SEO業者はコンテンツマーケッターに鞍替えするべきか?

2週間近く、SEO Japanの更新をご無沙汰してしまい失礼しました。新サービスのリリースで忙しかったのに加え、SEO関連でも色々動きがありまして。。。そんな状況でタイムリーな話題を1つ。従来行われていたSEOが最近注目のコンテンツマーケティングに取り込まれつつある、今後のSEOはコンテンツマーケティングの一環として扱われるべき、という動きや論調が業界内でありますが、今回はそんな業界の方向性に関して米国のサーチマーケティング会社が1つの見解を。 — SEO Japan

今月の初め、ガーディアンは、グーグルが「旧知の仲のSEOを嫌いになり、新たに台頭しつつあるコンテンツマーケティングとの関係を深めている」と指摘していた。しかし、SEOは今でもグーグルと良好な関係にある。また、ガーディアンが何と言おうと、グーグルはSEOなしでは生きていくことは出来ない…その上、コンテンツマーケティングは「新たに台頭」しているのではなく、検索エンジン業界にとって、新しいだけである。

この記事の著者(DBD Mediaのジョナサン・ピギンズ氏)は「SEOは、質の高い記事の作成とPR等、以前よりも遥かに広範なスキルが必要とされている..」と示唆しているが、この指摘は必ずしも正しいとは言えない。検索エンジンは、健全なウェブサイトを上位にランク付けすることを望んでおり、非常に多くのブランドが、コンテンツマーケティング戦略よりも、ウェブサイトのカノニカルタグから多くのメリットを得ている。


テクニカルSEOの担当者が、デザイナーになるべく勉強する必要がないように、コンテンツマーケッターに鞍替えする必要もない。フリーランサーの場合は別だが、全ての役割を一人でこなさなくてもよい。ちなみに、「とんでもなく魅力的なコンテンツ」を作る方法に加え、コーディングもマスターしているなら、高額な料金を請求することが出来るだろう。

Google is not trying to turn you into Shakespeare

グーグルは、SEOのエキスパートをコンテンツマーケッターに変えようと試みているわけではない。

このサイト(Branded3)の検索部門を統括するティム・グライスは、3月に開催されたBrightonSEOBranded3のデジタルマーケティングセミナーで行ったプレゼンで、「既に上位にランクインしているなら、リンクはあまり関係がない」と指摘した。

グーグルの検索結果で上位に君臨するサイトは、必ずしもリンクの数が多いわけでも、あるいは、優れたリンクを持っているわけでもない。ただ単にその他のサイトよりも質が遥かに高いだけである。良質なリンクやコンテンツの量が多くても、ユーザーエクスペリエンスがひどいなら、トップ3に食い込むことは難しい。だからこそ、SEOが今でも重要な鍵を握っているのだ。

コンテンツマーケティングは、ブラックハットSEOに対するリアクションなのか?

SEO業界の関係者が「ビッグデータ」と言うフレーズを聞くと「今SEO業者が計測しているデータであり、グーグルがますます巧妙にSEOから隠そうとしている」と考えてしまう。同じように、「コンテンツマーケティング」に関しては、デジタルマーケティング業界が、グーグルが積極的に与えるペナルティに反応し、もともと有効に働くべきではなかった以前のSEOの戦略から距離を置きたがるだけであり、あっさりと退けてしまいたくなる。事実上、これはスパム行為を行わないようにするための専門用語に過ぎない。

SEO、そして、私達(SEO業界)が「コンテンツマーケティング」と呼ぶ取り組みは、目的は似ているものの、内容は全く異なる。リンク構築、オンラインPR、そして、コンテンツマーケティングは、全て、SEOの一部である。コンテンツマーケティングは、他の取り組みよりも、よりグーグルの管理下に置かれていると言えるだろう – 良質なコンテンツを作成すると、自然にリンクを張ってもらえる。オンライン PRは、コンテンツを活用して、リンクを獲得するアプローチだが、リンクが関わらない場合でもPRは行われいる。そのため、グーグルを操作しているわけではないと考えられるのだ。

最近でも、昨年の11月、マット・カッツ氏が、SEOを「アクセス可能であり、クロール可能な優れたサイトを作り、ほぼマーケティングと同じような取り組みを行い、知ってもらう試み」だと定義していた。カッツ氏が、オンページSEOとアウトリーチ(外部への宣伝/接触)をSEOの重要な要素と見なしていることは明らかであり、なぜ、突然、テクニカルSEOのエキスパートが、キャリアを変える必要があるのか私には分からない。

SEOのエキスパートとコンテンツマーケッターは持ちつ持たれつの関係

ピギンズ氏は、次のように結論付けている:

「コラボレーションが、今後の鍵を握っている。コンテンツマーケティングとSEOの関係は、共存を目指すとき、最高のポテンシャルを発揮する。つまり、ブランドは、強固な内部のナビゲーション等、SEOの戦略を使って、コンテンツを支える必要があるのだ。」

The future of SEO

「コラボレーション」と言う用語は、一人で双方の取り組みを担当しなくても良いと示唆している。また、ウィル・クリッチロー氏が、「万能型のマーケッター」になることを薦めているが、現実には、スキルを拡大することは不可能である – 大企業の場合、2つの領域を把握している1名の人材ではなく、SEOを得意にする人材とコンテンツを得意にする人材を雇用する方が、効率が良い。

コンテンツマーケッターはSEOのエキスパートから学ぶ点が多い

これはどちらにも言えることである。SEOは、長年に渡って、コンテンツを濫用してきたが(今もなお濫用を続けている)、一流の広告代理店やマーケティング企業は、効果的なSEM戦略に多額の予算をどのように割り当てればいいのか、理解していない。

リー・オデン氏は、「コンテンツマーケティングは、SEOの一部ではない」と主張している。その通りだ。コンテンツマーケティングは、SEOの実行を望む全ての会社が実施するべき取り組みだが、だからと言って、一人で全て背負い込まなければいけないわけではない。

リンク構築は、クライアントが持つマーケティング素材を使っているなら、それがオフラインの取り組みであれ、あるいは、既に作成しているコンテンツであれ、自然に実施しやすい。しかし、特にコンテンツをリンクに値する作品にする時間は限られている場合、この素材を得ることは難しい。だからこそ、コンテンツマーケッターにはSEOの知識が求められているのだ。

…そして、SEOのエキスパートは、すぐそばに待機し、指示を送る必要がある。さもなくば、グーグルのような、収益性の高いチャンネルは無駄になり、また、その優れたコンテンツを誰にも活用してもらえなくなってしまう。


この記事は、Branded3に掲載された「Should SEOs become Content Marketers?」を翻訳した内容です。

立場がサーチマーケッターということもあるでしょうが、どちらが上というより持ちつ持たれつで協力・共存しながらより効果の高いウェブマーケティングを目指すべき、というお話でした。ま、私もどちらが重要か、という点には余り興味がありませんし、SEOをやってきた人はSEOにコンテンツマーケティングの視点を、コンテンツマーケッターはSEOの視点をより自身のウェブマーケティングに活かせればより良い結果が期待できる、ということかと思います。言葉は流行っているものの、未だ実施しているサイトの数は少ない、特にそれがSEOと連携したものは皆無のコンテンツマーケティングですが、さて今後どのように発展していくのでしょうか。そしてSEOは今までの形を変えてどのように進化していくのでしょうか。 — SEO Japan [G+]

デザイン&開発コミュニティに分かってもらえないSEO

SEOをウェブデザインや開発の初期過程から導入し、理想のSEOを行っていくことは全てのSEO担当者の理想。とはいえ、デザイナーや開発者にSEOの意義と役割を理解してもらい、導入の支援を受けることは相変わらず難しい課題の一つです。今回はとあるSEO専門家が人気ウェブデザインブログの編集者とのやり取りを元に、SEOへの不理解さについて嘆いた記事を。その内容にSEO担当者なら共感&納得、デザイナーや開発者ならさて何を思うのでしょうか。 — SEO Japan

先日、私はウェブデザインで有名なスマッシングマガジンに対する記事を作成し、ゲスト投稿として提供した。SEO専門のエージェンシーが最近どのような取り組みを行っているのかを実証し、デザイン/開発コミュニティがSEOに関して抱く誤解を解くため、私は当該の投稿を作成した。

以下に私が投稿した作品を掲載する。また、eメールの最後には、配信を見送ったスマッシングマガジンの編集者による返信を加えている。 スマッシングマガジンと何度かeメールを交換したものの、同サイトには、いまだに私が指摘するSEOの取り組みを信じてもらえていない。SEOに関する誤解はポール(スマッシングマガジンのブログの作者)だけが抱いているわけではなく、世界有数の規模を誇るデザイン関係のブログにも存在する。こんなにeメールの交換でイライラしたことはない。心からスマッシングマガジンには、当該の記事に対して、SEO業界の関係者が作成した記事を投稿してもらいたいと願っている。

以下に私のゲスト投稿を掲載する:

SEOの専門家またはSEOエージェンシーの仕事は、主にウェブサイトにビジターを集め、検索エンジンから得る収益を増やす取り組みを支援することだ。そのためにSEOが利用する戦略は、時と場合によって変化し、オンラインコミュニティの一部の認識と実際のSEOの取り組みの間には大きな隔たりがある。

先日、ポール・ボーグ氏が投稿したエントリの冒頭で、同氏は読者に対して、SEOへの投資を止め、様々な作業に力を入れるべきだと主張していが。その様々な作業と言うのは、良質なSEOエージェンシーが常に実施しているはずの作業であった。これでは、運動するのではなく、ジョギングやサイクリングを始めるべきだと言っているようなものだ。問題はSEOへの投資を止めるべきか否かではなく、新しいSEOの世界を理解していない人達が存在することだ。

過去、平均的なSEO業者は、以下のような手法を実施していた可能性がある – これは古いSEOであり、現在のSEO戦略に組み込むべきではない:

  • 多数のキーワードを加えるためだけにコンテンツを最適化する
  • 面白味に欠けたブログのエントリを作成する
  • ディレクトリに投稿する
  • 記事のシンジケーションを行う
  • リンクを交換する
  • サイドバーやフッターのリンクを買う
  • 有料の投稿を売るためだけに存在するブログで有料の投稿を行う

このような行為を毎月クライアントのために実施している業者は、今でも数多く存在する。しかし、だからと言って、このような手法にSEOが集約されているわけではない。2012年、グーグルは多数のペナルティを発動し、多くの質の低いSEO業者のクライアントにペナルティが適用されていた。一部のサイトはいまだに低迷している。

一方、良質なSEOエージェンシーは、毎月、次のような取り組みを行っているはずである:

  • ユーザーにサイトを好きになってもらえるように、優れたデザイン、コンテンツ & ユーザビリティを構築する
  • クライアントの実際のブランドの強みと専門技術を使って、拡大可能且つ自然なリンク構築を策定する。- データの公開、イベントの実施、実在するブロガーやジャーナリストとの関係構築等
  • Q&A、レビュー等、ユーザーが作成したコンテンツを用いて、ロングテールのキーワードをターゲットに絞る
  • 以前の業者が配置した可能性のある劣悪なリンクを一掃する – 劣悪なリンクは、グーグルの怒りを買うため、マイナスの影響をもたらす
  • コンバージョン率等のデータを分析し、セールスを改善する新たな機会を探し出す
  • ソーシャルネットワークで熱意のあるユーザーに共有してもらう点を考慮し、魅力的なバイラル & ソーシャルキャンペーンを策定する
  • リンクおよびソーシャルネットワークのユーザーの注目を集めるコンテンツマーケティング戦略を立案する
  • 問題およびペナルティのトラブルシューティングや解決を行う(意外と一般的に行われている)

上述した取り組みの多くは、デザインエージェンシー、PRエージェンシー、あるいは、インハウスのチームでも実施することが出来るように思えるかもしれない。その考えは恐らく的を射ているだろう。SEO業者を採用する主な理由は、SEOのトラフィックのストリームを担当し、適切に優先順位が付けられていること、そして、実行に移されていることを確認する点である。この取り組みを担当する人または業者がいない状態では、何かを見過ごしたり、遥かに質を上げることが出来るにも関わらず、行動を起こさない等の問題が発生する。

最近のSEOエージェンシーの仕事は、デジタル戦略エージェンシーの取り組みに一致するものの、この点を受け入れ、SEO、デザイン、開発、そして、その他の関連する全ての分野は、1年前と比べ、大幅に統合されていることを理解する必要がある。

SEO業界は、優れたデザインとユーザビリティを、サイトに価値を加え、クライアントが目標を達成する上で役に立つ手段として受け入れている – デザイン & 開発コミュニティにもそろそろ同じようにSEOを受け入れてもらいたい。受け入れてもらえないなら、1日中リンクと関係の構築を行うものの、SEOの功績を認められず、SEOの改善を報告せず、そして、SEOの改善に対する報酬を得ないPR業界の二の舞になるだろう。

スマッシングマガジンからの返信を以下に掲載する:

紹介してくれた多くの問題は、コンテンツマネージャーやコンテンツストラテジストが取り組む仕事であり、なぜ「SEOエージェンシー」と呼ぶのか分からない。主要なSEOのエキスパート(SEOmoz等)が実際に何をしているのか、そして、ウェブサイトのオーナーはどのようなメリットを受けているのか知りたい。SEOに関連する幾つかの戦略やアイデアは、SEOの専門家による実際の取り組みを説明する上で、とても分かりやすいのではないだろうか。

どうやら、上述した取り組みが、SEOエージェンシーの主な仕事ではなく、おまけに実施している仕事だと感じているようだ。

アップデート: スマッシングマガジンが、同サイトが私の投稿を拒否したわけではなく、オーディエンスにマッチするように少し変えてもらいたいだけだったと言う点を明記して欲しいと言ってきた。オーディエンスに合わせるために文章を変えると、正直な見解を述べると言うこの投稿の意図を損ねることになり、私自身、編集する気にはならなかった。


この記事は、Branded3に掲載された「Why design & development blogs need to embrace SEO」を翻訳した内容です。

記事で書かれているSEOエージェンシーの作業、実際の所はかなり高度な内容で、日本でも大半のSEO会社が提供していないサービスも含まれていると思いますが、かといってデザインや開発会社、マーケティング会社が代わりにやっているかというとそうでもないんですよね。彼らがそういった作業をできるかというと、SEOの理解度・知識含めて限界がある気もしますし、最近話題のコンテンツマーケティングもサービス提供会社が増えてはいますが、コンテンツに特化した所が大半で、SEO的なサービスは提供できていないでしょう。その意味では、新手の次世代SEOに対する需要は相当あると思いますが、これまでのSEO会社が効果的なコンテンツ開発やソーシャルキャンペーンを行えるかというと、テクニカルな作業に特化した会社が多く、それはそれで疑問もあります。

実際、私の会社でも、リンク周りのサービスは一通り行っていますが、コンサルは最低限ですし、コンテンツ開発はインフォグラフィック等、パーツレベルで提供するのみ、最も力を入れているコンバージョン最適化はSEOと別にLPOサービスとして行っています。会社規模も小さく、中途半端に何でもやらず、大手代理店や企業を特化したサービスでサポートする存在として位置付けていることもありますが、ここに書かれているようなSEO関連サービスを包括的に提供できる企業がもっと出てくると日本のSEO業界ももっと盛り上がり、かつ周りから理解と協力を得られていくかもしれませんね。誰か頑張れー、じゃなくて私の会社もサービス拡充は続けていきますし、一緒に頑張りましょう! — SEO Japan [G+]