ソフトバンク・ビジョン・ファンド2がデジタル療法のBiofourmisへの100億円超投資をリード

AIによるデータ分析とバイオセンサーを結びつけて治療の進捗をモニターするBiofourmisが、いま世界で最も注目を集めている投資家からの資金を調達した。このデジタル療法企業はシンガポールで起業し、現在本社はボストンにある。同社は米国時間9月2日間、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2がリードする1億ドル(約106億円)のシリーズCを完了したことを発表した。既存投資家であるOpenspace VenturesとMassMutual Ventures、Sequoia Capital、およびEDBIもこのラウンドに参加した。

同社のこの前の資金調達の発表は、2019年5月の3500万ドル(約3億7000万円)のシリーズA(未訳記事)で、これはSequoia IndiaとMassMutualがリードした。後者は、Massachusetts Mutual Life Insurance Companyのベンチャーキャピタル部門だ。

Biofourmisのプラットホームは、AIを使った健康分析と着用型のセンサーを組み合わせて、ヘルスケアのプロバイダーによる患者の回復の進捗や薬などの処置の効果の判定を助ける。同社は2015年にCEOのKuldeep Singh Rajput(クルディープ・シン・ラージプート)氏と専務取締役のWendou Niu(ウェンドゥ・ニュー)氏が創業した。同社によると今回の投資は、東南アジアのヘルスケアスタートアップへの投資額としてこれまでで最大である。同社は、ボストンとシンガポールのほかに、スイスとインドにもオフィスがある。

同社のシリーズAの資金調達以来、Biofourmisは一連のパートナーシップにより成長を続けた。その主なパートナーは、7社の製薬企業と10社の医療システムだ。Novartis、AstraZeneca、Mayo Clinicなどの有名企業も含まれる。買収もいくつか行い、それにはバイオセンサーのBiovotionとガン患者のためのデジタル療法企業であるGaido Healthが含まれる。

今回の資金の主な用途は、心臓病や呼吸器疾患、腫瘍、痛みなどの新しい治療法を検証し、市場に持ち込むことだ。Biofourmisはまた、米国とアジア太平洋市場、特に中国と日本への拡張を計画している。

Biofourmisの本日の発表によると、今後同社は経営を、Biofourmis Therapeuticsと Biofourmis Healthの2本立てにする。前者Biofourmis Therapeuticsは、AstraZenecaや中外製薬などとのパートナーシップにより、医薬処置の効果を増強するためのソフトウェアを作る。そしてBiofourmis Healthは、同社の本拠地的医院として、ヘルスケアのプロバイダーが患者の急性期治療からの回復過程をリモートでモニターできるようにする。Biofourmis Healthは特に、心臓病と冠動脈疾患、呼吸器疾患、およびがんにフォーカスする。

EDBIはシンガポールの政府系投資企業で、ヘルスケアなど、国の産業の進歩に寄与するようなスタートアップを探している。EDBIのBiofourmisへの投資は政府としての戦略的投資でもあり、同社の技術による新型コロナウイルス再発(Channel News Asia記事)の対処が期待されている。

昨年の7月に発表されたソフトバンク・ビジョン、ファンド2は、AIを利用する技術に約12兆円を投資することを目的に創設された。最初のビジョン・ファンドは巨額の損失に直面しているが、その多くはWeWorkとUberから発生している。そこで今では、ヘルスケアなど特定の市場に集中するビジョン・ファンド2のパフォーマンスが注目されている(CNBC記事)。これまでヘルスケアの分野では、薬のデリバリーのAlto(Business Insider記事)、ライフサイエンスのKarius(Kariusプレスリリース)などに投資済みだ。これらの投資も、やがてその効果が判定される。

プレス向けの声明でSoftBank Investment AdvisersのパートナーであるGreg Moon「グレッグ・ムーン)氏は「医療の未来は予測的ヘルスケアにある」と信じている。そして「Biofourmisは、デジタル療法の進歩にAIと機械学習によるモデルを用いる技術の先頭を歩んでいる」と続けた。

画像クレジット: Biofourmis

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

デジタルヘルスチェックのBiofourmisが38億円を調達

テクノロジーを活用した健康状態の解析で先駆け的存在のシンガポール拠点スタートアップであるBiofourmisは、事業拡大のためシリーズBで3500万ドル(約38億円)を調達した。

今回のラウンドは、Sequoia India、MassMutual Ventures、Massachusetts Mutual生命保険会社のVCファンドが主導した。ラウンドに参加した他の投資家はシンガポール経済開発庁コーポレート投資部門のEDBI、中国拠点のヘルスケアプラットフォームJianke、そして既存投資家のOpenspace Ventures、Aviva Ventures、ディープテックスタートアップの支援を行っているシンガポール政府のSGInnovateだ。Crunchbaseによると、今回のラウンドにより、Biofourmisがこれまでに調達した額は4160万ドルとなる。

この記事はTechCrunchでよく取り上げられる典型的な資金調達の話ではない。

BiofourmisのCEOであるKuldeep Singh Rajput氏はPhDを取得するためにシンガポールに引っ越してきたが、2015年に共同創業者のWendou Niu氏と事業を始めるために中退した。というのも、「病気になる前にそれを予知する」ことにポテンシャルを見出したからだ、とTechCrunchとのインタビューで語った。

AIを活用した退院後ケアのスペシャリスト

Biofourmisのプラットフォームはいくつものレイヤーから成り立っているが、本質的には患者から集められたデータと、退院後の患者の治療をカスタマイズするためのAIベースのシステムを組み合わせている。Biofourmisは特定の治療にフォーカスしていて、その中で最も進んでいるのが心臓病であり、心不全や他の心疾患を患い、そして退院した患者に照準を当てている。

心疾患の患者の場合、Biofourmisプラットフォームは、患者の健康状態をモニターし、そして事前に問題を把握して最適の治療法を決めるために、センサー(一般消費者向けのウェアラブルではなく24時間身につける医療用センサー)からのデータとテクノロジーを使う。情報は専用のモバイルアプリを通じて患者とその介護者に共有される。

薬は飲む人によって異なる作用を及ぼすが、データを集めてモニターし、数字を分析することで、Biofourmisは“デジタルピル”を通じて患者の健康を最もいい状態にするのを手伝うためのベストの薬を提供することができる。これは、マトリックスのような未来的なものではなく、リアルタイムに患者のニーズに基づいて展開されるデジタル処方箋のようなものだ。同社は、数時間内に薬を患者に届けるアマゾン傘下のPillPackを含む医薬品配達プラットフォームのネットワークを活用する計画だ。

そう、まだこれは未来の話だ。というのもBiofourmisはサービスを商業展開するためにFDAの承認を待っている段階だからだ。承認は今年末までに得られる見込み、とSingh Rajput氏は語った。20もの異なるサイトで患者5000人以上をカバーした臨床試験を行ったため、彼は楽観的だ。

テック面においては、Biofourmisは予測機能で素晴らしい結果を出してきた、とSingh Rajput氏は話した。90%のセンシティビティで「心不全を14日前に予測した」米国でのテストの例を引用した。これはBoston Scientific社のHeartlogicのように数千ドルもする高度なキットではなく、数百ドルの標準の医療用ウェアラブルを使って成し遂げられた。ただし、数千ドルもするキットの場合、見通す期間がより長い。

Biofourmisのようなこのタイプのディスラプトは、医薬品企業にとっては計画をぶち壊すことのようなものとなるかもしれない。しかしSingh Rajput氏は、薬の効能、そしてそれに伴う価格を評価することが難しいために、業界がヘルスケアに対してより質の面からのアプローチに移りつつある、と主張する。

「今日、保険会社は薬の値段をどのように決めるか透明性がなことに気づいていない。しかしマーケットにはすでに結果に基づいて支払う50もの薬がすでにあり、マーケットはその方向に進んでいる」と語った。

結果に基づく支払いは、保険会社が薬の効果に基づいて、別の言葉で言うと、いかに患者が回復したかにに基づいて費用を払い戻すことを意味する。そのレートは多様だが、免除レートの下げがないことで、薬が思ったほどに効いていないと保険をかける人の支出は少なくなる。

Singh Rajput氏は、Biofourmisが業界をならし、薬の効きという面で透明性を加えることができると確信している。また、製薬会社は他社のプロダクトよりも自社のものが優れていると示すのに熱心だが、これこそがBiofourmisが進めたいモデルだ。

実際、Biofourmisは初めは製薬会社経由で市場開拓するつもりだ。Biofourmisは製薬会社の薬をひとまとめにしてパッケージとしてクリニックに売り込み、その後、引きがあれば保険会社との交渉に移る。そしてデジタルピルを通じて販売された「おすすめの薬」で5〜10%のコミッションを徴収する。

米国での賭け

今回調達する資金で、Biofourmisは拠点をボストンに移し、すぐに商業展開するという賭けに出ようとしている。ソフトウェアとプロダクト開発を行うスタッフ45人を抱えるシンガポールでも存在感を高めることはできるだろう。しかし新しい米国のオフィスは、現在のスタッフ14人から今年末までに120人に成長する見込みだ。

「米国は最初から主要なマーケットだった。顧客に近いところにいること、そして臨床データを蓄積することは極めて重要だ」とSingh Rajput氏は語る。

彼はシンガポールを賞賛し、会社はシンガポールにコミットする一方で(投資家にEDBIを加えるのは明らかにそのサインだ)、彼は自身がかつて学んだボストンが「重要な臨床能力を持つデータサイエンティストを探す主要マーケット」であることを認めた。

米国に拠点を移すのは心疾患のプロダクトを展開するためだけでなく、他の治療をカバーするプロダクトの準備をするためでもある。現在、Biofourmisは痛みや整形外科、腫瘍をカバーする6つのトライアルを抱えている。また、米国外のマーケットに拡大する計画もある。特にシンガポール、そしてBiofourmisがJiankeをリードする計画のある中国だ。

Singh Rajput氏はTechCrunchに対し、同社が次に資金調達をすれば企業価値10億ドルを達成する見込みだと語った。その資金調達は18カ月先とされていて、現在の企業価値については明らかにしていない。

しかしながらSingh Rajput氏は今回のラウンドには募集以上の申し込みがあり、そして“争いを避け中立を保つため”に製薬会社からの投資を断ったことを認めた。

彼はまた、将来的にはIPOを視野に入れていて、2023年を仮目標としている。しかし、その頃までにはBiofourmisは少なくとも2つのプロダクトを展開している必要がある、とSingh Rajput氏は語った。

そこにたどり着くまでの道のりは長いが、今回のラウンドは間違いなくBiofourmisと同社のデジタルピルのアプローチをテック業界のマップに記すものとなった。

イメージクレジット: krisanapong detraphiphat / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)