トランプ政権のTikTok禁止令が予想どおり遅れる

米国の連邦裁判所は、TikTokの禁止措置は米国時間9月28日の月曜日には予定どおり発効しないと発表した。禁止を遅らせる動きは予想されていたもので、裁判所が禁止の合法性とトランプ政権が主張するようにアプリが国家安全保障にリスクをもたらすかどうかを検討する間、米国居住者はアプリの使用を続けられる。

ドナルド・トランプ米大統領が8月初旬に2つの行政命令に署名してから数週間、政府は、北京に本社を置く親会社のByteDance(バイトダンス)がユーザーデータを中国政府に引き渡すのではないかとの懸念から、人気のショートムービーアプリを閉鎖すると脅してきた。一方、米国だけでも1億人のユーザーを持つTikTokは、この主張を長い間否定してきた。

TikTokは9月18日に米政権に対して最初の訴訟を起こし、米国時間9月24日の木曜日には、9月27日の日曜日の夜に発効する禁止を阻止するために、直前の差止命令を提出した。9月25日金曜日、政府は封印された動議で差止命令を却下するよう裁判所に求めたが、政府はその後、いくつかの修正を加えて公開動議として再提出した。差止命令に関する公聴会は9月27日の日曜日朝に開かれた。公聴会は、裁判官のCarl J. Nichols(カールJ.ニコルズ)が主宰するDC地方裁判所で聞かれている。

9月27日日曜日の判決で裁判所は、正式な意見書は「ちょうど2つの反対当事者に非公開で渡された」とその決定だけを明らかにした。政府の動議に含まれる機密事項のため、最終的な意見書が公表される前に、当事者は9月28日月曜日までに修正を求めることができる。

今回の決定は、米国で最も急成長しているソーシャルアプリの将来をめぐる争いが続く中の最新のエピソードに過ぎない。先週末にByteDanceと米国政府の間で合意された取引により、両者の間の膠着状態は解消されたと思われていたが、買い手であるOracle(オラクル)とByteDanceの間で争われていた詳細を巡って、取引がこじれてしまった。

米政権は8月6日に初めてTikTokに対する措置を開始し、トランプ大統領は執行命令で、アプリが米国民にとって不合理な国家安全保障上のリスクをもたらすと主張した。この命令は、同じ日に発表された同様の命令を反映したもので、中国に拠点を置くTencent(テンセント)が所有する人気のメッセンジャーアプリ「WeChat」にも制限を課した。

先週末、サンフランシスコの連邦判事は、商務省のWeChat禁止令を差し止める命令を下した。TikTokは、WeChat訴訟と同様の主張をしており、自身の訴訟でも同様の結果を期待していた。

2つの訴訟の違いの1つは「原告」だ。WeChatの訴訟では、WeChatのユーザーグループがアプリの使用禁止は言論表現を傷つけると主張して訴訟を起こした。TikTokは政府との戦いを自ら代表している。

NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

米海軍でTikTokが使用禁止に、国家安全保障上の懸念から

TikTokは、インターネットの歴史の中でも、最も急速に成長しているソーシャルネットワークかもしれない。しかし急速に大きくなっているのは、むしろセキュリティ上の脅威であり、米国の対中国強硬派による攻撃の的となってきた。

その最新の展開は、米国海軍が発行した通知から知ることができる。その内容は、ロイターサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。それによれば、TikTokは、もはや米軍人のデバイスにインストールすることは許されず、米軍のイントラネットから排除される可能性もあるという。

これは、この非常に人気のあるアプリが直面している災難の直近の一例に過ぎない。最近、ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員が率いる議会は、中国などの外国政府とデータを共有する可能性のある他のハイテク企業とともに、TikTokと、Sequoiaが支援する親会社ByteDanceに対して、国家安全保障に関する査察を要求した。機密通信の漏洩に対する懸念により、米国政府は最近、同性愛者のソーシャルネットワークアプリGrindrを、買収先の中国企業、Beijing Kunlunから買い戻すことも要求した。

太平洋を挟んだ両国の関係の悪化によって、両国間でIT企業をうまく運営することは、ますます困難になっている。私が最近TechCrunch上で議論したように、Shutterstockは、同社のストックフォトプラットフォーム上で、中国政府が難癖をつけそうな写真を検索することを、意図的に難しいものにしてきた。重要な収入源を失わないようにするための方策だ。

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同様の試練は、Googleと、同社の中国に特化した検索エンジン、Poject Dragonflyにも見ることができる。もちろんNBAの問題もしかりだ。

ここで興味深いのは、両国の企業が、それぞれ両国政府の政策に苦労していること。ByteDanceのような中国企業は、標的にされることが多くなり、米国市場から追い出されようとしている。そして米国企業も、中国で足場を築くのに長いこと苦労してきた。以前に比べれば平等な競争の場になってきてはいるかもしれないが、そうであるべきほど自由な市場にはなっていない。

中国と米国との貿易摩擦が続く中、両国の政治家が設定した境界線内にうまく収まることのできない企業には、ますます損害が降り掛かっている。将来、このような分断を埋めることができるIT企業が登場するかどうかは、残念ながら、今のところ不透明だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

TikTokは国家安全保障上の脅威?米国上院議員が情報機関に調査を要請

2人の米国上院議員が、動画共有アプリのTikTok(ティックトック)が「国家安全保障上のリスク」を引き起こす可能性があるか否かの評価を、米国政府の最上級情報機関に対して要請した。

A photo taken on December 14, 2018 in Paris shows the logo of the application TikTok. – TikTok, is a Chinese short-form video-sharing app, which has proved wildly popular this year. (Photo by JOEL SAGET / AFP) (Photo credit should read JOEL SAGET/AFP/Getty Images)

上院議員のCharles Schumer(チャールズ・シューマー)氏とTom Cotton(トム・コットン)氏による書簡の中で、議員たちは国家情報局のJoseph Maguire(ジョセフ・マグワイア)長官代行に、アプリのメーカーが、米国人のデータを中国当局に引き渡す可能性があるかないかを尋ねたのだ。

TikTokはこれまでに、およそ1億1000万回ダウンロードされており、ソーシャルメディアネットワーク上で共有可能な短く気軽なビデオを録画する機能が人気を博している。だが2人の議員は、TikTokは北京に本社を置く会社が所有しているため、位置データ、クッキー、メタデータなどの同社の所有するユーザーデータが、たとえ米国内のサーバーに保存されていたとしても、中国政府によって引き渡しを求められるのではないかと述べている。

シューマー氏とコットン氏は、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)が中国の法律を「現在も遵守するように強制されている」と警告している。

「セキュリティの専門家たちは、中国共産党によって搭載されている諜報活動を支援し協力を行うために中国企業たちを縛り付けている、中国の諜報機関、国家安全保障、そしてサイバーセキュリティ法の曖昧なパッチワークに対して懸念を表明している」、と米国時間10月23日に出された書簡で報告されている。「データやその他の活動に対する中国政府の要求を審査する、独立した司法機関がなければ、中国企業がその要求に同意しない場合に、上訴するための法的メカニズムが存在しないことになる」。

おなじ法的原則はどちらの側にも適用される。中国を含む一部の国では、米国政府を利する形でスパイ活動を強要される可能性があるという懸念から、米国企業は排除されるか、アクセスが制限されてきた。

米国政府の大規模な監視活動を明らかにしたエドワード・スノーデンによる暴露の余波で、多くの主要テック企業が、米国政府への協力のおそれから、中国政府の国家承認購買リストから皆排除されたのだ

上院議員たちはまた、このアプリが北京に対して「政治的に影響があるとみなされる」コンテンツを、検閲していることを懸念していると述べている。9月にはガーディアン紙が、アプリのモデレーターが、チベットの独立、天安門広場の虐殺、禁止された宗教団体である法輪功に関連するコンテンツを、積極的に検閲していることを明らかにしている。

また2016年の米国大統領選挙で見られたように、このアプリは外国から影響を及ぼすツールとして使用される可能性があるため、このアプリは「スパイ防止活動」に対する脅威をもたらす可能性があるとも述べている。

私たちの問合せに対して、国家情報局長官のスポークスマンはコメントを返さなかった。

TikTokは、書簡を「慎重にレビューしている」と述べている。「私たちTikTokは、TikTokが米国において信頼され責任ある企業市民であり続けることをまず改めて申し上げる以外に、現時点でこれ以上のコメントをするつもりはありません。もちろん議会や関連する法執行機関との協力は惜しみません」とTikTokの広報担当者Josh Gartner(ジョッシュ・ガートナー)氏は述べている。

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(翻訳:sako)

米中の緊張高まりでテンセントCEOがイノベーション強調

5月21日に、日頃控え目なテンセント(騰訊)の創業者でCEOのポニー・マー(Pony Ma、馬化騰)氏が、米国と中国の間の高まる緊張に重点をおきつつ珍しくコメントを出した。競争力を維持するためにより自助努力を行わなければならないと中国内のテック企業たちに呼びかけたのだ。

「中国は開発の最前線に立っています。外部から最善なものを取り込んで改良しなければならない局面は、ますます少なくなっています。ZTEとHuawei(ファーウェイ、華為)のケースが悪化する中で、私たちは貿易戦争が技術戦争に転化するかどうかを見つめてきました」と、マー氏は中国雲南省で行われたイベントで語った(口述記録がテンセントからTechCrunchに送られてきた)。

こうしたマー氏の心配は予想外のことではない。最近の米中交渉が示すように、深圳を拠点とするこの電気通信とスマートフォンの巨人は、貿易衝突に深く関わっている。米国商務省は、先週に米国企業が部品やその他の技術をファーウェイに販売することを制限した。ファーウェイをトランプ政権が国家安全保障上の脅威であるとラベル付けしたためである。とはいえ、その後禁止範囲は縮小した。その結果として、ファーウェイはGoogleの特定のサービスや、Qualcomm(クアルコム)やIntel(インテル)によって製造されたチップ、その他の米国のサプライヤーから切り離されることとなった。

世界的なイノベーションをリードするための中国の努力にもかかわらず、そのテック系スタートアップやチャンピオンの多くは、製品やサービスを提供するために、今でも輸入技術に大きく依存している。人びとはこのような相互依存の状況を、貿易の結果として喜んで受け容れていた。しかし今や、米国と中国の分離が両国の企業を傷付け、世界的な技術経済の分岐につながることを、ますます心配するようになって来ている。

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「(中国の)デジタル経済は砂の上に構築された高層ビルであり、私たちが基礎研究や重要な知識に懸命に取り組み続けなければ、持続することは難しいでしょう。もちろん古い体制から新しい体制への変化や、高品質な開発は言うまでもありません」とマー氏は指摘した。

テンセントの宿敵であるアリババ(阿里巴巴)の創業者ジャック・マー(Jack Ma、馬雲)氏も、ファーウェイのライバルであるZTEに対して、昨年4月に似たような米国製部品の販売制限がかけられた際に、似たような主旨の発言を行っている。

South China Morning Post(南華早報)のレポートによれば、業界イベントでアリババのマー氏は「大企業にとってコア技術で競い合うのは、切迫した責務なのです」と語っている。

米国からの最新の技術禁止により、ファーウェイの技術的自立性向上への取り組みは加速している。その中には、独自のチップの設計や、独自のスマートフォンOSの提供も含まれている。とはいえオブザーバーたちや株主たち、そしてファーウェイの創業者であるレン・ツェンフェイ(Ren Zhengfei、任正非)氏自身も、短期的にそれらが提供できるかどうかに対しては疑問を呈している。

「私たちは、挑戦します。OSを作ることはそれほど難しくはありません。難しいのはエコシステムです。どうすればエコシステムを構築できるでしょう?これは大きなプロジェクトですし、時間がかかることでしょう」と、ツェンフェイ氏は5月21日に行われた国内メディアによるインタビューの中で述べている。

ファーウェイの自家製チップに関しては、ツェンフェイ氏は「米国品質の半導体を当社で製造することは可能だが、だからといって米国のものを買わないということではない」と、述べている。一方、ロイターがインタビューしたチップの専門家たちは、ファーウェイの主張を疑わしいものと主張し、同社がネットワーク機器を米国のサプライヤーなしで製造するのは難しいだろうと述べている。

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(翻訳:sako)