血漿ベースの新型コロナ治療法開発に米政府が約16億円注入

先週我々はEmergent BioSolutions(エマージェント・バイオソリューションズ)の治療学事業部門の責任者Laura Saward(ローラ・サワード)博士に、同社の血漿をベースとする新型コロナウイルス(COVID-19)治療法の開発について話を聞いている。そして今、同社は米国生物医学先端研究開発局(BARDA)から1450万ドル(約16億円)の資金を得たと発表した。BARDAは米保健福祉省(HHS)の一部門で、今回調達した資金は、可能性がある治療法の開発のスピードアップに使う。

Emergent BioSolutionsは、新型コロナに感染し、それによって引き起こされる呼吸器疾患を抱える患者の処置に使う2種類の血漿ベース治療法の開発にすでに取り組んでいる。そのうちの1つは馬から採取した血漿をベースにしたもので、大量生産できることがメリットだ。もう1つは人間の血漿を使用していて、こちらは患者の拒絶反応を引き起こす可能性を抑えられる。

どちらの場合も、患者の免疫を高めることができる「高度免疫」治療製品を開発する1つの方法として回復期患者の血漿を使うというコンセプトに基づいている。研究者や衛生当局が調べている、回復期患者の血漿の他の使用法と似ている。しかし直接注入するアプローチではなく、Emergentはウイルスと戦うための多くの異なる種の抗体を含む血漿ベースのソリューション、しかも予想通りの効果を伴うものを作り出すことで状況を打破しようとしている。

同社はすでにこれらのソリューションの開発に取り組んでおり、似たような治療法を実用化させた以前の経験をフル活用しながら開発、認証、テストを急いでいる。しかし今回、特に人間の血漿を使ったプログラムの開発を加速させるためにBARDAから1450万ドル(約16億円)を得た。計画では、新型コロナウイルスから回復した人の血液を使って開発を行う。同社はまた、すでに献血の回収とスクリーニングを始めている。

次のステップとして、Emergent BioSolutionsのソリューションは米国立アレルギー感染症研究所との臨床試験で確かめられる。同研究所が治療の有効性を判断する。

画像クレジット:zhangshuang/Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Cue Healthが現場で使用する携帯型新型コロナ検査器の開発で米政府と契約

バイオテックのスタートアップCue Healthが、米保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)の生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority, BARDA)と1300万ドル(約14億円)の契約を結んだ。この契約金は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を起こしている新型コロナウイルスSARS-CoV-2の存在を検出する、片手で持てる分子検査器の開発と迅速化に使用される。

Cueは2014年に、家庭でも検査などができるインターネットに接続された超小型実験室(ミニラボ)で起業し、これまで750万ドル(約8億円)を調達している。同社が現在開発しているプロダクトは、カートリッジのような検査キットとインターネットに接続されたミニラボデバイスを結びつけて、結果をパーソナライズされたアプリベースの健康ダッシュボードに送信する。

同社は2018年にBARDAと3000万ドル(約32億円)の契約を結んでおり、インフルエンザと多重呼吸器病原体の現場および家庭用簡易検査器の開発と検証を任されていた。この既存の関係や作業は新型検査器の開発に向けた努力を早急に始めるのに役立つだろう、と同社は言っている。

CEOのAyub Khattak(アユブ・カタック)氏は、声明で「過去2年間、家庭や治療現場でインフルエンザの分子検査を20分でできる検査器をBARDAと共同開発してきた。我々のインターネットに接続するプラットフォームは、SARS-CoV-2ウイルスの検査に関しても重要なツールとして役に立つだろう」と述べている。

同社はまた同年のシリーズBで4500万ドル(約48億円)を調達し、初めてのFDA認可の臨床製品を開発する資金にした。それらは同社にとって初めての消費者向け診断ツールの評価に使われる製品でもあった。

Cueが提案している検査ソリューションは、綿棒で採取した鼻水を検体として、25分間以内に結果が出る。検体を検査専門機関などへ送らなくても治療の現場で検査することができる。

FDAの緊急時使用認可(Emergency Use Authorization)で認められた、現場使用型高速検査器はCueの製品だけではない。利用可能になる具体的なスケジュールはないが、検査器が足りない現状では、効果がある製品がなるべく多くあった方がよい。このCueの仕事は、グローバルな危機や未来のパンデミックで役に立つ、長期的な意義を持つだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

J&Jが新型コロナのワクチン開発基金に米政府機関と共同で約1070億円出資

製薬大手のJohnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)は30日、米国保健・福祉部門の生物医学先端研究開発局(BARDA)と提携して新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンと抗ウイルス治療研究開発に10億ドル(約1070億円)超を拠出すると発表した。

この提携は、BARDAとJ&JのJanssen Pharmaceutical (ヤンセンファーマ)の部門がすでに結んでいる合意を拡大させたものだ。

合意では、同社はワクチン10億人分超を提供することを目標としている。遅くとも2020年9月までにワクチンの臨床試験を行う予定で、初回出荷分のワクチンは2021年初めまでに緊急使用目的で提供される見込みとしている。

BARDAのJ&Jとの提携は、現在行われているワクチンの開発に加え、可能性のある抗ウイルス治療の研究・開発も含んでいる。これらの取り組みの中には、ベルギーの科学機関Rega Institute for Medical Researchと行っている開発もある。

J&Jはまた、グローバルの製造能力を拡大するとも述べた。追加の生産能力により、緊急パンデミック使用のための収益目的ではない安価なワクチンを一般に提供することが可能になる、と同社は説明している。

ハーバード大学医学部附属病院のひとつベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターのチームとの協業でJanssen Pharmaceuticalは1月に可能性のあるワクチン候補の研究を始めた。そうした候補はいくつかの学術機関でのテストを経て主要な新型コロナウイルスのワクチン候補となり、またこれとは別に2つのバックアップもあるとのことだ。

先週、 ワクチンに取り組んでいる別の製薬会社であるModerna Health(モデルナ・ヘルス)は、早ければ今秋にも、ヘルスケアワーカー向けに実験治療を行うことができるかもしれないと明らかにした。

Modernaのワクチンは、この病気の予防のために少量の新型コロナウイルスそのものではなくメッセンジャーRNAを使っている。mRNAの使用は予防接種を受ける人を病気にさらさないということであり、病気にかかるリスクはない。

Modernaは3月23日にワシントン州で行われた第1段階の臨床試験の一環として、ボランティア参加者にワクチンを提供した。

画像クレジット:zhangshuang / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi