企業のITを変えた10のトレンド

[筆者: Matt Murphy]

編集者注記: Matt MurphyはKleiner Perkins Caufield & Byersの社員パートナーで、主にモバイルとクラウドインフラ方面の投資を担当している。

企業のITは今、大きな革命期を迎えている。

企業が情報技術を買う、構築する、管理する、その安全対策をするやり方が、今、完全に変わりつつある。クラウドコンピューティングとビッグデータ分析とモバイルの充満、この三者によって、企業ITはそれまでよりも高速になり、効率的になり、運用コストが下がり、そして使いやすくなっている。この変化の過程でテク企業のニューウェーブが出現し、既存の大物企業たちに挑戦している。

ベンチャー投資家たちが今では、かつてなかったほど積極的に、エンタプライズコンピューティングに資金を投下している。この部門は2014年の前半に54億ドルを吸引したが、それも記録的な額だ。このような投資の急増に火をつけたのは、相次ぐ数十億ドル規模のIPO、すなわちWorkdayやPalo Alto Networks、FireEye、ServiceNow、Splunkなど新進IT企業たちの上場だ。

エンタプライズコンピューティングの様相を変えつつある十大要因を、以下に挙げてみよう。

1. クラウドコンピューティング: 大手投資銀行Morgan Stanleyによると、同社の全ワークロードの1/3近くが今ではクラウドで行われている。クラウドコンピューティングがそこまで強くなった原因は、どんなアプリケーションに対しても、ハードウェアの新規購入をせずにリソースの拡張が容易にできることだ。もっと容量が要る? それならクラウドプロバイダが今すぐ提供してくれる。

2. すべてを仮想化: 多様な、それぞれ異なるサーバの集合が、仮想化によって、ランタイムにコンピューティングリソースの単一のプールになる。とくにサーバの仮想化が大きく成功したため、今ではネットワーキング、セキュリティ、ストレージなどあらゆるものの仮想化が始まっている。

3. ITの新しい買い手: 購入の決定がCIOやITスタッフから、営業、マーケティング、財務などなど、現場の各部門へ移行した。スマートフォンやクラウドコンピューティングの成長も、このような“購入の現場化”がもたらしたものであり、これによってITベンダにとって新しい機会が生まれている。新たな買い手たちは、従来のIT部門に比べて、本当に必要なものにははやい決断で予算を割き、また実験も果敢に行う。

4. 会社内でWebベースで行われる営業: Webベースの営業チャネルの成長とともに、クォータを抱えた営業マン/ウーマンなしでビジネスを構築する企業が増えている。それにより、物やサービスが顧客の手に渡るのがはやくなり、また営業活動を始める前に需要がおよそ分かる。

5. “land and expand”の営業モデル:* エンタプライズ向けの企業は消費者ソフトウェアのやり方を真似て、無料の試用やフリーミアム方式を採り入れつつある。それによりユーザ企業は、事前に大きな予算を割り当てる必要がなくなる。無料の味見、価値を納得してから買う、そして価値を認めた顧客だけに注力する営業のやり方は、ベンダ(売り手)だけでなくバイヤー(買い手)にも有利だ。MySQLのようなオープンソース技術がこのやり方を開拓し、今ではPuppet LabsやDataStax/Apache Cassandra、MuleSoftなどの勃興がオープンソースの有利性を実証している。しかし今では、もっと多様なITソフトウェアプロダクトにおいて、フリーミアムモデルの採用が見られる。〔*: land and expand, 買わせるよりも乗ってもらう/住んでもらう(land)のが先、乗り心地/住み心地に納得してもらったら、大規模に売り込む(expand)のも容易。〕

6. エンタプライズワークフローの形の変化: モバイルデバイスが隅々まで普及したことによって、エンタプライズワークフローの効率が上がった。Salesforce.comのCEO Marc Benioffは最近、会社の経営はすべて自分のスマートフォンからやっていると豪語した。この方式は日に日に容易になり、日に日に拡大する。業務上の書類に署名をするというCEOの仕事は、DocuSignのような電子署名アプリを使って行う。スケジュールの変更や、現場の人たちへのルート変更指示などは、ServiceMaxのようなアプリでできる。モバイルアプリは企業のあらゆる種類のビジネス工程の形を変えつつ、それらを自動化している。しかも仕事は前よりもはやく、そして的確だ。

7. 周辺部から中心へ移行したセキュリティ: 私のパートナーTed Schleinが言ってるように、今ではセキュリティの脅威が分散化しつつある。そのため企業は、サーバからエンドポイントに至るまでの、ネットワークのあらゆるレベルで、セキュリティを考えなければならない。またセキュリティの力点は、ネットワークインタフェイスなど境界的部分からデータの保護へと移行した。データをねらう攻撃ベクタの氾濫とともに、新世代のセキュリティ企業(Ionic Security、Illumio、Bromiumなど)が台頭して、新しいタイプのサイバー犯罪に対処している。

8. 競争力を強化するデータというアドバンテージ: ビッグデータ分析によって企業は、大量のデータの、それらの“意味するところ”を理解し、ときにはヴィジュアルに見られるようになった。分析技術が進歩して、企業の経営や操業に関する、従来は見逃しがちだった傾向が分かるようになり、その理解をもとに新しいアイデアも生まれる。たとえばInsideSales.comは、質問や問い合わせをもらった見込み客に5分以内に返答している営業は、そうでない人に比べて、販売成立率が10倍大きいことを見つけた。ビッグなデータ集合を利用する企業は、それによってこのような、それまでわからなかったパターンを見つけるのだ。

9. スピードで競争に勝つ: 企業が勝者になるためには、アプリケーションのパフォーマンスも重要だ。WalmartとCompuwareが行った調査によると、アプリ/アプリケーションのレイテンシが1秒増えると売上は10%減る。そこで、スピードを重視する企業のためのサービスやソフトウェアが増えつつある: Instart Logicはアプリケーションのデリバリを高速化し、AppDynamicsアプリケーションのレスポンスタイムの問題を解決、PernixDataとFusion-ioはフラッシュメモリを使ったストレージによってデータのデリバリを超高速化する。

10. 消費者的なインタフェイス: 消費者たちが大量の時間をその上で費消しているモバイルアプリはどれも、美しくて直感的なデザインを誇っている。今では同じことが、エンタプライズアプリにも求められている。デザインが良くてインタフェイスがフレンドリなアプリ/アプリケーションが、IT国の使いづらい先住者を駆逐しつつある。

エンタプライズプロダクトの選択を企業がトップダウンで決めていた時代が、今、終わりつつある。企業ITは民主化され、そしてその形をすっかり変えられた。このニュースは先住者たちにとっては凶報だが、でもエンタプライズ指向の起業家たちには、膨大な量の機会をもたらしている。

画像: Shutterstock

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


緊急時オーバフローサービスDefense.netはDDoS時の安定業務続行を支える

企業ユーザとしてDoS攻撃にやられたことのある人なら、サーバが敵の手に落ちたときに感じる無力感をよくご存知だろう。Defense.netは、サイバーセキュリティのエキスパートBarrett LyonがDoS/DDoS攻撃から顧客を守るために新たに立ち上げたプロジェクトだ。LyonはBitGravityやProlexicのファウンダでもあり、Joseph MennのFatal System Errorの中では、ロシアのmafiya系ハッカーグループを彼が撃退した一件が取り上げられている。だから、彼は本物だ。

このプロジェクトの最初のプロダクトDDoS SWATは、一番手の対策がやられたときの二番手として活躍する。金融企業も一般企業も多くの場合自前のサーバを動かしているから、それらがやられたときにDDoS SWATが肩代わりする。同社によるとこのサービスは、元々のサーバの“10倍の帯域”を提供し、予備のデータセンターをセットアップするとともに、問題がこじれたときには技術者チームが対策に乗り出す。

企業としてのDefense.netは、Bessemer Venture Partnersが率いるラウンドにより950万ドルの資金を獲得している。

Defense.netのCEO Chris Risleyは曰く、“どの銀行も従来的なDDoS対策を講じてはいるが、それでも毎週一行(いっこう)ぐらいの割合で、すべてまたは一部のユーザに対し業務提供不能になっている。Defense.NetのDDoS SWATはオーバフローサービスなので、元々の能力や容量を回復するだけでなく、それ以上のことをする。DDoS SWATが介入するのは、最初の対策が無効だったときだけだ。SWATの名が示すように、事態が悪化したときだけ動き出す”。

それは全体的に、かなりナードな世界ではあるけど、誰にでも理解できるクールな機能もいくつかある。たとえばDefense.netのAttackViewは、トラフィックの現状を視覚化して、どこが、どこから、どれぐらいやられているか、発動した対策の効果は今どれぐらいか、などを見せる。またIP Reflectionという機能は、トラフィックのルートを被害現場から無事なサーバへつなぎ変えることによって、遅延を縮小する。

Neuromancerのファンであるぼくから見ると、Defense.netはなかなかクールなようだ。でも大企業向けのサービスだから、20ドル出すとSWATチームがやってきて、あなたのブログを救ってくれる、とはいかない。あなたがFortune 500企業になるまでは、用心することと、神様に祈ることが、唯一のDDoS対策だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Google Appsの管理者用コンソールがやっとAndroidアプリとしても提供

Googleはこれまで継続的に、企業や教育機関や政府機関における大規模なGoogle Appsの利用*を管理するITのプロフェッショナル向けの強力なツールとして、Google Apps Admin Consoleを作ってきた。しかしそれらのアドミンたちが入手できないものの一つが、モバイルアプリとして提供されるAdmin Consoleないしそのサブセットだった。しかし今日(米国時間5/29)Googleは、その初めての公式のAndroidアプリをリリースし、アドミンたちが携帯電話やタブレットからでもGoogle Appsの管理業務ができるようにした。〔*: Google Apps for Business, for Education, for Government〕

そのGoogle Adminと呼ばれるアプリが行う仕事の大半は、ユーザアカウントの管理だ。アドミンはこのアプリを使って、新規ユーザを加える、パスワードをリセットする、グループを管理する、プロフィールの画像をアップロードする、ユーザをサスペンドする、などのタスクを行える。またユーザ管理のほかに、連絡先(コンタクト)のサポート、ドメインのセッティングの変化を見る、監査ログを見る、などの作業もできる。

今日の発表のほんの数週間前にGoogleは、Admin Consoleの完全な新装バージョンをローンチし、また2週間前にはデベロッパ向けにAdmin SDKの提供を開始した。後者によりデベロッパは、彼らの会社や顧客向けに独自のツールを制作提供できる。

このアプリを使い始めるのは相当簡単だが、ユーザ企業がGoogle Apps管理APIのアクセスを有効にすることを忘れてはならない。またGoogleは、Google Apps for Businessのユーザが自己ドメインのDevice Policiesを有効にすることを推奨している(必須ではない)。もう一つおぼえておくべきは、このアプリへのログインは“スーパーアドミニストレータ”にしかできないこと。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))