ELSAといっても『アナと雪の女王』のキャラクターではない。English Language Speech Assistantの頭文字で、AIを利用して各国の学習者が英語の正しい発音を習得する手助けをするアプリだ。このほどELSAは320万ドルの資金を調達することに成功した。
文法や語彙に重点を置く他の学習プラットフォームとは異なり、 ELSAではAIを利用した音声認識システムにより学習者の音声を解析してただしい発音を身につけられるようにする。
今回の320万ドルはいわゆるプレ-シリーズAで、シードラウンドとシリーズAの中間に位置する性格だ。ラウンドのリーダーはシンガポールに本拠を置き、東南アジアでこの種の投資を専門とするMonk’s Hill Venturesだ。同社の共同ファウンダー、パートナーのPeng T. Ongはこれを機にELSAの取締役に就任した。
ThELSAはサンフランシスコのスタートアップで、2015年にスタンフォード卒のVu Van(ELSA CEO)とDr. Xavier Anguera(AIと音声認識)によって創立され、2016年3月のSXSWでプロダクトがデビューした。その後、SXSWeduのローンチ・コンペで優勝している。
Vanは生まれ育ちともベトナムの女性だが、ELSAは自分が英語を習得した際の体験に基いて発想されたという。
Vanは「私はスタンフォード大学でMBAと教育学修士の資格を得るためにアメリカに移りました。スタンフォードでの最初の1年は語学の能力を身につけるための苦労の連続でした。言っているこを分かってくれないことがたびたびありました」という。
Vanは英語の読み書きにはあまり不自由しなかったが、通じる英語を話せるようになるために訛を減らす必要を感じた。ところがこれに適したプロダクトがほとんどなかった。
「ソリューションの数がとても少なかったのです。…スピーチ・セラピストに通えば発音を聞いて直してくれますが1時間に150ドルもかかります。 YouTubeやNetflixならそんなお金はかかりませんが一方通行で聞くだけです」という。
この経験がきっかけとなりVanはELSAの創立を思い立ったという。独自の音声認識テクノロジーを開発するためにこの分野の専門家、 Dr. Angueraが加わった。
ELSAアプリはiOSとAndroidからダウンロードできる。5分間の能力判定テストが用意され、ユーザーの学習段階に適したカリキュラムが作成される。
ELSAには600種類のレッスンがあり、家族や経歴などを含めた自己紹介や就職面接、ビジネス一般、旅行などさまざまな場面を想定し、3000語以上が用いられている。アプリは定期的にアップデートされ、季節(夏休みなど)や話題の映画(スターウォーズなど)に関連する話題が随時提供される。これは現実のコミュニケーションでも学習者を助けるだろう。
各レッスンは2分程度しかかからない。課題文は発音、語彙ともやさしいものから順次難しいものに移る。
ユーザーがマイクに向かって課題文を読み上げると、ELSAはAIで発音を解析し、一般的なアメリカ英語の発音をするためのヒントを示す。 ユーザーの発音の結果は赤、黄、緑などで成績が示されるのでわかりやすい。フィードバックには正しい発音をするための口の構えや舌の動かし方などのヒントも含まれる。
ELSAが開発したAIテクノロジーについてVanは「既存の音声認識テクノロジーは[ELSAとは]方向が違っていました。つまり話者の発音が違っていても意味をくみとろうとするわけです。ELSAが目指すのはその逆です」と説明する。
2年前に一般公開され以後、100以上の国で数百万のユーザーがELSAを使うようになった。現在ユーザーの半数は東南アジアから来ているが、ラテンアメリカや東欧などにも急速に普及しており、毎週数百万のレッスンが実行されている。
今回調達した資金はELSAを教室で使えるように拡張するために利用されるという。このツールでは教師はカリキュラムに応じて新しい文や単語を追加できる。APIの開発に加えて英語以外の他の言語の発音習得に役立つプラットフォームの開発も始めるという。またAI分野における人材獲得も行う。
現在ELSAは7日間の無料トライアルの後、月額3.99ドル(29.99/年)の有料購読というビジネスモデルを採用している。
〔日本版〕アプリを最初に開くと使用法が表示されるのでよく読み、順次右へスワイプする。タップして課題文を表示し、画面の指示によってマイク・アイコンをタップして課題文を読み上げるとELSAが成績を判定し、改善を要する点があれば具体的に指摘する。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)