Boseの補聴器、FDA承認を取得

補聴器なしでは聞こえに困難を抱えるという大人は3750万人にのぼる。Boseの新しいプロダクトはそんな人のためのものだ。今日、米国食品医薬品局(FDA)は、オーディオテクノロジー企業Boseの新補聴器の販売を承認した。

Bose Hearing Aidと名付けられたこのデバイスは、難聴の人が医療提供者の助けを借りなくても聞こえを調整したりコントロールしたりできるようにデザインされている。このデバイスは、マイクを通じて音の振動をとらえるのに空気伝導を活用する。そしてそのシグナルを処理し、増幅させ、外耳道にあるイヤホンを通して音を伝える。ユーザーはモバイルアプリで聞こえを調整することができる。

「難聴は社会の大きな健康問題であり、特に年齢に応じて顕著になる」とFDAのデバイス・放射線保健センターで眼・耳鼻咽喉のデバイス部門を統括する医学博士Malvina Eydelmanはプレスリリースで述べている。「今回の販売の許可で、患者は直接自分でフィット感や機能をコントロールできる新たな補聴器を手にすることが可能となった。今回のFDAの決定により、難聴を抱える人は自己健康管理にこれまで以上に積極的に関わるオプションを手に入れることになる」。

このデバイスの市販を承認する前に、FDAは患者125人の臨床試験データをレビューしたとのことだ。この研究では、専門家がデバイスを調整した場合の結果と同等であることが明らかになった。

「そうした結果に加え、患者がBose Hearing Aidを試したとき、プロが行なった設定より自分で行なった設定の方を好んでいた」とFDAはブログに投稿している。

この手の補聴器を手がけるのはBoseが初めてではない。現在は存在しないスタートアップDoppler Labsアクティブリスニング機能を搭載したイヤホンを開発し、聞こえの手段を提供した。また、Nuhearaは今年初めに聞こえを改善させるイヤホンを発表している。しかしながら、Boseのデバイスとそれらとの間にある決定的な違いは、FDAの承認だ。

Boseは、FDAのDe Novo発売前レビュー審査を受けた。これは、リスクが低〜中程度のデバイスで革新的かつ新規のもので行われるプロセスだ。FDAが言うように、ユーザーが自分でフィット感や補聴のプログラムを調整できる補聴器として初めて認可された市販向け商品となる。しかしながら、州の法律によっては、補聴器を扱う認可機関でこのデバイスを購入することになるかもしれない。

このデバイスがどのような外観なのかは明らかではない。もしかすると、“日常会話がよく聞こえるようになる”ヘッドフォンとして現在市販されているBoseヘッドフォンが、単に補聴器として再投入されるだけかもしれない。

Boseはこれまで50年以上にもわたって業界トップのオーディオ体験を提供してきた。そして最近我々は、その専門性をいかして騒音のある環境でもよく聞こえるようなものに取り組んでいる。Boseの広報Joanne BerhiaumeはTechCrunchに対し文書でこう述べた。「FDAによるDe Novo申請承認で、軽度〜中度の難聴を抱える人が聞こえをコントロールするのにBoseのテクノロジーを活用することができるようになった。補聴器によって恩恵を受けることができるのに現在補聴器を使っていないという何百万人もの人に、求めやすく、操作も簡単、そして素晴らしい音が楽しめるというこのソリューションを提供することを非常に楽しみにしている」と述べている。

イメージクレジット: Photo by Larry French/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Enzyme.comはスタートアップたちがFDA承認プロセスに費やす労力を削減する

米国食品医薬品局(FDA)の承認プロセスは、認可を得て、米国内での一般販売を開始したいと望んでいる健康スタートアップにとっては、地雷原を進むようなものである。YC(Y Combinator)出身の企業であるEnzyme.comは、そうした小規模ビジネスたちを、プロセスを自動化することで手助けしようとしている。

バイオメディカルエンジニアのJared Seehaferは、Genentechのようなヘルスケア会社を相手にしたコンサルティング経験を通して、このアイディアを思いついた。彼はコンプライアンスに従うためのすべての書類をきちんと用意することが、単に大変なだけではなく、小企業の動きを鈍くしている原因の多くを占めていることに気が付いたのだ。

Seehaferは、TechCrunchに対してこう語っている。「企業が、仕事の結果を文書化するのに、仕事そのものを行っていた時間とほぼ同程度の時間を費やしていることに気が付きました。これは数兆ドル規模の産業なのです、そこで私は『なぜこの処理を自動化するソフトウェアがないのだろう?』と考えたのです」。

Seehaferによると、コンプライアンスは創業者たちにとって、資金調達に続く第2の難問であると言う。そこで彼は意を決して、共同創業者として規制の専門家であるJake Grahamに声を掛け、Enzymeを設立した。同社のソフトウェアは昨年の夏にベータ版がリリースされたが、企業はその自動化ソフトをJira、Trello、GitHubなどのプラットフォームと統合を行うことが可能だ。

世の中にはコンプライアンスに役立つ代替手段も存在しているものの、それらはしばしば専門家の関与が必要であり、様々なソフトウェアシステムを複雑に組み合わせなければならない。

Seehaferによれば、Enzymeを使うことで、スタートアップたちは規制上の課題に関する背景を理解する必要がなくなり、事務処理から二度手間が排除される。彼らは単にそれを導入して、FDA対応の準備を整えることができる。

これまでのところEnzymeは、Refactor Capital、Data Collective、Soma Capital、そしてRock Health、ならびにScience ExchangeのElizabeth Iornsといった様々なエンジェルたちから、185万ドルの資金を調達している。

同スタートアップは現在約10社と協力しているが、Seehaferは2018年には積極的な成長目標を掲げている。特にこうしたサービスを必要としている、初期調達を行ったデジタルヘルス企業に狙いを絞っていく予定だ。彼はまた、アクセラレーターやVC企業とのパートナーシップを通じて、そうした企業との橋渡しも行う。

もちろん、各企業はこうした作業を自分自身で行い、FDAのウェブサイトに置かれたガイドラインに従うべく努力をすることもできる。しかし、Seehaferによれば、たとえガイドラインがはっきりしていたとしても、結局は多くの企業がコンサルタントやフルタイムのコンプライアンス担当者を雇ったり、次のフェーズに進めるために大量の費用を使うことが多い。

「(コンプライアンスにどのように合致させるかを)明確化することに対する阻害要因があり、異なるステージで異なるレベルの承認があるのです」と彼は言う。

Seehaferは、Enzymeが創業者たちのプロセスをより円滑に導くだけでなく、コミュニティを教育し、アイデアを持った人がイノベーションにさらに集中し、書類仕事に時間を割かなくても良いようにしたいと考えている。

どこかEnzymeのような企業が(医療スキャンダルを引き起こした)Theranosのプロセスをナビゲートする手伝いをしたのだろうか?Seehafer笑いながら、あの非難が集中している血液検査会社は「そもそも、FDAの基本的なコンプライアンスにさえ従っていなかったのですよ」と付け加えた。

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(翻訳:sako)

「医療用」Apple Watchの登場にはまだ時間がかかる

米国食品医薬品局(FDA)はApple Watchを医療機器に分類するだろうか?これは過去数年にわたって、多くの人たちが重ねて来た質問だが、新たに搭載された心房細動や不規則な鼓動を検出する機能により、その可能性は高まった。

既にAppleは、採血を通してではなく、皮膚への接触を通して、血糖値を測定しモニターするセンサーを、Apple Watchに搭載すべく開発を行っていると噂されている。Appleの9月12日のiPhoneのイベントでは何の発表もなかったが、ティム・クックは、Watchと連動できる血糖値モニターのプロトタイプを装着しているところを、目撃されている。

Appleはまた、2016年には、例えば「ユーザーの血管系の特徴を識別する」といった、Watchに適用可能な複数の医学アプリケーションに関する特許を出願している。おそらくこれは、Apple Watch 3で新たに明らかになった心房細動(AFIB)検出のためのものだ。しかしそれとはまた別の特許も浮上してきた。これもまたApple Watchのようなウェアラブルに適用可能なものに見える。「健康データを計算する電子デバイス」と題されたその特許には、カメラ、周囲光センサ、および健康データを測定および計算する近接センサを備えるデバイスが記載されている。Appleはこの特許を2015年初頭に出願していたが、米国特許商標庁(USPTO)がそれを認めたの先月のことである。

これらを総合して考えるならば、AppleがWatchに対して、目に映るものよりも、大きなプランを抱いていることが想像できる。それでも、いくつかの理由から、ユーザーたちにはそうした機能が、すぐに提供されることはないだろう。

その理由の1つはFDAが医療機器を認定する方法だ、これにはAppleがくぐり抜けたくない規制上の苦労が含まれている。規制当局の弁護士であるBradley Merrill Thompsonが説明しているように、Appleの機械的な時計そのものではなく「ソフトウェアが『FDA規制対象の医療機器』になる」のだ。

「FDAは特定の医療ハードウェアとソフトウェアだけを規制しています」と、彼は続ける。「もしAppleが、血糖値をモニターする特定のハードウェアを追加すれば、それは規制されることになるでしょう。そして特定の医療機能をもつソフトウェアを追加したときにも、それは規制の対象となるでしょう。しかし、汎用のプラットフォームはそうはなりません」。

言い換えれば、Appleはプラットフォームそのものに対して特定の医療目的を謳うことを避け、その代わりに特定の医療目的のために提供される特定のソフトウェアとハードウェアに対してだけ医療目的を謳う必要がある、とThompsonは語る。

おそらく、FDAとAppleの両者にとって、iPhone、Apple Watch、そしてApple製の他のユビキタスデジタルデバイスを含む、全てのプラットフォーム自体へ、規制適用を行おうとすることは悪夢に他ならないだろう。実際、ティム・クックは過去に、その理由から、Watchにはフィットネスと心拍センサー以外のものを追加する予定はないということを明言していた

私たちはFDAにコメントを求めた:広報担当者の回答は、当局はApple Watch単体に対するコメントをすることはできないが、FDAはAppleが最近発表した心臓研究の進展に関連したガイダンスを提供している、というものだった。

AppleがWatchのバージョンを分けて、日常利用のバージョンと、医療追跡のためのバージョンを別々に作成することはもちろん可能だ。Appleは既に最新版では2つのバージョンを作っている:LTEありとLTEなしのバージョンだ。

Appleが、皆に身に付けて欲しいと思うデバイスの、普及速度を落とす余計な規制レイヤーを追加することを決意するとは考えにくいが、同社は、私たちにバイタルをチェックさせ、健康情報をプラットフォームを通して追跡させたいと思っているように見える——もちろん一方では、Appleに有用なデータを提供しながら。Watchは、私たちの健康状態、睡眠状態、心臓のリズム、フィットネスデータを追跡する簡単な手段を提供し、それらの情報をすべてAppleのヘルスアプリに取り込む。

また、Research Kit(Appleが公開しているAPI。これを使うことで医療機関や研究機関が患者のデータを集めやすくなる)を通じて医療研究に参加することができ、重要な医療情報を追跡するために便利な、Medical IDセクションを提供している。

Watchを医療機器にするといういうアイデアは、Appleの過去数年の動きを考えれば、それほどとっぴなものではない。しかしAppleが、医療用バージョンのWatchをすぐにでも提供すると期待しているだろうか?おそらくそれには時間がかかるだろう。

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(翻訳:Sako)

不正確な製品が違法なら, 国は健康測定器具のほとんどを取り締まるべきだ

ぼくがかつて腕につけていたBodyMediaのカロリー計は、ぼくの一日のカロリー燃焼量が3000カロリーだ、と言った。もしもそれがほんとなら、ぼくはLord Of The Ringsの次回作でGollumの役をもらえただろう。消費者向けの健康ガジェット(gadget, 小道具)の精度には幅がありすぎるし、FDAは先日、23andMeの家庭用DNA検査キットの販売を禁じたばかりだ。23andMeを規制するのなら、ヘルステック(health tech)産業に属する企業の大半も、規制すべきではないか。

FDAがおそれたのは、機器の不良によって異常と判定された場合でも、消費者が不必要な手術などに殺到してしまうことだ。とくに女性の場合は、乳がんに結びつく遺伝子特性が見つかった場合には、医師のアドバイスに逆らって乳房切除を求める者が多い。しかしその検査は、“偽陽性”がよくあるのだ。

23andMeは製品のユーザに、乳がんの懸念があればより正確な検査をしてもらうよう忠告しているが、しかしFDAは、いったん持ってしまった不安はより正確な検査によってもなかなか消えないことを、十分承知していたのだ。

23andMeの製品の欠陥については議論の余地があるだろうが、でもあれを欠陥製品として規制するのなら、もっと大量に出回っている歩数計や体重計、血液検査器、睡眠検査器なども規制の対象にすべきだ。

幅がありすぎる
少なくともぼくの体に関しては、一部のヘルストラッカー(health tracker, 健康検査機器)は不正確だ。BasisのウォッチとNikeのFuelBand、それにJawbone UPとBodyMediaとFitbitは毎日、ぼくのカロリー出力に関してばらばらな値を報告する。最大と最小の差が、1000カロリーを超える日もある(そのほかの機種でも、同じような違いがある)。

これらの、ばらばらな計測値を修正して把握したいので、まず、サンフランシスコのBreakaway Performanceへ行って、自分の代謝量を測ってもらった。その検査は、測定用のマスクをつけてトレッドミルの上を走り、肺から出る二酸化炭素の量からエネルギー出力を測る。この夏やってみたテストでは、Breakawayの検査で140カロリーとなる運動量に対して、各機器はこんな結果になった:

Jawbone UP: -13% (123カロリー)
Nike FuelBand: -8% (129カロリー)
Basis: -3% (136カロリー)

10カロリー前後の違いは大したことない、とお思いかもしれないが、丸一日の数千カロリーという値を測定するときには相当大きな違いになる。ダイエットの目標達成にも、影響してくるだろう。上のテストをした日の、一日のカロリー燃焼量はこうなった:

Jawbone UP: 2,072
Basis: 2,440
BodyMedia: 2,753
Fitbit: 2,408
*Nikeはエクササイズ時の燃焼カロリーしか測定しない。

二つの体脂肪計も、比較してみた

Fitness Wave(18.9%)
Withings Smart Body(22.8%)

〔訳注: 平常体重と水中体重の比率から求める測定方法。〕

男性の場合、4%程度の誤差は“ふつう”であり“妥当”だそうだ。ただし、肥満ではない人の場合。

もちろん、これだけのデータでは、どの製品が正しい/正しくない、なんて言えない。また、同じ製品でも人によって違うかもしれない。それに、たとえばサイクリングの場合は単純に距離を測定するから、UPやFuelBandやFitbitなどは、サンフランシスコの名物である坂道と、なめらかな競技用トラックを区別できない。ぼくはwalking desk(歩行エクササイズをしながら使用するデスク)を持っているが、これは、腕を振って歩いているときと、キーボードをタイプしているときでは違う値を出す。

ほんとうはもっとたくさんのデバイスを集めて、それらが出す歩数、カロリー、睡眠などの値を網羅的に比較したかったが、機種毎の仕様の違いがありすぎて、それはあきらめた。たとえば、毎分の値を教えてくれるのはBodyMediaとBasisだけだ。次世代型のデバイスも、近くテストをやってみたい。

というわけで、おすすめできる最良の機種は分からなかったけど、なにしろ人を誤解に導く製品が多いことは、確かだ。

規制するなら徹底的に
これら消費者製品メーカーの多くが、値がそれほど正確でないことをしぶしぶ認めた。Jawboneにぼくが経験した測定結果を伝えたら、広報は、“UPは全体的なライフスタイルに焦点を当てており、人びとがその日の主な活動の基準値を知ることのお手伝いをする”、と言った。社内でも、各製品の科学的な比較をやってみた、とは言わなかった。

23andMeも、BRCAテストについて、家族の履歴の中に乳がん罹患者が多いなら、本格的な‘臨床検査’をするよう、わざわざ反転高輝度文字で注記している:


【中略】

でも、FDAが、遺伝子テストの不良は人びとを不安に駆り立てるが、ダイエット用のヘルストラッカーなどは精度が雑でもよい、と考えているのなら、それは大きな間違いだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))