探し物トラッカーTileを買収したLife360が数百万人の正確な位置情報データを販売

探し物トラッカーTileを買収したLife360が数百万人の正確な位置情報データを販売

子供の見守りや家族との位置情報共有サービスを提供するLife360が、探し物トラッカーTileを買収したとお伝えしました。そのLife360が、数百万人ものユーザーの正確な位置情報を販売していると報じられています。

The Markup(米ニューヨークを拠点とする非営利団体)The Markupの報告によると、Life360のスマートフォン用アプリは全世界で3300万人が利用しているとのこと。そのアプリが集めた子供と大人の位置情報データが12のデータブローカーに販売され、他の第三者に提供されていたと伝えられています。

Life360の元従業員2人は、同社が業界最大級のデータ供給元でありながら、データの使用方法や悪用を防ぐためのセーフガードがない、すなわち位置情報の履歴から個人をたどれなくする予防措置が取られていないと証言。最も明白な(直接、個人に紐付けられた)ユーザー識別情報は削除されているが、プライバシー保護のためにデータを集約したり、精度を下げたりしないと語られています。

この件につきLife360のCEOであるクリス・ハルス(Chris Hulls)氏は、データは同社の中核的なサービスを無料で提供するための「ビジネスモデルの重要な一部」であると回答。つまりユーザーの位置情報データを販売することが前提で、無料サービスが成り立っていると言いたい模様です。

同じく位置情報データをブローカーに販売するX-Modeに勤務していたエンジニアいわく、Life360の提供する生の位置情報データは「データの量と精度の高さ」から、同社の「最も価値ある商品」の1つだと述べています。X-Modeは、Life360のデータ販売先としてCuebiqやArity、Safegraphとともに公開されている企業でもあります。

逆にいえば、Life360が公開していない提供先の企業もあるということ。ハルスCEOによれば、パートナー企業から透明性を求められたり「そうする特別な理由」がある場合にのみ公開されるとのこと。そうしたパートナーを公開することを義務付ける法律を支持する、とも付け加えられています。

Life360はデータ販売していることをプライバシーポリシーの細則に明記しており、秘密にしていたわけではありません。が、ここで問題視されているのは、データブローカーに提供された後、データがどのように扱われているのか、ユーザーが自覚していないかもしれない点です。一応はオプトアウト(提供を拒否)オプションもありますが、全てのユーザーがそれに気づいているとは限りません。

Life360アプリは主に親が子供やティーンエイジャーを追跡するために使うもので、その性質上プライバシーに関する懸念が指摘されていました。同社は13歳未満の位置情報は共有しないとしている一方で、13歳以上の子どもや大人のデータは(第三者への販売についても)公平に扱われています。

かたやLife360に買収されたTileは、探し物トラッカーを製造し、モノやペットを探すサービスを提供している企業です。Life360はTileと一緒になることで、ペットや人、物の位置を特定する「包括的なソリューション」を提供できると謳っていましたが、今回の報道を合わせて考えると、プライバシー保護に関する懸念が高まりそうです。

(Source:The Markup。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

家族向けロケーターサービスのLife360がTileを227億円で買収

Apple(アップル)のAirTag(エアタグ)と競合する遺失物追跡サービスのTile(タイル)が、家族向けコミュニケーションサービスのLife360に買収される。買収額は2億500万ドル(約227億円)。Tileのブランドは継続し、現CEOのCJ Prober(シージェイ・プローバー)氏が引き続き率いる。同社によると、現在のところTileチームの変更は予定しておらず、プローバー氏はLife360の取締役会にも加わる。

Life360にとって、今回の買収は最近のハードウェア買収としては2件目となる。同社は今年初め、位置情報機器メーカーのJiobit(ジオビット)を3700万ドル(約43億円)で買収した。その際、目標は、Life360アプリが動くスマートフォンを持つ人以外、つまり、小さな子どもや特別なニーズを持つ子ども、ペットなどにも、家族の追跡機能を拡大することだと述べた。

しかし、Tileの場合は、家族を追跡するだけでなく、家族が最も大切にする「人、ペット、モノ」を見つけるための幅広いソリューションとして事業を拡大する可能性を視野に入れている。同社は、統合プラットフォームを提供するサービスを構想している。そのプラットフォームでユーザーは、連絡を取り合うために家族を追跡するだけでなく、Tileの位置情報検索機能を利用して、財布、鍵、リモコンなどのモノも追跡できる。

またTileは、ワイヤレスイヤホンからノートパソコン、犬の首輪まで、50種類以上のサードパーティ製デバイスと提携している。これらは買収の価値を高めるものだ。そして同社は「Tile Finding Network」という巨大なネットワークを運営している。Tileの所有者がTileのモバイルアプリを立ち上げると、Bluetoothの範囲外にあるモノの位置を特定できるというものだ。同社は、これまでに4000万個以上のデバイスを販売し、42万5000人超の有料顧客を抱えているが、アクティブユーザーの総数は公表していない。

Life360は、同社の3300万人のスマートフォンユーザーが加わることで、TileのFinding Networkのリーチが10倍になると見込む。

Life360の共同創業者でCEOのChris Hulls(クリス・ハルス)氏は声明で「今回の買収は、安全性と位置情報サービスの世界的なプラットフォームになるというLife360のビジョン達成に向けた重要な一歩となります。TileをLife360ファミリーに迎え入れることができ、大変嬉しく思っています」と述べた。

このニュースに先立ち、Tileは9月に4000万ドル(約46億円)の負債による資金調達を発表した。これについてプローバー氏は、「負債は株主に希薄化をもたらさないため」理にかなっており、「『負債と株式』の混合は良いことだ」と述べていた。だが、Apple AirTagの立ち上げ以来、Tileの将来が脅かされていたことは間違いない。Tileは独占禁止法の問題でAppleを断固として批判しており、Appleがビジネスに与える影響について議員らの前で証言したこともあった。

Tileは最近、競争力維持を期待して、製品ラインを刷新した。その中には、AirTagのライバルとなる超広帯域無線の製品も含まれている

Life360とTileの共通点は、プラットフォームにとらわれないアプローチであり、iOSとAndroidの両方のデバイスに対応していることだ。Androidに対応していることが、国際的な事業拡大に役立つ可能性がある。Androidは世界中の多くの市場を支配している。

Life360は、今回の買収により、Tileを販売する2万7000以上の小売店や、Tileの技術が組み込まれている100万台以上のサードパーティ製デバイスのユーザーにアクセスできるようになる。また、両社はプレミアムサービスを提供しており、Life360は有料会員数を45%増の約160万人に拡大する見込みだ。将来的には、両社のサービスを統合し、より多くの無料ユーザーが有料会員になることを期待しているようだ。

Life360は、2019年からオーストラリア証券取引所に上場しており、以前には2022年に米国での二重上場の可能性を計画していると発表していた。今回の買収により、その目標に向け、勢いがつくとLife360は述べている。

今回の買収では、Credit SuisseとCode AdvisorsがLife360の共同財務アドバイザーを務めた。また、DLA PiperとOrrick、Herrington & Sutcliffe LLPがLife360の法務アドバイザーを務めた。Tile側は、Jefferies LLCが独占的に財務アドバイザーを、Fenwick and West LLPが法務アドバイザーを務めた。

「Tile、当社の顧客、そして従業員にとって素晴らしい日です」とプローバー氏は声明で述べた。 「今回の買収は、ミッションや価値観を共有する2つの素晴らしいチームを結びつけるだけでなく、安心・安全のための世界有数のソリューションを共同で開発する道を開くものです。これは、私たちの旅における次のステップであり、引き続き素晴らしいチームを率い、Life360の取締役会に参加できることに、これ以上の喜びはありません」。

[原文へ]

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

プライバシーに配慮し家族全員は良い信頼関係を築ける位置情報アプリ「Life360」を著名人投資家も支援

家族のためのコミュニケーション / 位置追跡アプリ「Life360(ライフ360)」が、新たな投資ラウンドを発表した。このラウンドでは、Life360の今後の製品の方向性やマーケティングを決定するために、多くの著名な投資家やインフルエンサーを招き、新たに「ファミリー・アドバイザリー・カウンシル(家族諮問委員会)」を設立する。約210万ドル(約2億3000万円)規模となった今回のラウンドは、故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏とビジネスパートナーのJeff Stibel(ジェフ・スティーベル)氏が共同で設立した会社であるBryant Stibel(ブライアント・スティーベル)が主導し、Vanessa Bryant(ヴァネッサ・ブライアント)氏、Joanna & Chip Gaines(ジョアンナ&チップ・ゲインズ)氏、Tony Hawk(トニー・ホーク)氏、Chris & Jada Paul(クリス&ジェイダ・ポール)氏、TikTok(ティックトック)のインフルエンサーであるBilly Perry(ビリー・ペリー)氏、Nicole & Michael Phelps(ニコル&マイケル・フェルプス)氏が参加した。

Life360は2年前に上場して以来、オーストラリア証券取引所(ASX)で取引されており、今回のラウンドでは、Life360のサービスに注目を集めることもできる新たな出資者を迎え入れることを重視している。同社によると、195カ国以上で毎月2800万人以上のユーザーに利用されているこのアプリは、2021年度の収益が1億1000万米ドル(約121億5000万円)を超える見込みだという。2021年3月の時点で、91万6000世帯がLife360のサービスに月額料金を支払っている。

Life360は、これらのセレブリティ投資家と同社で「ファミリー・アドバイザリー・カウンシル」を設立し、アドバイザー自身の家族の経験を活かすことで、機能開発や将来の方向性、マーケティング戦略の策定に役立てていくと述べている。

Life360はこのアプリを、子どもを監視するヘリコプターのような親だけでなく、すべての家族が使いたいと思えるものにしたいと考えており、家族の懸念に応えるべく努力してきた。実際に、Life360のChris Hulls(クリス・ハルス)CEOは2020年、TikTokに参加して、プライバシーが守られていないという10代の若者たちの不満を聞き、それを元に「Bubbles(バブルズ)」というプライバシーを尊重した機能を開発した。この機能では、正確な場所を示す青い点ではなく、大まかな場所を示す泡が表示される。これによって、10代の若者は彼らが望む自由が感じられるようになると同時に、親と子がより良い信頼関係を築くこともできる。

「企業への投資やアドバイスは、一般的に大人が行うものであり、子どもと一緒に行うものではありません」と、ハルス氏は今回の投資についての声明で述べている。「私たちは、子どもたちと一緒に製品についてアドバイスできるというユニークな機会を作るようにしています。そのような印象的な支援を得られるということは、家族の安全を守るサービスを提供する主要な企業になるという我々の長期的なビジョンを雄弁に物語っています。Life360は、親と子の両方にとって有意義で適切なブランドを作りたいと考えています。だからこそ、投資家のみなさまにも同じ精神で参加していただくのは当然のことなのです」と、同氏は続けている。

「私の情熱の1つは、子どもたちにとって相応しい機会が得られるようにすることです」と、新たに投資家となったヴァネッサ・ブライアント氏(コービーの未亡人)は語っている。「Life360を使えば、親にとっては子どもの送迎や相乗りが容易になる一方で、子どもたちには勉強や遊び、スポーツの練習をする場所が与えられ、家族全員が安全に守られていると感じることができます。10代の子どもが運転している時には、走っている場所や走行速度、電話の使用状況などを知らせる最新ツールが備わっていることで、親として安心感が高まります。娘が運転していても、助手席に乗っていても、クルマの位置や速度を確認できるのが気に入っています」と、彼女は声明で述べている。

位置情報サービスで有名になったLife360は、携帯電話に標準搭載されている「Find My(ファィンド・マイ)」のようなアプリや、携帯電話会社が提供するサービスとの競争の中で、単なる家族追跡ツールにとどまらない地位を確立しようと尽力してきた。現在、Life360の家族向けツールには、安全運転、緊急支援、個人情報保護などの機能が含まれている。

2カ月ほど前、Life360はウェアラブル位置情報機器メーカーのJiobit(ジオビット)を買収し、幼い子どもやペットなど、携帯電話を持たない家族にもトラッキング能力を拡大することを発表した。

同社によれば、この3700万ドル(約40億9000万円)の買収は約30日後に完了する予定であるという。

今回の新たな投資家を迎える前に、Life360は2021年初めにRandi Zuckerberg(ランディ・ザッカーバーグ)氏を取締役に任命し、2020年にはRussell Burke(ラッセル・バーク)氏をCFO(最高財務責任者)、Jonathan Benassaya(ジョナサン・ベナサヤ)氏をCPO(最高個人情報責任者)として経営陣に加え、ビジネスモードと製品提供に注力してきた。

関連記事:家族追跡アプリLife360がウェアラブル位置情報デバイスJiobitを40.3億円で買収

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Life360資金調達位置情報家族

画像クレジット:Life360

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)