Folkは営業以外のチームにも役立つ新しい連絡先関係管理ツール

Folk(フォーク)」は、欧州のスタートアップスタジオであるeFounders(eファウンダーズ)から起ち上げられた新しい生産性向上ツールだ。このスタートアップは、Accel(アクセル)が大勢のビジネス・エンジェルを集めて行ったシード資金調達ラウンドで、330万ドル(約3億6000万円)を調達した。

専門的な環境での連絡先や人間関係の管理を行うツールと聞いても、他のいくつもの企業がすでに解決してしまっていると思うかもしれない。このようなCRMと呼ばれる考え方に基づいて、いくつもの製品や企業が登場している。人気の高いCRMプラットフォームには、Salesforce(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)などがある。あなたの営業チームもきっとCRMを愛用していることだろう。

しかし、CRMとは具体的にどのような意味なのだろうか?それはCustomer relationship management(顧客関係管理)だ。もしあなたが顧客を持たないチームで仕事をしているのであれば、CRMは最も適切なツールとはいえない。例えば、広報チームはジャーナリストと、物流チームはサプライヤーと、イベントチームはさまざまな種類のパートナーを相手に仕事をしている。

これらのチームでは、おそらくCRMを使っていないだろう。代わりに共有のスプレッドシートに頼っていたり、情報がサイロ化してしまったりということがよくあるはずだ。Folkは、企業のこのような営業以外のチームのための関係管理ツールになりたいと思っている。

同社はこの新しいコンタクトツールのカテゴリーに名前を付けようと考えて、Extended Relationship Manager、略して「xRM」と呼ぶことにした。「xRMの『x』は『誰でも』を意味します。これは顧客の管理だけでなく、例えば、ジャーナリスト、サプライヤー、パートナーなどの管理にも使用できるのです」と、FolkのThibaud Elziere(ティボー・エルジエール)CEOは声明の中で述べている。

画像クレジット:Folk

Folkは視覚的にはスプレッドシートのように見える。ユーザーは特定の情報を持つ列を追加することができ、タグを使ってプロジェクトの進捗状況を把握することもできる。Airtable(エアテーブル)と同じように、表示をフィルタリングしたり、データを並べ替えたり、表をさまざまな方法でソートすることなどもできる。

連絡先をクリックすると、専用の連絡先ページが開く。これによって快適にデータを変更したり、より多くの情報を見ることができる。コメントの追加したり、連絡先を同僚に割り当てたり、その連絡先とのやり取りを見返したりもできる。

画像クレジット:Folk

Folkにミーティングの予定を入力したり、メールのやり取りをコピー&ペーストしたりする必要はない。Folkは、Gmailや Googleカレンダーのアカウントから自動的にデータを引き出すからだ。これによって、チームの誰かがパートナーと密に連絡を取り合っているかどうかを、チーム全体で確認することができる。いくつかの連絡先をチームの他のメンバーと共有し、個人的な連絡先は自分だけが見られるようにするという選択も可能だ。

今回の投資ラウンドには、Accelに加えて、企業の運営に関わるような35人の投資家も参加している。どこの会社のどんな役職にある人物が投資しているかは、この記事の最後に掲載した表で確認できる。

FolkのCEOであるティボー・エルジエール氏が、eFoundersの共同設立者でもあることも注目に値するだろう。このスタートアップスタジオからは、Front(フロント)、Aircall(エアコール)、Spendesk(スペンデスク)など、いくつもの人気の高いSaaSツールが誕生している。エルジエール氏が使っているFolkの画面には、Folkを商業的に成功させるために活用できる幅広い連絡先のネットワークが、インプットされているに違いない。

Folkのシードラウンドに参加したビジネスエンジェルのリスト

 

画像クレジット:Jostaphot / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

左からDave Teare(デイブ・ティアー)氏、Jeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏、Sara Teare(サラ・ティアー)氏。

トロントを拠点とする1Password(ワンパスワード)は、高収益な上に財務状況を公開できるほど透明性が高いという稀有な企業の1つである。

そして2021年7月終わりに、同社はシリーズBラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を調達し、同社の評価額を20億ドル(約2180億円)に倍増させたことを発表した。

かつては自力で運営していた1Passwordが2019年、初めて外部資本を調達したことはまだ記憶に新しい。Accel(アクセル)が主導した2億ドル(約220億円)のシリーズAは、同ベンチャー企業の35年の歴史の中で、単一の投資としては最大規模のものだった。2005年に設立された1Passwordは当時すでに、スタートアップとは言い難い存在だったのだが。

Accelが再度主導した今回のラウンドには、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)、Kim Jackson(キム・ジャクソン)氏のSkip Capital(スキップ・キャピタル)の他、Shopify(ショッピファイ)のCEOであるTobias Lütke(トバイアス・トビ・ルーク)氏、Shopifyの社長であるHarley Finkelstein(ハーレー・フィンケルシュタイン)氏、Slack(スラック)の共同創業者兼CEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Squarespace(スクエアスペース)の創業者兼CEOであるAnthony Caselena(アンソニー・カセレナ)氏、Atlassian(アトラシアン)の共同CEOであるMike Cannon-Brookes(マイク・キャノン=ブルークス)氏とScott Farquhar(スコット・ファーカー)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同創業者兼会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏などが名を連ねる。

CEOのJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏によると、1Passwordは設立当初から利益を上げており、ARR(年間経常収益)は最近1億2000万ドル(約132億円)に達したという。Under Armour(アンダーアーマー)、Shopify、PGA、IBM、GitLab(ギットラブ)、Slack(スラック)、PagerDuty(ページャーデューティー)といった多数のビッグネームを含む9万以上の企業が、同社のSaaSプラットフォームを利用している。2019年11月の調達時の顧客5万社から、ここまでの増加である。

2組の創業者夫妻であるDave Teare(デイブ・ティアー)氏とSara Teare(サラ・ティアー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏とNatalia Karimov(ナタリア・カリモフ)氏は、ウェブサイト構築の別の会社を成長させていく中で、パスワード管理に関する苦労に着目したことから1Passwordのアイデアを思いついた。

当初は消費者のみを対象としていたものの、その後パスワード管理サービスを企業にも提供するようになる。すでに成功を手にしていた同社は、これによりさらにレベルアップすることになる。

そして同社に目をつけたのが、ブートストラップ・ビジネスや収益性の高い企業に投資してきた実績のあるAccelだ。シリーズAラウンド、BラウンドともにAccelから投資の打診がきたのである。

AccelのパートナーであるArun Mathew(アラン・マシュー)氏は両ラウンドで1Passwordへの投資を推進しており「1Passwordは非常にユニークな企業プロフィールを持っています。このようなファンダメンタルズと指標を持ちながら、市場の追い風に乗っている企業を見るというのは本当に珍しいことです。今回のラウンドによって会社全体がこの市場を勝ち抜くためにさらにアグレッシブになれることを期待しています」と話している。

前回の増資以来1Passwordは進化し続けている。決して栄光に甘んじないという同社の精神を体現しているのだとシャイナー氏はいう。同社は174人いた従業員数を475人にまで増やしているが、その中には以前はなかったGo-to-Marketチームの結成も含まれている。

ここ数カ月の間に1Passwordはビジネスサービスを拡大しており、4月にはSecrets Automationを、さらに最近では「重要な」ビジネス情報を保護することを目的としたエンタープライズ向けサービスである1Password Eventsを発表。また、Linux Desktop Applicationや、SlackやRipplingとの統合も始動している。

画像クレジット:1Password

シャイナー氏によると、Secrets Automationにより企業のインフラの秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護することができるという。

「パスワード管理は通常、人間と機械の間で行われます。そのためこれは私たちにとっては大きな勝利であり、今後はより広範なインフラに拡大することができます」と同氏。オランダのSecretHub(シークレットハブ)を買収したことで、Secrets Automationの立ち上げが実現したのである。

サイバーセキュリティ分野におけるスタートアップの数が、近年増え続けていることから、同社は新たな資本の一部をさらなる買収に充てようと計画している。

Accelのマシュー氏は「バランスシートが強化されたことで、想定内のリスクを取ることができるようになり、潜在的なM&Aや、機会があればさらに積極的な投資を行うことができるようになりました。この会社は約16年もの間、ビジネスにとっても消費者にとっても最高の秘宝の1つであり続けていると言えます」と話している。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックとそれにともなう在宅勤務の増加により、1Passwordのサービスに対する需要は高まる一方である。実際、1Passwordはビジネスアカウントごとに、各従業員が自宅で使用するためのファミリーアカウントを無料で提供しているという。

「仕事と家庭が混合するようになったため、これはユーザーにとって大きなメリットになるでしょう」とシャイナー氏。

この境界線の曖昧さこそが、Accelが1Passwordにさらなる可能性を見出している理由の1つである。AccelのパートナーであるEthan Choi(イーサン・チョイ)氏によると、同社のポートフォリオには24件のアクティブなセキュリティ投資があるという。

「今回の(1Passwordに対する)強化は、これが今日のセキュリティの最も重要な分野の1つであるという我々の信念を体現するものです。CIOやCISOは、従業員が生産性を高め、必要なアプリケーションにアクセスできるよう望んでいますが、同時にそれらが安全であることが大前提です」とチョイ氏。

1Passwordは16年前に設立されたにもかかわらず、まだ「表面をなぞっているに過ぎない」とシャイナー氏は考えている。

「我々の目前に広がっている莫大なチャンスに胸を躍らせています。急いで前進していかなければなりません」と同氏は話す。

多くの経験豊富な技術者の知見を得られたことも、より多くの資金を調達できた要因だとシャイナー氏はいう。

「Accelとはすでにすばらしい関係性を築いていますが、さらに多くの人材を迎え入れ、それによってもたらされる経験はこの上なく貴重なものです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:1Password資金調達トロントAccel

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)