民間月探査レースLunar XPRIZE、窮地のHAKUTOは挑戦継続の意向。「インドチームと共にあらゆる可能性見直す」

eng-logo-2015いまから1年ほど前、当初参加の33チームから5チームにまで絞られた民間月面探査コンペ「Google Lunar XPRIZE」ですが、2018年3月31日の打ち上げ期限を目前に、インドのTeamIndusがリタイアする可能性が報じられました。理由はインド宇宙研究機関(ISRO)がTeamIndusとのロケット打ち上げ契約を解除したため。

TeamIndusが用意する着陸機には日本から挑戦しているチーム HAKUTOが月面探査ローバー「SORATO」を相乗りさせる計画であり、TeamIndusのリタイアはHAKUTOにとっても一大事。しかしHAKUTOは1月11日に会見を開き、引き続きTeamIndusと打ち上げ実現を目指しつつ、XPRIZE側には期限延長を申し入れるとしました。

伝えられるところによると、ISROによるロケット打ち上げにかかる総費用は最大7000万ドル。しかしTeamIndusが調達できている資金は3500万ドル(約39億円)とのこと。このためISROの商業的窓口となるAntrix Corporationは、TeamIndusとの打ち上げ契約をキャンセルしたとされます。

TeamIndusの資金面での不安は以前からあり、ISROとの契約直後から両者の間には亀裂の兆候があったとも言われています。ISRO会長Kiran Kumar氏は数週間前、現地テレビの取材に対し「TeamIndusには技術面だけでなく、その実現に必要な資金面での課題がある。その穴を埋めるのは簡単ではなく、山のような仕事をこなさなければならないだろう」と先行きを語っていました。

TeamIndusとしてはまだ月への挑戦を諦めたわけではなく、ムンバイで開催されたイベントでは月探査プログラム実現のためクラウドファンディングで追加の資金集めを実施する予定を語ったとされます。また時間的に困難とはいえ、TeamIndusおよびHAKUTOには別の国の打ち上げロケットを使用してミッションを完遂する道もなくはありません。

HAKUTOは「同じレースを戦う仲間として引き続きTeamIndusをサポートし」、「相乗り契約の継続はもちろん、あらゆる方法を再度見直し、様々な選択肢の中で最も成功率の高い方法を検討」するとしています。

なお、Google Lunar XPRIZEは2017年10月にTeamIndusの計画進捗状況を確認し、すでにランダーおよびローバー、管制施設といったミッション遂行に必要な準備が整っていることをメディアに向けて発表済み。TeamIndusもSNSを通じて準備が万端であることを発信していました。

一説には、インド政府がISROのチャンドラヤーン2号を民間より先に月面に送り込みたい意向だとも言われています。この計画は2018年3~4月の打ち上げが予定されており、もしかすると資金とは違う部分でTeamIndusの打ち上げに影響を及ぼした可能性もあるかもしれません。

Google Lunar XPRIZEは民間による月面探査を目標とするコンペで、参加チームは月面探査用のローバー(自走ロボット)を月へ送り込み「500m以上走行する」、「月面での移動を示すHD画質以上の動画や静止画を地上へ送信する」という課題が与えられています。賞金総額は3000万ドルあり、過去に月面に到達した探査機といった「人工物の発見」や、「水または氷の発見」などにも賞金が掛けられています。

Engadget 日本版からの転載。

民間月面着陸競走、GoogleのLunar XPrizeが山場へ―日本のHAKUTOもファイナリスト

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民間チームによる月着陸一番乗りを競うGoogleのLunar XPrizeは今年いよいよ山場を迎える。2017年末までに民間企業として初の月面着陸を果たすという競走に参加する5組のファイナリストが決定した。ファイナリストの5チームは、SpaceIL、Moon Express、Synergy Moon、Team Indus、Hakutoだ。勝利を得るためには単に月面に着陸するだけでなく、月面で最低500メートル移動し、月面から写真とビデオをライブで送信するなどの条件を満たす必要がある。

各チームはそれぞれ異なる月面到達の方法を採用している。XPrize受賞のためには2017年12月31日までにロケットを打ち上げ(着陸は後でよい)ることが求められている。月着陸その他の条件を満たした最初の参加チームには2000万ドルの大賞が贈られる。2位には500万ドルだ。また人類が初めて地球以外の天体に足を踏み入れた記念すべき場所、つまりアポロの最初の着陸地点に到達したチームにはボーナス賞が用意されている。

今回のファイナリストに選ばれなかった11チームもそれぞれ若干の賞を得る。Googleは総額100万ドルの賞金を用意し、宇宙航空と教育の進歩に貢献したという理由で参加した全16チームに分配する。

全チームのうち、月着陸機の打ち上げ契約が確認された5チームがファイナリストとして認められた。SpaceILが一番乗りで、SpaceXと2017年後半に月への打ち上げを行うという契約を結んだ。NASAと提携するアメリカのスタートアップ、Moon Expressの打ち上げを行うのはRocket Labという宇宙開発企業で、Electronロケットはまだ実際に飛行したことがない。Moon Expressは政府からミッションの許可を得た。Synergy MoonはInterorbital社のNeptune 8を利用する。こちらもまだ実際に宇宙への飛行を行ったことがない。インドのIndusと日本のHakutoはインド政府の宇宙開発機構の実績あるロケットを共同利用する予定。

このプロジェクトでは打ち上げロケットが重要な要素になるものとみられる。5チームのうち宇宙に到達した実績がある打ち上げロケットの利用を契約しているのは3チームだけだ。SpaceXも昨年の打ち上げ途中の爆発事故などの影響で計画に遅れが出ている。ではあるが、ここまでプロジェクトを進めてくることができたチームが5組もあったというのは素晴らしい。

〔日本版〕HAKUTOチームの公式ページ。Wikipediaにも解説がある。WikipediaによればMoon Expressは月で鉱物資源を開発することを目的としている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+