イーロン・マスクが脳直結インターフェイス「Neuralink」をプレゼン

イーロン・マスク氏のステルス・スタートアップの1つがいよいよ表舞台に登場する。米国時間7月16日午後8時(日本時間7月17日正午)に 同社のサイトからビデオストリーミングによるプレゼンが公開される予定だ。2017年に創立されたNeuralink(ニューラリンク)のテクノロジーについて詳しく知ることができるはずだ。

NeuralinkはBCI(脳コントロールインターフェイス)を開発しており、マスク氏の遠大なテクノロジーのビジョンの重要な一環を占める。BCIは人間によるコンピュータのコントロールを改善し、AIがもたらす危険性を大きく減少させルのに役立つという。

そこでこれまでにNeuralinkについて分かっていることを振り返ってみよう。創立当初の目的は(少なくともその後1年程度は)脳に直結するインターフェイスをてんかんなど大脳に起因する慢性疾患の症状の軽減に役立てることだった。この研究の過程で「超広帯域の脳-マシン・インターフェイス」によって人間の脳とコンピュータを直結するテクノロジーが開発されたという。ともあれNewralink自身が公開している情報はこれだけだ。

Wait But Whyにサイトの共同ファウンダーであるTim Urban(ティム・アーバン)氏が発表した記事がNeuralinkが解決を目指す課題に関する最初の詳しい解説だった。私も同じ日にスタートアップの背景と目的を分析する記事を書いた。要約すれば、Neuralinkの使命は宇宙植民計画などマスク氏のほかのベンチャーと同様「人類の存続を脅かす危機」とマスク氏が呼ぶものを避けるための努力といっていいだろう。

Neuralinkの目的は当初の医療テクノロジーという領域をはるかに超えて拡大した。Wait But Whyによれば、医療のような現実の応用からスタートしたのは、コンセプトを実験する上で規制当局を納得させるのに便利だったからだったらしい。マスク氏の最終目的はコミュニケーションにおける「圧縮」過程を取り除くことだというのがTim Urban氏の説明だ。マスク氏によれば、例えば人間がコンピュータと対話するとき、内心の考えをキーボードで打ったり、マウスを操作したりして伝える。このとき、実際の考えは大幅な圧縮を受けている。Neuralinkは情報の圧縮と伸張の過程を取り除く。これにより人間とコンピュータの対話をロスレスで広帯域の直接コミュニケーションに変え、容易化、高速化を実現する。

このテクノロジーが人類の存続を脅かす危機を避けることに関係するというのはこういうわけだ。マスク氏によれば、人類は今後も否応なくAIの発達にさらされ、次第にコンピュータの処理能力が人間を圧倒するようになる。高度なAIを搭載したロボットが世界の支配者になるというドゥームズデー・シナリオを避けるためには、人間が脳を直接コンピュータに接続することでコントロール能力を格段に高めるようにする他ないというのがマスク氏の考えだ。

2年前にはこの最後の目標にはそのまま受け取るのが難しい部分も含まれていた。しかし今日、Neralinkがどこまで達成できたのか、目標設定に変更はあったかのなどについて報告を聞くことできる。Neuralink.comからストリーミングがもうすぐ開始される(日本時間で本日正午)。

画像:DAVID MCNEW / AFP / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

フロリダ大の世界初の脳波コントロール・ドローン・レース、ESPNで放映

最近ではドローンの飛行レースは珍しくない。しかしドローン・コミュニティーで始まった小さな実験がESPNテレビとの提携を含めた大掛かりなイベントに発展した

脳波でコンピュータを制御するBCI(brain-computer interface)は以前から各地で研究されている。まだ実用化としては早期の段階ではあるが、このテクノロジーは運動機能に障害を持つユーザーが義肢を操作するために用いられている。

しかしBCIテクノロジーで飛行するドローンを操作するとなると、これはまったく新しい応用だ。

先週、フロリダ大学ではBCIソフトウェアを利用してDJI Phantomドローンを操作する初のコンテストを開催した。ドローンは映画のように高速で飛び回るというわけにはいかなかったが、16人パイロットは10四方の屋内飛行区画でドローンを操縦するために努力した。

レースの見た目はやや平凡だったが、なんといっても飛行が脳で直接コントロールされているというのは驚きだ。

その仕組はこうだ。

ドローンのパイロットは個人別にカリブレーションされた脳波を電子的に読み取るヘッドセットを装着する。装着者に「何かを前方に動かす」ことをイメージするよう求めると、そのニューロン活動が脳波として読み取られる。これがドローンの操縦桿を前方に倒すデータとして記録され、次に同様の脳波が読み取られると実際にドローンを前進させるわけだ。

原理としては新しいゲームをプレイする際に固有のキーボード操作を覚えるのと変わりない。ただこの場合は用いられるのがキーボードではなく脳波を読み取るヘッドセットだという違いがある。

ビデオを見ればわかるとおり、脳波コントロール・ドローンはまだ本気のレースに使えるほどの反応速度に達していない。しかしテクノロジーの進歩は速い。近い将来BCIはわれわれの日常生活に入り込み、さまざまなデバイスを操作するのに利用されるようになるだろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+