スマートフォンのアクセサリは今ではものすごく種類が多いが、でもそのほとんどが、第一世界の…ぜいたくな、どうでもよい…問題を解決するものばかりだ(栓抜きのついたスマホケースとか)。でもたまには、取り残された世界に変化をもたらそうとするものもある。Dreamit Venturesが資金を提供しているBiomemeの連中はこのほど、iPhoneやiPod touchをDNA複製マシンに変えて、病気の診断や治療を都市から遠い僻地にも提供できるデバイスを開発した。
(聞かれる前に言っておこう。Androidのサポートも今準備中だ。)
そのデバイスの高度な技術はもっぱら、qPCR thermocycler(定量PCRサーモサイクラー)と呼ばれるDNA複製増幅法に依存している。その装置を使うと、少量の細胞からでも詳細なDNA情報を知ることができる。疾病の診断には理想的だが、使用技術が難しい、値段が高い、などのため、利用できる医療機関/研究機関は限られている。そしてそこが、Biomemeの出番となる。
同社の5人のチームは、1年足らずで、精度が高価な装置並でお値段は格安というサイクラーを作り上げた。お安いのは、頭脳の部分をBluetoothで接続されたスマートフォンが担当するからだ。では、その仕組みを見よう。
まず、ユーザのスマートフォンを同社のモバイルPCRマシンにBluetoothで接続する。次に別売のテストキットを取り出して、そこにごく少量のサンプルを取り出す…テストキットは使い捨てなのでこれが同社の収益源になる。サンプルテストのための簡単な準備を行い、サンプルをマシンの上部にロードし、結果を待つ(協同ファウンダで事業開発を担当するMax Perelmanによると、以上一連の作業は手の不器用なVCたちですら間違えないだろう、と言う)。
このプロトタイプの、3Dプリントで作った筐体中にはArduinoが鎮座してかんじんのお仕事をする。ヒーターとファンを制御してマシンの温度を調節、励起光源のコントロール、スマートフォンとのワイヤレス通信、などなど。一方、スマホ側ではカメラが活躍してDNA配列の発光状態をアプリに伝える。そしてその専用アプリが、DNAの状態を疾病の特徴と対照する。このハードウェアの今のバージョンは、まだかなり荒削りで、しかも大量のオープンソースコードをセキュリティ的に無防備で使っている。でも協同ファウンダのMarc DeJohnは、当面はこれでよい、と考えている。
この、スマートフォンを電脳として使うPCRマシンは、予価が1000ドルだが、今後医療世界で需要が増えれば、興味を抱(いだ)いた消費者が気軽に買えるぐらいの値段にはなるだろう、という。そうなると、DNA検査の民主化という、たいへんな事態が訪れる。
しかしPerelmanによると、スマートフォンを利用する医療検査機器に対して合衆国の規制はまだ寛容でない。サラダ菜の葉っぱのDNAを調べるぐらいしか、できない。そこでBiomemeは、南アメリカやアフリカに進出して分散検査システムを構築することを考えている。そして各地の小さなラボが、リアルタイムで疾病の検査を行い、結果を専門医に送るようにしたい、と。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))