HaikuJam、「写真俳句」を導入して成長に賭ける

一部の注目を集めていた「HaikuJam」は、アプリケーションの名前にもある「Haiku」(俳句)の世界から抜け出そうとしているようだ。2013年にスタート(イギリスのスタートアップだ)した時点では、確かにコラボレーションスタイルの俳句(短い詩)作成アプリケーションだった。知らない人同士が1行ずつ言葉を書いていき、そこに生まれる「アート」を楽しむものだった。しかし支援企業の意向やビジネスチャンスを広げる狙いもあり、「俳句以上」のものを目指す形に方向転換しようとしている。

新しい方向を目指すHaikuJamアプリケーションはベータ版として提供されていたが、いよいよiOS版およびAndroid版が正式にリリースされた。この新しい版では、写真を使った表現もできるようになっている。すなわち、共同ファウンダー兼CEOであるDhrupad Karwaがいうところの「ビジュアル俳句」機能が追加されたのだ。また、仲間うちで盛り上がるための「サークル」機能も追加された。

望むのならば、言葉を一切使わずに写真だけで「俳句」を作ることもできる。従来もちいられていた3行のフレーズの代わりに、3枚の写真で「俳句」が作られることとなる(もちろんこれまで通り、言葉により表現することもできる)。今後はここに、ビデオや音声を追加するような方向も検討中であるらしい。

もともと、このHaikuJamを使い始めたのはTwitterを利用した短詩を楽しむような人たちだった。しかしそうした表現は進化しつつあるのだと、Karwaは言う(もちろんTwitterを利用した短詩も廃れてはいない)。ベータ版を使ってみてもらったところ、詩的な文章を書いたり、あるいは写真による「表現」に不慣れな人も、アプリケーションを楽しんでいたとのこと。

日々の生活に追われ、ちょっとしたお楽しみによりストレスを解放したいと考える人は多いのだろう。日常のちょっとした思いをHaikuJamに投稿することで、「ソーシャルな繋がり」を感じることができたりもする。またHaikuJamでは利用者に「カルマポイント」というポイントも付与している。親しい「サークル」仲間からの反応を見て癒されたりもするのだろう。きっとShingyも気に入るだろうと思う。

「サービスを積極的に使って楽しんでくれているのは、いわゆる詩人とは違う人たちなのです。銀行家であったり、看護師や医師であったり、あるいは学生だったりするのです。アプリケーションを使うことで、非日常的な感じを得ることができるのが楽しいと言ってくれています。ストレスから解放されるという人もいます。もちろん、日々の仕事からは得られない創造的気分を味わえることも人気です。絵を描いたり、歌をうたったりすることなく、アートな気分を得られるわけです」とKarwaは言う。

「1行ないし数行の文章を書くだけだという手軽さも良いのでしょう。自分の書いたことに他の人が反応してくれることで、見返りを得ることもできるわけです。詩的な表現を楽しみたいと考えて使っている人もいるのですが、どうやら多くの人は表現形式にこだわりを持っているわけではないようなのです。限られた時間の中で、何かクリエイティブな表現を行い、それによってコミュニケーションできるようなツールを探しているという人が多いようです」。

HaikuJamはこれまでにシード資金として15万ドルを調達している。資金を出しているのはJustGiving、Oxygen Enterprise Partneresおよびファウンダーたちの母校であるユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンなどだ。これまで利用スタイルが限られていたサービスを拡大していくとともに、数ヶ月のうちに新たな資金調達を狙っているのだそうだ。

ベータ提供してきた新バージョンをリリースした今日の段階で、HaikuJamのアクティブユーザーは500名程度であり、アプリケーションのダウンロード数は2000件であるとのこと。しかしKarwaによれば、スケール可能なプロダクトモデルを考える間、利用者を増やすことには全く意識を向けていなかったのだとのことだ。

端的に言ってしまえば、「詩」にフォーカスしたアプリケーションはスケールしなかったわけだ。しかしスタートアップ経済圏の中では、写真が絵にまさることは何度も繰り返し明らかになっていることだ。

言葉による表現が好きな人は、HaikuJamの主役の座から追い出されるような形になったとも言える。より手軽な表現プラットフォームとしてのサービス拡大を目指しているというわけだ。今後の動向を見守りたい。

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(翻訳:Maeda, H