アプリを中心に、スマートフォン向けの動画広告プラットフォームを展開するFIVE。同社が、これまでのノウハウをもとに、動画広告の枠を使って、遷移なくコマースやアンケートを実施できる新たなプラットフォームを展開する。プラットフォーム名は「Interface by FIVE」。5月30日よりGMOメディアが提供するアプリ「プリ画像」上で第1弾となるクライアントのキャンペーンを開始する。
FIVEは2014年10月の設立。社名の「FIVE」のとおり、5秒程度の短尺な動画広告をアプリ向けに配信する動画広告プラットフォーム「FIVE VIDEO NETWORK」、10代向けアプリに特化した動画広告マーケットプレイス「Moments by FIVE」を展開してきた。現在ではスマートフォンのウェブサイト向けにも動画広告を展開。アプリだけでも月間で約2700万人のユニークユーザー(メディア間重複を除く)にリーチしているという。また、短尺の動画クリエイティブにも強い制作チームを自社内に保有。アプリの特性に合わせた動画制作が可能だという。
全画面動画から遷移なしで商品の購入までを実現
そんな同社が3つ目のプロダクトとして提供するのが、Interface by FIVE(Interface)だ。FIVEが提供するSDKを導入したアプリ上の広告枠に動画を配信。ユーザーは枠をタップして動画を全画面で再生し、動画上のボタンをタップすることで、画面の遷移やブラウザの起動をすることなく、直接商品購入やフォーム入力の画面を表示して、アクションを完結できるというもの——と言葉で説明するよりも、まずは以下の動画を見てもらうのが、一番分かりやすいだろう。
決済機能も備えているため、動画で紹介した商品をそのまま販売することが可能なほか、キャンペーンやサンプリングなどに利用できるとしている。通常スマートフォン上では、アプリから広告を経由して商品を購入したりする場合、いったんブラウザに遷移するため、どうしても体験としては「途切れてしまう」と感じることはないだろうか。Interfaceはアプリ遷移のない、スムーズな購入体験を実現できるという。
「当初のプロジェクト名は『LP(ランディングページ)キラー』でした。LPに遷移すると、体験がぷつっと途切れてしまう。Interfaceは、動画広告なのに外部のLPに遷移しないというところがポイント。そこで購入やアンケートまでが実現できます。動画広告をただ『見るもの』とするのではなく、インターフェースにしていきたいと考えています。グローバルで見てもモバイルコマースは(コンバージョンレートが)1%程度。100人いたら99人がクリエイティブを見ても、買わずに帰ってしまう状況です。この数字を圧倒的に変えられないかと思っています」(FIVE代表取締役社長の菅野圭介氏)
FIVEでは、これまでアプリを中心にした動画広告ネットワークを作ってきた。その中で、例えば10代向けのアプリであれば、どんなキャスティングをして、どんなアプローチをすればユーザーに「刺さる」のか、ということを学んできたのだという。このノウハウは、Interfaceでのクリエイティブ制作においても武器になるという。また、国内の主要インフルエンサーの事務所とも提携しており、「キャスティングでも(商材が)ピンぼけしないようにできる」(菅野氏)とのことで、ただプラットフォームを提供するだけでなく、企画からキャスティング、動画制作、配信、決済までをワンストップで提供していくことがこのプラットフォームの強みだという。今後はネットショッピングの事業者や、商品を持つメーカー、マーチャントと組むことで、「商材×アプリ」として最適な組み合わせを自ら企画し、提案していくことも予定する。
スマートフォンが「自動販売機になる」
菅野氏は「スマートフォン(の画面が)自動販売機みたいなものになる」と語る。もちろんブラウザでECサイトにアクセスして商品を買うという、PCウェブの世界での行動はスマートフォンでもおなじみかもしれないが、菅野氏が言うのは、スクリーンに映った映像をパッと見て、そのまま購入に繋がる。商品の購入を喚起させるところから、ボタンを押して購入するまでの一通りのアクションを実現するインターフェースになる、ということだ。もちろん広告がユーザーに受け入れられるのかという話はあるが、菅野氏は「ビジネス抜きで考えると、(Interfaceを使った)面白いコンテンツ、雑誌の特集みたいなモノができないかとも考えている」と語る。
ただ、Interfaceの展開はこれまでの動画アドネットワークを中心とした同社のビジネスとは、(資産こそ生かせても)大きく構造が変わることは間違いない。菅野氏は「既存事業とは利益率もキャッシュフローも変わるし、成否によって今後の事業計画も大きく変わる」とした上で、「だがFIVEは、もともとアドテク会社になる、というつもりはない。モバイルの映像流通を一手に担いたいと考えている」と語った。「僕らは最初から欲張ってきたが、今となってはそれが良かったと思っている。動画広告のプラットフォームとクリエイティブを両方やって、運用型の動画広告から始まったが、今はブランディングの動画広告もやっている。アプリを中心に展開してきたが、今ではウェブもやっている。ここまでできると、どんなパブリッシャーでも満足度に繋げることができる」(菅野氏)