DNA分析のGEDmatchが、警察のデータ利用に関するユーザー承諾を巡る問題を調査中

DNA分析サイトで、かつて警察がGolden State Killer(ゴールデンステート・キラー)(未訳記事)を捕まえるのに使用したことで知られるGEDmatch(ジェドマッチ)は、米国時間7月19、一時的にオフラインになった。ユーザーのDNAプロファイルデータを警察がどのように利用しているかを親会社が調査するためだった。

このサイトは、ユーサーが自分のDNAプロファイルをアップロードして、家系図や先祖を探すサービスで、2018年に警察が、連続殺人容疑者(未訳記事)のDNAを、同サイトのデータベースにある100万人以上のDNAプロフィールと会社に無断で照合したことで一夜にしてその名を知られるところとなった。

GEDmatchはユーザーにプライバシー警告を発行し、自身のDNAを警察の検索に含めるかどうかを選択できる管理機能を追加した。

しかし19日、この設定が承諾なく変更され、自分のDNAデータが警察の検索対象になったという複数のユーザーから報告が寄せられた。

ユーザーらはこれを「プライバシーの侵害」であると言った。しかし会社のオーナーに尋ねたところ、この問題がなんらかのエラーかセキュリティー侵害によるものかどうかは答えず、調査中であるとだけ話したを。

「当社はGEDmatchでユーザーの承認が正しく設定されなかった問題を認識している」と、2019年にGEDmatchを買収したVerogen(ベロジェン)のCEOであるBrett Williams氏が答えた。「われわれはこの問題を解決した。ただし、予防措置として、エラーの原因を調査している間サイトを閉鎖した。原因が分かり次第正式な声明を発表する予定だ」

DNAプロファイリングと分析の会社は、新たな先祖を発見することで自分の文化的人種的背景を理解しようとする人々によって急速に人気が高まっている。しかし警察は、現場に残されたDNAから犯人を見つけるために、遺伝子データベースを利用しようと圧力をかけ始めている。

Williams氏は、これまでにVerogenやGedmatchが警察からユーザーデータを要求されたことがあるか、対応したことがあるかについて質問を受けたが、何も語らなかった。

Gedmatchは、警察がどのくらいの頻度で同社のデータ利用を要求しているか公表していない。ライバルの23andMeとAncestry.comは、これについていわゆる透明性レポートを発行している。今年2月Ancestry.comは、ある州外の捜査令状を拒否した(未訳記事)ことを発表し、警察がDNAプロファイリング・分析サイトの情報を今も使っていることを示した。

「問題を認識することは第一歩だが、『解決』の意味が単にエラーを修正することだというのなら、まだまだ多くの疑問が残っている」とカリフォルニア大学デービス法科校のElizabeth Joh教授がTechCrunchに語った.

「たとえば、GEDmatchは誤ってタグ付けされたユーザーのデータを警察機関が利用したかどうかを知っているのか? 侵害の詳細を今後発表するつもりなのか? そしてもちろん、これはGEDmatchだけの問題ではない。遺伝子系図データベースにおけるプライバシー侵害は、市民の自由に関わる新たな分野の最も繊細な情報を守るための規制が痛ましいほど不適切であることを強調している」と彼女は言った。「これはひどい」。

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連続殺人犯逮捕へと導いたDNA分析サイトは、ユーザープライバシーに関する懸念を再燃させる

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人気の家系図サイトで迷宮入りしていたオレゴン殺人事件の犯人が特定される

オレゴン州ポートランドの警察は木曜日、迷宮入りしていた40年前の殺人事件が解決した、と発表した。

1979年、当時20才だったAnna Marie Hlavkaはフィアンセ、そして姉(妹)と共に暮らすアパートで遺体となって発見された。警察によると、彼女は窒息死させられ、性的暴行を受けていた。警察は多くの手がかりをあたり、何十年もの間捜査を続けてきたが、進展はみられなかった。

そして昨年5月、ポートランドの未解決殺人事件の捜査官たちは、ゴールデンステートキラーに違いないとされる容疑者が特定されたときに有名になった手法を使ってこの事件を再び捜査した。

その際、Hlavka事件に取り組んでいた捜査官たちは、ゴールデンステートキラーのケースと同じような方法、つまり犯人のDNAを人気の無料家系図データベースのGEDmatchにアップロードして一般のDNAプロファイルと相互参照するという方法が、Hlavka事件の解決に使えるかどうかを判断するためにParabon NanoLabsという企業にコンタクトを取った。

「我々が扱うもののほとんどが未解決事件で、それらの多くがAnna Marieのように数十年前のものだ」とParabonのチーフ遺伝子系図学者CeCe Mooreは電子メールによるTechCrunchのインタビューでそう答えた。

多くの捜査機関はSnapshot Phenotypeと呼ばれるParabonのサービスに馴染みがある。このサービスでは同社はDNAだけを使って人の身体的外見の容貌を予想することができる。Parabonが2018年5月にサービスを開始して以来、Mooreのチームは捜査機関から依頼のあった33人の特定に成功した。このチームは未解決事件と、捜査が現在進行形の事件の両方に対応している。

Mooreは、彼女のチームがどのようにして容疑者のDNAをGEDmatchにアップロードするのか説明した。GEDmatchを使ってチームは遠いいとこや親戚など、血が繋がっている可能性のある親戚を特定することができる。

「我々は家系図をつくり、こうした家系図の人たちや先祖と誰がつながっている可能性があるか、特定を試みる。特定が成功した場合、我々はエンジニアに、GEDMatchで犯人とDNAを共有する人たちを追跡し、それに基づいた犯人の家系図にあたらせる」とMooreは話した。

警察当局のレポートによると、この手法で得られた手がかりはテキサスへと結びついた。

犯罪捜査の系統学者は、殺人犯の4つの血系統のうち3つをたどっていくことができ、犯人をJerry Walter McFadden(1948年3月21日生まれ)と特定した。McFaddenは殺人で有罪となり、1999年10月にテキサス州によって死刑が執行された。死刑執行年が古かったためにMcFaddenのDNAプロファイルはFBIのCODISデータベースに入っておらず、参照することができなかった。

捜査官たちはMcFaddenの家族にインタビューするためにテキサスに行き、Hlavka殺人事件のDNA証拠と比較するために確認用のDNAスタンダードを入手した。また捜査官たちは、同意のもとMcFaddenの家族のメンバーのDNAスタンダードも手に入れた。加えて、捜査官たちはMcFaddenが1979年に、同じ町に住む知り合いと太平洋側の北西部に行っていることも確認した。その知り合いの女性はMcFaddenをポートランドで降ろし、それから連絡はなかったと説明した。

今回のケースは、家庭DNAテストキット(そこで得られたデータは往々にしてオープンのオンライン家系図データベースにアップロードされる)の人気が、捜査にとっていかに“棚ぼた”かを示す最新の例となる。McFaddenの場合はDNAの追跡が驚くべき展開をもたらした。

「私がこの前に関わったケース(1981年にテキサス州ブラゾスであったGinny Freeman殺人事件)では、遺伝子系図の分析が1999年にテキサス州で処刑されたJames Otto Earhartにつながった」とMooreはTechCrunchに話した。

「事件発生から何十年も経て、我々が数カ月のうちに遺伝子系図を通じて特定したこれら2人の連続殺人犯が、2人ともテキサスの死刑囚監房に収監され、同じ年に処刑されたというのを考えると奇妙な気持ちになる」。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

連続殺人犯逮捕へと導いたDNA分析サイトは、ユーザープライバシーに関する懸念を再燃させる

ゴールデンステートキラー(カリフォルニア州連続殺人事件の犯人)であると疑われた男性の逮捕の詳細が明らかになるにつれて、この歴史上最も悪名高い未解決事件が、人気のある無料オンライン家系図データベースを利用して解決されたことが明らかになった。

GEDmatchと呼ばれるこのサイトは、すぐに利用できるコンシューマーテストサービスを通じて自分自身のDNA情報を入手し、さらに分析を行うために家系図の欠けている部分を埋めようと考える人びとに、人気のあるリソースである。23andMeのような洗練されたサービスと比較すると、GEDmatchは、より多くのメインストリームプラットフォームで見られるような、ユーザーデータを管理するためのプライバシーならびに法的制約がないオープンプラットフォームなのだ。

容疑者にたどり着くために捜査官たちは、1980年にベンチュラ郡で起きた連続殺人犯の物とされる、完全なDNAを利用した。チームはサンプルからデータをGEDmatchにアップロードし、容疑者の遠い親戚を特定することができた。これが重要なブレークスルーとなり、すぐにJoseph James DeAngelo(72歳)の逮捕へとつながった。

DNAデータの重要性と、このボランタリーオンラインDNAデータベースの人気の高さから、この事案はすぐにデータプライバシー擁護者たちの注意を喚起した。

金曜日にGEDmatchは、ログインのためのランディングページ上で、法執行機関が事件の捜査のためにDNAデータベースを精査していることを告知した:

大いなる誤解が生じているので訂正したいと思います。私たちはGEDmatch上のいかなる人物のDNAも開示していません。私たちはが開示しているのはDNAマッチ結果のようなデータの操作結果だけです。

私たちはゴールデンステートキラーの特定に、GEDmatchデータベースが使用されたことを知っています。私たちはこの事件や問題のDNAに関して、法執行機関や他の誰からもアプローチを受けていませんでした。サイトポリシーに定められているように、データベースが他の用途に使用される可能性があることを、ユーザーに知らせることは、GEDmatchの方針でした…

このデータベースは家系図研究のために作成されたものですが、GEDmatchへの参加者は、自身のDNAが、犯罪を犯したりあるいは犯罪の被害者となった親戚の特定などへの、使用の可能性があることを理解することが重要です。

DNAの家系図以外への利用が心配なときには、DNAをデータベースにアップロードしないでください。また、すでにアップロードされているDNAは削除して下さい。登録した情報の削除に関してはgedmatch@gmail.comまでご連絡ください。

最初の段階では、法執行機関がゴールデンステートキラーの捜査に、23andMeやAncestry DNAのような主要な消費者遺伝子テスト機関を利用したのではという誤解が生じていた。しかし捜査官たちはその代わりに、面倒な手続の不要なボランタリーDNAデータベースを利用したのだ。23andMeとAncestryの両者は、特定の遺伝的情報または個人情報にアクセスするためには、捜査令状または裁判所命令を発行するように法執行機関に要請している

23andMeは、法執行機関との関係に特化した特別ページで、法医学に対するポリシーを説明してる。

ケースワークやその他の犯罪捜査に23andMe Personal Genetic Serviceを使用することは、当社のサービスの目的外の使用に該当します。

したがって、法執行機関の職員が囚人あるいは犯罪容疑者のサンプルを登録することは、私たちの利用規約に違反します。

捜査官たちが、長きに渡る未解決事件の容疑者を逮捕したということそのものは良いニュースだ。しかしこの事件は消費者DNAテストに関するもっともな懸念を再燃させている。

ニューヨークタイムズとのインタビューで、この事件の解決を手伝ったコントラコスタ郡の調査官Paul Holesは、GEDmatchの力に驚いたと言う。そこでHolesは「私はそれを使ってできることに、心底驚きました」と語っている。

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(翻訳:sako)