蚊をやっつけるのではなくただ居場所を指し示すだけのBzigoのレーザーポインター、本当に必要?

蚊は地球上の他のどんな生き物よりも多くの人を殺しているいる生物であり、テクノロジーによる解決策には事欠かない。そのような解決策の1つがBzigo(ビジーゴー)から発表された。同社が売り込もうとするデバイスは家の中の蚊を見つけてレーザーで照射し、蚊の音が聞こえるときには携帯電話に通知してくれる機能を持っている。

CESの会場を歩いていると、自分の皮肉癖を深く押し殺さなければならないような会社に出会うことが多い。TechCrunchは直接参加しないことを発表したが、たとえバーチャルに会場を「歩いた」としても、トレードショーの文脈の中で「ちょっと待て、これは何だ?」という奇妙な瞬間を、気のいい特派員が避けることはできないということが判明した。この場合、レーザーポインターで蚊を指し示すというマジックは、非常に優れた技術的挑戦であり、自動蚊取り器の製品化に向けた最初のステップになることは間違いないだろう。

デバイス自体は、光源(赤外線LED)、高解像度ワイドカメラ、そして残りの仕事を引き受ける、小さなパッケージに詰め込まれた電子頭脳で構成されている。同社によれば、このデバイスに組み込まれたAIは、害虫かもしれない物体の動きのパターンを分析することで、人間の最悪の友人(蚊)と浮遊する塵の違いを見分けることができるという。

このような興奮を、CES会場のにぎやかな(仮想)雑踏の中で受け流すこともできるが、2つの問題がある。

第1の問題は、CESで見た他の製品と違って、このデバイスは昆虫を駆除するために実際には何もしないということだ。ただ、携帯電話に向かって、あなたのシューティングゲームガン(あるいは好きな蚊の駆除方法)の準備をする時間が来たことを通知し、小さな赤いレーザーポインターで小さな空飛ぶ敵を指し示すだけだ。同社は私に、これはクラス1の「絶対安全」なレーザーだと断言した。同社がそれを選んだ理由は理解できる。私には、飛んできた蚊を実際に撃ち落とせるほどの十分なパワーを持ったレーザーを使用した場合の、法的ならびに健康的なリスクに関してはとても想像することができない。しかし、それはこの製品に対する根本的な疑問を呼び起こすものでもある。

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BzigoのプロダクトマネージャーであるBenjamin Resnick(ベンジャミン・レズニック)氏は、同社のデモビデオを見せながら「蚊の位置を特定するのはとても難しいことですが、蚊を殺すのは簡単なことです」という。「Bzigoがレーザーポインターで蚊の着地点を示してくれれば、ユーザーが自分で簡単に蚊を殺すことができます」。

正直なところ、蚊が小型プロペラ機ほどの大きさの国で育った者として、私はこれまでにそのような(蚊のいる場所を特定する)困難に直面したことがない。

2つ目の、そしてもっと大きな問題は、同社がこれまでに開発してきた製品を一般消費者向けの製品として出荷しようとしていることだ。Bzigoは、何千人もの顧客がこの199ドル(約2万3000円)のデバイスを予約しており、製品の発売と予約者への配送は「2022年の後半」になるとしている。

蚊の位置を特定するための、199ドル(約2万3000円)もするレーザーポインターを売ることのできる会社のマーケティングチームには心から敬意を表するが、大局的に見れば、それは本質的に役に立たない製品だ。蚊は薄明薄暮性(夜明けと夕暮れ時に栄養を摂取する)の生き物なので、その時間帯に人間が蚊をやっつけるために起きている可能性は最も低い。さらに、目を見張るような効率的な解決策がすでに存在している。「長持ちする殺虫剤付きベッドネット(Long-lasting, insecticidal bed nets、LLINs)」は、寝ている家族をマラリアから守ることができる、シンプルで費用対効果の高いソリューションだ。価格は一式で10ドル(約1157円)で、マラリアを媒介する蚊に対して物理的な防壁を作り、ネット(蚊帳)に織り込まれた殺虫剤は、1人の人間から他の人間へと病気を伝染させる前に蚊を殺すのだ。

誤解しないで欲しいのだが、私は他の人と同様に筋金入りのオタクだし、優れた科学実験や創造的なプロトタイプが大好きだ。私の疑問は──蚊を1匹も殺したり、1人の命も救ったりすることなく、今後10年のうちにきっと埋め立て地行きになる高性能レーザーポインターを、何千台も世界中に出荷することの経済的、環境的影響は、本当に利益を上回るのだろうか?というものだ。

蚊を殺す何らかの技術を搭載したバージョンの登場を私は期待している。それができるまでは、創業者にはこのプロトタイプを消費者向け製品として出荷する計画を再考して欲しいと願う。世の中には解決すべき現実的な問題がたくさんある。数匹の蚊のために深夜のサイレントレイブレーザー光線ショーを行うことは、それには値しない。

画像クレジット:Bzigo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

生き物であるかのようなサインを出して蚊をおびき寄せる捕虫器「モスキッター」

先の記事で別の蚊取り器を揶揄したが、バランスのためにも、今回のCESで展示されていた虫対策技術をもう1つ紹介しておこう。「Mosqitter(モスキッター)」は、蚊が産卵するチャンスを得る前にメスの蚊を引き寄せる、工業規模の蚊の殺虫器だ。そこから短期間で、見事に虫を退治することができる。

同社の説明によると、蚊が吸血活動を開始する前に誘引される自然要素は4つある。呼吸によるCO2、人間の体から出る熱のサイン、哺乳類が発する特定の波長の紫外線、そして香りだ。Mosqitterの製品は、魅力を最大限に引き出すようこれら4つの要素をさまざまなサイクルで駆使して、蚊を惹きつける。同社の製品は、どんな天候でも作動するように設計されているという。アプリを使って遠隔操作ができ、オプションでソーラーパネルを追加すれば、24時間365日の稼働も可能だ。

蚊を機械におびき寄せた後は、毒物を使用せずに殺すことができる。

「Mosqitterは生き物を模したもので、メスの蚊をおびき寄せ、装置の中に引き込みます。その結果は、初日から見ることができます。2〜3週間後には、蚊の繁殖サイクルが破壊され、テリトリーから蚊がいなくなります」と同社のCOOであるOlga Diachuk(オルガ・ディアチュク)氏は説明する。ただし厳密には、この機械は蚊を直接殺すのではなく、蚊を閉じ込めておくネットがあり、そこで結果的に蚊は餓死または乾燥死すると同氏は明確にした。

同社は2020年に販売を開始し、これまでに250台以上を販売したという。今後は、イタリア、インド、ジンバブエなど、この捕虫器が最も必要とされる地域で製造規模を拡大していくことを検討している。おそらく最も印象的なのは、同社がわずかな予算でこれらすべてを達成したことだろう。2019年に設立されて以来、同社は製品販売から得られる収入に加えて、Ukrainian Startup FundCRDF Globalからの8万5000ドル(約985万円)相当の助成金と、10万ドル(約1160万円)のエンジェル投資で運営してきた。

Mosquitterは現在、3つの異なるバージョンの製品を販売しており、家庭用の最も小さいバージョンは950ドル(約11万円)。ビジネス向けのバージョンは1150ドル(約13万3000円)で、公園や地方自治体などのより広い範囲を対象とした大型バージョンは2100ドル(約24万3000円)で販売されている。

画像クレジット:Mosqitter

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)