Solanaにいち早く目をつけたFoundation Capitalが約568億円の新ファンドを獲得

パロアルトとサンフランシスコにオフィスを構えるアーリーステージのベンチャーファームFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)は、27年前に設立されて以来さまざまな変遷を繰り返してきた。拡大したり縮小したり、成功を遂げたり不安定になったりと、あらゆるステージを経験してきたのである。

そして2022年、再び拡大モードに入った同社。3名のジェネラルパートナーとともに3億5000万ドル(約398億円)の出資を得て9番目のファンドをクローズしてから3年経った現在、同社10番目のフラッグシップファンドに向けて5億ドル(約568億円)を確保したと発表した。2名の投資家をゼネラルパートナーに昇格させ、元創業者のAngus Davis(アンガス・デイビス)氏を採用した現在、同社には6名ゼネラルパートナーが在籍。投資家を魅了してやまない数多くのディールをポートフォリオに抱えている。

その中には、急成長中のNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)、話題のパブリックブロックチェーンプラットフォームのSolana(ソラナ、Foundationが最初の機関投資家)、そして2021年12月に内密に株式公開を申請し、50億ドル(約5683億4000万円)から100億ドル(約1兆1367億円)の評価額を予測しているとされているデータ管理ベンダーのCohesity(コヒシティ)などの企業が名を連ねている。参考までに、Cohesityは、2021年3月に個人投資家から37億ドル(約4205億7000万円)の評価を受けている。

Foundationはどのようにしてこの回復を遂げたのか。創業者やそのネットワークとの強い結びつきがその一端を担っているのだろう。長年あらゆる経験を積み、その過程で人を大切にしてきた企業のみが享受することのできるメリットというものが存在する。

またFoundationは、評価基準から離れて未知のものを積極的に受け入れ、まだこれから会社を立ち上げようとしている個人に寄り添ってきた。こういった個人とは大企業の経営陣であったり、スタートアップ分野に戻ってきた創業者であったり、大学からのスピンアウトを準備しているチームであったりとさまざまだ。2008年にFoundationに入社し、現在は最も長く在籍するジェネラルパートナーの1人であるAshu Garg(アシュ・ガーグ)氏は次のように話している。「誰かがまだ会社を立ち上げる準備をしているときに、その人と握手を交わし合うというのが私たちの目標で、それが私たちのビジネスのやり方です。そこに会社は存在しません。それこそが私たちのビジネスモデルなのです」。

滑稽に聞こえるかもしれないが、これは冗談ではない。今日の市場には大量の資本が存在し、それらが生まれたての企業の評価額を引き上げているのだが、実際の製品やチームが形成されるのを待つのではなく、個人に注目するというベンチャー企業はFoundation以外にも増えている。LAを拠点とするUpfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のVC、Mark Suster(マーク・サスター)氏は自身のチームについて「我々は創業者が会社を辞めたくなったときのリスクさえも負っています。会社の設立期間、つまり創業0日目もサポートしているのです」とTechCrunchに話している

Foundationは同社の前のめりな戦略の一環として、企業のインキュベーションに重点を置いている。近年、Foundationの支援を受けて台頭してきたスタートアップには、11月のラウンドで40億ドル(約4550億円)以上の評価を受けたAIチップとシステムのスタートアップCerebras(セレブラス)、ブランクチェックカンパニーとの合併を経て2021年上場した(以来、波乱万丈なのだが)デジタルタイトル、エスクロー、クロージング企業のDoma(ドマ)(旧States Title)の他、先月シリーズDで8700万ドル(約99億円)の資金を調達した、テック企業のために開発者を見つけて審査とマッチングを行うTuring(チューリング)などがある。

他の企業と同様、Foundationはスタートアップだけでなく、同社に新しいネットワークやアイデアをもたらす新興ベンチャー企業にも資金を投入している。同社で長年ジェネラルパートナーを務めるSteve Vassallo(スティーブ・バサロ)氏によると、同社はここ数年で「導き手」の役割を果たしてくれる53を超えるベンチャー企業に約1500万ドル(約17億円)を投入しているという。

さらにFoundationは、現在進行形の学習方法も進化させている。長年のメンバーであり、2021年ジェネラルパートナーに昇格したJoanne Chen(ジョアン・チェン)氏は人工知能に力を入れており、Slack(スラック)コミュニティを通じてアイデアを共有するエンジニアリング関係のバイスプレジデントや技術系の創業者らと深く関わっている。

また同社には、GitHub上のどのプロジェクトが軌道に乗っているかを把握するために「1日に10時間を費やすパートナーがいる」とバサロ氏は話している。「企業の自動化」やフィンテックに力を入れている同社は、最近Discord(ディスコード)チャンネルに多くの時間を費やしているという。「当社の暗号チームは、間違いなくDiscordに注力しており」、web3やDeFiの取引を探している人にとっては「すばらしいプラットフォームというわけではありませんが、現在あるものの中では最高のものでしょう」とバサロ氏は話している。

この活気ある市場の中で、さらなる創造性を発揮しなければならないというプレッシャーをFoundationが感じているとしても、同社がそれを認めることはない。

Foundationが案件獲得のためにしたり見たりした奇想天外な行為について質問されたバサロ氏は、同社のポートフォリオ企業が資金調達の合間に受け取った「膨大な量のラブレター」については知っているが、今のところはスタンフォード大学のキャンパスやサンフランシスコのダウンタウンにあるセールスフォースパーク周辺で創業者と歩きながら話をすることに満足していると答えている。

ガーグ氏も同様の意見で「創業者の注目を集めるためにクレイジーなことをする企業もいますが、市場が少し落ち着くと緩和されるでしょう」と話している。

Foundationがそのような行為をすることは決してないと同氏は主張する。「私たちは、創業者がLinkedIn(リンクトイン)を更新する前から彼らと話をしているのです。もし、Tiger Global(タイガー・グローバル)と同じ時期に話をしているようであれば、それは私たちにとっては失敗です」。

画像クレジット:Foundation Capital

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)