SpaceXはStarship試作機の最後の重要なテストに合格し初飛行へ

SpaceXは、次世代型ロケットStarship(スターシップ)の開発を始めてずいぶんになるが、テキサス州ボカチカで建造中の大型プロトタイプは、これまで「クライオ」と呼ばれる重要なテストになると決まって致命的なエラーに見舞われてきた。これは、宇宙の真空を再現した状態で燃料タンクに最大圧力で燃料を満たすというものだ。だが最新のプロトタイプSN4(シリアルナンバー4という意味)はこのテストに合格し、エンジン点火テスト、そしてそれに続く短距離飛行へと道が開かれた。

SpaceXのSN4プロトタイプは、同社が当初、新型Raptor(ラプター)エンジンの性能を披露するためだけに飛ばした小型の実験機Starhopper(スターホッパー)とは異なり、最終的なロケットの形に近い姿をしている。SN4もStarhopperと同じく、Raptorエンジンを1基だけ搭載していて、実験目的の短距離飛行が可能だ。次期バージョンのSN5は、SpaceXのCEOで創設者のElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、Raptorエンジンを3基搭載し、実際に運用に使われる機体に搭載予定の6基には及ばないものの、軌道に載るデモ飛行に備えた長距離飛行が可能だという。

新しいロケットや打ち上げシステムのテストと開発には、どうしてもトラブルが付きまとう。世界中のどのシミュレーションも、現実の使用条件や物理法則を完全に再現できないからだ。しかし、これまでのStarshipのクライオ試験の段階での失敗は、もっと初歩的な問題によるものなのではないかと彼らは考えるようになった。結局それが、SN1からSN3までを失敗に追い込んだ原因だった。

これでSpaceXは、プロトタイプに搭載した形でRaptorエンジンの地上点火テストが行えるようになり、早ければ今週末にも実施される。その後は、高度150メートルほどの飛行が予定されている。これはStarhopperが実証飛行したときと同じ高さだ。もちろん、軌道までの距離からすれば足下にも及ばないが、これは実物大のロケットが低空でどのように挙動するかを確かめるためのものであり、高高度まで飛行できる、さらには軌道にのることができるプロトタイプの開発につながる鍵をSpaceXに渡すものとなるのだ。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceX Starshipのマニュアルが語るスペースシャトルの後継機となり快適な宇宙旅行を提供できる理由

SpaceX(スペースエックス)は、テキサス州ボカチカで建造を進めている次世代のロケットStarshipの、宇宙船ユーザーマニュアル初版を発表した。このマニュアルはすでに運用中のSpaceXの他のロケットのものほど詳細ではないが、例えば大容量の貨物船としてStarshipをどのように活用したいか、または人を運ぶ宇宙ライナーとして比較的豪華であるとされる理由など、いくつもの興味深い内容が含まれている。

Starshipは静止通信衛星を一度に3基まで同時に運ぶことができ、衛星コンステレーション全体を1回で展開できる。あるいは静止衛星を1基か2基搭載して、余った空間を使って小型衛星の正式な相乗りミッションに利用することも可能だ。現在使用できる手段と比較して、1回のフライトでたくさんのミッションに対応できることは、運用上の費用という面で大変な助けになる。

SpaceXが提案するStarshipのもうひとつの利用法に「宇宙空間で実験を行う宇宙船」の運搬がある。Starshipに宇宙船を搭載したまま一体となって実験やミッションを遂行して、地球に戻ってくるというものだ。事実上これは、Starshipを国際宇宙ステーションのような宇宙研究所プラットフォームにするものだが、宇宙ステーションと違い自力で飛行し帰還する能力を有する。

SpaceXではまた、Starshipは本来のペイロード・アダプターの他に、側壁やノーズにもペイロードを搭載できるようになるという。かつてスペースシャトルにも類似の機能があった。さらにスペースシャトルと同様に、Starshipは軌道上の衛星の回収して必要に応じて軌道上で修理したり、地球に持ち帰ったり、別の軌道に投入したりもできるとSpaceXはいう。これは、現在運用中のどのロケットも成し得ないことだ。

Starshipに人を乗せる場合の設備に関する提案もあった。SpaceXでは100人もの人間を地球低軌道に、さらには月や火星に運ぶことができると説明している。船内設備には「プライベートな客室、広い共有エリア、集中型倉庫、太陽風シェルター、展望ギャラリー」などが考えられると資料には記されている。SpaceXはまた、地点間の移動という用途を特に強調していた。つまり、地球上のある宇宙港から別の宇宙港への移動だが、近宇宙を通過することにより大幅に移動時間を短縮できるということだ。

最後に、小さいながらおもしろい話がある。SpaceXは、打ち上げをフロリダ州のケネディ宇宙センターとテキサス州ボカチカの両方で行い、着陸もその両地点で行われる可能性があるという。複数のSpaceshipが完成して性能が実証され、実際にフライトが始まった際には、運用の頻度が高まるというわけだ。

SpaceXのStarship SN3は、現在ボカチカで建造中だ。エンジンの地上燃焼試験のために、すでに打ち上げ台に運ばれている。SpaceXは2020年末の高高度飛行テストに間に合わせようと、プロトタイプの改善ペースを速めている。そしてゆくゆくはStarshipとSuper Heavy(スーパーヘビー)ロケットブースターも、完全に再利用可能な宇宙船を目指して開発したいと考えている。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが月の周回旅行に一般人を送り出す計画を発表

Elon Muskの会社からの風変わりなニュースが途絶えて久しい、だがSpaceX がその空隙を埋めてくれた。新しく再デザインされたBFR(Big Falcon Rocket)宇宙船と、もうすぐ名前が発表される乗客を乗せて月の周回飛行を行うことを発表したのだ ―― 一体いつ、実際のエンジニアリングと製作にとりかかれるのかはともかく。

木曜日の夕方のツイートで、SpaceX(明らかにMuskだった)は、「BFR打上げロケットで月の周りを飛行する、世界初のプライベート乗客がサインした」と発表した。

ツイートに添付されたのは、BFR自身のイメージ(上図)で、最後に発表されたものから大きく変わった。かつてはこのような外見だったが:

それが今や、このようなものになった:

旧バージョンもツートーンカラーだった。ISSのある方の図を注意深く見れば分かるが、黒い部分は耐熱性サーフェスである可能性が高い。しかし、今回の新しいものは、翼が大きく伸ばされ上部にも付け加えられたことにより、スペースシャトルをより思い起こさせるものだ。おそらく、クールでスッキリとした2枚翼スタイルは、単純に実用的ではないことが分かったのだろう。大気中での安定飛行のためにはおそらく上部の翼が必要だったのだ。また何らかのフロントスタビライザーに見えるものもある。

エンジンクラスターも異なっている。オリジナルのデザインでは4つのRaptorエンジンを正方形に配置し、2つの小さな「海面レベル」エンジンが着陸のために他のエンジンの間に配置されていた。この新しい図では、7つのRaptorが蜂の巣状(6角形)に配置されている。その理由に関しては想像するしかないが:エンジンが何らかの理由で少しスケールダウンされたか、あるいは7つのスラスター構成の方が、不具合に対してより堅牢であると判断されたのかもしれない。

これは基本的にすべてコンセプト上の仕事なので、これがどれくらい現実的で、どれくらいまでが幻想であるかを言うことは難しい。宇宙船の製造が、まだほんの初期であることを思えば、このような大きな変更が行われたとしても不思議はない。

Twitterのあるコメントは、こうしたものに対して「Tintin的だ(Tintin-esque)」と書いている。紛れもなくそれは、愛されるコミックである”Destination Moon”と”Explorers on the Moon”の中に出てくる、ベルギーのヒーローが搭乗したロケットのことを言っている。

Muskは「意図的にそうしているのさ(“Intentionally so”)」と回答はしたものの、実際の類似点はほとんどない。おそらく、彼は個人による月旅行という概念全体を意味していたのかもしれない。とにかく、Muskは明らかにその漫画のファンであり、何にせよTintinへの言及は彼にとって好ましいものなのだ。

コックピットの後ろの窓は3列から6列に増えているが、これはSpaceXが計画している宇宙船のシートを拡張したことを示唆している。これは乗客に関連する発表の性質に見合うものだ。

そのことについてだが…最初の月周回ツーリストは(米国時間)月曜日の夜のイベントで発表される予定だ。それは誰だろう?おそらく億万長者だ。しかし残念ながら、彼らは長い期間待つことになるだろう。BFRが実際に運用される頃には、宇宙旅行(月周遊はないかもしれないが)はもう何年も続いていることだろう。だから、この勇敢な非常に裕福な人物が、私たちの月へ初めて旅行するときには、それが彼にとってカーマンラインを超える初めての旅というわけではないと思われる。

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(翻訳:sako)