グーグルのArt & Cultureプラットフォームがアップデート、マリのトンブクトゥの文書、芸術品、音楽が追加

Google(グーグル)は、西アフリカの歴史家と協力して、マリに関する現代美術、文化、史跡のデジタル化に取り組んできたが、米国時間3月10日、Google Art & Culture(GAC)でデジタルライブラリーが公開され、これらのアイテムが世界中で探索できるようになった。

「Mali Magic(マリ・マジック)」と呼ばれるこのプロジェクトには、デジタル化された原稿ページが4万件以上、9つの遺産のストリートビュー、13世紀に建てられた世界最大のアドベ建築であるジェンネ・モスク(泥のモスク)の3Dモデルや注釈付きツアーが含まれている。

また、マリのシンガーソングライターFatoumata Diawara(ファトゥマタ・ディアワラ)がこのプロジェクトのために制作した、マリの文化遺産を紹介するオリジナル音楽アルバム「Maliba」も収録されている。

「(写本は)単なる歴史的な重要資料ではありません。西アフリカのマリという国の遺産の中心であり、アフリカにおける文字による知識と学問の長い遺産を象徴し、現代の問題に立ち向かう過去の行動からグローバルな学習を促す可能性を秘めています」と、トンブクトゥ(マリの都市)から写本を密輸したことで知られる「バッドアスな司書」で、Googleプロジェクトの協力者でもあるAbdel Kader Haidara(アブデル・カデル・ハイドラ)氏は述べている。

トンブクトゥは昔から、遠い場所の婉曲表現として使われてきた。しかし、このマリの都市は、中世の時代、サハラ砂漠を横断するキャラバンルートの重要な交易拠点であり、その歴史から学問の重要な中心地であったことはあまり知られていないようだ。この活発な歴史が、この都市に写本、音楽、モニュメントなどの芸術をもたらし、アフリカの交易、教育、宗教、文化の歴史を垣間見ることができるようになったのだ。

「マリの都市トンブクトゥは、人権、道徳、政治、天文学、文学の分野における豊かな学問を生み出し、何千もの写本に記録されています。2012年、この古代の知識が過激派に脅かされたとき、地元コミュニティはこれらの宝物を保存するために時間との戦いに挑みました。この遺産は、今世界中の人々が探索できるようになりました」とGoogle Arts & Cultureのプログラムマネージャーでデジタル考古学者のChance Coughenour(チャンス・クーヘナー)氏は述べている。

このライブラリーは、ウェブ上およびGoogleとApple(アップル)のストア上のアプリケーションを介して利用可能だ。2011年に80カ国、2000以上の文化施設の宝物、物語、知識を収集するデジタルプラットフォームとして開始されたGoogle Arts & Cultureは、世界中の博物館や遺産を少しずつ記録してきた。

アフリカからは2015年に南アフリカのロベン島博物館が初めてライブラリー化され、2019年にはケニアのナイロビ国立博物館がそれに続いている。ナイジェリアのアフリカン・アーティスト・ファウンデーション、レレ・アート・ギャラリー、芸術文化センターのテラ・カルチャーが、南アフリカのウィッツ大学のオリジンセンターと同じ2020年に追加された。マリのコンテンツが加わったことで、9世紀にわたってアフリカの学者によって書かれたデジタル化されたページ数は40万を超えることとなった。

Google Arts & Cultureプラットフォームは、歴史的な文書や芸術品のアーカイブとして機能するだけでなく、2021年のアップデートでは、ペットの写真と美術館にあるアート作品をマッチングさせるなど、ユニークな機能も備えている。

画像クレジット:Google/Passion Paris

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(文:Annie Njanja、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ツタンカーメンの鉄剣は隕石で作られていた―千葉工業大学がその製造法と起源を解析

ツタンカーメンの鉄剣は隕石で作られていた―千葉工業大学と惑星探査研究センターがその製造法と起源を解析

ツタンカーメンの鉄剣。(a)(b)2020年2月に研究チームが鉄剣の両面を撮像したもの。(c)1925年発掘時に鉄剣の片面(a)を Harry Burton氏が撮影したもの。オックスフォード大学グリフィス研究所の許可を得て複製した画像。(d)鉄剣の面(a)の拡大写真。中央を横切るひび割れと鉄剣の長手方向に平行に走る細かい擦り傷。(e)鉄剣の面(a)の拡大写真。斑点状に分布する黒い部分は硫化鉄

千葉工業大学は2月14日、エジプト考古学博物館においてツタンカーメン(紀元前1361年~1352年)の鉄剣の非破壊・非接触化学分析を行ったことを発表した。その結果、鉄剣の原料は隕石であり、低温鋳造で作られ、エジプト国外からもたらされたことが判明した

千葉工業大学学長であり、千葉工業大学地球学研究センターおよび惑星探査研究センター所長の松井孝典氏率いる研究チームは、エジプト考古学博物館において、ポータブル蛍光X線分析装置を用いた鉄剣の元素分布分析を行ったところ、その製造法と起源が明らかになった。

鉄剣には10〜12%のニッケルが含まれており、その二次元元素分析から鉄剣の表面にはウィドマンシュテッテン構造が認められた。これは、鉄とニッケルを含むオクタヘドライト型隕石にみられる特有の構造のこと。さらに、黒い斑点として見られる部分は、これもオクタヘドライト型隕石に含まれる硫化鉄だと認められることから、原料は隕石由来と考えられた。また、ウィドマンシュテッテン構造と硫化鉄包有物が残されていることから、950度以下の低温で製造されたこともわかった。

ニッケル(Ni)、硫黄(S)、塩素(Cl)の元素分布

この剣が作られた紀元前14世紀ごろは、現在のトルコ周辺を支配していたヒッタイト帝国(紀元前1200~1400年)が鉄の製造技術を独占していた。当時のエジプトには製鉄技術はなく、鉄隕石を加工していたと考えられる。また、古文書によると、ヒッタイト帝国の隣国であるミタンニ王国からツタンカーメンの祖父であるアメンホテップ三世に鉄剣が送られたと記されていることから、この剣はミタンニ王国から持ち込まれたものと推測できる。

もう1つ、金の柄からは少量のカルシウムが検出されており、これは装飾物の接着に使われた漆喰の成分だと考えられるという。ただ漆喰は、エジプトではツタンカーメン王の時代から1000年以上後にならないと使われていない。それらを総合すると、この鉄剣は、アメンホテップ三世への贈答品としてミタンニ王国から持ち込まれたものと考えられるということだ。

LiDAR使った上空からの地理調査で478のマヤ文明の遺構を発見、紀元前1200年頃から紀元前後のオルメカ文明との共通点も

LiDAR使った上空からの地理調査で478のマヤ文明の遺構を発見、紀元前1200年頃から紀元前後のオルメカ文明との共通点も

メキシコ国立統計地理情報院(Instituto Nacional de Estadistica y Geografia)などによる、LiDARを使った上空からの地理調査で、メキシコ南部に数百ものマヤ文明およびオルメカ文明の祭祀場の遺跡が発見されました。アリゾナ大学の考古学者 猪俣健 氏らが、メキシコ湾の中のカンペチェ湾に沿ったオルメカの中心地とグアテマラ国境のすぐ北にあるマヤ西部低地にまたがるこの地域を調査したところ、478もの祭祀場の輪郭がみつかったとのこと。

今回の調査では、マヤ文明が、紀元前1500年~紀元前400年頃までメキシコ南部の海岸線に栄えていたオルメカ人から文化的なアイデアを受け継いでいた可能性があることがわかりました。発見された祭祀場の遺跡は、その建物の配置の特徴からメキシコとグアテマラの国境付近にあったアグアダ・フェニックス遺跡と同時期の紀元前1100年~紀元前400年頃に作られたとみられます。

またこの祭祀場遺跡には、最古のオルメカ文明として知られるメキシコ・タバスコ州のサン・ロレンソ遺跡の祭祀場跡とも配置に共通点があることがわかりました。猪俣氏は、この点について「サン・ロレンソが後にマヤにも受け継がれたいくつかのアイデアのもととして重要であることを物語っている」と述べました。これはつまり、マヤ族がオルメカ族から儀式の概念や宗教的な基板を受け継いでいた可能性が考えられるということです。

もちろんふたつの文明には相違点があります。たとえばサン・ロレンソの遺跡の壁には遺跡の建設を指揮した当時の支配者の絵が彫られているのに対して、アグアダ・フェニックスの方にはそれがありません。それはたまたまなのかもしれませんが、もしかするとマヤ遺跡のほうが、平等な人々の協力と努力によって建設された可能性が推測されるとのこと。猪俣氏は「当時は定住型の生活に移行していた時期で、階層的な組織があまりない地域が多かったのではないか」と述べています。

近年、メキシコ、グアテマラ、ベリーズの国境地帯にまたがるマヤ文明があった一帯で、無数の灌漑用水路や道路、要塞などの遺構が発見されるようになりました。その理由は、LiDARによって上空から広範囲を一気に調べる方法が活用されるようになったため。LiDARの赤外線レーザー光は地表を覆うように茂る木々の葉を透過して地面を3Dスキャンできるため、調査団が森に足を踏み入れずともそこに隠れている古代文明の特徴を発見することができます。

ヒューストン大学のNational Center of Airborne Laser Mapping(NCALM)の技術者で、今回の研究の共著者でもあるファン・カルロス・フェルナンデス=ディアス氏は、LiDARの利点は古代文明による建物や道路、農地、灌漑用水などを3次元の俯瞰図にして見ることができ、世界の多くの地域で森林に覆い隠されているかつての風景やインフラを発見できるところです」と述べています。

自動運転車も使うLiDARセンサー技術でマヤの巨大都市を発見。グアテマラの森林に6万もの構造物

(Source:Nature Human BehavierEngadget日本版より転載)