Birdが買収したスクーターシェアCircの中東事業を停止、スクーター1万台を処分

Bird(バード)は、1月に買収したマイクロモビリティスタートアップのCirc(サーク)が管理する中東のいくつかの都市でのスクーターシェアリング事業を停止した。メディアとの接触を認められていないために匿名を条件に語った複数の業界筋によると、Circの従業員約100人が解雇され、Circのスクーター1万台ほどがリサイクルのために、UAE(アラブ首長国連邦)拠点のサードパーティー企業に送られた。

Birdが「オペレーションの一時停止」と呼ぶ事業停止は、米国ロサンゼルス拠点の同社が欧州のライバル買収を発表し、事業拡大計画を明らかにしてから6カ月もたたずしてものとなる。Circの中東事業を全て停止するというBirdの決断は、バーレーン、UAE、カタールに影響が及ぶ。

8000〜1万台のCircのスクーターがEnviroServe(エンバイロサーブ)に送られた。同社は電化製品やその他の製品をリサイクルするUAE拠点の会社だ。複数の情報筋はTechCrunchに語る際に対し匿名を希望し、そのうちの1人によるとCircのスクーター約1000台が新品だった。

Birdは声明の中で、中東からの撤退ではないと述べた。「オペレーションの一時停止」で、秋に戻ってくる計画だとした。Birdはまだ自前のサービスをテルアビブで展開している。

「Birdは現在テルアビブでサービスを提供している。中東の他の地域はこの時期かなり暑くなり、オペレーションを一時的に停止している」と電子メールによる声明で述べた。「一時停止している間を利用して、中東で使われていたCircの古いスクーターのパーツを責任を持ってリサイクルする。スクーターはかなり傷んでいて、もはや我々の品質基準を満たさない。こうしたスクーターの売却または再利用は究極的には安全問題や責任問題につながりかねない。これは購入する側もしくは利用するかもしれないライダーにとってフェアではなく、倫理的に問題でもある。今年後半に中東地域でさらに範囲を広げてサービスを再開することを楽しみにしている」。

ベルリン拠点のTier Mobility(ティア・モビリティ)を含む数社が、ドバイやそのほかの中東の都市から撤去されたCircブランドのスクーター購入を申し出た、との情報をTechCrunchは入手した。情報筋2人によると、こうしたオファーをBirdは断ったとのことだ。

過去2カ月間、米国、カナダ、欧州、そして今や中東で数万台ものスクーターや自転車が処分された。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの間のコストを削減しようと、マイクロモビリティ企業がマーケットから撤収している。明るい赤色をしたJUMPの自転車が処分されて山積みになっているところを映した写真やビデオが先月Twitter(ツイッター)上で拡散し、自転車推進者や都市プラナー、業界ウォッチャーの間で広く批判や怒りをかった。自転車の処分は部分的には、Lime(ライム)とUber(ウーバー)間の複雑な契約の影響によるものだ。先月LimeはUberがリードする投資ラウンドで1億7000万ドル(約185億円)を調達した。ディールの一環として、Uberは2018年に2億ドル(約217億円)で買収したJUMPをLimeに押し付けた。JUMPの全従業員400人は解雇され、そして米国だけで自転車とスクーター少なくとも2万台が処分された。JUMPの自転車が通りから撤去され、リサイクルに回されたというニュースはカナダでも報じられた。

Tier Mobility(ティア・モビリティ)のCEOで共同創業者のLawrence Leuschner(ローレンス・ロイシュナー)氏は、JUMP自転車の購入を申し出た。また、Birdにも声をかけた。

「持続可能なモビリティにはお構いなく、結果ありきだった」とロイシュナー氏は最近のインタビューの中でスクーターや自転車を処分するという決定について語った。「この業界が取るべき手法ではなく、だからこそ私は声を大にして言わなければならない」。

中古電化製品で欧州のマーケットリーダーであるreBuyを以前立ち上げたロイシュナー氏は「適切に、そして安全にスクーターを一新して消費者に販売することはできる」と述べた。Tier Mobilityは自社の車両を新しいものに替えた後、古い電動スクーターを一新して消費者に売った。

Circは2019年1月にシリーズAラウンドで5500万ユーロ(約67億円)を調達(未訳記事)して一躍有名になった。ベルリン拠点の電動スクータースタートアップである同社は、ブランドを改める前はFlashという名称だった、Delivery HeroとTeam Europeの創業者であるLukasz Gadowski(ルーカス・ガドウスキ)氏によって設立された。

Circは素早く欧州中に拡大し、その後中東にも進出した。同社は、ステルスモードから突然登場して6カ月もたたないうちに7カ国21都市でサービスを展開(未訳記事)した。そして、その後も拡大路線を続けた。しかし他のスクーターシェアリング企業と同様、Circも停滞に直面した。同社は昨年11月に各地域のオペレーションやベルリンの本部で人員を削減(未訳記事)した。従業員の解雇は「シーズンを通じてのユーザーの変動、『経営から得たこと』、そしてバッテリー交換可能な電動スクーターへの移行によるものだ」とガドウスキ氏は当時TechCrunchに語っていた。

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(翻訳:Mizoguchi

電動キックスクーターのBirdがベルリン拠点の同業Circを買収

LAで創業された電動キックスクーター大手Bird(バード)は、欧州での競合相手Circ(サーク)を買収することを認めた。CircはDelivery Heroで知られるLukasz Gadowski(ルーカス・ガドウスキ)氏が設立したマイクロモビリティ企業だ。

買収条件などは非公表のこのディールは先週、FTが最初に報じた。2019年11月にTechCrunchはCircの経営が厳しい状態にあり、「オペレーション調整」としてレイオフを行ったことをレポートしている。

当時、ガドウスキ氏は平静を装いながら、Circがいかに多くの欧州マーケットでマイクロモビリティサービスを同時に展開するかを学ぶ必要がある、とTechCrunchに語っていた。「基本的にいかに効率をあげるか、どのようにマイクロモビリティの業務を展開するかを理解する必要がある。まだ能率的に行えていないが、夏の間にそうしたことを学んだ」と語った。

彼はまた、マイクロモビリティ業界全体の話として、これまでは陣取り戦略のようなものが展開されてきたが、現在では資本効率により重きを置く方向へと必然的にシフトしていることを認めた。「我々がサービスを開始したときはマーケット参入時期にフォーカスしていたが、今は時期ではなく効率だ」とTechCrunchに話した。

CircがシリーズBで資金を調達しようとしていたこともTechCrunchは把握している。これがBirdとの協議につながった。2019年初めにCircは6000万ドル(約65億円)超のシリーズAをクローズした。この資金は同社が12カ国43都市でサービスを開始するのに使われた、と広報は話している。

資金調達でいえば、Birdもまた資金調達したことを今回の買収発表に乗じて明らかにした。BirdにとってシリーズDとなるラウンドで新たに7500万ドル(約82億円)を調達し、累計調達額は3億5000万ドル(約380億円)となった。

マイクロモビリティ企業は支出抑制と収益化に苦戦してきた。Birdの主要なライバルであるLimeは2020年1月初め、2020年中の黒字化を目指して従業員100人を解雇し、12のマーケットから撤退することを発表した。

Circ買収の結果、Birdの欧州オペレーションに従業員300人が加わる、としている。

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(翻訳:Mizoguchi