AR時代のインフラ開発目指すCynack、AR専用ブラウザ「Sphere」をリリース

AR領域の技術開発に取り組むCynackは8月26日、AR専用のブラウザ「Sphere」をリリースした。合わせて同社では本日よりARプロダクトを共創するパートナーの募集もスタートしている。

Sphereはスマートフォンのカメラなどを事前に登録しておいたマーカーにかざすことによって、その詳細情報や3Dアニメーションなどを表示させることができるARアプリケーションだ。たとえばポスターやパンフレット、名刺などをマーカーとして設定した状態でカメラをかざすと、対象物に関する具体的な情報を立体的に表示したり、設定した音楽や動画が流れる仕組みを作ることができる。

利用シーンは企業のマーケティングやPR用のコンテンツのほか、大型商材などを紹介するための営業資料や社内ツールなど。今後は2次元のマーカー画像だけでなく、立体的なモノや場所にかざせば情報が出てくる機能(マーカーレスタイプ)、カメラ内に写った複数のターゲットに紐づけられた情報を同時に表示できる機能などを追加する予定だという。

「『スマホの次』とも言われているARデバイスが本格的に普及した際のインフラとなるようなプロダクトを作りたい。現時点で何かしらの情報を3Dで発信したいと思っても、料金が不透明だったり、画一的ではなかったりなど法人はともかく個人が気軽に使えるものは少ない。まずは3D専用のブラウザとそれを動かすための言語から始めて、中長期的には個人でも使いやすい『AR版のWordPress』のようなツールも提供していきたい」(Cynack代表取締役社長 吉村啓氏)

Cynackでは以前からAR専用のマークアップ言語OMLの開発に取り組んできた。これは吉村氏の言葉を借りれば「HTMLのAR版」のようなものであり、アプリベースではなくインターネット上でアクセスできるARコンテンツを作成するための言語だ。

今回リリースしたSphereはこのOMLを活用したAR専用ブラウザという位置付け。まずはブラウザの改良と言語のブラッシュアップに取り組みながら、ARドメイン登録システムやコーディング不要のエディタなど周辺ツールの準備を進めていく計画だという。

Cynackは2016年11月の設立。以前紹介した通り、当初はVR/ARを活用したコラボレーションツールを開発していたが、そこから少し方向性を変えてARのインフラとなるような技術・ツールを手がけるようになった。

同社は2016年12月にF Venturesから500万円、2019年8月にNOWから数千万円の資金調達を実施している。

VR/ARコラボツール開発のCynack、福岡のF Venturesから500万円のシード資金を調達

VR/ARを活用したコラボレーションツールを開発するCynackが今日、福岡と東京で活動する独立系VCのF Venturesからシードラウンドとして500万円の資金調達を行ったことを明らかにした(発表は今日だが、資金調達の実施タイミングは2016年12月)。

Cynackの前身となるチームは2016年9月にIBMが福岡で主催したハッカソンで優勝していて同年11月に起業。このときはメンバー全員が高校生だったというから、きわめて若いチームだ。現在はIBMの事業化支援を受けながら「Cynack」の開発を行っているという。Cynack創業者の吉村啓氏は高校を卒業して上京し、この4月からは慶應大学に通う大学生となっている。現在Cynackは6人で開発しているが、エンジニアとデザイナーの人員強化を予定しているそう。

CynackはIBM主催イベントでのα版の展示を行う予定というから、まだプロダクトはこれから、ということのようだ。次のような特徴を持つVR/ARプロダクトを目指しているという。

・Oculus RiftやHTC ViveといったVRデバイス、Microsoft HoloLensなどMRデバイス対応
・スマホやPCでも利用可能
・オープンなSNSのような複数人でのチャット、もしくはフレンド指定によるクローズドなチャット
・文書、表計算、プレゼン資料などのドキュメント共有による共同編集機能
・チャンネル単位での独自ドメイン取得

完成度についてはCynack CEOの吉岡氏は「現在α版という状況で、ローカルファイルを空間内に引っ張り出し、展開・編集することができます。引っ張り出されたファイルは瞬時にコラボレーションツールの方でも共有されるというイメージです」と話している。

VR空間を舞台にしてソーシャルなインタラクションを行うプラットフォームとしては、大御所FacebookのSpacesが先日のF8で発表になったばかりでTechCrunch Japanでもお伝えしてる。ほかに日本発の「cluster.」もあり、5月の正式ローンチを控えている。これら2つが友だちや家族との交流を念頭に置いたソーシャルVRである一方、Cynackが解決するのは「マルチ空間内での共同作業ということになります。後にVRのOS的な位置付けになればと考えてます」(吉岡CEO)という。