リモートワークとクラウドの大量導入で1Passwordが約706億円の特大資金獲得、評価額約7740億円に

パスワード管理プラットフォームの1Passwordが6億2000万ドル(約705億7000万円)という巨額のシリーズCを終え、68億ドル(約7739億5000万円)の評価額となった。

この投資をリードしたのはIconiq Growthで、Tiger GlobalやLightspeed Venture Partners、Backbone Angels、そして同社の2億ドル(約227億6000万円)のシリーズA1億ドル(約113億8000万円)のシリーズBをリードしたAccelが参加した。その他の投資家としてCrowdStrikeのCEOであるGeorge Kurtz(ジョージ・カーツ)氏やGeneral MotorsのCEOであるMary Barry(メアリー・バリー)氏、そしてLinkedInの会長Jeff Weiner(ジェフ・ワイナー)氏らも参加した。また、このラウンドでは個人投資家のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏やRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr.)氏、そしてJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏らからの投資もあった。

この特大のラウンドは、1Passwordのこの1年間の目覚ましい成長の結果によるものだ。同社はTechCrunchに、2021年7月のシリーズB調達以来、有料ビジネス顧客ベースが9万人から10万人以上に増え、Datadog、Intercom、Snowflakeなどの大企業加入者を加え、社内従業員数を475人から570人に増えたと述べている。この背景には、リモートワークやハイブリッドワークの継続、クラウドアプリの急速な普及、仕事による燃え尽き症候群の加速という3つの要因があると同社はいう。

同社によると、後者の点は特に懸念すべきサイバーセキュリティの脅威となりつつあるという。オフィスワーカーの80%、セキュリティ専門家の84%が、パンデミックの結果、燃え尽きたと感じており、12%が結果的に職場のすべてのものに同じパスワードまたはほんの数種のパスワードを使っていることが判明しているという。

「ストレスや燃え尽き症候群があると、2つのことが起こることがわかっています。まず、人は簡単な方法を探します。過労になると、セキュリティを後回しにするようになるのです。ストレスと燃え尽き症候群のもう1つの副作用は、変化したいという願望であり、それは大量辞職が起こります。IT部門が認識していないアプリやサービスを持ち出すことになるので、セキュリティの問題につながります」と1PasswordのCEOであるJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏はいう。

1Passwordは、今回調達した資金を継続的な成長のために使用する。同社は、エンジニアリングおよびカスタマーサポートチームを3倍に増やし、サインインの成功と失敗を可視化する、ビジネスに焦点を当てたイベントAPI機能を構築し、さらに買収資金を調達する予定だという。

「戦略的買収を検討しています」とシャイナー氏はいう。「私たちは2021年にSecret Hubを買収しましたが、今後も買収を検討し、それらが私たちのミッションと目標の達成にどのように役立つかを検討していきます」。

最終的に、シリーズCの資金調達ラウンドで1Passwordにかなりの資金が提供されたが、Shiner氏は同社には「まだ」イグジットの計画はないという。

シャイナー氏にとって「資金は、これから大きなことをやろうとするときの安心材料」になるという。

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画像クレジット:Boris Zhitkov/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

1Passwordがリンクでパスワードを安全に共有できる新機能「Psst!」発表

職場や家庭において、パスワードの共有は普通に行われていることだが、それを安全に行うのは難しい。1Password(ワンパスワード)は、この問題を解決するために、アカウントを持っていない人とも安全な方法でログイン情報を共有できる新機能の提供を発表した。これは、Password Secure Sharing Tool(パスワード安全共有ツール)を略して「Psst!」と呼ばれるもので、ユーザーから最も要望の多かった機能の1つだという。

同社の調査によると、多くの企業で従業員による認証情報の再利用が行われているという。そのうち約36%の人が、電子メール、チャットアプリ、スプレッドシート、文書、テキストなどの安全でない方法を介して、他の従業員や顧客とログイン情報を共有していることを認めている。また別の調査では、ほとんどの家庭では家族の間でパスワードを共有しており、その場合もパスワードを書き留めたり、メッセージで送信するなど、安全ではない方法で伝えていることが明らかになったという。

Psst!は、1Passwordのアカウントを持っていない人でもアクセスできる情報のリンクを生成することで、誰とでも認証情報を共有することができる。リンクの有効期間は、1時間から30日の間で選択でき、その後は自動的に期限切れとなる。また、リンクを知っている人全員と認証情報を共有するか、特定の人のみと共有するかを選択することもできる。後者を選択した場合、このサービスでは、アクセスを許可する前に、受信者のメールアドレスを使って本人確認が行われる。

この新機能とともに、1Passwordでは獲得した企業顧客が10万社を超え、従業員数が500名に増えたことも発表された。1PasswordのJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)CEOは、声明の中で次のように述べている。

パスワードやその他の認証情報を社外や家族で共有できるようにすることは、最も要望の多かった機能の1つです。1Passwordのお客様だけでなく、すべての人がオンラインで安全に過ごせるようにするために、本日Psst!を発表することができ、私は大変うれしく思います。当社の企業顧客が10万社を超えたことは、企業がパスワードやその他の機密情報をオンラインで保護する必要性を理解していることを明確に示しています。

画像クレジット:1Password

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したMariella Moonは、Engadgetの編集委員。

画像クレジット:1Password

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(文:Mariella Moon、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1Passwordがプライバシー保護のためのログイン用電子メール生成機能を導入

iPhoneとMacのユーザーは2019年以来、新しいウェブサイトやサービス、アプリにアクセスするとき「Appleでサインイン」でランダムな電子メールアドレスを作り出すことでプライバシーを保護できるようになっている。大きな影響を及ぼすことができる小さな機能の1つであり、似たような機能が1Password(ワンパスワード)にも導入される。

同社はMasked Emailと呼ばれる機能を導入するために、電子メールホストFastmail(ファストメール)と提携した。Appleのものと同様、Masked Emailではログインのためにユニークな電子メールアドレスを生成することができる。1Passwordアプリ内で直接エイリアスを生成でき、つまりパスワードマネジャーが利用できるあらゆるプラットフォーム上でこのツールにアクセスできる。

あなたの電子メールを隠す能力は、どれだけ誇張してもし過ぎることはないあなたのオンラインプライバシー保護をサポートできる。プライバシー侵害の大半はフィッシングの電子メールから始まる。まず第一にそうしたメッセージを受け取らなければ、疑わしいリンクをクリックしたり、個人情報を不注意に共有したりというのはなくなるだろう。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nariko Mizoguchi

企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

左からDave Teare(デイブ・ティアー)氏、Jeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏、Sara Teare(サラ・ティアー)氏。

トロントを拠点とする1Password(ワンパスワード)は、高収益な上に財務状況を公開できるほど透明性が高いという稀有な企業の1つである。

そして2021年7月終わりに、同社はシリーズBラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を調達し、同社の評価額を20億ドル(約2180億円)に倍増させたことを発表した。

かつては自力で運営していた1Passwordが2019年、初めて外部資本を調達したことはまだ記憶に新しい。Accel(アクセル)が主導した2億ドル(約220億円)のシリーズAは、同ベンチャー企業の35年の歴史の中で、単一の投資としては最大規模のものだった。2005年に設立された1Passwordは当時すでに、スタートアップとは言い難い存在だったのだが。

Accelが再度主導した今回のラウンドには、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)、Kim Jackson(キム・ジャクソン)氏のSkip Capital(スキップ・キャピタル)の他、Shopify(ショッピファイ)のCEOであるTobias Lütke(トバイアス・トビ・ルーク)氏、Shopifyの社長であるHarley Finkelstein(ハーレー・フィンケルシュタイン)氏、Slack(スラック)の共同創業者兼CEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Squarespace(スクエアスペース)の創業者兼CEOであるAnthony Caselena(アンソニー・カセレナ)氏、Atlassian(アトラシアン)の共同CEOであるMike Cannon-Brookes(マイク・キャノン=ブルークス)氏とScott Farquhar(スコット・ファーカー)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同創業者兼会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏などが名を連ねる。

CEOのJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏によると、1Passwordは設立当初から利益を上げており、ARR(年間経常収益)は最近1億2000万ドル(約132億円)に達したという。Under Armour(アンダーアーマー)、Shopify、PGA、IBM、GitLab(ギットラブ)、Slack(スラック)、PagerDuty(ページャーデューティー)といった多数のビッグネームを含む9万以上の企業が、同社のSaaSプラットフォームを利用している。2019年11月の調達時の顧客5万社から、ここまでの増加である。

2組の創業者夫妻であるDave Teare(デイブ・ティアー)氏とSara Teare(サラ・ティアー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏とNatalia Karimov(ナタリア・カリモフ)氏は、ウェブサイト構築の別の会社を成長させていく中で、パスワード管理に関する苦労に着目したことから1Passwordのアイデアを思いついた。

当初は消費者のみを対象としていたものの、その後パスワード管理サービスを企業にも提供するようになる。すでに成功を手にしていた同社は、これによりさらにレベルアップすることになる。

そして同社に目をつけたのが、ブートストラップ・ビジネスや収益性の高い企業に投資してきた実績のあるAccelだ。シリーズAラウンド、BラウンドともにAccelから投資の打診がきたのである。

AccelのパートナーであるArun Mathew(アラン・マシュー)氏は両ラウンドで1Passwordへの投資を推進しており「1Passwordは非常にユニークな企業プロフィールを持っています。このようなファンダメンタルズと指標を持ちながら、市場の追い風に乗っている企業を見るというのは本当に珍しいことです。今回のラウンドによって会社全体がこの市場を勝ち抜くためにさらにアグレッシブになれることを期待しています」と話している。

前回の増資以来1Passwordは進化し続けている。決して栄光に甘んじないという同社の精神を体現しているのだとシャイナー氏はいう。同社は174人いた従業員数を475人にまで増やしているが、その中には以前はなかったGo-to-Marketチームの結成も含まれている。

ここ数カ月の間に1Passwordはビジネスサービスを拡大しており、4月にはSecrets Automationを、さらに最近では「重要な」ビジネス情報を保護することを目的としたエンタープライズ向けサービスである1Password Eventsを発表。また、Linux Desktop Applicationや、SlackやRipplingとの統合も始動している。

画像クレジット:1Password

シャイナー氏によると、Secrets Automationにより企業のインフラの秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護することができるという。

「パスワード管理は通常、人間と機械の間で行われます。そのためこれは私たちにとっては大きな勝利であり、今後はより広範なインフラに拡大することができます」と同氏。オランダのSecretHub(シークレットハブ)を買収したことで、Secrets Automationの立ち上げが実現したのである。

サイバーセキュリティ分野におけるスタートアップの数が、近年増え続けていることから、同社は新たな資本の一部をさらなる買収に充てようと計画している。

Accelのマシュー氏は「バランスシートが強化されたことで、想定内のリスクを取ることができるようになり、潜在的なM&Aや、機会があればさらに積極的な投資を行うことができるようになりました。この会社は約16年もの間、ビジネスにとっても消費者にとっても最高の秘宝の1つであり続けていると言えます」と話している。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックとそれにともなう在宅勤務の増加により、1Passwordのサービスに対する需要は高まる一方である。実際、1Passwordはビジネスアカウントごとに、各従業員が自宅で使用するためのファミリーアカウントを無料で提供しているという。

「仕事と家庭が混合するようになったため、これはユーザーにとって大きなメリットになるでしょう」とシャイナー氏。

この境界線の曖昧さこそが、Accelが1Passwordにさらなる可能性を見出している理由の1つである。AccelのパートナーであるEthan Choi(イーサン・チョイ)氏によると、同社のポートフォリオには24件のアクティブなセキュリティ投資があるという。

「今回の(1Passwordに対する)強化は、これが今日のセキュリティの最も重要な分野の1つであるという我々の信念を体現するものです。CIOやCISOは、従業員が生産性を高め、必要なアプリケーションにアクセスできるよう望んでいますが、同時にそれらが安全であることが大前提です」とチョイ氏。

1Passwordは16年前に設立されたにもかかわらず、まだ「表面をなぞっているに過ぎない」とシャイナー氏は考えている。

「我々の目前に広がっている莫大なチャンスに胸を躍らせています。急いで前進していかなければなりません」と同氏は話す。

多くの経験豊富な技術者の知見を得られたことも、より多くの資金を調達できた要因だとシャイナー氏はいう。

「Accelとはすでにすばらしい関係性を築いていますが、さらに多くの人材を迎え入れ、それによってもたらされる経験はこの上なく貴重なものです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:1Password資金調達トロントAccel

画像クレジット:1Password

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

1Passwordが企業秘密管理のSecretHubを買収、法人向け総合サービス展開へ

LastPassBitWardenと競合するパスワード管理サービスの1Passwordは米国時間4月13日、パスワード管理を超えてインフラ秘密管理の分野に参入すると発表した。このために1Passwordは秘密管理サービスのSecretHubを買収し、新たに1Password Secrets Automationサービスを立ち上げる。

1Passwordは買収価格を明らかにしなかった。CrunchBaseによると、オランダ拠点のSecretHubは今日まで機関投資家から資金を調達したことはない。

1Passwordのような会社にとって、企業のクレデンシャルやAPIトークン、個人ユーザーの鍵や認証、複雑になるばかりのインフラサービスなどを管理する法人向けの分野に進出するのは自然な流れのようだ。1Passwordと新たなSecrets Automationサービスの組み合わせにより、企業は従業員のパスワード管理からインフラの秘密の扱いまでをカバーする1つのツールを使うことができる。1Passwordは現在、世界で8万超の企業に使用されていて、こうした企業の多くはSecrets Automationサービスの潜在的なユーザーでもある。

「企業はインフラの秘密を、従業員のパスワード以上でなくてもそれと同じくらい守る必要があります」と1PasswordのCEOであるJeff Shiner(ジェフ・シナー)氏は述べた。「1PasswordとSecrets Automationで、事業の秘密を守り、管理し、統合する信頼できる唯一の情報源となります。当社は人と機械の秘密の両方を意義深い、そして使いやすい方法で扱う初の企業です」。

買収と新たなサービスに加え、1PasswordはGitHubとの提携も発表した。「クロスプラットフォームのソリューションはデベロッパーやセキュリティチームの負担を軽くすることから、当社は1Passwordと提携します」とGitHubのエンジニアリング・開発担当の副社長、Dana Lawson(ダナ・ローソン)氏は述べた。GitHubは世界で最大かつ最も高度な開発プラットフォームだ。「GitHubと1Password Secrets Automationの統合で、チームはインフラの秘密を完全に自動化し、そうした秘密は安全に守られているという安心感を得られます」と同氏は話した。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:1Password買収

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi