VR(仮想現実)テクノロジーの市場が拡張を続ける中、Appleがこの分野で興味深い動きを見せた。TechCrunchはスイスのチューリッヒを本拠とするモーション・キャプチャーのソフトウェア企業、FaceshiftをAppleが買収したことを確認した。Faceshiftは人間の表情をビデオカメラでキャプチャーし、アニメーションで動作するアバターの顔にリアルタイムで移し替えることを専門とするスタートアップだ。
実は今年初めにもAppleがFaceshiftを買収しようとしているという情報が流れたが、当時はしっかりした証拠を得ることはできなかった。もちろんその間Appleは沈黙していた。
しかしわれわれはその後も調査を続け、信頼できる情報源や決定的なリンクを発見し、この買収が事実であるという確信を得た。結局、今日(米国時間11/25)、Appleは簡単な声明を発表してFaceshiftを買収した事実を認めた。
Faceshiftチームの一部のエンジニアは現在はヨーロッパを離れて、クパチーノApple本社で働いているようだ。
AppleがFaceshiftの表情テクノロジーを具体的にどのように利用するかわれわれはまだつかんでいないが、利用できる局面は多数考えられる。Faceshiftは数多くのデモを公開している。
たとえばゲームでは、プレイヤーが実際に体験する内容によってアバターの表情が変わることは普通だ。Faceshiftテクノロジーを利用すればプレイヤーの表情の反映がリアルタイム化し、もっと精巧にになるだろう。映画製作の過程では登場する俳優の表情をFaceshiftでキャプチャーしキャラクターのアニメーションの高度化に活かせることはもちろんだ。これまでFaceshiftはスタートアップであったために応用分野にも限りがあったが、Appleの一部となればエンタープライズ向けテクノロジーの開発も含めて可能性は大きく拡大する。たとえば高度なセキュリティーをクリアする身元確認のための顔認識などが可能になるかもしれない。
現在のテクノロジーでは、ゲームや映画製作における表情アニメーションの導入はコストの高い困難なプロセスになっている。Faceshiiftはこの分野に大変革を呼び起こす可能性がある。同社は「Faceshiftは表情アニメーションに革命を起こしており、どんなデスクトップからでも実行可能になる」と公式ブログで述べている。
Faceshiftテクノロジーは後期のスター・ウォーズ・シリーズの人間とはかけ離れたデザインのキャラクターの表情をアニメーションするために用いられた(上の画像とこの動画の0:41あたり)。
Appleはすでに表情のモーション・キャプチャー、キャラクターの表情処理とこれらの拡張現実への応用に関して広汎な特許を取得している。これはPrimeSense、Polar Rose、Metaioというヨーロッパの3つのスタートアップの買収によるところが大きい。Faceshiftはこの方面のAppleのテクノロジーを大きく強化しそうだ。
Faceshiftはもともとチューリッヒでローザンヌ工科大学(École Polytechnique Fédérale de Lausanne)の Computer GraphicsとGeometry Laboratoryと提携して研究していた若いエンジニア、Thibaut Weise、Brian
Amberg、Sofien Bouazizがスピンオフして創立したものだ。Faceshiftの表情アニメーションに関する基本特許のうち2つ(これとこれ)を大学が所有していたが、今年の8月に権利がFaceshiftに移された。この直後、Faceshiftは知的財産の管理をAppleと関係が深いことで知られている会社に移管している。
Faceshiftは最近オフィスをアメリカ西海岸などに設けた。映画製作とゲームに経験の深いDoug Griffin(現在はFaceshiftを離れている)がロンドンからこの部門の初代の責任者を務めた。現在ロンドン支社の責任者は特殊効果の専門家で多数の有名映画にかかわらったNico Scapelが就任している。 .
Faceshiftの初期のサイトの様子はこちらで見られる( Wayback Machine)。
YouTubeにも何本かFaceshiftのデモビデオがアップされている。IntelがRealSense 3Dカメラをプロモーションするために制作したビデオに Faceshift SDKも登場する。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)