TechCrunch Disruptでお披露目された「UnlimitedHand」は日本発のVRコントローラー

記事がいくつも出ているのでご存じかも知れないが、米TechCrunchは米国時間の9月21日〜23日にかけてイベント「TechCrunch Disrupt 2015」を開催中だ。

秋にサンフランシスコ、春にニューヨークと半年ごとに開催されるDisruptは、スタートアップが集まる世界最大級のイベントの1つ。チケットは早期割引もあるが1995ドル〜2995ドル程度と非常に高額。にもかかわらず、毎回数千人が参加するイベントとなっている。僕もこのイベントに参加しているが、速報値として聞いたところ、なんと今回5000人もの参加者がサンフランシスコのPier 70という港湾エリアの会場に集まっている。

ちなみにTechCrunchではDisruptのほかにも「International City Events」と呼ぶ地域ごとのイベントも開催している。11月17〜18日に僕らが開催する「TechCrunch Tokyo 2015」もその1つだ。

Disrupt会場内、展示ブースの様子

Disrupt会場内、展示ブースの様子

このDisruptでは、米国を中心に著名ベンチャーキャピタリストや気鋭スタートアップの代表たちとTechCrunchの記者たちがおもに「Fireside Chat(暖炉のそばでのおしゃべりという意味)」——近い距離で、1対1の公開インタビューをするような形式で、1セッション20分程度だが非常に濃い内容のセッションを繰り広げている。

今年は著名投資家のロン・コンウェイ氏とTechCrunch創業者のマイケル・アーリントン氏のセッションから始まり、ソフトバンク副社長のニケシュ・アローラ氏やDropbox、houzz、GoProといったスタートアップ・メガベンチャーの代表、さらにはKPCB、Y Combinator、Sequoia Capitalといった日本でも名前を聞くVCらが登壇。またラッパーのスヌープ・ドッグ(大麻をテーマにしたライフスタイルメディア「Merry Jane」を立ち上げると発表した)なんかも登壇。米国スタートアップコミュニティの多様性を感じる内容となっている。

Disruptのステージの様子

Disruptのステージの様子

「Startup Battlefield」に日本発のVRコントローラーが登場

Disruptの目玉となるセッションの1つが、スタートアップのプレゼンコンテストである「Startup Battlefield」だ。世界中から集まったスタートアップが、イベントの初日、2日目と、自らのプロダクト(基本的には未発表のもの)のプレゼンを行う。これが予選となっており、通過すると3日目の決勝戦に参加できる。昨年は日本から視線追跡機能を備えたHMD「FOVE」が挑戦して話題になった。

今年もまた日本のスタートアップがこのBattlefieldにチャレンジしている。それがH2Lの手がける「UnlimitedHand」だ。予選プレゼンの様子はすでに翻訳記事でも紹介されているが、代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏にあらためて話を聞いた。

H2Lは2012年の設立。設立当初は玉城氏が代表を務めており、またAccess共同創業者で投資家の鎌田富久氏も創業を支援している。同社ではもともと「PossessedHand」というプロダクトを開発していた。これはPCとUSB接続腕に電極を仕込んだベルトを巻き、専用のアプリケーションを通じて筋肉に電気刺激を与えることで、手を自由に操作するというものだった。

PossessedHandは2013年に製品化されているが、UnlimitedHandはこのPossessedHandをよりコンシューマー向けの製品として仕上げたもの。まずはゲームなどのコントローラーとしての利用を想定している。H2LではDisruptへの登壇と合わせてKickstarterにプロジェクトを掲載している。価格は188ドルから248ドル。ちなみに開始から約20時間で目標額の2万ドルを集めることに成功している。

「UnlimitedHand」

「UnlimitedHand」

UnlimitedHandもPossessedHand同様、デバイスを腕に巻いて使用する。このデバイスの中にはモーションセンサーと筋変位センサー、Bluetooth、電極などが内蔵されている。以下は電気刺激により指をコントロールしているデモだ。

UnlimitedHandとスマートフォンやHMDなどをBluetoothで接続。ユーザーの手の動きをそのままゲームの入力に利用する。例えばFPS(一人称視点シューティング)であれば、腕で銃を握った様なポーズを取り、人差し指で引き金を引くような動きをすることで銃を撃つという具合だ。銃を撃った際の振動は電気刺激によって再現される。そのほかにも、電気刺激を用いてまるで何かモノをつかんでいるような感覚を届けたりする。ARやVRとの相性を考慮しているとのこと。

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Disruptでデモを披露していた両氏に話を聞いたが、すでにゲームメーカーなどとも話し合いが進んでいるそうで、Kickstarterでオーダーした人たちの手元に製品が届く2016年3月にはUnlimitedHandに対応したゲームタイトルなども登場する予定だという。

ゲームメーカーがこの新しい入力デバイスに対応できるのかということも聞いたのだけれど、プラットフォームにUnityを採用しており、開発のハードルは比較的低いのだとか。Startup Battlefieldの決勝戦は現地時間で本日15時から開催される予定。H2Lは残念ながら選考から漏れてしまったが、日本でまた岩崎氏、玉城氏に話を聞いてみたい。

右から代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏

右から代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏

H2LのVRコントローラUnlimitedHandはリアルな触感をプレーヤーの指や腕に伝える

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百聞は一見にしかず、とよく言うが、仮想現実の場合は、見るだけでなく触ることも、その没入的な視覚体験の重要な部分だ。しかし現世代のVRは、コントロールの入力の方法が、それまでのゲーム技術に縛られている。それに対し、今日(米国時間9/21)、DisruptのStartup Battlefieldで東京のH2LがローンチしたUnlimitedHandは、ゲーム中に起きていることを実感できるコントローラだ。

H2Lのコントローラは、下図のような一種の‘腕輪’で、これが高度な触覚的フィードバック(haptic feedback)を行うことにより、指をコントロールする筋肉をターゲットにして、画面上のアクションを反映する正確な応答を伝える。

H2LのファウンダKen Iwasakiによると、彼は現在消費者たちに提示されているVRコントローラのすべてが不満だ。そこでぼくもUnlimitedHandコントローラを身につけてみて、その触覚エンジン(haptic engine)を試した。その体験は、かなりすごいものだった。

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H2LのCTO Emi Tamakiがプロトタイプのデモを見せてくれたが、その腕輪は確かに、ぼくの各指に感覚を伝え、まるで画面上の(実在しない)物に実際に触れてるように感じる。

このデバイスを使うゲームアプリケーションは、まだ遠い話だと思うが、これまでの画期的と言われるVR消費者技術が最初はそうだったように、それに何ができるかに関しては、まだ表面的で薄い認識しかない。UnlimitedHandでゲーム中の銃の引き金を引くと、指がそれを感じる。ギターを弾く場面では、実際に自分の指が弾いている感覚をおぼえる。

このコントローラにはアナログのコントロールがまったくない。ハードコアのゲーマーへの、思い切った妥協だ。Oculusなど他社は、モーションコントロールに関して、未来的なコントロールだけだとプレー感覚のバランスが悪い、と言っている。それらのコントローラのプロトタイプには標準の加速度センサとジャイロスコープセンサがあり、プレーヤーはゲーム内の動きをコントロールできるが、ハードウェア的に生成するそれらの動きはあまり正確でない。

UnlimitedHandはすでに、大手ゲームメーカー某社が最初のVRコンテンツを作るらしいが、まだその公式発表はない。これが本当にユニークなVR体験を作り出すことに対して、ゲームメーカーとハードウェアメーカーの両方が興奮しているようだ。

今現在H2Lは、UnlimitedHandのルック&フィールを磨いている最中だ。今日はKickstarterでもローンチし、その目標額は20000ドルだ。初期の出資協力者は188ドルで入手できる。

発売は、2016年5月の予定だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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