Android 11向け純正開発環境がアップデート、ADBにWi-Fi、Kotlinサポート強化など多数

先週Google(グーグル)は次世代Androidの発表イベントを「お祝いをする時期ではない」として延期していたが、やっとAndroid 11のベータ版が公開されたのを機に開発環境も強化された。

TechCrunchでも報じたとおり、このアップデートでは消費者向けの多数の機能が追加された。同時にAndroidアプリ開発を助けるためのデベロッパー向けツールの改良も行われている。ファンファーレとともにキーノートがライブ配信されるといった派手な登場の仕方ではなかったが、Googleは機能を紹介する記事とビデオ多数を公開している。

同社はブログ記事で「グーグルは公衆が米国における人種的正義という重要な問題に集中できるよう、ライブ発表イベントトを延期した。今回我々はAndroid 11ベータ版の発表に関する計画を変更し、短いビデオクリップ多数とウェブページで開発者が必要と考える情報にじっくり接することができるようにした」と述べた。

これまでどおり、Androidアプリ開発のコアとなるIDEはAndroid Studioだ。これは各種のアップデートのハブであり、同社はAndroid Studio 4.1ベータとAndroid Studio 4.2 Canary Release(カナリア版)の両バージョンをリリースした。

私はAndroidの責任者であるStephanie Cuthbertson(ステファニー・カスバートソン)氏にインタビューしたが、同氏はアンドロイドのデバッグ環境、ADB(Android Debug Bridge)のリニューアル、中でもワイヤレスデバッグ機能が追加されたことを強調した。デベロッパーはADBを通じてWi-Fi経由でAndroid 11アプリをデバッグすることができる。マシンのUSBポートは限られており、それでなくても複雑な接続となっている現在の開発環境ではWiFi接続が利用できることは時間と労力を大幅に節約できるし、デベロッパーから長年強く望まれていた機能でもある。

ADBに加えてもうひとつの大型アップデートはAndroid Emulatorだ。このエミュレータはこれまでも着実にパフォーマンスが強化されてきたが、今回はデザインそのものが変更され、Android Studioに統合された。IDE内から利用できるようになったことでデベロッパーは多数のデバイスのテストを並行して実行できる。これも時間の節約効果が大きい。

またAndroidチームは、全般的にビルドからデプロイメントまでのプロセスを高速化するためにシステムを改良した。具体的には、Android StudioのビルドツールであるGradleでの巧妙なキャッシュ利用、Kotlin言語におけるアノテーション機能のネイティブ化などが大きい。Androidアプリ開発において、Javaは引き続きサポートしているものの、Kotlinが事実上の最優先言語となっているため、同社はKotlin関係に多くのリソースを投入していることは注意すべきだろう。

機械学習を抜きにしては最近の開発者向けの発表は終わらない。同社は、開発者がML KitとTensorFlow Liteを利用して作ったモデルをAndroid Studioに直接インポートできるようになったことを発表した。

ゲーム開発者向けには、パフォーマンスプロファイラーに新しいユーザーインターフェイスを導入するなどの改良が加えられた。

同社はしばらく前にAndroid向けUIツールキット、Jetpack Composeを予告している。このプロダクトはまだアプリ制作に商業的に利用できるレベルになっていないが、今回のアップデートではデベロッパープレビューのバージョン2が発表された。これにはアニメーションやウィジェットのレイアウトを保つConstraintlLayoutのサポートなどが含まれる。 ただし Jetpack Composeのアルファ版がリリースされるのは今年夏、 1.0のリリースは来年になる予定だという。息を詰めて待つには少し早いようだ。

現在、Google Playストアの上位アプリ、1000タイトルの約70%はKotlin言語を使用している。今回のアップデート(プラス、Kotlin 1.4)で同社は非同期処理を実装するためのKotlin Coroutinesをサポートした。これにより並列処理を書くことが非常に簡単になる。同社は現在、Coroutines利用を正式に勧告しており、Jetpackライブラリではすでにこのテクノロジーを利用したものがある。

Google Play関連では新しいGoogle Play Consoleがリリースされた。このコンソールを利用すれば「クリアでわかりやすいデザインを簡単に作れると同社は約束している。またゲームのパフォーマンスを測定するPerformance Insightsの統計も理解しやすくなり、利用約款の変更についてのガイダンスなども新たに提供されることになった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

GoogleがKotlinベースのオープンソースUI開発ツールキット「Jetpack Compose」を公開

米国時間5月7日、GoogleはJetpack Composeのファーストプレビューを公開した。Kotlinデベロッパーが、React NativeやVue.jsのようなリアクティブプログラミングモデルを使えるようにする新しいオープンソースUIツールキットだ。

Jetpack Composeは、GoogleのAndroidデベロッパー向け総合ソフトウェアコンポーネントセットAndroid Jetpackの一部だったものが分離されたツールキットだが、これ以外のJetpackコンポーネントを使う必要はない。GoogleはJetpack Composeによって、Android開発に「コードとしてのUI」哲学を持ち込もうとしている。ComposeのUIコンポーネントは完全宣言性でありデベロッパーはどんなUIになるべきかをコードの中に記述するだけでレイアウトを作成できる。Composeフレームワークは、デベロッパーにとって面倒なUI最適化の詳細をすべて処理してくれる。

デベロッパーはJetpack Compose APIとAndroidのネイティブAPIを自由に組み合わせることができる。Jetpack Composeは、Googleのマテリアルデザインにも標準で対応している。

今日のJetpackアップデートの一環として、GoogleはJetpackの新しいコンポーネントと機能を発表した。新機能には、Android for Cars、Android Auto向けアプリ開発ツールから、アプリをEnterprise Mobility Managementのソリューションやビルトインのベンチマークツールと統合しやすくするEnterpriseライブラリまで幅広くそろっている。

しかし、おそらく最も注目すべき新機能はCameraXだろう。カメラを中心にした機能やアプリケーションの開発を可能にする新しいライブラリで、デベロッパーはAndroidのネイティブカメラアプリと事実上同じ機能を利用できる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook