Appleが旧機種の性能抑制をめぐる集団訴訟で和解し約540億円の支払いに合意

米国時間3月2日、Appleは同社が旧機種の性能を意図的に低下させ、顧客が新機種を買ったり新しいバッテリーに交換したりするよう誘導したと主張する裁判の結果、和解金5億ドル(約540億円)を支払うことに合意した。

集団訴訟の内容は米国時間2月28日に開示され、Appleが端末1台あたり25ドル(約2700円)を消費者に支払うよう要求していた。Reuters(ロイター通信)が伝えた

和解には判事の承認が必要であり、カリフォルニア州サンノゼで起こされた本訴訟を裁いたEdward Davila(エドワード・ダビラ)連邦地方判事が担当する。

消費者にとって、25ドル(約2700円)の支払いは少々安く感じるかもしれない。新しいiPhoneは(低価格機で)649~849ドル(約7万〜9万2000円)程度するからだ。総支払額は訴訟の参加人数によって変わるが、和解の条件によるとAppleは少なくとも3億1000万ドル(約335億1000万円)以上支払うことになっている。

Appleは本件について不正行為を認めておらず、裁判に関わる費用と手間を避けるために合意しただけだと語っている。

米国でiOS 10.2.1 以降を搭載したiPhone 6、6 Plus、6s、6s Plus、あるいはSEを所有する人は、誰でも和解の対象になる。2017年12月21日以前にiOS 11.2以降を搭載したiPhone 7および7 Plusを持っていたユーザーも対象になる。

当時一部のApple利用者が、Appleのソフトウェアアップデートをインストールしてから性能が低下したと言い、彼らはAppleのソフトウェアアップデートが意図的に旧機種の性能を低下させ、不必要な新機種へのアップグレードやバッテリーの交換を消費者に促したと主張していた。

Appleの弁護団は、問題の原因は主に利用頻度の高さ、温度変化などによるものであり、同社の技術者はできる限り早く問題に対処しようと努力したと語った。

2020年2月、Appleは同じ問題でフランス政府から罰金2740万ドル(約30億円)を課せられた

当時、TechCrunchは次のように伝えた。

数年前、AppleはiOSのアップデート(10.2.1と11.2)をリリースし、その際、古い機種向けにある新機能を導入した。バッテリーが古い場合に、ピーク時の電力消費に対応できなくなることを恐れて、iOSがピーク時の性能を抑えるというものだ。その結果、iPhoneがピーク時に突然シャットダウンすることがあった。

この機能は技術的には妥当だったが、Appleは一部のデバイスで性能を抑えることをユーザーに知らせなかった。その後、Appleは謝罪して「Battery Health」と呼ばれる新しいソフトウェア機能を導入した。iPhoneのバッテリー最大容量を調べ、そのiPhoneがピーク時の性能を発揮できるかどうかを教えてくれるものだった。

そして、古い機種の性能を抑える機能は問題になった。たとえば、ゲームをしているとiPhoneが遅くなることに気づいたユーザーがたくさん現れた。しかし彼らは、バッテリーを交換すればそれが直ることを知らなかった。所有しているiPhoneが十分使えるのに、新しい機種を買ったユーザーもいた。

3月2日、Appleの株価は復調する市場の中で9%以上上昇した。

画像クレジット:Anthony Kwan/Bloomberg / Getty Images(画像は加工済み)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Tinder、年齢差別集団訴訟で和解に合意

Tinderは総額2300万ドルの年齢差別集団訴訟で和解に合意したことを最近発表した。本訴訟は昨年4月にカリフォルニア州で起こされたもので、Tinderが30歳以上のメンバーに2倍の利用料金を請求していたことを訴えていた。

原告団は2015年3月2日から予備承認日時までの間にTinder PlusまたはTinder Goldを契約した当時29歳以上の人全員からなる、と本集団訴訟の和解事前承認申立て許可命令の提案書に書かれている。

「本和解において、被告側は普遍的参加(集団全員が自動的に利益を受ける)を含む多面的な和解構成に合意した」と合意書に書かれている。「正当な申し出を有効期間内に提出した原告には、現金または現金相当の追加支払い、および被告側の差別が疑われる行為を実質的に中止することに合意する」

約23万人のメンバーを代表する本訴訟によって、原告は一人当たり現金25ドル、または25個のSuper Like、またはTinder PlusもしくはTinder Goldの購読1ヶ月分を受け取ることができる。和解の一環としてTinderは、原告団全メンバーに対して総額1150万ドル、および申立てを提出した原告メンバーに対して総額575万ドルの現金または現金相当物(Super Likeなど)を配布しなければならない。

さらにTinderは、(カリフォルニア州内のメンバーに対してのみ)年齢に応じて異なる料金を課金することを中止することにも合意した。合意書によるとこれには575万ドル以上の価値がある。これで全体では2300万ドルの和解となった。

現在Tinderに問い合わせ中なので情報が入り次第本稿を更新する予定。合意書は以下で読むことができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

生鮮食品配達のBlue Apron、IPO後の株価下落で集団訴訟の恐れ

Blue Apronには息をつく暇もないようだ。食品通販サービスを提供する同社の株価は6月下旬のIPO時点から半分近く下がり、訴訟問題にまで発展しようとしている。

現在複数の弁護士事務所が集団訴訟の準備を進めており、彼らはBlue Apronが株価に影響を及ぼす重要な情報を開示していなかったと主張しているのだ。

具体的な内容としては、顧客維持、配送遅延、広告費の削減が焦点となっている。現地の法律事務所Bragar Eagel and Squireの主張は次の通りだ。「1)Blue Apronは2017年Q2に広告費を大幅に削減し、将来的な売上・利益をないがしろにした 2)Blue Apronは食材セットまたは一部食材の配送遅延で顧客維持に難航していた 3)ニュージャージー州リンデンに新しく設立された工場の稼働状況に問題があり2017年Q2にも配送遅延が発生していた」

Bottini & Bottiniという別の法律事務所も同様の内容で訴訟手続きを行った。こちらの原告はRustem Nurlybayevとなっており、以前Alibabaを訴えたのと同じチームのようだ

先述の事務所以外にも同じ内容の申し立てをしているところがいくつかあり、Googleで検索するとかなり数のウェブサイトがヒットする

Blue Apronに近い情報筋によれば、まだ原告を募集しているものもあるという。

先述の問題に加え、Blue Apronが上場する数週間前にWhole Foodsの買収を発表したAmazonの存在も、株価の急落に大きく関係していると言われている。買収発表後、多くのメディアがAmazonの食品通販サービスへの参入可能性について報じていた。そういう意味では、IPO時に株を購入した投資家は、少なくともAmazonの動きによる株価下落の可能性については事前に把握できていた。

業績の思わしくない企業が株主から訴えられるというのは珍しいわけではない。英語では”stock-drop challenges(=株価下落に伴う困難)”という呼び名がついているくらいだ。2012年に上場したFacebookも、IPO後に連日株価が下がったことを背景に訴訟問題を抱えていた(結局その後同社の株価は爆発的に上昇した)。最近で言えば、Snapの株主も同社がSnapchatのユーザー数を偽って公表していたと訴えていた。ロサンゼルス連邦地方裁判所に訴状が提出された本件では、Snapがユーザー数を偽ったことで株価が下落したという主張のもと、賠償金とクラスアクションの認定が求められている。

「このように、株価が下がるとすぐに弁護士が出てくる」とIPO ETFを運用しているRenaissance Capital社長のKathleen Smithは語る。

さらにSmithは、このような問題を「株主による抵抗」と呼び、通常和解に至るケースが多いと話す。原告が勝訴するためには、企業が重要な情報を偽り、かつ原告がそれを信用して株式を取得したと証明しなければならず、実証が難しいことがその理由だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake