新型コロナウイルスによって、多くの人々が人間的な行動をロックダウンされてしまった。
電子商取引は、この2カ月間も、過去7年間そうであったように、同じ比率で成長を続けているように見える。PipeCandy(パイプキャンディー)では、この「1世代に一度」の変化の時期に大きな利益を維持してきた電子商取引分野の数々のセグメントを分析した。
アメリカの電子商取引の市場占有率(小売売上高との割合)、赤い線は10年間、緑の線は8週間の推移(画像クレジット:PipeCandy)
電子商取引の中で話題とM&Aサイクルを独占していたのが、Direct-to-Consumer(消費者直販、D2C)だ。このセグメントは、守旧派のCPG(消費財)企業を混乱させる創造的破壊者としてスタートしたが、今ではCPG企業ですら受け入れているチャンネル戦略企業へと移行している。Casper(キャスパー)などのIPO上場企業は元気がなく、Brandless(ブランドレス)などの革新的ブランドは廃業し、Walmart(ウォルマート)はD2C企業の買収路線を諦めるなど、デジタルネイティブな企業に莫大な投資が集まる時代は終わりを告げた。
では、デジタルネイティブたちは今何をしているのだろう? このセグメントは新型コロナウイルスの影響をどのように受けたのだろうか?
まず、一部の人には受け入れにくいかも知れない比較結果がある。私たちは、米国国勢調査局による実際の小売売上高と、私たちが所有する1000社近くのデジタルネイティブ・ブランドのサンプルのユニークビジター数を比較してみた。方向性だけを見ても、同じ基準で比較ができないまでも、その事情が浮かび上がってくる。
上の行左から、小売売上高の変化(4月19日から20日)、D2Cブランドのオンライン・トラフィックの成長率(4月19日から20日)。左列上から、衣料、家具、健康、食品(画像クレジット:PipeCandy)
家具に関して興味深いのは、ホームオフィス用の収納家具、棚、テーブルが売れている点だ。マットレスも売れている。それ以外のカテゴリーの家具は人気がない。とは言え、これはD2Cに限った観測だ。
その他のD2Cカテゴリーを見てみよう。それぞれのトラフィックの伸びは、時期によって違いがある。
上の行左から、2019年と比較した2020年4月、2019年のピーク月と比較した2020年4月、2019年1月から4月と比較した2020年4月。左列上から、栄養補助食品、子ども、フィットネス、ペット、食品、アパレルとファッション、家具(画像クレジット:PipeCandy)
上の表は、一連のD2Cカテゴリーの2020年4月の成長率中央値と、2019年の異なる時期の平均成長率とを比較したものだ。私たちは2020年4月をアンカー月とし、(1)前年の各ブランドの月平均、(2)トラフィックのピークを記録した月と比較した。
これを行った目的は、これらのブランドが2020年4月に成長したか否かを単に見るだけでなく、2019年のピーク月に同様にピークを迎えているかどうかを見ることにある。私たちの報告書では、その他の比較もいくつか行っている(2019年第1四半期と2020年駄第1四半期の新製品ローンチとPRに結びつくピークの違いなど)。
フィットネス、ペット、食品は、2019年の平均と比較して健全に成長しているが、家具、アパレル、子どもの成長はわずかだ(小売業界を襲った大量虐殺と比較して)。しかし、2019年のピーク月と2020年4月を比較したデータを切り出して見てみると、フィットネスとペットは、その他一部のカテゴリーの輝かしいD2Cの日々ほどには戻っていないものの、カテゴリーとして回復を見せている。いくつかのカテゴリーや企業は、新たな命をつなぐことができた。そのため、2019年のピーク時と比較すれば元気が足りないように見えても、一部のブランドにとってはよい知らせだ。彼らは新型コロナウイルス禍がなければ仲間外れのままだった。
新型コロナウイルスの影響を大きく映し出す方法がある。2019年のブランドのトラフィック数に注目し、2019年12月を観測点として世界が平常のままだったと仮定して2020年の傾向を予測し、現実に2020年1月から4月までに物事がどう変化したかを比較するというものだ。私たちの予測モデルでは、新製品ローンチやPR活動による数値の一時的な変化を考慮し、重視している。予測に比べて現実の数値が良い方向にずれるほど、そのカテゴリーは成績が良いということになる。
ひとつのウイルスが、この軌道に変化をもたらしたと考えざるを得ない。では早速、私たちが発見したものを見てもらおう。
画像クレジット:PipeCandy
子ども、調理器具、キッチン用品、アパレル、高級宝飾品、ファッション、女性の健康、マットレス、家具、スキンケアは予測よりも下方にずれている。だがこれは、これらのカテゴリーが低迷しているという意味ではない。2019年に実現した成長傾向に追いつけなかっただけの話だ。とは言え、悪魔は細部に宿る。たとえば家具のカテゴリーには、棚やオフィス家具を販売するD2Cブランドがある。消費者は、それらの家具に多額の投資を行った。Zoom会議で、話の内容よりも背後の本棚に並ぶ本のタイトルに他の参加者の注意が向けられることを想定してのことだ。
ワインまたは蒸留酒、食品、フィットネス、育児、ペット、栄養補助食品は、予測を上回った。基本的に、現実を忘れさせるもの(アルコール)、現実を楽しくするもの(食品)、現実から目をそらすもの(育児とペット)、現実を生き抜くためのもの(フィットネス)、またはもうひとつの現実への幻想を抱かせるもの(栄養補助食品)なら、なんでも成長している。
新型コロナウイルスがD2Cブランドに与えた影響に関する私たちの調査の要約(無料)と詳細な報告書(有料)は、PipeCandyのウェブサイトでご覧いただきたい。
【編集部注】著者のAshwin Ramasamy(アシュウィン・ラマサミー)は、D2Cブランドと電子商取引企業に関するビジネスおよび消費者受容性の測定基準の発見と分析を行うオンライン商品グラフ化企業PipeCandyの共同創設者。
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(翻訳:金井哲夫)