少しでもグローバルスタンダードの方向を目指すことを望んでいるが、私の心の中の皮肉屋は、たとえこの法律が他の数十カ国で制定されたとしても、こと政府ソフトウェアの場合には相変わらず同様の問題を抱え続けるのだろうとも思っている。それでも、これは正しい方向への一歩であり、ブルガリアの事例は見習って学ぶべきことなのだ。

ところで、米国もこの件に関しては完全に時代遅れというわけではない:米国政府最高情報責任者(CIO)評議会は、オープンソースに関する推奨声明を出していて、すでに大量の政府データがダウンロードおよび解析のために利用可能なのだ。透明性は私たちが過去何十年もかけて改善してきたプロセスであり、よそから指図されるものではないが ー この記事で取り上げたような法律を取り入れて損なわれるものではない。

[原文へ]

(翻訳:Hiroshi Sako