ライブ動画配信の「LINE LIVE」、ユーザー向けに配信機能を解放——ライバルは「Snapchat」?

「LINE LIVE」のデモ

LINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム「LINE LIVE」。LINEでは近日中にも一般ユーザー向けにライブ配信機能を開放する予定だとしていたが、アプリのアップデートにともなって、8月10日よりいよいよ一般ユーザーへのプラットフォーム開放が始まった(現状はiOS版のみ。Android版も間もなくアップデート予定)。

LINE LIVEはLINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム。2015年12月にサービスを開始。この約半年間、LINEと組む制作会社やテレビ・ラジオ局などの企業、音楽アーティストやアイドルなどの著名人が配信する生中継番組を中心にしてコンテンツを拡大してきた。2016年6月末時点での延べ視聴者数は3億5000万人を突破。これまでに300人以上のアーティストやタレントがライブなどを配信している。

今回アップデートにより、そのライブ配信機能をユーザーに開放。LINE IDを持つユーザーであれば、誰でも動画の配信が可能になった。あらかじめアプリ上でLINE IDを連携しておけば、ボタン1つでライブ配信が可能になる。配信中はLINEが提供する自撮り動画アプリ「egg」でも実装されている「LIVE スタンプ」(顔認識を使って、配信者の顔をウサギにしたり、天使にしたりするスタンプ。最大3人まで認識可能)や色味を変えるフィルターでのデコレーションが可能だ。顔認識を使ったデコレーションと言えば「Snapchat」や「Snow」でもおなじみの機能ではあるが、ブラウンのようなキャラクターのスタンプも用意されているのはLINEらしいところ。ローンチ時点で45種類のスタンプを用意するが、今後は企業とのコラボなども含めて数を拡大する予定だ。

視聴者は配信者に対してコメントをしたり、面白ければ「ハート」を送ることができる。その他、仮想通貨を使ってさまざまなギフトアイテム(有料コンテンツ)を配信者にプレゼント可能。なおLINE LIVEではこのハートやギフトの数(厳密にはギフトごとに仮想通貨の額が決まっており、その額分のハートが配信者に贈られる)、視聴者数、配信時間などをもとに、配信者に対してLINEポイントをインセンティブとして付与する。ポイントの算出方法は「今後も非公開。体感して分かって欲しい」(LINE執行役員でエンターテイメント事業部の佐々木大輔氏)とのこと。なお現状はこの仮想通貨の購入がLINEの収益化手段となる。今後はLIVEスタンプの有料販売をはじめとして幅広いマネタイズ手段を検討しているという。

ライブの配信時間は最大30分。配信した動画は1カ月間アーカイブが残り、その後自動で消去される。設定によりアーカイブを非公開にすることも可能だ。ちなみに生放送とアーカイブでは、生放送の方が試聴されるという。例えば配信者が視聴者の名前を呼ぶ、質問に答えるなどインタラクティブなやり取りができるため盛り上がるのだという。僕はサービスのローンチに先駆けてサービスを体験する機会を得たのだが、やっぱりLIVEスタンプがあることでこれまでのサービスよりも配信ハードルは低い気がする。

ライバルは生配信よりSnapchat?

モイの「ツイキャス」にドワンゴの「ニコニコ動画」、ディー・エヌ・エーグループの「SHOWROOM」、海外を見ればTwitterの「Periscope」、最近ではFacebookアプリでも……ライブストリーミングのサービスはすでに多くある。佐々木氏はこれらのサービスに対して、「『競合は考えていない』というのではないが、(LINE LIVEは)コミュニケーションが中心のサービス」だと説明する。

それに加えて興味深かったのは、佐々木氏と2人で話した際に、ライブ配信サービスよりもSnapchatについて意識していた点だ。配信時に立ち上がるのはインカメラ——つまり外の世界ではなく自撮りを楽しむ前提のサービスであること、顔認識によって自撮りのハードルを下げていること、コミュニケーションだけでなく「ストーリー」というメディア機能を備えていること(前述のとおりLINE LIVEではローンチ時より企業や著名人のコンテンツが配信されている)——たしかにこれはSnapchatとLINE LIVEに共通する内容ではないだろうか。LINEの国内ユーザーは現在6800万人以上。このプラットフォームを生かして、LINE LIVEはどのように成長するのだろうか。

ライブ配信サービス「LINE LIVE」はコンテンツとプッシュ通知が強み

LINE LIVE視聴アプリのイメージ

LINE LIVE視聴アプリのイメージ

12月1日にニュースのプラットフォームを開放したLINEだが、今度はライブ配信への本格参入を発表した。LINEは12月10日、ライブ配信プラットフォーム「LINE LIVE」の提供を開始した。iOS、Android向けに視聴・配信用アプリを提供するほか、ウェブ版も用意。アプリ同様に動画の配信を行う。

当初は公式アカウントのユーザーである著名人やアーティストなど100人に限定して配信機能を提供。スマートフォン利用のゴールデンタイムと言うべき昼と夜(20時以降)の時間帯を中心に5〜8本程度の番組を配信する。第1回の放送となる今晩19時からは、AKB48によるスペシャル番組が予定されている。

公式アカウントによる配信に加えて、イベントや劇場、テレビ・ラジオ放送などとも連携。現時点では東京ガールズコレクション、原宿駅前ステージ、スペースシャワーTV、秘密結社鷹の爪、輝く!日本レコード大賞(TBS)、オールナイトニッポン(ニッポン放送)、SCHOOL OF LOCK(TOKYO FM)などとの連携が発表されているほか、LINEオリジナルの番組として、芸能人同士のトークを楽しむ「さしめし」、オーディションの「NEXT STAR」といったコンテンツを提供する。中には先行するライブ配信サービスである「ツイキャス(Twit Casting)」において、総視聴者数百数十万人を誇るアーティスト・井上苑子さんの名前などもあって、プラットフォーム間の容赦ないコンテンツ争奪戦があったのかと考えてしまう(ちなみに彼女はブログもamebaからLINE BLOGに移行したようだ)。

100人以上の著名人が参加

100人以上の著名人が参加

同日開催された発表会でLINE取締役CSMOの舛田淳氏はテレビからビデオ、PC、スマートフォンと動画視聴のメディアが進化することで、動画コンテンツが場所や視聴タイミングの制限なく閲覧できるようになってきたと説明。だが「いつでもどこでも視聴できる」というのはスマートフォン時代の1つの可能性でしかなく、もう1つ、「今だから観れる」ということもスマホ時代の可能性だと語る。「『オンデマンド』で体験の断絶化が起きている。だからここに来て体験を求めている、音楽市場でもライブが盛り上がり、コピーできない何かを求めている」(舛田氏)

LINEのライブ配信機能に手応え

実はLINEではこの1年、LINE上でライブ配信機能の「LINE LIVE CAST」を提供してきた。LINE執行役員の佐々木大輔氏が説明したところによると、この機能を利用して同社が実施したオーディションイベントの最終審査を配信。ユニークで63万2000人が集まった。10月に開催したイベント「T-SPOOK」では、リアルイベントには9万人が来場、視聴者数では512万人を記録したのだという。この好調な結果がLINE LIVEの事業化を推し進めた。

同社ではこの理由について、LINEを介した「友だちからのプッシュ通知」が可能な点ではないかと分析している。もちろん通常のアプリからもプッシュ通知は可能なわけだが、舛田氏いわくLINE経由のプッシュは、舛田氏いわく「効果が桁違い」なのだそう。

有名人コラボとプッシュ通知が武器

ライブ配信と言えば最近Ustreamが日本を含むアジアから事実上の撤退を発表したところだし、1年前に発表されたドワンゴの「ニコキャス」は3日で終了。サイト上では「出直してまいります」というコメントが残るが、この1年の間アップデートがない状況だった。このタイミングでスタートするLINE LIVEは、コンテンツの豊富さや、LINEを経由したプッシュ通知を武器に市場を開拓してくようだ。佐々木氏もLINE LIVE CASTで最もユーザーを集めたのは「有名人とのコラボ」だったと語っている。

同社は今後、広告(タイアップ番組やテレビなど他メディアとの連動商品)を中心に、EC(ライブショッピングなども含む)、チップ(投げ銭的な課金サービス)などでのマネタイズを進める。また一般ユーザーによる配信は2016年の早い時点で解禁する予定だ。「生放送にこだわったのもLINEがあるからこそ。通常こういったサービスはUGCから始めてプロを巻き込んでいくが、私どもは(LINEの)スタンプやマンガ同様、プロからインディーズに開いていく」(舛田氏)。同社は早期で月間視聴者数1000万人を目指す。