インドネシアのVC、Alpha JWCが490億円の第3号ファンドを組成、東南アジア最大のアーリーステージ対象のVCファンドに

Alpha JWC共同創業者のジェフリー・ジョー氏とチャンドラ・チャン氏(画像クレジット:Alpha JWC)

ジャカルタに拠点を置くベンチャーキャピタルAlpha JWCは、第3号ファンドを4億3300万ドル(約489億円)で組成したことを発表した。同社によれば、当初の目標額だった2億5000万〜3億ドル(約283億〜339億円)を上回る応募があり、結果としてアーリーステージのスタートアップを対象とした東南アジア最大のVCファンドとなったという。この3つ目のファンドの出資者には、世界銀行の国際金融公社(IFC)が含まれている。また、Alpha JWCの最初の2つのファンドのパートナーの大半が出資をしている。

共同創業者でゼネラルパートナーのJefrey Joe(ジェフリー・ジョー)氏は、Bukalapak(ブカラパック)やSea Group(シー・グループ)のIPOのような注目を集めたイグジットのおかげで、グローバルな投資家から東南アジアへの関心が高まり始めていると述べている。

そしてTechCrunchに「米国のような先進国の市場に比べても、十分な価値を生み出すことができることを示しています」と語る。また彼は、Alpha JWCのポートフォリオ企業であるAjaib(アジャイブ)、Kredivo(クレディボ)、Carro(キャロ)を含む多くのスタートアップが、比較的短期間でユニコーンの地位を獲得したことから(投資アプリのAjaibは、ローンチから2年半でユニコーンとなった)、投資家の新たな関心の波が2020年から始まっていると付け加えた。Alpha JWCは、上記3つのスタートアップの最初の機関投資家だったのだ。

関連記事:インドネシアのミレニアル世代を対象にする投資アプリAjaibがシリーズAで約71億円を調達

Alpha JWCは現在、3つのファンドで合計約6億3000万ドル(約712億円)の資産を運用している。この1年間で、投資先企業はこれまでに合わせて10億ドル(約1130億円)以上の資金を調達しており、大部分がアルファJWCの最初の投資から1年以内に追加の資金調達を行っているという。

同社は、アーリーステージ(プレシード、シード、プレシリーズA)への投資を行っており、スタートアップの資本政策表上で最初の機関投資家となることが多い。ジョー氏によれば、Alpha JWCのパートナーたちは、米国の投資家を紹介したり、経営陣の育成を支援するなど、ポートフォリオ企業が後期段階に入ってからも緊密に連携している。

Alpha JWCは、2016年に第1号ファンドを5000万ドル(約56億5000万円)で立ち上げ、23社に投資した。その第2号ファンドは2019年に1億4300万ドル(約161億5000万円)で組成され、30社の支援に使われた。同社によると、第1号ファンドのTVPI(Total Value-to-Payed-In、投資倍率)は3.72倍に達し、IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)は約37%となっている。その第2号ファンドのパフォーマンス指標はさらに高く、TVPIは3.45倍、IRRは87%となっている。

第3号ファンドの大半はインドネシアのスタートアップ企業に充てられるが、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピンなど他の東南アジア市場でも、インドネシアへの進出を目指す企業を中心に投資が行われる。投資額は、数十万ドル(数千万円)から複数のステージで構成される最大6000万ドル(約67億8000万円)までの範囲となる。Alpha JWCの第1号ファンドと同様に、第3号ファンドでも25~30社程度のアーリーステージのスタートアップ企業を対象とし、セクターを問わないアプローチをとる。

共同創業者でゼネラルパートナーのChandra Tjan(チャンドラ・チャン)氏は「現時点では、セクターに特化する必要はないと考えています」と語る。「市場はまだ若く、非常に高い可能性を秘めており、私たちが地元のチャンピオンを獲得できる産業はたくさんあります。とはいえ、私たちが本当に好んでいる分野は、ソフトウェアサービス、フィンテック、O2Oモデル、ソーシャルコマースです」。

Alpha JWCによると、コーヒーチェーンのKopi Kenangan(コピ・ケナガン)、B2BマーケットプレイスのGudangAda(グダガダ)、消費財メーカーのLemonilo(レモニロ)、中小企業向けデジタルファイナンスプラットフォームのFunding Societies(ファンディング・ソサイエティ)など、少なくとも11社のポートフォリオ企業がユニコーンのポジションに近づいているという。

デジタル導入は、いまだにジャカルタなどの大きな都市が中心となっているものの、ジョー氏はインドネシアの小さな市や町が急速に追いついてきているという。「第2、第3レベルの都市たちが猛追しています。そうなれば私たちの潜在能力が発揮されて、デジタルエコシステムの超々大規模成長が見られることになるでしょう」。

ジョー氏は、Ajaibのようにより優れたマネタイズプランや戦略、より強力なファンダメンタルズを早い段階で示すスタートアップが現れ始めているという。これにより、イグジットが明確になり、より多くの投資家が地域に集まってくることになる。

チャン氏は「私たちはAjaibの最初の機関投資家でしたが、創業者たちは当初から、ユーザーを獲得するためにお金を使うだけではなく、非常に強いファンダメンタルズを打ち立てるために努力をしていました」という。

IFCの東アジア・太平洋地域担当ディレクターのKim-See Lim(キムシー・リム)氏は、Alpha JWCの第3号ファンドへのIFCの投資に関する声明の中で「IFCとAlpha JWC Venturesとのパートナーシップは、インドネシアの経済発展とデジタルトランスフォーメーションに対する我々の長期的なコミットメントを明確にするものです」と述べている。

関連記事:Predicting the next wave of Southeast Asia tech giants

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:sako)