インフラ構築自動化のHashiCorpが5500億円のバリュエーションで190億円を獲得

過去10年にわたるクラウドの台頭により、ソフトウェア開発者とDevOps(デブオプス)エンジニアは、最新のウェブアプリケーションの設計を一から見直しスケーラビリティ、パフォーマンス、セキュリティを確保することを余儀なくされた。手作業で行うには非常につらい仕事だ。ここでHashiCorp(ハシコープ)の出番となる。同社の一連の製品は、IT管理者からソフトウェア開発者まで、技術に関わるメンバー全員がクラウド上で極めて簡単かつ自然に操作することを可能にする。

同社の製品は長い間、技術に携わるスタッフから絶賛されていたが、一変して巨額のバリュエーションを目の当たりにすることになった。

サンフランシスコを拠点とする同社は3月16日、シリーズEで51億ドル(約5500億円)のバリュエーションをベースに、Franklin Templeton Investmentsから1億7500万ドル(約190億円)を調達したと発表した。最後にTechCrunchが同社を取り上げたのは2018年後半にグロースインベスターのIVPがリードした1億ドル(約107億円)のラウンドのときで、バリュエーションは「わずか」19億ドル(約2040億円)だった。

HashiCorpは3月16日発表のプレスリリースで、輝かしいバリュエーションの背後にある重要な理由として、4期連続で売上高と顧客数を倍にしたことを挙げた。 同社はまた小さくない要因として、GreylockでEIR(ベンチャーキャピタルなどに所属して活動する起業家)を務めた後、2016年半ばにCEOとして入社したDavid McJannet(デビッド・マクジャネット)氏が、CEOという新しい役割で成功を収めた点も挙げている。

HashiCorp CEOのデビッド・マクジャネット氏。写真はHashiCorp提供

Mitchell Hashimoto(ミッチェル・ハシモト)氏とArmon Dadgar(アーモン・ダドガー)氏が2012年に創業した同社は、マルチクラウドプロバイダー、プライベートクラウド、さらにはレガシーシステムを組み合わせた高品質のインフラ構築を支援するパイオニアだ。

最もよく知られている同社の製品はTerraformだ。これは開発者が企業のインフラ構築にあたり、繰り返し可能なルールを記述できる製品だ。作者が意図したとおりに機能しない可能性のあるさまざまなスクリプトのパッチワークとは異なる。HashiCorpの製品はその一貫したフレームワークにより、企業のコスト削減に貢献し(リソースの過剰な供給などから守る)、規模と性能のバランスもとれる。同社の他の製品にはネットワーク自動化のConsul、セキュリティのVault、アプリケーション展開のNomadなどがある。

HashiCorpは複数の競争力のある製品だけでなく、そのまとまりのある一連のツールと開発者コミュニティへの強力なパイプにより、最近の競争とは一線を画している。

Franklin Templetonはれっきとしたレイターステージの投資家で、Crunchbaseによると、2019年に公開したCloudflare、ログ管理プラットフォームのSumoLogic、サイバーセキュリティビジネスのTaniumといった企業に資金を提供している。

51億ドル(約5500億円)という巨額のバリュエーションがついたことで、同社は過去数週間にわたるSaaS企業の壊滅的な株価下落をかろうじて逃れた。新たに軍資金得たこと、成長を続ける人気の企業向け市場に焦点を合わせたことで、同社の成長の準備は整ったようにみえる。

画像クレジット:Alex Williamson / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトウェアの開発(dev)からオペレーション(ops)まで、DevOpsの全過程をツールセットで支えるHashiCorpが$24Mを調達

BIERE, GERMANY - JULY 01: Close-up of cables and LED lights in the new data center of T-Systems, a subsidiary of Deutsche Telekom AG on July 01, 2014, in Biere, Germany. T-Systems is the largest German and one of the largest European IT services companies. (Photo by Thomas Trutschel/Photothek via Getty Images)

ポータブルな開発環境をセットアップする便利なオープンソースのツールVagrantなどで知られる、デベロッパー支援ツール専門のHashiCorpが今日、シリーズBによる2400万ドルの調達を発表した。このラウンドはGGV Capitalがリードし、Mayfield, True Ventures, それに新たな投資家としてRedpointが参加した。同社の累計資金調達額は、3400万ドルになる。

今回の資金調達の目的について同社の協同ファウンダーでCTOのArmon Dagarはこう語る: “HashiCorpはアプリケーションの開発から運用までのすべての過程を支援しているが、とくに力を入れているのが開発、オペレーション、そしてセキュリティだ。今後も弊社の7つの主力製品に注力していくことは変わらないが、同時に、オープンソースのツールを使う場合のワークフローの問題を解決するための、エンタープライズアプリケーションも作っていく。弊社はアプリケーションの最終デリバリまでの過程を、必要にして十分なステップだけに純化し、それらの問題を解決するためのツールを作る。弊社は今後も継続してそれらの問題領域に注力し、オープンソースとエンタープライズの両方のプロダクトに新たな機能を加えていく”。

Dagarによると同社は、特定分野の大企業が成長の主な源泉になっている。それらは、金融、メディア、リテール、そしてWeb上の巨大なインターネット企業だ。具体的な顧客企業名としてはConde Nast, Cisco, Mozillaなどが挙げられる。またStripe, Uber, Twitch, OpenAI, Pinterest, Capital Oneなどの企業も、Vagrant, packer, Terraform, Serf, Nomadなど同社のオープンソースツールを利用している。

中核的なツールをオープンソースのライセンスで提供している企業によくある例として、HashiCorpも主な収益源はエンタープライズサービスだ。同社のそういうサービスの一例がHashiCorp Atlas、これは同社の主要ツールのエンタープライズバージョンを収めたスイートだ。その中には、リソースプロビジョニングツールのTerraformや、ベータを終えたばかりのセキュリティ強制設定ツールVaultなどが収められている。

結局のところ同社のキモは、企業が自分たちのDevOpsのワークフローを、その下のインフラストラクチャに左右されずに管理できるための、一連のツールを提供することだ。そのため同社のサービスは仮想マシンやコンテナのレベルを対象とし、Azure, AWS, Google Cloud Platformなど多くのパブリッククラウドや、OpenStackのようなプライベートクラウドのプラットホームをサポートしている。

GGV Capitalのパートナー役員でHashiCorpの取締役でもあるGlenn Solomonは述べる: “HashiCorpは、開発(dev)とオペレーション(op)とセキュリティを担当するチームが分散アプリケーションとそのインフラストラクチャを管理するための、世界クラスのツールを作っている。グローバルなエンタープライズにおけるこれらのツールの採用率は、きわめて高い。彼らとのパートナーシップを継続できることは大きな喜びであり、ソフトウェアアプリケーションのデリバリを加速するという彼らのミッションの継続を、これからも見守り支援していきたい”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))