グーグルが脱クッキー技術「FLoC」を廃止、代わる新機能「Topics」を公表

(訳註:英語で「flock」は羊など動物の群れ=刈り上げられ毛がなくなった「FLoC」)

Google(グーグル)のプロジェクトであるFLoC(Federated Learning of Cohorts)は、インタレストベース広告のため利用されていたサードパーティークッキーの代わりに、ユーザーを同じような興味を持つ人々のグループに分類するというもので、物議を醸した。Googleは米国時間1月25日、それに代わる新しい提案を発表した。「Topics」である。

これは、ユーザーがウェブ上を移動する際に、ブラウザがユーザーの関心事について学習するというものだ。現時点では過去3週間分の閲覧履歴データが保存され、トピック数は300に限定されているが、順次拡大していく予定だという。Googleは、これらのトピックには、性別や人種などのセンシティブなカテゴリーは含まれないとしている。

Googleはユーザーの関心事を把握するために、ユーザーが訪れたサイトをこれら300のトピックのいずれかに基づいて分類する。これまで分類されていなかったサイトについては、ブラウザに搭載された軽量の機械学習(ML)アルゴリズムが、ドメイン名に基づいてトピックを推定する。

画像クレジット:Google

広告目的でTopics APIをサポートしているサイトにアクセスすると、ユーザーが興味を持っている3つのトピックがブラウザによって共有される。これらのトピックは、過去3週間のそれぞれの週につき1つずつ、各週の上位5つのトピックからランダムに選択される。そして、サイトはこの情報を広告パートナーと共有し、どの広告を表示するかを決めることができる。理想的には、どの広告を表示するか決定するためのよりプライベートな方法となるが、Googleは、現在の標準的な方法よりもはるかに優れたコントロールと透明性をユーザーに提供することになると述べている。ユーザーは、自分のリストにあるトピックを確認したり、削除したりすることができ、Topics API全体をオフにすることもできる。

GoogleのPrivacy Sandboxプロジェクト代表であるBen Galbraith(ベン・ガルブレイス)氏は、25日の発表に先立って行われたプレスブリーフィングでこう述べた。「Topicsの設計は、以前のFLoCトライアルから得た知見に基づいて行われました。その結果、コミュニティから多くのすばらしいフィードバックが寄せられたことはご存じの通りです。私が強調したいのは、提案を共有し、トライアルを行い、フィードバックを集め、設計を繰り返していくという一連のプロセスは、我々がサンドボックスに求めていたオープンな開発プロセスそのものであり、このプロセスが意図したとおりに機能していることを示しているということです」。

画像クレジット:Google

ガルブレイス氏は、Googleはこの新しい提案に対するフィードバックを集めるために多くの関係者と話をしてきたが、今日がエコシステムと協力するプロセスの始まりであると述べている。他のブラウザベンダーがTopics APIの追加に興味を持つかどうかは、今後の課題だ。他社はみなすぐにFLoCに冷ややかな対応を示したので、Topics APIを採用したいと思うかどうかはやや疑問だが、エコシステムがどのように反応するかは興味深いところだ。

また、広告主にとっては、Topicsは特定のユーザーにどの広告を表示するかを決定するための潜在的なシグナルの1つに過ぎないということも言及するに値する。例えば、ユーザーが現在読んでいる記事に関するデータや、ユーザーに関するその他のコンテクストデータなどで補強することができるが、ある意味、単なるもう1つのシグナルとなる。

Topics APIのトライアルは今期末に開始される予定だが、それに向けてGoogleは25日、提案の詳細を少し掘り下げた技術的な解説も公開した。

画像クレジット:Images by Christina Kilgour / Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

Ben Gabbe via Getty Images

GoogleはChromeブラウザにおけるサードパーティCookieを段階的に廃止していく一方で、新たな広告技術「FloC(Federated Learning of Cohorts)」の導入を計画しています。これは似たブラウジング行動をした人々をグループにまとめることで(個々人のブラウジング履歴はGoogleと共有しない)関連広告を表示する技術とされています。

これはGoogleのブラウザChromeにも実装される技術であり、同じくGoogleが管理するオープンソースのエンジン「Chromium」を使う他社のブラウザにも導入される可能性があります。その1つであるマイクロソフトのEdgeがFloCを無効化しており、事実上GoogleにNOと表明していることが明らかとなりました。

Chromiumのソースコードを確認すると、FloCはデフォルトでは有効とされています。つまりMicrosoft EdgeなどChromiumベースの他社ブラウザにも、コンポーネントを明示的に無効としない限り自動的にインストールされることになります。

しかし大手コンピュータヘルプサイトBleepingComputerによると、Edgeではコマンドライン引数を使ってFloCを有効にしてもブラウザ上で使用できないとのこと。つまりMSが意図的にFloCを無効にしていると解釈できるわけです。

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

そこでMSに意図を問い合わせたところ、明確な回答は得られず、代わりに自社の広告提案PARAKEETが紹介されるに留まっています。

GoogleのFLoCに関しては「正しく実装される保証がない」として、ユーザーのプライバシーにとって重大な脅威になるとの批判が相次いでいます。Chromiumベースのブラウザ「Brave」は、「Why Brave Disables FLoC | Brave Browser」にてFloCがプライバシー保護を装いつつ、プライバシーに重大な損害を与えると指摘。また同じくChromiumベースの「Vivaldi」も「No, Google! Vivaldi users will not get FloC’ed. | Vivaldi Browser」を表明し、今まで以上にプライバシーを損なう危険なステップだと痛烈に批判しており、両社ともFloCは採用しないと明言しています。

Googleは現在、何千万人ものChromeユーザーを対象にFloCをテストしており、最終的には数十億人のChromeユーザーに展開する予定です。それに対して、Chromeには及ばないものの大きなシェアを持つMSのEdgeが実質的にNoを突きつけたことで、今後の動向に影響が及ぶのかもしれません。

(Source:BleepingComputer、Via:MSPoweruserEngadget日本版より転載)

関連記事
GoogleがCookieに代わる広告ターゲティング手段FLoCをChromeでテスト開始
プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で
マイクロソフトがXbox向けChromiumベースEdgeブラウザーのオープンテストを開始
Microsoft Edgeの起動が高速に、バーティカルタブが利用可能に
グーグルが「Cookie廃止後、それに代わる他のユーザー追跡技術を採用するつもりはない」と発言
アップルのApp Tracking Transparency機能はデフォルトで有効に、早春にiOSで実装
グーグルはCookieに代わるターゲット方式による広告収入はほぼ変わらないと主張するもプライバシー面は不透明
Vivaldiブラウザーがトラッキングブロッカーを内蔵、Android版も正式版に
グーグルはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2年以内に段階的に廃止
米広告業界団体がCookieに代わるユーザー追跡方式を提案
MozillaがFirefoxのユーザー追跡クッキーをデフォルトで無効化

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウェブブラウザー(用語)オープンソース / Open Source(用語)Chromium(製品)Google Chrome(製品・サービス)広告 / アドテック(用語)FLoC(製品・サービス)Brave(企業・サービス)プライバシー(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Edge(製品・サービス)

GoogleがCookieに代わる広告ターゲティング手段FLoCをChromeでテスト開始

米国時間3月30日、GoogleはChromeのPrivacy Sandboxプロジェクトの重要な部分であるFederated Learning of Cohorts(FLoC)の、開発者によるトライアルを展開していることを発表した。

FLoCは、広告のテクノロジー企業がウェブ上でユーザーを追跡するために現在利用されているCookieに代わる技術だ。個人を特定できるCookieと違い、FLoCはローカルでユーザーのブラウジング行動を分析し、同じような興味を持つ志を持つ人々のグループにまとめる(ユーザーのブラウジング履歴をGoogleと共有することはない)。このコホートは、広告主が自分の行動を実行して関連広告を表示できるだけの限定的なものだが、マーケターが個人を特定できるほど具体的ではない。

Googleはこれを「関心に基づく広告」と好んで呼んでいるが、ユーザーが同じ関心を持つユーザーの群れの中に隠れてしまうことになる。ブラウザーが表示するのはグループ(cohort)のIDだけであり、ユーザーの閲覧履歴やその他のデータはローカルに残る。

画像クレジット:Google

トライアルは米国とオーストラリア、ブラジル、カナダ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ニュージーランド、そしてフィリピンでスタートし、Googleの計画では今後徐々にグローバルに展開されるという。2021年3月初めに明らかになったように、GoogleはGDPRなどのプライバシー規制を気にしてヨーロッパではテストを一切行わないい。特に、FLoC IDがその規制の下で個人データと見なされるかが不透明だ。

ユーザーは自分をデータの起点とするトライアルをオプトアウトできるし、Privacy Sandboxの各種トライアルをすべて拒否することもできる。

当然ながらFLoCは既存のオンライン広告システムの多くを否定するから、それが嫌な人たちもいる。広告主は当然、個人ユーザーをターゲットにできることを好むが、Googleの事前データによると「このようなグループ方式でも結果は前とほぼ同様であり、投じた広告費1ドル(約110円)当りに得られるコンバージョンレートは、Cookieを使う広告の場合のレートの95%以上」だという。

Googleによると、同社自身の広告プロダクトも、広告のエコシステムの中の競合他社とまったく同様に、CookieではなくFLoC IDにアクセスするという。

しかしこのプロジェクトを懐疑の目で見ているのは広告業界だけではない。プライバシー活動家たちも、このアイデアを完全には納得していない。たとえばEFF(電子フロンティア財団)は、FLoCによってマーケティング企業が、さまざまなFLoC IDを利用してユーザーの指紋を追跡するのが容易になると主張する。それはGoogleがPrivacy Budget という案で対応しようとしている問題だが、その効果はまだ未知数だ。

一方、ユーザーは広告業界が何と言おうと、広告を見ずに、そしてプライバシーを心配せずに単純にウェブを閲覧したいだろう。しかしオンラインのパブリッシャーたちは依然として、資金を広告収入に依存している。

このように、さまざまな関心がそれぞれ違う方向を向いているが、常に明白なのはGoogleが主導する企画をすべての人が喜ぶことはないということだ。その過程で摩擦が常に生まれる。そして、その他のブラウザーのベンダーが直ちに広告とサードパーティCookieをブロックすることはできるが、広告のエコシステムにおけるGoogleの役割は、それをさらにややこしくしている。単純ではない。

GoogleでPrivacy Sandboxを担当しているプロダクトマネージャーであるMarshall Vale(マーシャル・ベール)氏は、本日の発表声明でこう言っている。「他のブラウザーがサードパーティーCookieをデフォルトでブロックし始めたとき、私たちはその方向性に感激しましたが、その直接のインパクトが心配でした。プライバシーが守られるウェブを私たちは絶対的に必要としているから、感激するのは当然であり、しかもサードパーティーCookieが長期的な答えではないことを私たちは知っています。一方、心配なのは、今日では多くのパブリッシャーがCookieを使う広告に依存して自分たちのコンテンツ努力を支えていることです。そしてCookieのブロックがすでに、フィンガープリンティングのようなプライバシーを侵す抜け道を生み出していることです。つまりユーザーのプライバシーにとって、状況はますます悪くなっています。つまりサードパーティーCookieの完全なブロックを、エコシステムのための有効な代替を欠いた状態でやるのは無責任であり、私たちみんなが享受しているフリーでオープンなウェブにとって有害ですらあります」。

なお、FLoCや、Googleが主導するその他のプライバシーサンドボックスの企画はまだ開発途上である。同社によると、今回は最初のトライアルから学ぶことが主眼であり、学んだことに基づいてプロジェクトを進化させていきたいという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleChrome広告FLoCプライバシー

画像クレジット:MR.Cole_Photographer/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)