食品・日用品チェーンストアEC「垂直立ち上げ」プラットフォームStailerの10Xが15億円調達、2年で流通総額10倍以上を目指す

食品・日用品チェーンストアEC「垂直立ち上げ」プラットフォーム「Stailer」の10Xが15億円調達、今後2年で流通総額10倍以上を目指す

生鮮食品・日用品など多店舗運営(チェーンストア)小売事業者向けに「垂直立ち上げ」によるEC化を行うプラットフォーム「Stailer」(ステイラー)を展開する10X(テンエックス)は7月28日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約15億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のDCMベンチャーズとANRI。これにより累計調達額は約21億円となった。

10Xは、創業者で取締役CEOの矢本真丈氏が、メルカリ在籍中の同僚だった共同創業者・取締役CTOの石川洋資氏を誘って2017年6月に設立した。矢本氏は東日本大震災で避難生活を送っていたときに「火を入れた料理」に感動したことと、育休中に家族の食事を作ってきた体験から、献立アプリ「タベリー」事業を立ち上げ、そこに食材を注文できる機能を付けたことをきっかけに、ネットスーパー「タベクル」を立ち上げた。これらの事業は今は終了しているが、その経験がStailerの基礎となった。

Stailerは、スーパーマーケットやドラッグストアなどを多店舗展開を行う小売・流通事業者を対象に、「ECやドライブスルーなどの顧客体験の実現と、そのサプライチェーンの構築」を支援するプラットフォーム。エンドユーザー向けのモバイルアプリ、店舗向けのピック&パック、在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティング・システム、分析ツールなどをフルセットで提供する。2020年5月にサービスを開始しており、すでにイトーヨーカドーをはじめ、ライフ、薬王堂などが利用している。Stailerで提供されたネットスーパーアプリの利用者翌月継続率は約70%。1カ月の平均購入額(ARPU)は約2万円と高い定着度を見せている。

食品のEC化率が物販全体の中でも低く、しかも急成長する欧米や中国に比べて立ち遅れている日本市場を、10Xは「大きな成長ポテンシャルがある」とポジティブにとらえている。今回の資金調達で、ソフトウェアエンジニア、事業開発、コーポレートなどの幅広い職種で人材を募集し、組織拡大、チェーンストアECの物流機能の拡張、顧客獲得に投資を行い、Stailerの展開を加速するとのこと。さらに、「事業シナジーの高い企業やソフトウェアプロダクト開発に強みのある企業」への出資やM&Aも積極的に検討し、「生鮮食品や日用品をオンラインで購入する体験を当たり前にするべく、Stailerプラットフォームの流通総額について、今後2年で10倍以上を目指します」と話している。

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小売業のDXを推進する10Xがスーパーのライフと協業しライフ初となるネットスーパーアプリの提供開始

2月19日、オンライン記者会見では「ライフネットスーパーアプリ」のデモを披露する場面もあった

2月19日のオンライン記者会見では「ライフネットスーパーアプリ」のデモを披露する場面もあった

小売業のDXがまた一歩前進する。ネットスーパー立ち上げのプラットフォームを提供する10X(テンエックス)は3月8日、ライフコーポレーションにおけるネットスーパーのモバイルアプリ版をリリースした。既存のブラウザ版より操作性を向上させたのはもちろん、画面上の一覧性を高めるなど、UXを向上させた。ライフはEC事業に引き続き力を入れ、2021年度に売り上げ100億円を目指す。

10Xはネットスーパーなどの垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を通じ、アプリを作り上げた。ステイラーは、ネットスーパーに関わる店舗や客、配送業者に必要なシステムを一貫して提供。初期費用は不要で、レベニューシェアのモデルをとっている。2020年にはイトーヨーカ堂のネットスーパーアプリも稼働させている。

Stailerはそれぞれに必要なシステムを一括提供

Stailerはそれぞれに必要なシステムを一括提供

ライフは、首都圏と近畿圏で278店舗を展開するスーパーマーケット。「ライフネットスーパー」は2011年から始めており、61店舗(21年2月時点)でサービスを利用できる。コロナ禍でネットスーパーの需要は伸びているという。

質疑応答に応える矢本代表(左)と加藤室長

オンライン記者会見のようす。アプリ提供の背景や特徴が語られた

10Xとライフは2月19日、今回の「ライフネットスーパーアプリ」運用に先駆け、オンライン記者会見を開いた。互いを協業相手に選んだ理由について、10Xの矢本真丈代表は「店舗とライフネットスーパーで取り扱う商品の乖離(かいり)が少ないことは、非常に価値がある」と語った。ライフの加藤崇CX共創推進室室長は「ネットスーパーの仕組みをよくわかっている。アプリ機能としての拡張性や柔軟性、迅速性もある」とした。

新たにモバイルアプリ版を提供することには理由がある。ライフのネットスーパーは業界内でも比較的早い段階にスタートした。ただ10年前の仕組みのまま現在に至っている。「スマホが普及したいま、次の世界に対応できないのではないかという大きな課題感があった」(加藤室長)。時代の潮流に合わせ、スマホベースのアプリ版を提供することで、客との新たな接点の創出に期待をかける。

ライフネットスーパーアプリでは、商品の探しやすさやストレスフリーのローディングなどを改善し、UXがボトルネックとなっていた若年層への訴求を強めた。「首都圏や近畿圏で需要が急増しているライフネットスーパーの根本的な使いやすさの刷新を狙った」(矢本代表)という。

一覧性などを高めUXを向上

一覧性などを高めUXを向上

アプリに表示される商品数は、既存のライフネットスーパーと比べて3倍に増やしている。スーパーに入店したときと同じように、目の前にずらっと商品が並んでいるカタチに近づけた。

アプリ画面の上部には、広告の品やライフの独自ブランド、野菜売り場、肉売り場など、客のニーズに合わせたタブを配置している。矢本代表は「まるで店舗を実際に回っているように商品を探せることが特徴だ」と説明した。

また、いつも買う商品などはお気に入り登録として「マイリスト」に追加できる。購入履歴もさかのぼることができ、過去に買った商品を一覧で表示して、現在買えるものは強調表示するなど、使いやすさにはこだわった。

矢本代表は「他社の事例でも、アプリ化を導入すれば購入頻度や利用頻度、起動回数にもポジティブな影響がでている。店舗から1.5キロメートル圏内におけるシェアの最大化に寄与できる」と自信をみせた。

今後はライフネットスーパーアプリ上で企画を打つなど磨きをかけていく方向だ。「コロナ禍の影響でネットスーパーの需要は伸びたが、来年にはまた世界が変わっているかもしれない。今後も協力し合い、ネットスーパーが我われの大きな武器になるようにしていきたい」と加藤室長は意気込む。

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