車の個人間売買サービス「Ancar」が出品をラクにするカメラアプリを公開

中古車を個人間で売買できるC2Cマーケットプレイス「Ancar」を展開するAncarは10月9日、車の外観や内装の写真をスマホで簡単に撮影できるカメラアプリを公開した。このアプリを通じて出品時の負担を減らし、個人間の売買を促進する。

今回リリースされたカメラアプリの特徴は「アプリ内で表示されるガイドに沿って車体の写真を撮るだけ」でベストアングルな写真が仕上がることだ。「右前」「エンジンルーム」「シフトレバー」「トランク」など、各項目ごとに最適な角度を“車の形”で画面に表示。ユーザーはこれに照らし合わせながら車を撮影するだけでいい。

Ancar代表取締役の城一紘氏によると、オンライン上で車の売買を行うAncarにおいて写真は大きな意味を持つそう。買い手にとっては貴重な情報源になるため「購買時の参考になるような写真がきちんと取れていること」は売れるかどうかに直結する要素だ。

これまでもAncarでは出品者向けのガイドラインを用意してはいたものの、実際にそれを見ながら撮影するのはそれなりの時間と手間がかかる作業だった。

具体的には外観・内装・書類など車の状態を伝えるには最低でも20〜30枚、多い場合は約50枚程度の写真が必要。これらの写真をアングルを変えながら何枚も撮影し、掲載時にはナンバープレートを隠したり、見やすいように順番を並べ替えたりといった加工作業も行う。

城氏もユーザーの動向を追う中で「どうとったらいいのかわからない、取るのがめんどくさいというのがある程度の障壁になっているとは感じていた」とのこと。今回リリースしたアプリでは写真撮影のガイドだけでなく、アプリ上で簡単にナンバープレートを隠す機能も搭載。そのままデータを送ればAncarの出品車両へ反映される仕組みだ。

以前紹介した通り、今年の2月からAncarでは運営側で車の売却を担う「おまかせ出品」サービスをスタートしている。

これはC2Cの仕組みでは少し売買に時間を要するため、それよりも早く売ってしまいたいというユーザーの声を基に始めた仕組みだ。Ancarが売却を希望するユーザーから車を預かり、車両検査後に査定した最低買取保証金額を支払う。預かった車は運営がAncar上に出品して売却を試み、期間内に当初合意していた金額よりも高い価格で売れれば、ユーザーは収益の一部を追加で獲得できる。

ユーザーの視点では既存の買取ショップに売るのと近しいが、高く売れた場合に追加で売却代金を貰えるのが最大のメリットだ。

これまでは自社工場で担当者を採用し、おまかせ出品を通じて車を売っていたけれど、中長期的にはこの仕組みを同社が提携する各地の工場にも広げていくイメージなのだそう。その際には当然Ancarでの売買に慣れていないスタッフもいるため、出品作業をサポートする意味でもカメラアプリが重要な位置付けになると城氏は考えているようだ。

今後はA​ndroid版のリリースに加えて、動画で車の周りをぐるっと撮影すれば必要な情報が取得できるような「動画機能」の追加も予定しているという。

中古車のC2Cマーケット「Ancar」に“いつ売れるかわからない”を解決する新サービス

中古車を個人間で売買できるマーケットプレイス「Ancar」を展開するAncarは2月22日より、車を売りたいユーザーが従来よりもスピーディーに現金を受け取れる新しい切り口のサービスを始める。

サービス名は「おまかせ出品」。その名の通り、純粋なC2Cの中古車売買ではなくAncarの運営に車の売却を“おまかせ”するような仕組みだ。

これまでのAncarはメルカリのようなフリマアプリと同様に「車を売りたいユーザーと買いたいユーザーをマッチングする役割」だったので、車の写真や情報の登録、売却の交渉は基本的にユーザー自身で行う必要があった。

一方で本日からスタートするおまかせ出品では、Ancarの運営が売買をサポートする。同社が売却を希望するユーザーから車を預かり、車両検査を実施。査定した最低買取保証金額を最短3日で支払う。

預かった車は運営側がAncar上に出品して従来の形式で売却を試みるのだけど、その際に30日間という期間が設定されているのがポイントだ。期間内に当初合意した買取保証金額よりも高い価格で売れれば、ユーザーは収益の一部を追加で獲得することが可能。反対に売買が成立しなかった場合でも、運営が買取保証金額で車を買い取る(手数料を払って返却を希望することもできる)。

「買取保証金額は一般的な買取相場と同等かそれ以上の金額を提示する。車を売りたいユーザーは中古車買取店で売却する金額にプラスアルファが見込めるようになり、単純な買取の仕組みを利用するよりもメリットが大きい」(Ancar代表取締役の城一紘氏)

売買が成立した際にシステム利用料と手数料6万円がAncarの収益となるビジネスモデル。同社では1月に自社整備工場を川崎市にオープンしていて、期間中はそこで車を管理する。

おまかせ出品の仕組み

さて、Ancarが今回おまかせ出品を始めるに至った背景にはどんな考えがあったのだろうか。城氏によると「いつ売れるかわからない」というフリマサービスに共通する課題が原因で、「けっこうな数のユーザーの離脱に繋がっていた」状況を打開したかったようだ。

「Ancarは腰を据えてじっくり車を売りたいユーザーには刺さっていたが、その一方で『駐車場を解約するから』『次の車がくると駐車スペースが足りないから』『新しい車を買うための頭金が必要だから』などの理由から、早く現金化したいというユーザーも一定数いる。一度出品してもこれ以上は時間をかけられないと売却を断念するケースも多く、それが機会損失になっていた」(城氏)

そんなユーザーに新たな選択肢としておまかせ出品を提供することで、上述したような課題の大部分は解消されそうだ。まずAncar側で車を預かるためユーザーの駐車場が空き、管理コストや駐車スペース不足の問題はなくなる。デポジットのような形で最低保証金額が振り込まれることで、スピーディーに現金化したいニーズにも応えられる。

加えて出品に必要な作業や、購入希望者との交渉も経験豊富なプロに任せられるので成約率が上がる可能性もあるだろう。もちろん成約すればユーザーはさらなる収益を手にすることもできる。

城氏は以前から、従来の中古車買取の仕組みでは買取業者や業者オークションなど複数の業者が介在して中間コストが多重に発生するため、買取価格も店頭販売価格に比べてかなり安くなるという話をしていた。これまでは素早く車を現金化しようと思えば、ある程度安い価格で売却せざるを得なかったところを、「(売りたいユーザーにとって)アップセルできる可能性のある」おまかせ出品で変えていくのが狙いだ。

成約率が上がればAncarの収益も増える。そもそもAncarのビジネスモデル自体も売買が成約した際にのみ手数料を受け取る仕組みなので、成約に至る前に離脱されてしまうのは同社にとって大きな痛手だった。

「これまで途中で売却を断念してしまっていた人たち全員が使うとは思わないが、そういったユーザーを繫ぎ止めるひとつの手段として自社にとっては重要な位置付けになる。実際に自分たちが車を預かり、C2Cで売れる前に最低保証金額を振り込むことで、コミュニケーションの仕方も変わる」(城氏)

おまかせ出品に近しい仕組み自体は「委託販売」という形で一般的な買取市場でも存在したが、Ancarの場合はオンラインのC2Cマーケットと組み合わせることで、「預かった車を全国のユーザーに対してオンライン上で販売できる」(城氏)のが特徴だ。

Ancarは2015年の創業。2018年10月にベクトル、AGキャピタル、クロスベンチャーズなどから4億円を調達していて、累計の調達額は7億円に及ぶ。

“高級輸入車も売れる”C2Cの中古車マーケット「Ancar」が4億円を調達、カギは整備工場とのネットワーク

中古車を個人間で売買できるマーケットプレイス「Ancar」。同サービスを展開するAncarは10月29日、ベクトル、AGキャピタル、クロスベンチャーズ、個人投資家らを引受先とした第三者割当増資により総額4億円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては2016年10月に日本ベンチャーキャピタルやニッセイ・キャピタルから約2億円を調達して以来、約2年ぶりの資金調達となる。今回調達した資金を基に新機能開発や人材採用、マーケティングを強化していく方針。具体的には購入ユーザー向けのローンやリース機能の追加、クレジット決済機能の導入などを進めるという。

近年メルカリを筆頭に、オンライン上にて個人間でモノや情報を売り買いできるC2Cマーケットプレイスが増えてきた。Ancarはその中古車特化版のサービスと言えるだろう。

一般的な中古車売買の構造では、売り手と買い手の間に買取業者やオークション業者、販売店など複数のプレイヤーが介在する。そのため中間コストが余分にかかり、売り手の売却額と買い手の購入額の間に大きな開きが出ていた。

Ancarの場合は買い手と売り手を直接マッチングするため、中間業者に支払う手数料を削減できるほか、消費税も非課税。結果的に従来の仕組みに比べると売り手は高く売りやすく、買い手は安く買いやすい。売買が成約した際にのみ双方から5%ずつ、合計10%のシステム利用料がAncarに支払われるモデルだ。(任意のオプション代のほか、輸送料や名義変更などの諸費用は別途買い手が負担)。

とはいえ、このような特徴は何もAncarに限った話ではなく、C2Cのサービス全般に言えること。それこそメルカリ上でも中古車の個人間売買はされているし、GMOカーズの「クルモ」や中古車の買取・販売大手のIDOM(ガリバー)が展開する「ガリバーフリマ」など特化型のフリマサービスも存在する。

中間コストや消費税をカットできるのはAncarの特徴のひとつではあるものの、それ以上に同サービスのウリと言えるのが購入前後のサポートだ。

「(扱っている商材が)車という特性上、高額であると同時に命に関わるものでもある。だからこそ売買のハードルを下げながらも、安全性や信頼性の担保も必要。ユーザーにとって安心できる場所じゃないと、高単価の車種を売買するのは難しい」(Ancar代表取締役の城一紘氏)

Ancarでは初期から売買のハードルとなる手続き面のサポートや、安全性を担保するための情報開示を行ってきた。

売り手ユーザーは車の写真を撮影し基本情報を入れればすぐに出品できる反面、買い手が購入前に整備工場へ無料で点検依頼できる機能も実装。気になった車の状態を第三者のプロに診断してもらえる仕組みを整えた。また車の輸送はもちろん、Ancarでは名義変更や車庫証明もサポートする。

中古車の売買に特化したC2Cサービスではいくつか近しいサポートを行っているものはあるが、事前点検から一連の工程をまるっとカバーしているのは珍しい。この仕組みを実現する上で不可欠な要素が、全国にある自動車整備工場とのネットワークだ。

Ancarでは2016年に整備工場の検索サービス「Repea(リペア)」をリリース。全国約1000店舗の整備工場と提携することで、ユーザーが車を取引する際のサポートはもちろん、アフターケアも充実させることができている。

結果的にAncarで売買される中古車の平均成約単価は約250万円と高く、城氏も「高級輸入車が多いのはひとつの特徴」と話す。

もちろん良い仕組みが整っていても肝心のユーザーが集まらなければビジネスとしては成立しないため、Ancarでは前回の調達以降、売り手ユーザーの集客や出品体験の改善に注力。1年前と比べて売却価格の査定件数や出品台数も約20倍に増え「暗闇の中で試行錯誤を続けてきた結果、出品量の確保については目処が立ち始めてきた」(城氏)という。

そんな状況下での今回の資金調達。集めた資金は出品者集めを加速させるためのマーケティング強化に加え、購入者側の体験改善に向けた新機能開発やそれに関わる人材採用に用いる計画だ。

たとえば購入者に対しては現在の現金振込のみの決済方法だけでなく、ローンの提供やクレジット決済の対応を早ければ2018年内に開始する予定。Repeaに登録されている整備工場とユーザーをAIでマッチングする機能などを導入していく計画もあり、サービス間の連携を強化して購入後のケアを受けやすい仕組みを整える。

また車を保有するにあたってのハードルと言える保管場所の問題や、保有コスト、次の買主が決まるまでの駐車場問題に関しても、それらを解決するサービスを新たに始める方針だ。

「Ancarというサービスだけではこの仕組みは成り立たない。Repeaと両方がうまく回ってこそ、ユーザーにとって安心でき、価値のあるサービスになる。そういった意味では単に中古車の売買を効率化したいわけではなく、買った後のメンテナンスや困りごとの解決など、ユーザーのカーライフをトータルでサポートしていきたい」(城氏)