グーグルのArt & Cultureプラットフォームがアップデート、マリのトンブクトゥの文書、芸術品、音楽が追加

Google(グーグル)は、西アフリカの歴史家と協力して、マリに関する現代美術、文化、史跡のデジタル化に取り組んできたが、米国時間3月10日、Google Art & Culture(GAC)でデジタルライブラリーが公開され、これらのアイテムが世界中で探索できるようになった。

「Mali Magic(マリ・マジック)」と呼ばれるこのプロジェクトには、デジタル化された原稿ページが4万件以上、9つの遺産のストリートビュー、13世紀に建てられた世界最大のアドベ建築であるジェンネ・モスク(泥のモスク)の3Dモデルや注釈付きツアーが含まれている。

また、マリのシンガーソングライターFatoumata Diawara(ファトゥマタ・ディアワラ)がこのプロジェクトのために制作した、マリの文化遺産を紹介するオリジナル音楽アルバム「Maliba」も収録されている。

「(写本は)単なる歴史的な重要資料ではありません。西アフリカのマリという国の遺産の中心であり、アフリカにおける文字による知識と学問の長い遺産を象徴し、現代の問題に立ち向かう過去の行動からグローバルな学習を促す可能性を秘めています」と、トンブクトゥ(マリの都市)から写本を密輸したことで知られる「バッドアスな司書」で、Googleプロジェクトの協力者でもあるAbdel Kader Haidara(アブデル・カデル・ハイドラ)氏は述べている。

トンブクトゥは昔から、遠い場所の婉曲表現として使われてきた。しかし、このマリの都市は、中世の時代、サハラ砂漠を横断するキャラバンルートの重要な交易拠点であり、その歴史から学問の重要な中心地であったことはあまり知られていないようだ。この活発な歴史が、この都市に写本、音楽、モニュメントなどの芸術をもたらし、アフリカの交易、教育、宗教、文化の歴史を垣間見ることができるようになったのだ。

「マリの都市トンブクトゥは、人権、道徳、政治、天文学、文学の分野における豊かな学問を生み出し、何千もの写本に記録されています。2012年、この古代の知識が過激派に脅かされたとき、地元コミュニティはこれらの宝物を保存するために時間との戦いに挑みました。この遺産は、今世界中の人々が探索できるようになりました」とGoogle Arts & Cultureのプログラムマネージャーでデジタル考古学者のChance Coughenour(チャンス・クーヘナー)氏は述べている。

このライブラリーは、ウェブ上およびGoogleとApple(アップル)のストア上のアプリケーションを介して利用可能だ。2011年に80カ国、2000以上の文化施設の宝物、物語、知識を収集するデジタルプラットフォームとして開始されたGoogle Arts & Cultureは、世界中の博物館や遺産を少しずつ記録してきた。

アフリカからは2015年に南アフリカのロベン島博物館が初めてライブラリー化され、2019年にはケニアのナイロビ国立博物館がそれに続いている。ナイジェリアのアフリカン・アーティスト・ファウンデーション、レレ・アート・ギャラリー、芸術文化センターのテラ・カルチャーが、南アフリカのウィッツ大学のオリジンセンターと同じ2020年に追加された。マリのコンテンツが加わったことで、9世紀にわたってアフリカの学者によって書かれたデジタル化されたページ数は40万を超えることとなった。

Google Arts & Cultureプラットフォームは、歴史的な文書や芸術品のアーカイブとして機能するだけでなく、2021年のアップデートでは、ペットの写真と美術館にあるアート作品をマッチングさせるなど、ユニークな機能も備えている。

画像クレジット:Google/Passion Paris

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(文:Annie Njanja、翻訳:Akihito Mizukoshi)

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作った作品」要件を満たさず

米著作権局、AIが生成したアート作品に対する著作権取得の申請を2019年に続き却下―「人間が作ったもの」要件を満たさず

Stephen Thaler/Creativity Machine

米著作権局(USCO)は、人工知能が生み出した芸術作品に対する著作権取得の申請を2019年につづいて再び却下しました。これは自らが開発した人工知能(AI)が生み出した”アート作品”に関して、各国での著作権取得を試みているImagination EnginesのCEO、スティーブン・タラー博士による最新の試みでしたが、USCOは前回と同様「著作権は人間によって作られた作品でなければ認められない」としています。

今回、タラー博士はAIによって作成された「A Recent Entrance to Paradise」と題した芸術作品の著作権取得を目指していました。今回の”アート作品”は「Creativity Machine」と呼ばれるAIによって生み出されたものですが、これをCreativity Machineの所有者に雇用されて生み出された作品として登録申請していました。また、2019年の裁定に対しても、「人間の著作物」という要件は憲法違反ではないかと主張しています。

しかし、USCOの見解としては「人間の心と創造的な表現の結びつき」が著作権の重要な要素であり、また過去の同種の裁判、たとえば猿がシャッターボタンを押して撮られた写真についての裁判でも「人間以外による表現物は著作権保護対象外」だとする判断が一貫して下されて来たとしました。

ただ、芸術作品ではないもののタラー博士による「AIの権利取得の試み」が認められた例も、いくつか存在します。博士は昨年、世界各国で「DABUS」と名付けられたAIによって考案されたいくつかの発明に関して特許出願を行いました。これに対し、米国特許商標庁、英国知的財産庁、欧州特許庁などはやはり発明者が人間でないことから出願を却下する判断を下していました。しかしオーストラリアでは、AIが考案した発明に関する特許申請においてAIを発明者と認めることができる可能性があると裁判所が判断し、南アフリカでは実際に特許も認められたことが伝えられました

とはいえ、なにかの製品の動作や仕組みを定義する発明とは異なり、芸術作品は創作者のユニークな発想や才能によって生み出されるものとの考え方が強く、やはり人間ではないものに著作権を与えることは難しそうです。

(Source:United States Copyright Office(PDF)。Via the VergeEngadget日本版より転載)

アーティストに大きなチャンスをもたらすはずだったWeb3、蔓延する作品の盗難や肖像権の侵害で評価に傷

Jillian C. York(ジリアン・C・ヨーク)氏はNFT(非代替性トークン)にはなりたくなかった。

ベルリン在住の作家で活動家ヨーク氏は、電子フロンティア財団のInternational Freedom of Expression(言論の自由を守り促進することを目的とするNGO)でも中核を担っている。どういうわけか、彼女の名前はいわゆるCypherpunk(サイファーパンク)の1人としてウィキペディアにも掲載されている。Cypherpunkはセキュリティ、暗号技術、プライバシーを推奨する活動家だ。ヨーク氏はこの3つを支持してるが、それらを自身の最も重要な関心事としたことはない。

「もちろん、ウィキペディアのリストから自分を削除することはできません。ですが私は、暗号技術を支持してはいますが、自分をCypherpunkだと思ったことはありません」と同氏はいう。同氏はウィキペディアの編集ルールを尊重しているため、自身が参加したくもないグループに強制的に参加させられてしまったわけだ。

ところが、2021年のクリスマスイブに、ウィキペディアに掲載されているヨーク氏と多数のセキュリティ賛同者およびCypherpunkたちがトークンマーケットOpenSea(オープンシー)にNFTとして登場したのだ。これらのトークンには、そのCypherpunkの想像画が含まれている。ヨーク氏のトレーディングカードには、回路や指紋とおぼしき背景から彼女の署名のトレードマークである坊主頭がちらっとのぞいている。またヨーク氏は、自分が参加したくないもう1つのグループにも属してしまっている。自分のアートや作品を盗まれてNFTを作成されてしまった人たちのグループだ。同氏は激怒している。理由は2つある。1つは、クリエイターが使用した写真は著作権保護されており、実は彼女の資産ではなかったこと。

もう1つは、名前のスペルが間違っていたことだ。

トレーディングカードはプロの写真家が撮影した写真をもとにしたもので、Jillion Yorkという名前が入っていた。また、こうしたNFTコレクションには、ヨーク氏と同氏の仲間たちに加えて、セキュリティ界隈ではすでに忘れ去られたRichard Stallman(リチャード・ストールマン)やJacob Appelbaum(ジェイコブ・アッペルバウム)などの名前もあった。トレーディングカードに描かれたヨーク氏と数人の人たちは、そうした人たちと一切関わりたくないという考えだった。

「私はこうしたものを一切認めていませんし、削除して欲しいと思っています」とヨーク氏は12月26日にツイートしている。他の多くの支持者や被害者も同様のコメントを寄せている。OpenSeaとNFTクリエーターの間で何度もやり取りが行われた末、ItsBlockchain(イッツブロックチェイン)という会社が要求に応え、すべてのNFTを削除した。

分散化資産を破壊するために中央の管理会社にアクセスする必要があるという現実を多くの人達が皮肉だと感じている。

「まったくばかげているし、疲れます。Web3のデジタル資産という新たな領域では、他人のアイデンティティーをその人の許可なくトークン化し、取引可能な商品として営利目的で販売できるというのですから」とNew Republic(ニュー・リパブリック)の編集者Jacob Silverman(ジェイコブ・シルバーマン)は書いている

ヨーク氏の試練は始まるのとほぼ同時に終わった。NFTのクリエーターHitesh Malviya(ヒテシュ・マルビヤ)氏がヨーク氏や他の被害者たちと連絡を取り、NFT画像を取り下げることに同意したのだ。数日後、これらの画像は削除され、代わりにMedium(ミディアム)の投稿が掲載された。この投稿でマルビヤ氏は次のように述べている。「我々のチームは暗号技術に関する若者達のコミュニティに、Cypherpunkという存在が、今日までにブロックチェーンテクノロジーの発展において果たした重要な役割について知ってほしかったのです」。

「残念ながら、多くのCypherpunkたちがこの考えに反対し、どのような形であれ参加を拒否しました。ですから我々はすべてのCypherpunkたちに、彼らに無許可でNFTを作成したことを謝罪しました」と同氏は説明した。

筆者がNFTについて、また個人の写真と情報、とりわけ他人のアートを金もうけに使うことができると思った理由を尋ねると、マルビヤ氏は不機嫌そうに次のように語った。

「我々はNFTにおける肖像権保護法については認識していませんでした。市場は規制されていないからです」と同氏は直接のメッセージで語った。「我々は3カ月間、人手と時間をかけて教育用のシリーズとこのNFTコレクションを作成しました。今回のことはいい教訓になりました。質問の答えになっていれば幸いです。コメントは以上です」。

今回の事態とそれに関するさまざまなコメントは、拡大しつつも混乱を招いているWeb3の一側面を表している。すべてのものが許可を必要としないなら、誰かの肖像、アート、データを使う際に許可を必要とするのは一体どのような場合だろうか?何より、Tシャツのデザインから裸体まで、何でもNFTに変えようとする輩に歯止めをかけるにはどうすればよいのだろうか?

関連記事:【コラム】NFTと未来美術史「NFTに最も近いのはウォーホルたちのポップアート」

残念ながら、ヨーク氏のようなケースは決して今始まったことではなく、クリエーターを一攫千金狙いのNFTクリエーターから守ることを目的とするまったく新しい産業とツールチェーンが作成されている。

2021年4月、NFTを使った別の大規模な窃盗事件が発生した。アーティストQing Han(ここではQuinni[クイニー])の作品が盗まれ、ヨーク氏のケースと同じプラットフォーム、OpenSeaに再投稿されたのだ。クイニーは健康と慢性病に対する芸術的な見方でファンから愛されていたが、2020年2月にがんで亡くなった。クイニーの死後も、彼女の兄と仲間のアーティストZe Han(ツェ・ハン)氏がクイニーのソーシャルメディアアカウントを維持し、彼女の作品を投稿した。

1年後、泥棒たちがクイニーの作品を匿名で投稿した。ファンからの激しい抗議の後、作品はOpenSeaを含むさまざまなNFTをサイトから取り下げられ、表面上はすべての作品がブロックチェーンから削除された。クイニーの兄はこの件の後、NFTサイトへの参加を拒否している。

「今回の件では、クイニーのアート作品が無許可で販売されていたことを確認のため申し上げておきます」とハン氏はTwitterに書いている。「クイニーのアートが販売されている合法的な場所はありません」(これは今後変わるかもしれないが)。

今回の件で、多くのクリエーターたちがNFTに関して教訓を学んだ。デベロッパーたちは暗号資産にまったく興味のない多くのクリエーター向けにたくさんのツールを作成した。こうしたツールは、彼らが盗まれたアートに気づけるように、窃盗が発生していることを強調するTwitterのフィードをポップアップ表示する

オンライン共有コミュニティDeviantArt(デヴィアントアート)のある重要人物は、大規模なアート盗難に詳しい。

「当社はこのプラットフォーム上で5億点を超えるアートをホスティングしています」とDeviantArtのCMOであるLiat Karpel Gurwicz(カーペル・ガーイッジュ)氏はいう。「当社は何年にも渡って、盗難事件を扱ってきました。別に今始まったことではありません。実際の規制がかけられる前から、オンラインアートコミュニティとして、盗難には常に対処してきました」。

最近同社はブロックチェーン上のユーザーアートを検索するボットを開発した。このボットは、OpenSeaなどの人気のNFTサイトに掲載されているアートを、登録済みユーザーの画像と比較する。また、機械学習を使用して、DeviantArtのサーバーにすでに投稿されているアートに似たアートを見つける。さらには、アーティストにOpenSeaやその他のプロバイダーへの連絡方法を表示することで、削除プロセスも簡素化する。

DeviantArtのCOOであるMoti Levy(モティ・レビー)氏によると、このシステムはまだ、正規所有者によって投稿されたアートと窃盗犯によって投稿されたアートを識別しないという。

「ほぼ完全に一致するアートを見つけた場合は、ユーザーに最新情報を伝えます」と同氏はいう。「そのアートが、そのユーザーのNFTである場合もあります。誰が作成したのかはわかりません」。

このDeviantArt Protect(デヴィアントアートプロテクト)というツールは成功しつつある。すでに8万件の著作権侵害ケースを見つけており、2021年11月から12月半ばまでに送信された通知は4倍増となっている。DeviantArtは、NFTクリエーターたちがすべてのアートをまとめて盗むことができないようにボット対策ツールも追加した。

皮肉にも、NFTを販売している分散化市場は1つまたは2つのプロバイダーの周りに集約され始めている。最も人気のあるプロバイダーOpenSeaでは、ヨーク氏やクイニーのようなケースに専念する完全削除チームを設置した。

DeviantArtは、2022年1月初めの3億ドル(約346億円)のラウンドの後、評価額が130億ドル(約1兆5592億円)に達し、軌道に乗った。同社はNFT市場では並外れた最大のプレイヤーで、アクティブユーザー数は推計126万人、NFTの数は8000万点を超える。DappRadar(ダップレーダー)によると、DeviantArtで過去30日間に行われた取引の総額は32億7000万ドル(約3776億7000万円)、取引件数は2億3300万件に達する。ライバル会社Rarible(ラリブル)の同期間の取引総額は1492万ドル(約17億2000万円)だった。

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OpenSeaはエコシステムにおける自社の立場をオープンにしており、アーティストからの取り下げ要求にもできる限り迅速に対応していると主張している。

「他人のパブリシティー権を侵害するNFTを販売するのは、当社のポリシーに反しています」とOpenSeaの広報担当者はいう。「当社は、肖像権の侵害であるという通知を受けた場合にアカウントを停止したり使用禁止にするなど、こうした違法行為に対して定期的に複数の方法で対応してきました」。

興味深いことに、OpenSeaはディープフェイクについても断固たる措置を取っているようだ。同社はディープフェイクを同意なしの私的画像(NCII、non-consensual intimate imagery)と呼んでいる。この問題はまだ広く表面化していないが、インフルエンサーやメディア界のスターにとっては有害なものになる可能性がある。

「当社はNCIIに対しては一切容認しない方針で対処しています」と同社はいう。「NCIIまたはその類の画像(ある人物に故意に似せて修正された画像も含む)を使用したNFTは禁止しています。またそうした作品を投稿したアカウントは迅速に使用禁止にしています。当社は顧客サポート、信頼性、安全性、サイト保全性を維持するための取り組みを積極的に拡充し、コミュニティとクリエーターを保護し支援できるように迅速に対応しています」。

しかし、こうしたOpenSeaの取り組みに対し、多くのアーティストたちは満足していない。アーティストたちの多くは、自分たちの作品や仲間の作品がNFTプラットフォーム上で盗まれる事態になる前から、NFTに対して懐疑的だった。多くのユーザーたちが依然としてOpenSea上に自分たちの作品を見つけており、これに対して公に苦情を申し立てると、OpenSeaなどのプラットフォームの正式な窓口担当者と称するサポート詐欺師たちが押し寄せてくるという。

こうした混乱のため、DeviantArtのレビー氏によると、同社はNFTを探索してはいるものの提供するのは断っているという。実際、同氏はユーザーはNFTを欲しがっているとは思わないと考えている。

「長期的には、Web3は興味深いですし可能性もあると思いますが、アーティストを保護し支持するようなもっと良い方法で展開すべきです。アーティストを危険にさらすような方法には絶対に賛成できません」。

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(文:John Biggs、翻訳:Dragonfly)

バンクシーの作品を燃やしたBurnt FinanceがDeFi志向のNFTオークションサービスを開始

Burnt Finance(バーント・ファイナンス)は、実物のBanksy(バンクシー)の作品を燃やしてNFT(非代替性トークン)を作成し、それを「通常の」オープンなアート市場価格の2倍に相当する40万ドル(約4600万円)で販売するというスタントをやってのけた暗号資産スタートアップだ。

NFTのオークションはもっと改善できるという考えに基づき、同社は2021年、そのSolana(ソラナ)ブロックチェーン上に構築された分散型オークションプロトコルのために、300万ドル(約3億5000万円)の資金を調達した。このラウンドは、Multicoin(マルチコイン)とAlameda Research(アラメダ・リサーチ)が主導し、マルチチェーンネットワーク「Injective Protocol(インジェクティブ・プロトコル)」の中核的貢献者であるInjective Labs(インジェクティブ・ラボ)がインキュベートした。

現在はより本格的になっている。

Burnt Financeは今回、ブロックチェーンゲームや伝統的なゲームなどの幅広いポートフォリオを開発・販売しているAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)の主導でシリーズAラウンドを実施し、800万ドル(約9億2000万円)を調達した。

このラウンドには他にも、Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)、Alameda Research、DeFiance(デファイアンス)、Valor Capital Group(ヴァロー・キャピタル・グループ)、Figment(フィグメント)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、Tribe Capital(トライブ・キャピタル)、Play Ventures(プレイ・ベンチャーズ)、HashKey(ハッシュキー)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、DeFi Alliance(デファイ・アライアンス)、Terra(テラ)などが参加した。

これらの投資家の中でも、2017年からブロックチェーン分野に投資しているMulticoinは、おそらく最もよく知られている企業の1つだろう。同社はSolanaやNEAR(ニア)、そしてSignal(シグナル)のP2P決済に使われているMobileCoin(モバイルコイン)など、いくつかの重要なプロジェクトに投資してきた。

Burnt Financeは今回、独自のNFTマーケットプレイスを英語とオランダ語で立ち上げ、Buy Now(すぐ買う)オークションを提供し、NFTレンディング、ステーキングインセンティブをともなう流動性マイニング、細分化、GameFi(ゲームファイ)などのDeFi(分散型金融)機能を統合することで、NFTのハブとなることを目指している。

これにより、NFTへのパーミッションレス(自由参加型)なアクセスが可能となり、低い手数料と高速性を実現できると同社は主張しており、すでに「16万人のユーザー」が順番待ちリストに名前を連ねているという。

Burnt Financeによると、同社の「Spark(スパーク)」テストネットでは、7日間で1億ドル以上の取引量を処理したという。

同社では、Terraやその他のEVM互換のレイヤー1プロトコルを含む追加のブロックチェーンに拡大することも計画している。

Animoca Brandsの共同設立者であるYat Siu(ヤット・シウ)氏は、次のようにコメントしている。「パーミッションレスのエコシステムで資産を鋳造・取引することは、オープンなメタバースの経済的基盤にとって非常に重要です」。

DappRadar(ダップレーダー)によると、NFTの世界市場は2021年に約220億ドル(約2兆5000億円)に達したという。伝統的なオークションハウスであるChristie’s(クリスティーズ)やSotheby’s(サザビーズ)もNFTの分野に進出している。

Burnt Financeは開かれたドアを押している。NFTの売上は、2021年12月だけで4億ドル(約460億円)に達した

競合他社には、もちろんレベルはさまざまだが、OpenSea(オープンシー)、SuperRare(スーパーレア)、Rarible(ラリブル)、NiftyGateway(ニフティゲートウェイ)などがある。しかしながら、Burntは明らかにまだ非常に初期の段階ではあるものの、Solanaを使い、DeFiの領域を狙うことで、より大きなプレイヤーたちを追い越そうとしている。

画像クレジット:Burnt Banksy

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】NFTと未来美術史「NFTはウォーホルたちのポップアートに最も近い存在だ」

私は美術史家として「近代美術」の市場の変遷について幅広い研究を行ってきた。そしてその私に言わせてみれば、NFTには今、世代を超えた何かが起こっていると断言できる。

天文学者が新しい銀河の誕生を目撃しているようなもので、美術史家としては非常にエキサイティングな時代である。Cryptopunks(クリプトパンク)、Bored Ape(ボアードエイプ)、Beeple(ビープル)が達成した数百万ドル(数億円)という偉業は、美術品オークションの歴史における長い前例を打ち破り、我々が今デジタル文化と暗号資産をめぐる構造の転換点に近づきつつあるということを示唆している。

その転換点が近づいているのは間違いないのだが、現在最も注目されているNFTの運命は驚くほどに不明瞭だ。このようなサイクルのいくつかを間近で見てきた私が自信を持って言えることは、アートトレンドがアートヒストリーになるかどうかを決定づけてきた要素が今日のNFTには欠けており、十分な執筆活動が行われていないということある。

これまでに長期的な評価(および市場価値)を維持することができたムーブメントとは、美術館や大学など、名声を引き出し、知識を生み出している機関に自らを結びつけることに成功したものだけである。

つまり、先にタイムズスクエアで開催されたNFT.NYCは、ダウンタウンのSotheby’s(サザビーズ)やアップタウンのMoMA(ニューヨーク近代美術館)とどのような関係にあるだろうか。あるいは、世界有数の近現代美術プログラムと言われているコロンビア大学の美術史・考古学学科との関係はどうなのか?

NFTの世界ではこのような疑問さえも不要なのかもしれない。ゴールデングローブ賞やニューヨーク大学の映画学校に、TikTok(ティックトック)で人気のコンテンツの価値を判断してもらおうとは誰も思わないだろう。

しかし私は、NFTの価値を長期的に育てようとする真剣な試みはなされないだろうという見解には懐疑的である。数十億ドル規模のエコシステムを組織化して整理しようとしないなどというのは、あまりにもリスクが高すぎる。ゲートキーパーやテイストメーカーは有機的に発生するものであり、NFTの世界よりも数百年も前から600億ドル(約6兆8300億円)規模のアート市場には、強力なゲートキーパーやテイストメーカーがすでに存在しているのである。

実際にアーティスト、コレクター、キュレーター、学者の関係性が、勝者と敗者、先見者と模倣者、貴重な遺産と一過性の流行を選別し、過去数世紀にわたってどの美術史が生き残るのかという断層線を形成してきた。そしてNFTの世界では、この知的価値と金銭的価値の交わりが、ほとんどの人が考えている以上に重要な意味を持つと私は確信を持っている。

美術史的に見て現在のNFTの立場に最も近いものは、おそらく1960年代初頭に劇的に現れたポップアートだろう。Jasper Johns(ジャスパー・ジョーンズ)やAndy Warhol(アンディ・ウォーホル)などのアーティストたちが突如として現れ、スクリーンプリントやリトグラフなどの技術的で既成概念にとらわれないメディアを用いてカラフルでわかりやすいイメージを制作するため、本格的に取り組んだのである。

意図的かどうか別として、この動きによりオールドマスターの世界から締め出されていた成り金層にかつてないほどの大量の作品を売り込むことができた。スープ缶を印刷した50枚の作品は、フェルメールの1作品よりもはるかに多くの市場行動を支えることができたのである。

ジョーンズとウォーホルの成功が持続したのは、Leo Castelli(レオ・カステリ)氏というディーラーの努力によるところが大きい。同氏は現代美術史の中で最も影響を与えた人物でありながら、その名が広く知られていない人物である。

私の調査によると、カステリ氏は自分の仲間の作品が美術館の壁に飾られ、学術論文の題材になるよう熱心に働きかけ、時には倫理的・法的規範に背くような努力をしていたことが明らかになっている。ここで重要なのは、彼の努力によって新たな重要な声の波が押し寄せたことだ。カトリック信者の若いアメリカ人だけでなく、最初にオープンになった同性愛者たちの声も響き始めたのである。一騒動起きることは避けられないが、歴史をリアルタイムに書くことで、必要な変化の扉を開くことができるのである。

ポップアートによって起きた美術館のエコシステムの活性化は、今回の民主化のエピソードとは明らかに対照的である。1980年代の「絵画への回帰」は、オークションを重要視するNFTのダイナミクスを予兆するようなもので、アートディーラーのMary Boone(メアリー・ブーン)氏とSotheby’sのCEOのAlfred Taubman(アルフレッド・トーブマン)氏は先物取引や信用買いに似た手法を開拓したが、これはブロックチェーン以前のアートオークション空間における最も偉大なイノベーションである。彼らは事実上、二次市場の火にガソリンを注いだわけだが、その作業をサポートする学術的、制度的マトリックスには大きな関心が払われず、彼らが煽ったセンセーションはほとんど忘れ去られてしまったのである。

こういったことは長期的に見ると非常に重要なことである。数年後、数十年後、数百年後、暗号資産の使用量は必然的に増加していくことになる。現在、地球上のほぼすべてのインタラクションは何らかの形でテクノロジーに媒介されており、記録される通貨はそのメディアに固有のものになる可能性がますます高くなっている。このように長期的な可能性を探れば、NFTの持つ表現力だけでなく、学術的な知識創造の基本的な手段を再考する大きな機会となるだろう。

ここには非常に豊かな可能性が潜んでおり、高等教育に危機の波が押し寄せていることを考えればなおさらのことである。例えば政治学者が分散型自律組織(DAO)の一部として実験的な投票メカニズムを操作する機会を得ることを想像してみて欲しい。あるいは、歴史家が芸術的な再構築によってアーカイブ記録の隙間を埋める作業をするというのはどうだろうか。

広範囲の研究から世界を変えるような発見が生まれることもある。投票の仕組みが実験的なものから政府の中心的なものへと変化し、最終的には包括的な気候変動対策や無価値な立法への必要性を取り除いてくれるかもしれない。このようなアイデアを生み出すNFTの世界も、学術界とのコラボレーションによってのみ重要な意味を持つものを生み出せるのだ。歴史上の産物として美術館に保存(そして市場評価)される価値のあるものを。

現時点では、分散化されたイーサの中にオープンな可能性が残されている。理想的には社会全体に最良の純効果をもたらしながらどのようにして実践を歴史に変えていくのかは、未だ大きな疑問である。

編集部注:本稿の執筆者Michael Maizels(マイケル・マイゼル)氏は美術史家。創造性、テクノロジー、経済学の交差点で働く学際的な研究者で、戦後美術史におけるビジネスモデルの進化に関する新しい研究に関する著書を2021年中に出版予定。

画像クレジット:PixelChoice / Getty Images

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(文:Michael Maizels、翻訳:Dragonfly)