編集部注:本稿の著者であるAron Solomon(アロン・ソロモン)氏は、NextLevel.comのデジタル戦略責任者であり、モントリオールのマギル大学Desautels Faculty of Managementのビジネスマネジメントの非常勤教授。
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Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボット「犬」やその類似製品は、ハワイ、マサチューセッツ、ニューヨークの警察署ですでに採用されている。ベールに包まれた実験とあって、これらの強力な監視装置を使用する利点やコストについて警察からの回答はほとんどない。
米国自由人権協会(The American Civil Liberties Union、ACLU)は、 CCOPS(警察の監視に対する地域社会による制御)に関する立場表明書で、監視技術の透明性を促進し、市民の権利と自由を保護するための決議を提言した。これまでに米国の19の都市がCCOPS法案を可決させている。つまり他のすべての地域社会では、事実上、警察による監視技術の使用の透明性は必要とされていないことになる。
このようにさまざまな場面で新しい未完成技術を使用できることは、多くの人にとって問題となる可能性がある。世界的に有名な人工知能の専門家であり、TuraltのCTO(最高技術責任者)のStuart Watt(スチュアート・ワット)氏はこれに不快感を示している。
「こうした指針とロボット犬、そして、その実情には愕然としています。膨大な資金の浪費であり、実際の警察業務の妨げとなっているのです」とワット氏は述べた。「間違いなく、地域社会はこれらに関与していく必要があります。正直言って、警察がどう考えているのかさえわかりません。物理的な監視システムを使って思いとどまらせるためでしょうか?それとも、実際に、ある時点で行われる何らかの監視に人々を備えさせているのでしょうか?」
「警察の大部分は『保護し、奉仕する』ことをすべて忘れてしまい、それを実行していません」とワット氏は付け加えた。「もし人工知能を使ってホームレス、麻薬中毒者、性労働者、貧困層、不当に攻撃されているマイノリティのような弱者を実際に保護し、奉仕することができるなら、その方がはるかに良いでしょう。人工知能に資金を費やす必要があるならば、人々を助けるために使うべきです」。
米国自由人権協会の主張は、ワット氏の提言とまったく同じだ。国中の市議会への提言で、米国自由人権協会は次のように明確に述べている。
市議会による監視技術に関する資金、導入、または使用の承認は、監視技術の利点がコストを上回り、その提案が市民の自由と権利を保護し、監視技術の使用や配備が、差別や見解要因に基づくことなく、いかなる地域社会やグループにも差別的インパクトがないと判断される場合にのみ行われるものとしなければならない。
Team Lawで特別顧問を務める、弁護士のAnthony Gualano(アンソニー・グアラノ)氏は、法的観点からCCOPS法案は多くの面で理に適っていると考えている。
「全国各地で警察による監視技術の使用が増えるにつれて、人々を守るために使用する技術はより強力で、効果の高いものとなってきます。使われる技術やその使用方法を確認するために、透明性を義務付ける法律が必要です」。
このボストン・ダイナミクスの犬だけでなく、未来のスーパーテック犬のすべてについて心配している人にとって現在の法的環境が問題なのは、地域社会が大手テクノロジー企業や政府が関わる実験場となるのを本質的に認めているからだ。
ちょうど先月である2021年4月、世論の圧力によって、ニューヨーク市警本部はDigidog(デジドッグ)という非常に控えめな名前のロボット犬の使用停止を余儀なくされた。市民からの反発のため、テクノロジー犬が一時帰休措置にされた後の3月に、ニューヨーク市警は公営住宅でそれを使用した。予想通り、これに端を発して、ニューヨークでのこうしたテクノロジーの当面の扱いに関する議論がもたらされた。
ニューヨーク・タイムズはこれを目の当たりにして「過度に攻撃的な治安維持活動の悲惨な例として批判者の注目を集め、ニューヨーク市警はこのデバイスを予定よりも早く返却することになるだろう」と的確に表現した。
これらのバイオニックドッグは犯罪を減少させるのには十分だが、それを使おうとしている警察は、まずは多くの広報活動を行う必要がある。警察は積極的かつ前向きにCCOPSの議論に参加し、明日、翌月、そして、今から数年後に使用する可能性があるテクノロジーの詳細やそれら(およびロボット)の使用方法を説明することから始めるべきだろう。
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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics、警察、アメリカ、米国自由人権協会、コラム
画像クレジット:Harry Murphy / Getty Images
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(文:Aron Solomon、翻訳:Dragonfly)