プライバシーに配慮したIDを生成するCloakedが30.4億円のシリーズA調達

オンラインアカウント作成時に、ユニークな電子メールアドレスと電話番号を生成できるようにする、ボストンのスタートアップCloaked(クロークド「覆い隠す」という意味)が、シリーズAラウンドで2500万ドル(約30億4000万円)を調達した。

Arjun(アージュン)とAbhijay Bhatnagar(アブジェイ・バトナガー)の兄弟が2020年に設立したCloakedは、プライバシーを気にする個人が、ユニークなIDを作成できるようにする。アプリやブラウザの拡張機能として提供されるこのサービスは、任意のオンラインサービスに対して、電子メール、電話番号、パスワード、クレジットカード番号などの、ユニークな「覆面」IDを作成することができる。Cloakedはパスワード管理ソフトのように振る舞うが、ユーザーのパスワードを保存するのではなく、生成した「覆面」データで個人情報を置き換えるプラットフォームだ。

Apple(アップル)のHide My Email(ハイド・マイ・Eメール)のような、識別子を生成するタイプのサービスとは異なり、Cloakedのスマートな設定を使うことで、各識別子がどのように機能するかを簡単にパーソナライズおよびカスタマイズすることが可能だ。例えば、個人が何を、いつ、どこで、誰と情報を共有するかを選択できるし、メールアドレスや電話番号ごとにオン/オフ、スヌーズ(一時無効化)、期限切れ、漏洩した場合の自動更新などが可能となる。また、個人宛のメールや電話番号にメッセージを自動転送するか、Cloakedの中にとどめておくかをユーザーが選択することができる。

Cloakedは、個人情報を最初から非公開にしているという。すべてのユーザーは、個人情報のすべてが保存されている暗号化されたデータベースを所有し、いつでも管理・削除できるキーが与えられる。

「みんな、この『知られているけれども監視されているわけではない』という考え方が好きなのです」と、アブジェイ・バトナガー氏はTechCrunchに語っている。現在、初期プレビュー版のCloakedを使っている人たちは、オンラインバンキングからオンラインデートに至るさまざまなIDを作っているという。「私たちは、人々とデータの関係だけでなく、テクノロジー全体との関係も再構築したいと心から願っています」と彼はいう。

Cloakedは、パスワード管理ソフトのようなサービスだが、オンライン上のIDを生成するためのサービスだ(画像クレジット:Cloaked)

Cloakedは現在は無料サービスだが、フリーミアムモデルへの移行を計画している。同社がTechCrunchに語ったところでは、Lux CapitalHuman Capitalが共同で主導した今回のシリーズA資金調達によって、製品の開発を進め、ベータ版を終了できるだろうという。スタートアップは、現在26名のフルリモート社員で構成されており、採用活動も行っている。「この先もリモートファーストにこだわるつもりです」とアージュン・バトナガー氏はいう。「そうすることで、世界中のどこからも、最高の人材を採用できる可能性が広がりますし、チームを最高の人材で固めたいのです」。

Cloakedは、バトナガー兄弟が設立した2社目のスタートアップだ。彼らは、今回のベンチャーを立ち上げる前に、「Hey! HeadsUp(ヘイ!ヘッズアップ)」というオンラインプラットフォームを創業して売却している。Hey! HeadsUpは、複数のカレンダーを共有したりイベントの招待状を送ることなく、他の人のスケジュールにタスクを追加できるオンラインプラットフォームだ。

画像クレジット:Cloaked提供

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(文:Carly Page、翻訳:sako)

SiriusXM、音楽配信PandoraやポッドキャストStitcherなどにまたがって視聴者を識別・追跡する新手法「AudioID」を導入

トラッキングクッキーの使用は徐々に減っておりApple(アップル)のアンチトラッキング・プライバシーのアップデートは、モバイルアプリの広告収入に影響を与えている。しかし、これらの変化は、アドテック業界がその解決策でより創造的になるよう促しているだけだ。その最新例が、Pandora(パンドラ)の親会社SiriusXM(シリウスXM)によるものだ。同社は1月31日の週に「AudioID」という、アプリ間で視聴者を識別して追跡するための新しい方法を導入した。

この新しいIDソリューションは、Pandoraが2018年に1億4500万ドル(約166億円)で買収したデジタルオーディオアドテック企業AdsWizz(アズウィズ)からのものだ。この買収でPandoraは、ダイナミック広告挿入、キャンペーン監視ツール、ポッドキャスト文字起こし技術、さらには広告中にユーザーが電話を振って行動を起こす「Shake Me」といった奇妙な機能など、アドテック製品へのアクセスを手に入れた。そして今、AdsWizzはAudioIDに搭載することで新たな形で技術を活用している。

AudioIDの仕組みはというと、自社の衛星ラジオ音楽サービスや、ストリーミングアプリのPandora、2020年に3億2500万ドル(約372億円)で買収したポッドキャストアプリのStitcherなど、SiriusXMの事業全体のユーザー情報のデータセットを照合する。

データセットの中から重なり合うシグナルを探す、と同社は説明している。例えば、顧客がPandoraとStitcherの両方に同じ電子メールアドレスで登録した場合、SiriusXMはそれらのアカウントを1つの「AudioID」にまとめることができる。消費者は、こうしたマッチングが裏で行われていることを知ることはなく、アプリから追加情報の提供や同意を求められることもない。オプトアウトもない。それは、AudioIDが従来の識別子を代替するものであり、過去の識別子にはユーザーの個人情報を含んでいたり、リンクしていたりした可能性があるからだ。一方、SiriusXMは、AudioIDはユニークだが「匿名化」されていると説明する。

しかし、AudioIDは、電子メールや電話番号だけでなく、あらゆる信号を照合して、作成を知らせることができる。この技術はデバイスID、IPアドレス、その他のユーザープロファイルデータを横断的に検索し、ストリーミングアプリにまたがる識別子を作成することができる。つまり、モバイルアプリ、ブラウザ、車両、家庭内のスマートデバイスで音楽やポッドキャストを再生していても、ユーザーの視聴行動を追跡することが可能だ。

言い換えると、広告主がユーザーをターゲットに、より関連性の高い広告を提供し続けることができる方法をSiriusXMは考え出したが、リスナーの個人情報や身元を難解にし、代わりにリスナーが聴くコンテンツに焦点を当てようとする方法だ。

まずはこのソリューションはファーストパーティの広告ターゲティング、測定、リーチ、予測、フリークエンシーキャッピング(広告表示回数の上限設定)といったユースケースをサポートする、とSiriusXMは話す。

AdsWizzのSVPで広告製品・技術・運営責任者のChris Record(クリス・レコード)氏は「文化的にも技術的にも、アイデンティティの新しい時代を迎えようとしています。紙に書かれた人物、あるいは使わなくなったクッキーによってではなく、興味と情熱で特徴づけます」と述べた。「AudioIDは、消費者第一でプライバシーに配慮したインフラであり、視聴者に最高の体験を提供し、マーケティング担当者にこれまでにないデータ駆動型の機能へのアクセスを提供します」。

もちろん、消費者がこの種のソリューションの位置づけを評価するかどうかはまだわからない。特に、モバイルアプリで「追跡禁止」のポップアップをタップしてから、高度にターゲット化された広告を受信した後ではなおさらだ。もちろん、マーケティング担当者側の前提は、消費者は自分の興味に関連性が高い場合、パーソナライズされた広告を歓迎する、というものだ。消費者は自分の個人情報が広告主の記録に浮遊することを望んでいないことが問題だとマーケティング担当者は考えている。しかし、間違いなく、トラッキングをオプトアウトする消費者は、それと引き換えに自分が出会う広告の精度が落ちる可能性があることを理解している。だが、彼らはとにかくそのボタンをタップする。むしろ、消費者がオプトアウトするのは、プライベートな個人情報を守りたいからだけでなく、高度にパーソナライズされた広告があまりにも不気味になったからだろう。AudioIDソリューションは、消費者が現代のアドテックに抱いている不満を解決していないようだ。特に、より良いターゲティングのためにユーザーの「興味と情熱」を収集・集計しているのであればそうだ。

SiriusXMは、このソリューションが提携するパブリッシャーやマーケターにとってオプトインであることを指摘している。言い換えると、AudioIDを使う必要はない。2022年後半には、このファーストパーティターゲティングを、米国内のAdsWizzのオフプラットフォームマーケッターや広告主にも拡大する予定だという。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi