VRリハビリ機器を提供する「mediVR」が5億円のシリーズB調達、世界初の「成果報酬型自費リハ施設」開設を計画

VRリハビリ機器を提供する「mediVR」が5億円のシリーズB調達、「成果報酬型自費リハ施設」開設を計画

VRを活用したリハビリテーション用医療機器「mediVRカグラ」を販売するmediVR(メディブイアール)は7月8日、シリーズBにおいて5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のMedVenture Partners、また日本政策投資銀行グループ DBJキャピタル、積水化学工業、TARO Ventures。累計調達額は約8.9億円となった。

調達した資金を活用し、mediVRは営業部門を強化するとともに世界初の「成果報酬型自費リハ施設」を2021年中に開設する。これは、慢性期で改善が困難と医師から匙を投げられてしまった患者に対し、「あらかじめ設定した目標の達成に応じた分だけ費用を受け取る」という方式の施設という。「自分らしいからだと暮らしを取り戻したい」と願う患者に、VRを活用した質の高いリハビリを提供できるよう、事業を拡大する。

mediVRは2016年に大阪大学発スタートアップとして設立。2019年3月よりリmediVRカグラを販売してきた。VRリハはエビデンスが弱いとされる中、mediVRでは医師が神経科学・行動科学の知見に基づいて機器を開発。大学との共同研究を行うなど、様々な方向からエビデンスを確認しているという。

医師や理学療法士からの信頼を得て、2021年7月現在、大学やリハビリテーション病院、介護付き有料老人ホーム、デイケアなど全国25の施設に導入されているそうだ。コロナ禍においては、「患者との接触時間の軽減につながる」という点からも期待されているとした。

VRリハビリ機器を提供する「mediVR」が5億円のシリーズB調達、「成果報酬型自費リハ施設」開設を計画

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mediVRカグラは、仮想現実空間上に表示される対象に向かって手を伸ばす動作(リーチング動作)を繰り返すことで、姿勢バランスや重心移動のコツを掴んでいただくリハビリテーション用医療機器。以下の特徴を備えているという。

mediVRカグラの特徴

  • 立位姿勢の保持や歩行が困難な方でも安全に取り組むことのできる座位トレーニング
  • 認知課題と運動課題に同時に応えることを必要とする二重課題トレーニング
  • これまで曖昧になりがちだったリハビリの指示・評価が的確に行える
  • 認知機能が落ちた患者の自発性を引き出せる設計
  • 視覚・聴覚・触覚と多方面からのフィードバックにより脳の報酬系を刺激しリハビリへのモチベーションを高められる

背景がシンプルで認知負荷が低い「水平ゲーム」「落下ゲーム」、注意障害を惹起するよう認知負荷を高めた「水戸黄門ゲーム」「野菜ゲーム」「果物ゲーム」があり、失調、歩行、上肢機能、認知機能、疼痛などに課題を持つ患者も楽しくリハビリを行えるとした。

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位置追跡可能なタグとモバイルアプリによる見守りサービス「biblle」(ビブル)を展開するジョージ・アンド・ショーン(G&S)は7月7日、NTT西日本を引受先とする第三者割当増資による7000万円の資金調達を実施したと発表。NTT西日本との資本業務提携により、高齢者の認知症および軽度認知症(MCI)の早期発見のためのライフログ解析AIエンジンと、早期認知症の回復に向けた新規サービスの開発を進めるという。

G&Sはこれまでも、医療データに頼らず、日常的な生活習慣データを利用して認知症やMCIの発見する技術の開発を進めてきた。それを、その他の認知症早期発見や回復を目指したコンテンツやサービスと共に、必要な人にいち早く、できるだけ負担の少ない形で提供することが重要と考えたG&Sは、複数のパートナー企業と連携して、次の3つの柱を軸に社会実装を目指している。

ひとつは、「生活様式を変えない」ログ取得。高齢者の長期にわたる生活行動の記録データ「ライフログ」を、「biblle」や、高齢者施設用見守りシステム「施設360」(シセツサンロクマル)といった製品を活用して、当人に負担をかけずに取得する。

2つ目は、「気づき」を与える検知アラート。認知症またはMCIが疑われる人を高感度でスクリーニングし、当人に早い段階で認知症を疑うきっかけを与える。すでに、 認知症とMCIのスコアリング予測を行うAIプラットフォーム「Cognivida」(コグニヴィーダ)を高齢者施設に導入している。現在、認知症高齢者の検出精度は最大95%、MCIは最大81.8%とのこと(最大精度は睡眠データ利用時。センサーごとに推定精度は異なる)。検知に用いるデータは「位置情報の履歴」「睡眠サイクル」「家電利用の状況」「会話データ」などとしている。

3つ目は、「楽しみながら」の回復コンテンツ。食事、運動、コミュニケーション、脳トレなどを日常的に親しみながら継続できる回復コンテンツを提供する。すでに、食を通じて回復を促す動画コンテンツが展開されている。

これらの取り組みは、NTT西日本をはじめとするパートナー企業との連携で行われている。たとえば、NTT PARAVITAとは、睡眠情報を用いた認知機能推定のためのAI開発が進行中だ。今後は、投薬や医学療法との連携も重視し、医療機関や製薬会社との協力を推進してゆくという。

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認知症者の資産凍結を防ぐ家族信託サービスを提供する「ファミトラ」が2.2億円調達

認知症者の資産凍結を防ぐ家族信託サービスを提供する「ファミトラ」が2.2億円調達

家族信託サービス「ファミトラ」を提供するファミトラは1月12日、第三者割当増資による2.2億円の資金調達を発表した。引受先は、Coral Capital、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルの3社。調達した資金により、開発体制強化による効果的な支援の実現、銀行その他との連携を強め、一般の方にも広く使える家族信託ならびに関連サービスの提供を進める。

従来、一般的に家族信託を組成するには資産規模に応じて100万円超の高額な費用がかかるため、富裕層向けサービスとされてきたという。

同社は、2025年には認知症者数が700万人、2030年には認知症者の総資産額が200兆円を超えるとされる中、認知症に関連するお金のトラブルは今後増大していく一方と見られ社会課題となっていくと指摘。

そのため、家族信託を誰にでも手が届く老後の準備のスタンダードとするために、テクノロジーによるオペレーション効率化により、信託財産評価額が1億円未満の場合初期費用税抜4万9800円+年額費用税抜2万9800円から家族信託を始められるようにした。

認知症者の資産凍結を防ぐ家族信託サービスを提供する「ファミトラ」が2.2億円調達自身や家族が認知症になった際、「意思能力がない」とみなされるとあらゆる契約が行えなくなる場合があるという。老後の資金が必要になっても、自宅や保有株式の売却が行えなくなり、場合によっては、銀行口座が凍結されてしまうなど、認知症に関連した様々なお金のトラブルが発生してしまうことになる。

これを回避するための制度として成年後見制度があるものの、成年後見制度には「一度後見人が選任されると本人が亡くなるまで解任できない」「毎月数万円の費用がかかる」「資産管理において柔軟性に欠ける」「資産の管理を家族以外の手に委ねることになる」といった課題があるという。

同社は、その解決方法として、家族に自身の資産を委託する仕組み「家族信託」があるとしている。認知症になる前に家族間で信託を行うことで、認知症に関連するお金のトラブル回避、遺言などと同様の機能の達成など、老後の資産問題対策として利用できるという。

認知症者の資産凍結を防ぐ家族信託サービスを提供する「ファミトラ」が2.2億円調達

ファミトラは、教育系スタートアップ「manabo」を創業し2018年に駿台グループからのM&Aを受けた連続起業家の三橋克仁氏、高齢者に関心を持ちつつAIやブロックチェーンなど先端領域を専門とする早川裕太氏が創業。日本において「AgeTech」を推進しつつ、信託法に精通した弁護士も所属するなど、信託分野をはじめとする専門性の高い企業となっているとしている。

AgeTechとは、高齢者を支援する様々なテクノロジーの総称。IT先進国であるアメリカでも高齢化が問題となり、ヘルスケア産業の進展と共に注目を浴びている。

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認知症リモート診断の米スタートアップがみずほ情報総研と提携、高齢者ケアを年内にも事業展開へ

高齢者の認知能力の低下を評価、分析するテクノロジーを開発してきたMyndYouみずほ情報総研と提携して日本国内で同社のプロダクトのテストを開始する。テストが成功すればみずほ情報総研は年内にも全国的なサービスとして事業化することを計画している。

MyndYouのテクノロジーは在宅のまま高齢者の認知能力をの変化は評価し、必要なリモートケアを提供できるという。実験は5月末までに日本の5都市でスタートする。

MyndYouはダウンロードして利用できるアプリを用意している。このアプリは高齢者の行動を受動的にモニターし、動作や発言から脳の機能の変調を発見できる。同社の共同創業者でCEOのRuth Poliakine氏はこう説明している。

現在我々が提供しているのは脳機能の異変全般を検知するテクノロジーだが、特定の異状を分析できるところまで行っていない。異状を詳しく特定し、認知能力の低下を早期発見できるよう実験と研究を重ねていきたい。当初、高齢者をサービスの対象とする計画だ。

MyndYouではアプリの利用に習熟した10人の専門セラピストを用意しており、必要と認められた場合にはヘルスケアを提供できる。同社によれば数百人がMyndYouのテクノロジーの実験的利用に参加しているという。

みずほ情報総研との提携により、MyndYouは社会の高齢化が進展し認知症対策に強いニーズを持つ市場での大規模な実験が可能となった。

最近の調査によれば、日本では世帯を支える働き手の4人に1人が2040年まで75歳以上となると予想されており、認知症も増加中だ。みずほ情報総研事業戦略部の森尾仁部長は声明で次のように述べている。

日本国内における認知症患者数は462万人にのぼり、2025年には約700万人まで増加、うち65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症に該当すると見込まれている。これは医療現場だけでなく社会全体の重要課題とされている。また認知症は進行してから受診する人が多く、早期診断・早期対応が求められるが、高齢単身世帯が増加し他者との接点が少なくなることにより、認知機能の変化を早期に発見する機会が減少している。

MyndYouのサービス料金はユースケースに応じて10ドルから50ドル程度が考えられている。みずほ情報総研との提携に先立って、Amplifyher Ventures、Female Founders Fund、エンジェル投資家のHoward L. Morganらが参加してMyndYouのシード・ラウンドが拡大されたと報じられている。現在までに同社は210万ドルの資金を調達している。CEOのPoliakine氏は次のように述べている。

MyndYouはイスラエルで開発された独自技術を活用しニューヨークに本拠を置くスタートアップだ。我々は日本のみずほ情報総研と提携し、MyndYouのメンタルヘルスケアを広く提供していく。日本の高齢者はAIを利用したデータ分析によるカスタマイズされたリモートケアにより、認知症の再発、悪化の防止だけでなく、自立した生活を長く続けることを助けるテクノロジーへのアクセスが広く可能になる。

画像:WitthayaP /Shutterstock

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【Japan編集部追記】みずほ情報総研のプレスリリースはこちら

(翻訳:滑川海彦@Facebook