デートアプリTinderはネットで新たに知り合いを発見する「ソーシャルディスカバリー」に足を踏み出す

デートアプリTinder(ティンダー)とその親会社Match(マッチ)が、アプリを通じた個人的なつながりの未来を模索している中で、どのようなアイデアを試し、破棄したのかをみていくのは興味深い。そうしたものの1つが「Tinder Mixer」(ティンダー・ミクサー)と呼ばれるもので、Tinderのユーザーがグループビデオチャットに参加したり、近くにいる人と「ゲーム」をしたりする方法が一時的に提供されていたのだ。

この機能は、2020年ニュージーランドで短期間テストされたとの情報を得ているが、今後の実運用はされない。

Tinder Mixer機能は、アプリ研究者のAlessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルツィ)氏が、TinderのAndroidアプリのコードの中に痕跡を発見したことで明らかになった。この発見はまだ公表されていなかったが、私たちはこの製品の起源について調べてみた。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

パルツィ氏によれば、彼がデートアプリの中で見つけたリソースは、まだ開発途中の製品のように見えたものの、結局それはTinderがデート市場で続けている実験の中で、すでにテストされてすぐに終了したものだったという。

Tinderによれば、このTinder Mixerのテストが2021年の製品ロードマップに影響を与えることはなく、上で言及したTinder Mixer体験が実際に登場することはないという。

とはいえ、この機能が特に興味をそそった点は、Tinderが短期かつ実験的とはいえ、Tinderがソーシャルディスカバリー(リアルの知人同士がつながるのではなく、新しく知り合いを「発見する」ソーシャル活動)分野に一歩踏み出したことだった。通常なら、Tinderのユーザーは1対1で、相手のプロフィールをスワイプし、マッチングし、チャットを行い、時にはビデオ通話を行う。しかし、グループでのライブビデオチャットのようなものは、今のTinderは提供していない。

画像クレジット: Alessandro Paluzzi

とはいえ、ビデオを使うライブというのはMatchにとって新しいものではない。

それはMatchがこれまでも実験を行ってきた分野だ。たとえば1対多のビデオ放送機能を提供する「Plenty of Fish」(プレンティオブフィッシュ)や、世界中の人々と1対1のビデオチャットができる「Ablo」(アブロ)などが挙げられる。こうした実験は、同社が考えている「デート隣接」体験なのだ。言い換えれば、このような動画でのやりとりを通じて誰かと出会うことは可能だが、それは必ずしも主目的ではないということだ。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

こうしたビデオ体験は、Match史上最大の買収案件となったソウルのHyperconnect(ハイパーコネクト)の17億3000万ドル(約1893億円)での買収が発表されても継続し「ソーシャルディスカバリー」やライブストリーミング市場を含む将来に向けた道筋をつけさせるものとなった。

関連記事:出会い系大手のMatchがソウル拠点のHyperconnectを同社最大規模の1809億円で買収

Matchは、ソーシャルディスカバリーが大きな可能性を秘めた分野であり、実際、デートの2倍の規模の市場になると見積もっている。

Match GroupのCEOであるShar Dubey(シャー・デュベイ)氏は、先日開催されたJPモルガン主催の「テクノロジー・メディア・コミュニケーション会議」でこの点について触れ、Matchのいくつかの大規模なプラットフォームでは、多くのユーザーが「プラットフォーム上で同じ指向を持つ独身者たちとの共有体験やコミュニティ意識」をより求めていることが観察されていると述べた。

彼女は、テクノロジーの進歩によって、従来のスワイプ、マッチ、チャットで行われてたデートの流れ以上の豊かな体験を通して、他者との交流が可能になったのだと指摘する。そうした体験には少数対少数、多数対多数、1対1などのものが含まれている。

Hyperconnectは、Matchがこうした分野に展開する際に必要となる技術の多くを提供できる。

現在Hyperconnectは、Azar(アザール)とHakuna Live(ハクナライブ)という2つのアプリを提供しており、ユーザー同士がオンラインでつながることができる。2014年に開始された前者は、1対1のライブビデオやボイスチャットに焦点を当てており、一方2019年に開始された後者はオンライン放送の分野をカバーする。これらのアプリが、MatchがPlenty of FishやAbloで行ってきたライブストリーム体験に対応するものであることは、偶然ではない。

このようなライブストリーミングサービスは、若い人たちによく使われていることが多いので、Matchが将来的な特定の製品開発のためのためではなく、単なるデータ集めのために、同じく若い層が多いTinderでもこのようなライブストリーミング体験をテストしたかったのは理解できる。

まもなく完了するHyperconnectの買収と同時に、Matchはまず、手に入るアプリを使ってライブストリーミングおよびソーシャルディスカバリー市場での活動をアジアで拡大することになる。なぜならHyperconnectの利用と収益の75%はアジア市場から得られているからだ。それからMatchは、その国際的な経験と知識を活用して、まだ開拓されていない他の市場での成長を加速させることを計画している。

しかし、買収のもう1つの大きな理由は、MatchがHyperconnectの技術を同社の既存のデートアプリのポートフォリオに導入することで、より豊かな体験を生み出せるだけでなく「西洋的」なオンラインデートのやり方はまだ完全には受け入れられていないものの、ソーシャルディスカバリーは受け入れられている市場でのユーザーに、アピールできる可能性があると考えているからだ。

デュベイ氏はJPモルガンの会議で「ソーシャルディスカバリープラットフォームで人気のあるエクスペリエンスを、私たちのデート・プラットフォームに持ち込むことで、真の相乗効果が得られると考えています。また、ソーシャルディスカバリープラットフォームを強化することで、利用者の方がデートの目的を果たすお手伝いをすることができるようになります」と説明した。

これらのことがTinderにとってどのような意味を持つのかは、まだはっきりしていない。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:デートアプリTinderMatch GroupSNSビデオチャットHyperconnect

画像クレジット:Tinder

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

出会い系大手のMatchがソウル拠点のHyperconnectを同社最大規模の1809億円で買収

出会い系大手のMatch Group(マッチグループ)は、米国時間2月9日午後、韓国のソーシャルネットワーキング企業であるHyperconnect(ハイパーコネクト)を、現金と株式を合わせ17億3000万ドル(約1809億4000万円)で買収すると発表した。これは韓国のスタートアップエコシステムにとって大きな勝利だ。

Hyperconnectによれば、同社は2020年には2億ドル(約209億2000万円)の売上(2019年比50%増)の収益を上げると予測されている。同社が提供する2つのアプリAzar(アザール)とHakuna(ハクナ)は、言葉の壁を超えてユーザー同士が交流できるアプリだ。2つのアプリは補完関係にあり、Azarが1対1のビデオチャットに特化しているのに対して、Hakuna Liveはオンラインライブ放送市場に特化している。両社はプレスリリースの中で、Hyperconnectの売上の75%はアジアからのものだと述べている。

これは、数多くのアプリや人気のある出会い系アプリのTinder(ティンダー)とHinge(ヒンジ)も所有しているMatch Groupにとって、これまでで最大の買収となる。

この買収とHyperconnectに関わるテーマの1つはテクノロジーだ。同社は現在、成熟している標準規格であるWebRTCの「初のモバイル版」を開発したと主張している。これは、中間サーバーとして機能する別の企業に依存することなく、ユーザー間に弾力性のあるピア・ツー・ピア接続(1対1の直接接続)を提供するように設計されたものだ。

たとえば2人の参加者の間のビデオチャットは、Hyperconnectのサーバーを介して配信されるのではなく、WebRTCを使用して2人の間で直接送信される。これは遅延をなくし信頼性を向上させるために設計されているが、一方Hyperconnectにとってもサービスの帯域幅のコスト削減が可能となる。WebRTCは現在、Google(グーグル)などの企業がGoogle Meet(グーグルミート)のような製品で使用しており、オープンソースの標準として十分に確立している。

WebRTCに対する革新的な取り組みに加えて、Hyperconnectは異なる言語で話したりテキストを書いたりする2人のユーザーが、アプリ内でリアルタイム翻訳を使用して、直接対話できるようにサポートするためのインフラストラクチャを構築した。Google Cloudのマーケティング投稿によれば、Hyperconnectは同クラウドサービスが提供する音声、リアルタイム翻訳、メッセージングAPIの上得意であるという。

両社の共同声明は、双方ともに研究開発とエンジニアリングを取引の鍵だと強調している。ということで、この大規模な買収が投げかける疑問は、Match Groupが一体何を開発しようとしているのかということだ。同グループは、これまでは自身のサービスを主に出会い系に限定してきたが、Hyperconnectから技術を取得することで、生放送やその他のメディアも視野に入れることができるかもしれない。

買収は2021第2四半期で完了する見込みだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Match GroupHyperconnect買収

画像クレジット:Johannes Spahn / EyeEm / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:sako)