SNS横断でフォロワーの属性も絞り込めるインフルエンサーのキャスティング基盤「iCON Suite」

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YouTube、Instagramなどのソーシャルプラットフォームで多くのファンを獲得し、大きな影響力を持つようになった「インフルエンサー」。YouTubeに投稿した動画の広告収入で生計を立てるYouTuberや、Instagramでリクエストに応じて商品を紹介することで収入を得るInstagrammerという名前も良く聞くようになってきたが、彼らは従来のメディアとは違うチャネルで顧客との有効な接点を見つけたい企業にとっても重要な存在となりつつある。

2015年1月にYouTubeクリエイターと広告主をマッチングさせるサービス「iCON CAST(アイコンキャスト)」を提供したTHECOO(ザクー)は8月25日、動画メディアを展開するC Channelの子会社でインフルエンサーマーケティング企業のYellow Agencyと業務提携。ソーシャルプラットフォーム横断でインフルエンサーを検索、キャスティングする「iCON Suite(アイコンスイート)」を開始した。

iCON SuiteはYouTubeに加え、InstagramやTwitter、Snapchatといったソーシャルプラットフォームに横串で対応。インフルエンサーの影響力やファンの属性(デモグラフィック情報)を機械学習と自然言語解析を用いることで分析可能にした。これにより、クライアントのニーズも高まるInstagramについても、従来利用してきたYouTube APIでは取得できなかった情報を提供。感覚ではなくデータに基づいたインフルエンサーのキャスティングを実現する。

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iCON Suiteでは、インフルエンサーをファッション・コスメ・ペット・ゲームなどのカテゴリと、ファンの性別・年代、ファン(フォロワー)数から絞り込むことが可能だ。サービス開始時は、全インフルエンサーの検索ができ、キャスティングはYellow Agency所属のインフルエンサーのみに対応する。

「iCON CAST提供から1年半、YouTuberと企業とのマッチングでは日本最大のサービスとすることができた。Google出身者の多いTHECOOでは、AdWordsの営業時代も含めて、クライアントがいかに効果を求めるものなのか、データの力がどれだけ大切かということにかけては、ノウハウがかなり蓄積されている。」とTHECOO代表の平良真人氏は語る。「iCON Suiteでは、対象をYouTubeから他のプラットフォームに広げても、実際に使っていただける企業・インフルエンサーの数で日本最大を目指したい」(平良氏)

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THECOOでは、iCON Suiteの利用企業を2016年内に100社以上、インフルエンサーではInstagramユーザーのうち5000人の利用を目標としている。また、アジアをはじめとした海外への展開も年内に予定。その際には、各国で主に使われている、日本とは異なるソーシャルプラットフォームにも対応していくという。

平良氏は「ソーシャルプラットフォーム上で、自分のアカウントできちんとファンとのコミュニケーションを取れる人をインフルエンサーと定義している」とした上で、日本ではゲームやファッション・コスメ、あるいは“やってみた”動画などに人気が偏るインフルエンサーのカテゴリについて、こう話す。「発展途上だが今後に期待できる。中国やタイでは、インフルエンサーがクルマやゴルフ、スポーツなど、自分の好きなことを突き詰めた結果、カテゴリとして成立するテーマが増えた。その結果、自動車業界やラグジュアリブランドなどにも、クライアントが増えている。誰でもインフルエンサーになれる時代だ」(平良氏)

左からC Channel代表取締役社長の森川亮氏、Yellow Agency代表取締役社長の平本誠二郎氏、THECOO代表取締役CEOの平良真人氏

左からC Channel代表取締役社長の森川亮氏、Yellow Agency代表取締役社長の平本誠二郎氏、THECOO代表取締役CEOの平良真人氏

YouTuberと広告主をマッチング する「iCON CAST」、ex-Googler集団がリリース

YouTubeに動画をアップし、その広告収入で生計を立てている「YouTuber」。動画投稿だけで食べていけるクリエイターは一握りという指摘もある一方で、米国10代に影響力のある人物に関する調査では、トップ5をYouTuberが独占。若年層ではハリウッドスターの人気を凌ぐほどだと言われている。

こうした影響力を企業が見逃すはずはなく、多くのファンを抱えるYouTuberに自社商品を宣伝してもらう「YouTuber広告」が日本でも増えつつある。ただ、そのYouTuber広告で稼ぐクリエイターもごくわずか。案件が集中して単価が上がり、人気YouTuberの出演料は「1本あたり100〜400万円に上ることもある」(関係者)のだとか。

広告主からすると、自社のターゲット層と一致するファンを抱えるYouTuberを探すのは困難。前例の少ない広告がゆえにKPIの設定も難しい。だったら、とりあえず多くのファンを持つ人気YouTuberにお任せしてみよう、といった会議の様子も想像できる。

YouTuber広告の選択肢を広げる

「本来はYouTuberのポテンシャルも、クライアントのニーズも存在するにも関わらず、『出会い』の場が少ないがために、YouTuber施策の選択肢が制限されている」。こう語るのは、YouTuberと広告主をつなぐプラットフォーム「iCON CAST」を1月26日にオープンした、ルビー・マーケティング創業者の平良真人氏だ。

従来のYouTuber広告は、広告主が人気YouTuberを指名するケースが大半だったが、iCON CASTはYouTuber側で案件を探せるのが特徴。これまで声がかからなかったYouTuberのメリットはもちろんだが、広告主としても、自社商品と親和性の高いファンを持つYouTuberを起用しやすくなる。そうすれば、老若男女に愛されるYouTuberを起用するよりも、グッと限られた予算内でマーケティングが行えるというわけだ。

「僕らが狙うのは、上位だけでなく中堅層のYouTuber。現在はゲーム実況がうまくなくても、人気YouTuberにゲーム広告のオファーが来ていたりする。一方、米国は各ジャンルで得意分野を持つYouTuberが多く、数百人が100万人単位のチャンネル登録数を抱えている。日本でもジャンルに特化したYouTuberにニーズは来る。」(平良氏)

利用の流れはこうだ。YouTuberはiCON CASTに登録して、専用の管理画面で自分の得意分野(ゲームや化粧といったジャンル)のYouTuber広告案件に応募。案件を受託する場合、広告主と個別契約を締結すれば契約が成立する。

その後は、受託した案件の制作内容に沿って動画を作成。iCON CASTと広告主が動画を確認し、問題がなければ公開日に合わせてYouTubeに動画を公開する。広告主が動画の内容に納得しない場合は、1回に限り、修正作業が入ることになっている。

広告主は、専用の管理画面でYouTuber広告の詳細を決定し、案件を募集する。iCON CASTは広告主の要望と予算に応じて、YouTuberごとの特性、チャンネル登録数、動画の再生回数などを精査。広告主の案件とマッチするYouTuberをピックアップして提案する。

iCON CASTの収益源は、マッチング成立時に広告主が支払う業務委託手数料だ。広告料の20%を徴収する。なお、YouTuberがGoogleと個別に結んでいる「YouTubeパートナープログラム」経由の広告収益は、これまで通り100%得ることができる。

ルビー・マーケティングは現在、YouTuberを獲得するために、YouTuber専門のマネジメントプロダクション「MCN(マルチチャンネルネットワーク)」と交渉中。広告主についても順次、声をかけている。年内に1000人程度のYouTuber、数百社の広告主を獲得することを目指している。

社員15人のうち8割がGoogle出身

ルビー・マーケティングはもともと、GoogleやYahoo!、Facebookなどを使ったオンラインマーケティングを支援する会社として2014年1月に設立。実は平良氏をはじめ、同社社員15人のうち8割がGoogle Japan出身だ。「元Googleだから『どう』というのはありませんが、YouTubeの状況に明るいのは強みかも」(平良氏)。

平良氏はGoogleで中小企業向けの広告営業部門を立ち上げた人物。起業意識は「ゼロ」だったが、「魂がこもった中小企業の経営者」を何人も見ていくうちに、「自分のノウハウを使い、もっとスケールを持って中小企業を支援したい」と感じたのが起業のきっかけだったと振り返る。

iCON CASTのアイデアが浮かんだのは、ゲーム業界のクライアントから、海外のYouTuberを起用したゲーム実況広告の要望が出た時。その後も、別のクライアントにYouTuberの広告を提案すると、ゲーム以外の案件も決まり始めたことから事業化を決意したそうだ。