Slackのテキストの代わりにLoomでビデオを送ろう

一枚の写真が千もの言葉に相当するのなら、一本のビデオで何本の電子メールを節約できるだろう?オフィスが遠隔地に分散したチームに分かれていくにつれて、仕事はより視覚的になり、ソーシャルメディアは私たちをカメラに慣れさせてきた。いよいよ、テキストを超えたコラボレーションを使う時代となったようだ。これが、企業に簡単なビデオメッセージングツールを提供することで急成長中の、スタートアップLoomの背後にあるアイデアだ。クリックを1回するだけで、自分自身を撮影したり、スクリーンシェアに解説をつけたりして、よりいきいきとパーソナルなやりかたで、情報を伝えることが可能になる。従業員同士はビデオ通話の予定を入れる代わりに、プロジェクトの内容について非同期に議論して、仕事の流れを大きく中断することなく「最新の情報」を提供することができる。

公開から2年半の間に、Loomには1万8000を超える企業から110万人のユーザーが登録している。それは当初Chromeの拡張機能に過ぎなかった。本日Loomは、PCとMac用のアプリケーションの提供を開始したが、それはユーザーのデジタルワークスペースの中で独自の存在感を与える。コミュニケーションする先が、隣の部屋でも地球の裏側でも関係なく、「Loomはそこにある次の最善の手段なのです」と共同創業者のShahed Khanは私に語る。

今やKleiner Perkinsの主導した1100万ドルのシリーズAのおかげで、Loomはより大きなセールスチームと製品チームを立ち上げる準備が整った。同VCのパートナーであり、かつてDropboxの製品開発および企業展開の責任者だったIlya Fushmanが、Loomの取締役に加わる予定である。彼は本日、月額10ドル(年払いにすると月額8ドル)のProバージョンの紹介を行った。ProバージョンはHD録画、ビデオの最後でのアクション選択、ビデオクリップ編集、ライブでの解説書き込み(ペンで丸を描いたりすること)、そしてたとえば視聴が予定されている人たちが視ているかなどの、実際の視聴者を分析する機能などを備えている。

「世の中の人たちはスーツとネクタイを捨てて、自分のスタイルで働くようになっています。そして、これまで以上に電子メールやメッセージを送り合っています、しかし私たちがよりつながるにつれ、私たちのつながりは逆に弱くなっています」とKhanは私に語る。「私たちはコミュニケーションに、人間性をより簡単に取り戻せるようにしたいのです」。

Loom共同創業者Shahed Khan

しかし、2016年当時のLoomは、ただ生き残るために必死だった。Khanは、WebサイトビルダーWeeblyのプロダクトデザイナーとして働いた後、Upfront Venturesで働いていた。彼と2人の親友であるJoe ThomasとVinay Hiremathは、Opentestを起業し、アプリメーカーがビデオを通じて専門家からユーザビリティに関するフィードバックを得られるようにした。しかし6か月後にNFXアクセラレーターを卒業した時点で、彼らはブートストラップに用意した資金を使い果たしてしまっていた。そのとき、自宅や遠隔地のメンバーと連携する手段を必要としたことで、彼らはビデオメッセージングがビジネスに成り得ることに気が付いたのだ。

彼らは2016年の半ばに共同でLoomを立ち上げ、プレシードとシードラウンドでの調達額は400万ドルに達した。その製品の特長の1つは、録画中でも既に、Loomがビデオのアップロードを開始しているということである。このため録画が終了した瞬間にはもう送信する準備ができているのだ。それは、ユーザーの表情や、声、そしてスクリーンを、Slackメッセージを書き込む程度の手間で(しかもより多くの感情とニュアンス込みで)共有できるようにする。

「営業チームはこれを使って、見込み客にパーソナライズしたメッセージを送ることで、より多くの契約を取り付けることができます。マーケティングチームは、Loomを使用して、社内でプレゼンテーションやソーシャルポストのレビューを行っています。プロダクトチームは、バグやバックログなどを捕らえるためにLoomを使っています」とKhanは説明する。

Kleiner、Slack、Cueの創業者であるDaniel Gross、そして俳優のJared LetoによるシリーズAの1100万ドルのおかげで、Loomは16人のチームに成長した。この結果、同社の調達額は1500万ドルとなった。彼らはLoomをより広いマーケットへ開放してくれる新しいデスクトップアプリケーションが、内部のコラボレーションや外部とのディスカッションに使われ、グループ同士の連携からカスタマーサービスに至るまでの、様々なチームからチームへと広がって行くことを期待している。

Loomは、1つの会社の中で人気が出たあと、その会社のマネージャーたちが(それぞれの視聴者がどれくらいの時間視ているかを正確に知ることができる)Proバージョンに対して、支払いをしてくれることを期待している。それによって、マネージャーたちは、コンテンツをもっと簡潔にすべき必要性や、訓練や協力をサボっている人物を知る手がかりを得ることができる。また新入社員を採用するのにも適した手段である。「このビデオのコレクションを見て、あなたがわからない点についてお知らせ下さい」といった具合だ。しかし月額10ドルというLoom Proの価格は、GoogleのGSuite全体と同じコストであり、高すぎると感じられる可能性がある。

またLoomは早急にモバイル戦略を考え出す必要がある ―― 意外なことに、現在それは提供されていないのだ。Khanはユーザーたちは、旅行や顧客ミーティングの最新状況を中継するために、携帯電話を使って素早くクリップを録画することができると考えている。Loomはまた、ビデオに自動的に文字起こしで字幕を追加したり、ビデオクリップをテーマ別のセクションに分割して早送りできるようにすることも計画している。Loomは、後発のVidyardのGoVideoやWistiaのSoapboxのような競争相手の先を、走り続けなければならない。しかしKhanによれば、Uber、Dropbox、Airbnb、Red Bull、そしてHubSpotの1100人の従業員のおかげで、Loomはこの分野では最大のものになっている。

また新取締役のFushmanは、Slack、Zoom、Dropbox Paper、Coda、Notion、Intercom、Productboard、そしてFigmaの例を挙げながら「コラボレーションツールの世界は、単なる電子メールとドキュメントを超えてより深いものになっています」と語った。最速で成果を上げるために、多くの企業たちはコラボレーションソフトを自社内で作ることをやめて既存のものを使い、自社の製品だけに集中するようになっている。

どのようなエンタープライズソフトウェアも1つですべてを解決することはできない。だがLoomは、Slack、Google Docs、Convo、そしてAsanaなどのアプリに依存している。Loom自身はソーシャルレイヤーやアイデンティティレイヤーを持っていないため、他のサービスを通じて動画リンクを送信する必要がある。Loomは、そのデスクトップアプリケーションに、独自のビデオメッセージングシステムを組み込む必要があるだろう。しかし、少なくともSlack(Loomに投資している会社の1つだ)の場合は、Khanは「彼ら(Slack)はテキストベースのコミュニケーションのハブになろうとしています」と語る。そして程なく公開を控えたこのユニコーンはKhanに対して、そのビデオ機能はリアルタイム通話に焦点を当てたものになるだろうと言っている。

だが、Loomへの最大の脅威は無関心だ。人びとはすでに、Slackと電子メールで圧倒されていると感じているので、もしビデオの録画が効率的というよりも面倒だと思われてしまうようだと、従業員たちはこの先もテキストの世界に留まるだろう。そして、電子メールのようにさっと斜め読みをすることができないことで、スタッフたちが視たくない、大量の未読(未視聴)のビデオが溜まることが想像できる。しかしKhanは、InstagramのStoriesの普及のおかげで、人びとがカメラを気軽に使うようになっていると考えている。そして、その利点は、メッセージを他の人に皮肉や怒りと誤解されないように、時間をかけて丁寧な表現へと洗練したり、ユーモアをまぶしたりする必要がなくなるということだ。

Khanは「私たちは簡単に共有可能なビデオが、職場の人間同士の本物のコミュニケーションを促進し、複雑なシナリオやアイデアを共感と一緒に伝えることができると信じています」と語っている。

[原文へ]
(翻訳:sako)

Yコンビネーター出身のLoomは、より良いiCloudを目指す

Yコンビネーター出身写真共有サービスPopsetは、スタートしてわずか2月後に、自分たちが間違った問題を解こうとしていることに気付いた。ユーザーはグループ内で写真を共有したいのではない。必要なのは様々なプラットフォームやサービスを横断してフォトライブラリーを整理・管理するためのツールだ。そこで方向転換を決断したこの会社は今日(米国時間5/23)新サービスを発表した。Loomは、クラウドストレージと同期のサービスで、iCloudを置き換える改善版だ。

「ユーザーからの機能要望やフィードバックを聞いて気付いた」とPopset改めLoomの共同ファウンダー、Jan Senderekは語る。1ヵ月間に何百人ものユーザーをインタビューした結果、ファウンダーたちはユーザーが何を望んでいるかの理解を深めた。人々は彼らに、写真を管理するための手順のひどさを訴えた。iPhoneから外部ディスクにバックアップを取るためにiTunes経由で同期しなければならないこと、携帯デバイスやMacBookのSSDドライブの貴重なスペースがたちまち減っていくこと等々。

「間違っていることが多すぎるが、解決方法はある意味でわかり切っていた。全部をクラウドに入れて、全部のデバイスからアクセスできるようにすればいい」とSenderekは言った。

それは、もちろんApple iCloudaの約束だ。しかし、その通り働いているようには見えない。

ここ数ヵ月間、AppleユーザーやデベロッパーはiCloudに益々腹を立てるようになり、難しくてバグが多くて一般ユーザーにわかりにくいと言っている。

「みんなiCloudを正しく理解していない。フォトストリームがどういうもので、どういうしくみなのかも理解できない。むしろ問題を悪化させている」とSenderekは説明する。フォトストリームは最新1000枚の写真をデバイスに保存し、独立したアルバムのように見えていることも一部ユーザーを混乱させている。

共同ファウンダーのPhilipp WeinDaniel Wagnerも含め、チームは決めるべき選択肢に気付いた。Popsetに倍賭けするか、それとも全く新しいサービスでユーザーの問題を解決するか。

彼らは後者を選んだ。

Popsetのユーザーは今月初めに、同サービスが6月に終了することを知らされ、これまでに共有した写真の .zip ファイルが提供された。

新サービスのLoomは、写真,ビデオをすべてクラウドに送り込むことによって、カメラロールを空にしてディスクスペースを取り戻す。内蔵の写真アプリを置き換えるべく作られたLoomは、高度な技術によって使用しているデバイスのサイズに応じて写真やビデオをキャッシュする。例えば、16GBのiPhone 5で高解像度写真を撮った時、小さな画面で見たり友達と共有したりする時に、最高解像度は必要ない。

Loomはネットワークにつながっていない時でも使える ― Appleの写真アプリも同じ。オフラインで行ったことは、デバイスが再びつながった時にすべて同期される。アルバム作成と共有に関してはPopsetの旧機能もサポートしている。

これもiCloudと同じく、Loomに保存されたデータはユーザーの全デバイスで利用できる。デベロッパー用のAPIも提供される。

Loomは当初、iPhone、iPad、Mac、およびウェブのみで利用できるが、Androidにもこの技術を適用する計画で、その際はさらに深くオペレーティングシステムと融合する予定だ。また、写真とビデオは始まりにすぎない。長期計画では、文書、音楽、音声、テレビ、映画などもサポートする。

Loomは多くの人が抱える問題の解決策を提供するが、現在の予定通りフリーミアムの道を選ぶなら、写真の同期とストレージに関しては価格競争力のある数多のライバルと戦うことになる。Facebook、Google、Flickr、さらにはShutterflyも写真アップロード(自動アップロードも)やホスティングを、完全無料かそれに近い設定で提供している。

しかしLoomは、もう一つ興味深い収益化方法を考えている。もしユーザーが自分の全写真アーカイブをダウンロードしくなったら、ダウンロード用のリンクに加え、有料オプションとして、データの入った外付けハードディスクをユーザーに送る。

ただし価格の詳細は未定だ。

Loomは1ヵ月以内をめどにプライベートベータを開始する。TechCrunch読者はここでサインアップできる。

サンフランシスコ拠点のスタートアップは現在社員が8名で、Popsetのスタート後間もなくLoomのための資金調達を済ましている。追加のシードラウンドも近く完了する予定。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)