魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

スマートルアーは4月23日、魚がルアーを認識し食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し、アプリを通じて釣り人に提供するIoTルアー「smartLure Model Zero」を開発したと発表した。釣り人は従来見ることのできなかった水中の情報を基に、釣果を高める手がかりを得られるとしている。

またクラウドファンディングサイトKickstarter上において、日本・米国向けに日本時間4月26日正午より予約販売を行う予定。

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

smartLure Model Zeroは、一般的なルアー同様に泳がせるだけで、着水の瞬間から離水するまでの間、魚の生息環境である水中の温度や明るさ、ルアーの動き、水深トレースをデータ化するセンサーモジュールを搭載。これらデータは、ユーザーが要求したタイミングでアプリに転送され、アプリ上で位置情報・日時情報・気象条件・月齢や潮汐など魚の行動など釣果に影響する情報と統合されるという。

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

smartLure Model Zeroの内部構造

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

smartLure Model Zeroに搭載するセンサーモジュールの試作品(手前側)と、これまでにスマートルアーが開発してきたセンサーモジュール

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

開発中のアプリのデザインラフイメージ

スマートルアーは、魚がルアーに食いつくまでの過程のデータを世界中の釣り人から収集してビッグデータ化し、環境条件のほか、ルアーのタイプやカラー、動きと釣果との関連性など釣りの秘密を解き明かすことを目指しているとした。

魚が食いつくまでのルアーの動きや水中環境をデータ化し「釣りの秘密」を探るIoTルアーが登場

魚が釣れた時のデータをグラフ化したもの(一部画像を加工している)

また、将来同社IoTルアーが普及した場合には、身近にありながら見過ごされてきた水辺環境の変化や、魚の生息数の把握につながるデータが得られるという。これらデータは、自然状態での魚の行動を知る強力な手がかりになる可能性があり、魚類研究者からも強い関心が寄せられているそうだ。

釣りは自然環境に依存した営みであり、スマートルアーは、IoTルアーを通じて得られた知見を、水圏の環境保全や、魚の生息数の管理などにつなげていきたいと考えているという。

Kickstarterでの日米同時予約販売については、世界最大の釣り市場である米国で釣果データを確保し、釣果情報をいち早く、大量に集めて、プラットフォーマーとしての成功につなげる狙いがあるという。

今後は、量産に向けたセンサーモジュールの再設計や耐久性の試験、認証の取得やアプリ・サーバーの開発と並行して、ユーザーテストを進める。センサーモジュールの量産には数千万円の投資を伴うODM(Original Design Manufacturing)契約が必須なため、スマートルアーではクラウドファンディングとは別に投資家を募り、資金調達を行う予定としている。

スマートルアーは、代表取締役の岡村雄樹氏が冬の札幌で「4か月間、1匹も魚が釣れない」という悲しい釣り体験をしたことをきっかけに2017年3月に設立したスタートアップ。

「魚はどのように世界を見ているのか」「釣りを科学的に捉えたらどのようなことがわかるのか」という疑問が出発点という。

釣りは、先進諸国だけでも市場規模7兆円というレジャーであり、世界の釣り人が共通して直面する課題をテクノロジーで解決することを目指しているとした。

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カテゴリー:IoT
タグ:IoT(用語)スマートルアー(企業)釣り / フィッシング(用語)日本(国・地域)

遠隔地でも仮想空間でも釣りができる小型ロボット「TeleAngler」、ロボティクスのRe-alが2021年秋販売へ

TeleAnglerは2台利用。遠隔地にある1台を手元の1台で操作

近い将来、自宅から遠く離れた海や川にいる魚を釣ることができるようになるかもしれない。ロボティクススタートアップのRe-alは2021年秋に、小型の遠隔 / 仮想釣りロボット「TeleAngler(テレアングラー)」を販売する予定だ。現在も開発が進められているこのTeleAnglerには、リアルハプティクス(力触覚技術)を応用している。

リアルハプティクスは人間が生み出す力の加減といった「力触覚」をロボットで再現できる技術だ。遠隔地にある対象物の触覚情報などをデジタルデータ化し、それを遠隔地側と操作側の双方向にリアルタイムで伝送する。

TeleAnglerの場合、このリアルハプティクスにより遠隔地で釣り針にかかった魚の動きが手元にあるTeleAnglerを通してユーザーに伝わる。さらに魚との駆け引きに合わせて竿を上げたり、引いたりするといったユーザーの複雑な動きを、遠隔地にあるTeleAnglerが再現。これにより、まるで現地にいるかのように釣りを楽しむことができる。さらに身体が不自由な人や高齢者といった釣り場に足を運ぶことが難しい人でも、気軽に釣りができるようになる。

遠隔 / 仮想釣りロボットTeleAngler

ユーザーはTeleAnglerの取っ手部分を握って操作する

TeleAnglerの本体は横幅が約30cm、奥行きが約25cmとなっている。竿を取り付ける取っ手部分を含めた高さは約30cm。これまでRe-alが開発してきた釣りロボットよりも小型化や低コスト化を果たしている。TeleAnglerによる遠隔釣りは、小ぶりな淡水魚(300~600グラム程度)を対象としている。

直近では、Re-alが事務所を置く神奈川県川崎市から東京都奥多摩町で遠隔釣りの実証実験を行った。TeleAnglerの電源は釣り堀の建屋から延長コードを伸ばして共有し、現地の映像と音声を伝送する装置は市販のものを用いた。

実証実験の遠隔釣りは、TeleAnglerの取っ手の先に竿を固定し、スタッフが餌を付けて釣り堀に糸を垂らしてスタート。有線の光ケーブルで繋いだインターネット介して、もう1台のTeleAnglerからモニター越しにマスを釣り上げることができた。なお、釣り上げた魚をスタッフがその都度外すようにしている。

多くの人が気になるのは、遠隔釣りが実用レベルで遊べるかということだろう。Re-alの新明脩平代表は「日本国内であれば、TeleAnglerを使った遠隔釣りを問題なく遊べるはずです。我々はこれまで東京都から大分県までの約1000km離れた距離で、魚を釣った実績があります。その距離でも操作する人と魚がかかった反応のラグは、人間が感じ取ることのほうが難しいレベルです」と説明した。デジタルデータ化された力触覚の情報量は、映像よりも小さいため、映像より先に手元へ力が伝わるほどだという。

仮想空間で魚の引きを再現

さらにRe-alは、TeleAnglerによる仮想釣りの実装も進めている。Re-alはすでに過去に人が魚を釣った時のデータを保存し、TeleAnglerで再生するシステムの開発が進んでいる。完成すれば仮想空間で24時間365日、釣りが楽しめるようになる。

Re-alは、TeleAnglerをゲームセンターなどの施設に販売していく。本体価格は現段階で、50~60万円ほどを想定している。今後、実証実験を踏まえて価格などを調整していくが、ゲームセンターなどでは1プレイ500~600円ほどで約15分間遊べるイメージだという。

また将来的にRe-alは、TeleAnglerを家庭用ゲーム機としてアップデートし、自宅で遠隔釣りも仮想釣りもできるようにしていく考えだ。さらに新明氏は「遠隔地で釣った魚を、ユーザーに宅配するサービスも視野に入れて動いています」と話した。

リアルハプティクスによるロボティックス領域の展開

TeleAnglerに応用されているリアルハプティクスを開発したのは、慶応義塾大学の大西公平教授で、その特許は同大学が所持している。

リアルハプティクスは現状、産業界に一般提供されている技術ではない。慶應義塾大学ハプティクス研究センターは、リアルハプティクスの実用化や市場流通を念頭に、リアルハプティクス技術協議会を設立した。同センターでは共同研究企業を募集し、この中で民間企業と新たなビジネスの創出などに向けたリアルハプティクスの研究を進めている。Re-alも同協会の会員だ。

また、リアルハプティクスをロボットに実装するために必要なキーデバイスとなるICチップ「ABC-CORE」は、同大学発のスタートアップとなるモーションリブが製品化し、リアルハプティクス技術協議会の加盟企業に先行提供している。今後、リアルハプティクスに関する共同研究が進んでいけば、ロボティクス領域は大きく発展していくはずだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Re-alTeleAnglerリアルハプティクス触覚技術日本釣り