今日(米国時間3/25)、Googleはサンフランシスコで開催したCloud Platform Liveイベントでクラウドプラットフォームに関して多数の重要な発表を行った。Amazon Web Service(AWS)が依然としてデファクト・スタンダードとなっているこの分野で、Googleが競争力を大きく高めるべく攻勢に出たという印象だ。
しかし「攻勢に出た」というだけでは言い足りないかもしれない。Googleはクラウド系のほぼすべてのサービスで劇的な料金引き下げを発表した。
たとえば、クラウドコンピューティングのCompute Engineの料金はすべてのサイズ、リージョン、クラスにわたって32%値下げされた。クラウド・ストレージは68%引き下げられ、オンデマンドのGoogle BigQueryに至っては85%の値下げとなっている。
Googleはクラウド・サービスの料金はムーアの法則でハードウェアの価格が低下するのに歩調を合わせて来なかったと指摘した。しかし今後Googleはムーアの法則に合わせて料金を引き下げていくという。実はこれまでGoogleのクラウド・サービスの料金は他のベンダーと比較してそれほど安くなかった。しかし今後は料金の引き下げ競争でもトップを走る構えだ。
Googleはまた料金体系を単純化した。Amazonの料金体系は複雑なことで悪名高い。Googleはその反対を目指すという。たとえばAmazonの場合、割引を受けるためには前払いでインスタンスを予約する必要があるが、今回Googleは長期利用割引というシステムを導入した。これはユーザーが1ヶ月の25%以上の期間にわたってクラウド・サービスを利用すると自動的に割引が適用になるというものだ。
さらにGoogleはバグのトレーシング機能やクラウド・コンソールから直接アプリケーションを修正できるオンライン・コード・エディタなどデベロッパーの生産性を向上させる新たなツールを多数発表した。
Managed Virtual MachinesのローンチによってGoogleはクラウド上での開発に一層の柔軟性を与える。GoolgeのApp Engineはスケール性は高いが、機能に制限があり、Compute Engineには事実上、機能の制限がないが、管理運用にスキルが必要だった。これに対してデベロッパーは新たなバーチャルマシンを利用することで双方の「いいとこどり」ができるという。
GoogleはまたAmazonのRoute 53のライバルとなるクラウドDNSを発表した。Googleによれば、Google Cloud DNSはサービスとしての権威DNSサーバを提供するものだという。Googleクラウド・サービスのユーザーはネットワーク・インフラを運営するためにすでに利用しているコンソールからDNSも管理できるようになるということだ。
またCompute EngineではWindows Server 2008 R2の限定プレビューも開始され、Red Hat Enterprise Linux、SUSE Linux Enterprise Serverがラインナップに加わった。
エンタープライズや多量のデータ処理を必要とするスタートアップのためのBigQueryも今日から料金が85%引き下げられる。このプラットフォームは毎秒最高10万行のデータを処理でき、その分析結果はほぼリアルタイムで利用できる。Amazonがすでにリアルタイムでのビッグデータ処理サービスに力を入れており、しかも大量データ処理はGoogleが得意中の得意とする分野であるにもかかわらず、Googleは今までこの種のサービスにあまり力を入れていなかった。
クラウド・サービスに対してGoogleがどこまで本気なのかという一抹の疑念があったとすれば、それは今日のイベントで完全に払拭されたといってよいだろう。Googleは多少出遅れたとはいえ、既存のビジネスモデルに固執しているわけではないことが示された。一度動き出せばGoogleは圧倒的な技術力と巨大なリソースにものを言わせて小規模なベンダーがとうてい太刀打ちできないようなサービスを提供する。今回のGoogleの動きのもっとも大きな影響は、AmazonやRackspaceを始めとする既存のプレイヤーにさらなるイノベーションを迫ることになった点だろう。
Googleが今日のイベントを3月26日にやはりサンフランシスコで開催されるAmazonのAWSサミット・カンファレンスの直前に設定したのはもちろん偶然ではない。 当然Amazonも大きなサプライズを用意していることだろうが、Googleのたくみな動きはAmazonを後手に回らせた印象を与えること成功した。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)