東大発AR/MRスタートアップのGATARIが4000万円の資金調達、新時代のUI/UX開発を目指す

Amazon EchoやGoogle Homeなど、音声で操作するAIアシスタントが現実のものとして身近に広がりはじめた現在。この環境がさらに進化した先には、どんな未来が待っているのだろう。GATARI(ガタリ)は、音声を使ったコミュニケーションが、AR(Augmented Reality、拡張現実)/MR(Mixed Reality、複合現実)環境にも広がることを予測し、MR時代に最適なUI/UXを模索・開発する、東大発のスタートアップだ。

10月18日、そのGATARIが総額4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はVenture United三井住友海上キャピタルKLab Venture Partners、Nikon-SBI Innovation Fund、および個人投資家。今回の調達はシリーズAラウンドに当たる。

GATARIは2016年4月に設立された、東京大学の学生を中心とするAR/MRスタートアップだ。2016年には、Tokyo VR Startups(TVS)のインキュベーションプログラム第2期に採択された。TVSプログラムでは、しゃべった声がテキストの形になってVR空間上に現れ、話者の母語に翻訳されたものを見ることができるコミュニケーションツール「コエカタマリ」を開発している。

GATARI代表取締役の竹下俊一氏はコエカタマリについて、こう話している。「元々は音声を使った、未来のMRコミュニケーションツールを作りたかった。ただデバイスの発達がまだ進んでいないので、この時点ではMRよりはVRの方が実装が楽だと判断して、VRのコンテンツを制作している。とはいえ、VRでもリアルな空間をCGで用意して、MRっぽい、MRにつながる操作感を実現しようとした」(竹下氏)

プログラム終了後の現在、GATARIでは企業向けにHoLolensなどを使ったMRソリューションを開発するほか、ARKitを利用したスマートフォン向けARアプリを開発中で、年内にもストーリーテリングアプリをリリースしようと準備しているそうだ。「VRでは空間内を“見渡す”ことが必要だが、ARでは見渡さなくてもよい。前にある画面を自分で動かして変わるという、カメラワークが楽しい点が特徴だ。その楽しさを反映したプロダクトにしたい」(竹下氏)

竹下氏は「AR/MRを実現する環境は活発化していて、スマートフォンやHoloLensなどのデバイスも進化している。市場規模までは予想しきれないけれども、ARKitから始まって、スマホ連携のAR/MR環境が実現し、いずれは一体型のウェアラブルMRデバイスが来るだろう」と予測する。「そうした状況に合わせて、声による操作や入力をしっかり使ったプロダクトを用意したい。LINEやSnapchatは、スマホ時代のコミュニケーションのデファクトスタンダードとなった。我々は、MR時代のデファクトスタンダードとなるようなUI/UXを開発・提供したい」(竹下氏)

竹下氏は、現在も東京大学在学中。GATARIを設立後にも東京大学を中心としたインターカレッジのVRサークル「UT-virtual」を立ち上げ、全国のVR関連サークルをつなぐ日本学生バーチャルリアリティ連盟の設立・運営を行うなど、若い世代のVRコミュニティ醸成にも力を入れている。

「今回の調達では、エンジニアやデザイナーに加え、ユーザーへのヒアリング体制も強化しようと考えている。その中でも、インターンを採用しての開発や、学生へのヒアリングを通して、若い人の感性を生かしていきたい」(竹下氏)