起業家に必要なのは高いIQよりパターン認識能力

編集部注:この原稿は藤原健真氏(プロフィール)による寄稿である。藤原氏は京都大学のベンチャー・ファンド(2号ファンド)の運営を行うみやこキャピタルのベンチャー・パートナーで、シリコンバレー発の起業家育成プログラム&スタートアップ・アクセラレーター「ファウンダー・インスティテュート関西」(FI関西)の運営者だ。FI関西の取り組みについては、過去にTechCrunchでも取り上げている。(関連記事:卒業率わずか25%、シリコンバレー発の「マジでガチ」な起業家育成プログラムがすごい

 

スタートアップが生き残るためには優れた起業家の存在が不可欠だが、この「優れた起業家」の条件については、これまで明確な定義がなかった。

これを定義しようと、シリコンバレー発の起業家育成プログラム&スタートアップ・アクセラレーター「ファウンダー・インスティテュート関西」が興味深いインフォグラフィックを作成したので、ご紹介しよう。

ファウンダー・インスティテュートでは、過去5年にわたり起業家に適正テストを受けさせており、その数は今日までに実に2万人にものぼる。これらの起業家が卒業後にスタートアップを創業し、その後の各社のパフォーマンスを追跡する形でデータを収集した。

ちなみに、ファウンダー・インスティテュートで創業されたスタートアップの数は今日時点で 1310社となっているため、Y Combinatorや500 Startupsなどのシリコンバレーの他のアクセラレータと比べても、そのデータ数は圧倒的に多い。調査結果の正確性を確保するには十分な数字だろう。

調査結果は下記のインフォグラフィックの通り。なかなか興味深い内容なので、じっくりと読み込んでもらいたい。

まず驚くことに、テクロノジー系スタートアッップでは起業家の年齢は若いほど有利だと言われているが、実はそうではないことが分かった。調査結果では、最も高いパフォーマンスを出しているスタートアップの起業家は、社会人として10年以上の業務経験や専門知識を有している人物が多いことが示された。適正年齢は28歳以上で、最もアドバンテージがあるのは34歳という結果が出た。これは意外と思う人も多いのではないだろうか。

さらに驚くことに、優れた起業家と I.Q.(知能指数) の間には「全く何の関係もない」ことが分かった。これも一般的には「I.Q.が高い=頭が良い=ビジネスが得意」と捉えられがちだが、実は優れた起業家に必要なものは I.Q.ではなく、パターン認識であることが明確になった。

パターン認識とは、失敗体験を素早く解析して同じ過ちを繰り返さない、成功体験であれば同じ成功が繰り返し発生するための仕組みを素早く作り上げるスキルである。優れた起業家には、この「パターン認識能力」が長けている人物が多いことが分かった。なので、ファウンダー・インスティテュートでは、この結果を受けて、起業家の適正テストから I.Q.評価の取り除くことにした。これに加えて「オープンマインド」や「許容性」といった資質も重要であることも添えておこう。

逆にダメな起業家の条件の定義もある。利己的で攻撃的、つまりエゴ丸出しの起業家は、周囲からの賛同や理解が得られにくく、常に自分の元から人が去っていく状況を作り出してしまう傾向がある。情緒不安定、ナルシストといった性格の持ち主もダメな起業家の条件に当てはまる。

いかがだっただろうか。自分がこれまでに経験してきたスタートアップ世界に当てはまるところはあっただろうか。ぜひ感想を聞かせてもらいたい。


インフォグラフィックで見るApple、Google、Yahoo、Amazon、Facebookの企業買収の15年

企業が齢を取ると動きが鈍くなり、やがては死に至る。そうならないためには新しい血の注入が必要だ。前世代のテクノロジー大企業の運命を教訓として、今日の新しい巨人たちは若い企業の買収によって健全性の維持を図っている。下にエンベッドした洗練された対話的インフォグラフィックをご覧いただきたい。Apple、Amazon、Google、Yahoo、Facebookが過去15年間に行った買収の件数、金額、企業ジャンルが一覧できるようになっている。

このインフォグラフィックを制作した企業向け損保のSimply Businessは、特にTechCrunchにのみ転載を許可してくれた。

それぞれの円の直径は(公開されている場合)買収金額を表している。左端の会社のロゴをクリックすると買収の一覧表が表示される。上部の+-ボタンあるいはマウスのホイールでズームイン/アウトができる。モバイル、検索などのカテゴリーをクリックするとそのカテゴリーでフィルターされる。上部右端のFrequencyをクリックすると件数が一覧しやすくなる。サイズの関係でモバイルではは見づらいかもしれない。ウェブからご覧になるようお勧めする。

Simply Businessのインフォグラフィックではっきり分かることがいくつかある。

  • Yahooの企業買収は2011年から2012年にかけてほぼ停止していた。 Marissa MayerがCEOに就任してから買収が積極的に行われるようになった。
  • Appleは社内に巨額のキャッシュを積み上げているにもかかわらず買収金額は低い。買収の動機は市場シェアの獲得というよりテクノロジーの取得が多い。
  • Facebookは上場に伴って大規模な頭脳流出に見舞われた。このため買収の動機は人材獲得が多い。
  • スティーブ・ジョブズは買収はイノベーションの失敗だと考えていたが、ティム・クックは新テクノロジーの獲得のために積極的に買収を行っている。
  • Sequoia Capitqalが 古き良き時代よ、さらばと嘆いた2008年から2009年にかけて買収不況が襲った。
  • ここ数年、検索、広告、メディア分野の買収が減少し、ソーシャル、モバイル、ハードウェア関連の買収が増加している。

トップ5企業による買収の最大のものは―

  • Apple – Anobit(3億9000万ドル)、 AuthenTec(3億5600万ドル)
  • Amazon – Zappos(9億ドル)、Kiva Systems(7億7500万ドル)
  • Google – Motorola Mobility(125億ドル)、Nest(32億ドル)、DoubleClick(31億ドル)、YouTube(16億5000万ドル)
  • Yahoo – Broadcast.com(50億ドル)、Overture(18億3000万ドル)、Tumblr(11億ドル)
  • Facebook – WhatsApp(190億ドル)、Instagram(10億ドル、7億1500万ドルで契約)

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+