卒花の実例レポから式場検索、結婚準備に必要な情報を集約した「ウェディングニュース」が2.8億円調達

SNSやクチコミサイトを通じて“消費者のリアルな声”が世の中に行きわたるようになった今の時代、個人が情報を集めたり何かを購入したりする経路にも変化が訪れている。

従来は雑誌などアナログでの情報収集が基本だった「ブライダル」もその1つ。近年はインスタグラムやオンライン上の情報サイトを参考にする人が増えてきた。たとえば楽天(ラクマ)が2019年5月に発表した調査結果を見ても、結婚式を挙げた人たちの情報収集源が変わってきていることがわかる。

ただし本当に欲しい情報を得るためには複数のサイトを回遊するなどして“情報武装”する必要があるのが現状。実はくまなく探せば情報を拾うことができたものの、自身でそこにたどり着けずに「結婚の準備を進める過程で苦い思いをした」という人も存在する。

この課題に対する解決策として、結婚準備に必要な情報を1箇所に集約し簡単にアクセスできる仕組みを構築してきたのが「ウェディングニュース」だ。同サービスでは約5000人の先輩花嫁による結婚式の実例レポのほか、ネット上に公開されているクチコミ・情報コンテンツなどを集めてユーザーに提供。月間ユーザー数は80万人を超える。

昨年1月には結婚式場のメタサーチ機能をリリースするなど新たな取り組みもスタート。運営元のオリジナルライフでは今後もプロダクトを進化させていく計画で、それに向けて本日1月20日に複数の投資家より総額2.8億円を調達したことを明らかにした。

同社にとってシリーズAラウンドとなる今回はニッセイキャピタル、セプテーニ・ホールディングス、有安伸宏氏が投資家として参画。オリジナルライフでは2018年1月にベクトルなどから1.2億円を調達しているほか過去に複数回の資金調達を実施していて、累計の調達額は4.7億円となった。

結婚準備の情報を一箇所に集め「情報の非対称性」を解消

上述した通り、ウェディングニュースは結婚準備に役立つ情報を集めたポータルメディアだ。自社オリジナルのコンテンツに加えて、他社サイトのコンテンツや花嫁ブログなどから関連する情報を集約し「花嫁コーデ」「式場」「お金・段取り」などカテゴリ分けした上で配信している。

初期からインスタに力を入れていて、フォロワー数は20万人を突破。iOSアプリではインスタで人気を集めたウェディング関連の投稿が毎日100件ピックアップされているほか、「ケーキ」「アクセサリー」など特的のキーワードについてインスタ、花嫁ブログ、複数サイトを横断検索することもできる。

もともと代表取締役の榎本純氏が「情報の非対称性が大きい」ことを課題に感じて立ち上げたのがきっかけということもあり、ネット上に散らばる有益な情報に1つのアプリから素早くたどり着けるのがウリだ。

前回紹介した2018年1月の時点では情報コンテンツを集めたアグリゲーションサイトの色合いが強かったけれど、そこから徐々に結婚式を終えた卒花ユーザーが投稿する実例レポを蓄積。そのコンテンツを軸に、2019年1月からは式場選びにフォーカスした「ウェディングニュース式場検索」を始めた。

これは実例レポと結婚式場に特化したメタサーチサービス(複数サイトを横断比較できるサービス)を組み合わせたような仕組みだ。式場選びに関する「トリバゴ」「トラベルコ」などをイメージしてもらうとわかりやすいだろう。

ユーザーは5000人・60万枚を超える先輩花嫁が投稿したリアルなレポートによって各式場の特徴を把握できるほか、複数サイトを比較した上で最もお得な予約ルートをチェックすることが可能。また会場ごとに「初期見積もり費用と実際の価格でどのくらいの開きがあるのか」本当の料金を調べられる機能も備える。

榎本氏の話ではこの式場検索機能はユーザーからの反響もいいそう。ウェディングニュース上での結婚式場などのフェアの予約件数は月間で1500人を超え、売り上げも安定的に月1000万円を超える規模に成長してきているという(予約件数は式場検索だけでなく、記事コンテンツ経由のものなども含めた数値)。

実例レポによる結婚式選びで業界構造を変える

オリジナルライフが式場検索機能の提供を始めたのには、ユーザーの課題を根本から解決するには業界の構造自体を変える必要があるという考えに至ったからでもある。

「徐々にユーザーから支持を集めるようになってきたものの、そもそも情報武装しなければ損をしてしまうような構造自体がおかしい。ウェディングニュースを運営する中で気づいたのが、真の課題は『結婚式にリピーターがいない』こと。(式場は)常に新規の顧客を開拓し続けるために広告費用の負担が大きくなり、それが高いマージンなどにも繋がっている」(榎本氏)

結果的に日本の結婚式費用は世界一高いと言われることもあるそう。ただ榎本氏によると高いマージンによって式場が暴利をとっているわけではなく、営業利益の6割はメディアに集中している。式場としては利益を確保するためには新規ユーザー獲得に直結する広告費に目がいきがちで、いい結婚式の体験を作ることにフォーカスしにくい構造だという。

そんな業界の課題を「卒花による実名レポで結婚式場を探す体験」が広がれば変えられるのではないか。それがまさに式場検索機能を通じてオリジナルライフが取り組んでいることだ。

結婚式はその性質上、同じ人が何度も頻繁にリピートすることは考えづらいけれど「サービスを体験した人の体験談が次のユーザーを連れてくる仕組みができれば、そのユーザーはリピーターに近い」というのが榎本氏の考え。この流れが加速すれば結婚式場もいい結婚式を作ることが新規顧客の開拓に直結し、最終的にユーザーも恩恵を受けられる。

ここで「要は口コミサイトでしょ?そんなの前からあったよね」と思う人がいるかもしれない。それは本当にその通りで、みんなのウェディングやウエディングパークといったベンチャーは何年も前から式場の口コミサービスを軸として事業を拡大してきた。

では従来の口コミとウェディングニュースの口コミは何が違うのか。榎本氏は「“人となりがわかる”実例であること」をポイントにあげる。

「従来の口コミは“レビュー”に近かった。匿名のユーザーによるテキスト中心の投稿で、結婚式場の目星がついた後に『本当に大丈夫なのか』をチェックするような使われ方をしていた。一方でウェディングニュースの口コミは実名ではないものの投稿者の顔がわかり、実例写真を軸にエモーショナルな体験談を投稿している点が特徴だ。内容もネガティブなものよりもポジティブで加点採点型が多く、その人となりを踏まえた実例から式場を選ぶという流れが、実際に起こり始めている」(榎本氏)

冒頭で触れたインスタで結婚式の情報収集をする人が増えてきているというのも、まさにそれと同じでことなのかもしれない。この「人を軸に選ぶ」というトレンドは何も結婚式に限った話ではなく、コスメの「LIPS」、インテリアの「RoomClip」、グルメの「Retty」などにも共通するのではないかという話だった。

OEMで事業会社とタッグ、新たなスタンダードの確立目指す

オリジナルライフでは「ウェディングニュース」の基盤を活用した他社との取り組みを加速させる計画。1月には第一弾として宝島社が発行する女性ファッション誌「sweet」と共同で新サービスをリリースした

今回の資金調達はプロダクト開発やマーケティングへの投資を強化しウェディングニュースの使い勝手を向上させるとともに、実例による式場選びの体験を広げていくためのものだ。

オリジナルライフには現在9人のコアメンバーが在籍していてCEOとCTO以外は女性、それもほとんどが卒花のメンバー。これまで自分たち自身の体験や課題感なども踏まえてコンテンツやプロダクトを作ってきたことで「ユーザーのニーズに合致したものが作れたのではないか」(榎本氏)という。

今後はそれを継続しつつも、プロダクト開発やビジネスサイドのプロフェッショナルを仲間に加えることで、プロダクトに磨きをかけていきたいとのこと。新機能に加えてWeb版のリニューアルやAndroid版の開発なども見据えているようだ。

またビジネスをスケールさせていく上ではウェディングニュースの認知を広げ、ユーザーの第一想起を獲得していく必要もある。その施策としてオリジナルライフではウェディングニュースの基盤をOEM提供し、他社と共同で今までリーチできなかった潜在ユーザーに訴求する取り組みを進めていく。

第一弾として今月11日には宝島社が手がける女性ファッション誌「sweet(スウィート)」とタッグを組み新しいウェディングメディアをリリース。今後も20代〜30代の独身女性の顧客基盤を持つ事業会社とも連携しながら、結婚式準備や式場選びにおける新たなスタンダードの確立を目指す。