イーロン・マスク氏が「Starship完成がSpaceXの最優先目標」と宣言

SpaceXのファウンダーでありCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、社内向けメールで最初の有人宇宙飛行を成功させた後の目標について、次世代宇宙船Starshipの開発に全力を挙げると述べた。CNBCの報道によれば、マスク氏は現在軌道上でISSに接続されているCrew Dragonカプセルと乗員であるNASAの宇宙飛行士であるDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の両宇宙飛行士を無事に帰還させることを別にすれば、Starshipの完成がSpaceXにとって最重要の目標だと述べている。

ステンレス製でSF的な外観のStarshipは2019年からテキサス州ボカチカのSpaceXの製造、試験施設で開発が続けられている。テキサスと平行してフロリダの施設でも開発が行われていたが、SpaceXはその2019年末に、開発をテキサスの施設に集約した。両施設の成果を統合し、集中的にプロトタイプ制作を行い、それを迅速に繰り返すことですでに多数のプロトタイプが製造されている。

Spaceshipは完全に再利用可能な設計であり、地球の衛星軌道からさらに月と火星などの遠い天体に向かって乗員と物資を運ぶ能力を備えることになる。Spaceshipの打ち上げには、現在開発中の大型ブースターであるSuper Heavyロケットが用いられる。 SpaceXでは将来はFalcon 9、Falcon Heavyの両システムをStarshipに置き換えようと計画している。これにより生産ラインが一本化され、再利用性も実現できれば大きなコスト削減が期待できる。

これまでのところStarshipの開発は多くの難問に直面している。SpaceXはStarhopperと呼ばれる縮小版のプロトタイプに新しく開発したRaptorエンジンを組み込み、地上での燃焼テストに成功した後、フルスケールのプロトタイプの製造が開始された。しかしこれらのプロトタイプはいずれもテストで不具合に見舞われている。プロトタイプ3号機、SN3は燃料タンクの圧力テストに失敗、また最近ではSN4がRaptorエンジンの静止燃焼テスト直後に大爆発して失われている。SpaceXは現在、StarshipのSN5を組み立て中だが、さらなるテストのために、SN6とSN7の建造も平行して進められている。

CNBCが番組で公開したメールでイーロン・マスク氏はSpaceXの社員はボカチカ開発拠点で「Starship開発を助けるために相当の時間を費やすことを考えねばならない」と述べている。

SpaceXはBlue Origin、Dynecicsと並んでNASAの有人月面基地構築プロジェクトの主契約者3社のひとつに選定された。これはStarshipの開発を急がせるプレッシャーをさらに高めるものだ。NASAのプロジェクトでは月の衛星軌道に前進基地となる宇宙ステーション、Lunar Gateway(ルナー・ゲートウェイ)が設置され、そこから月面に宇宙飛行士が運ばれる。Starshipはこのラストワンマイルを担当するというきわめて重要な役割を担う。

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ロッキード・マーティンCEOが米有人宇宙飛行計画をDisrupt SFで語る

TechCrunch最大のイベント、Disrupt SFは10月2日から4日かけてサンフランシスコで開催される。チケットの早割は今月一杯なのでチェックしておこう。

TechCrunchでは宇宙関連のビジネス、テクノロジーについてもたびたび取り上げているが、我々は米国が宇宙競争にカムバックするという情報をつかんだ。ただし当面、月よりもう少し近いところが目的地だ。

あの悲劇をきっかけにスペースシャトルが2011年に引退してから8年たつ。この空白を埋めるべく、アメリカ民間企業が有人衛星を打ち上げる計画を進めている。その1つがロッキード・マーティンだ。米国を代表する宇宙企業、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、ロッキード・マーティンとボーイングの合弁事業。ULAは宇宙開発の一環としてOrion有人宇宙往還機計画を進めている。この7月に開発計画を実施に移す準備が完了したと発表し重要な一歩を踏み出した。

この計画のまさに核心部分を担うのがロッキード・マーティンだ。同社のCEOであるマリリン・ヒューソン氏(写真)がTechCrunch Disrupt SF 2019に参加し、サンフランシスコでキーノート講演をしてくれることになった。ヒューソン氏はロッキード・マーティン社の事業だけでなく、NASAの努力も含めて、アメリカが有人宇宙飛行にカムバックする計画全般について話す予定だ。これには有人月旅行やそれ以後のビジョンも含まれる。

Orionスペースクラフトが最初の有人宇宙飛行(これは来年実施の予定)を実現した後、ロッキード・マーティンはさらに野心的な計画に取り掛かる。これは月軌道プラットフォームゲートウェイ(Lunar Orbital Platform-Gateway)と呼ばれる大型月周回衛星で、太陽光発電を行い、通信施設、科学実験区、短期居住区、探査車保管庫など各種の区画が設置される。ゲートウェイは各種の宇宙探査の恒久的な基地となる。フルスケールのゲートウェイを建造する前に、NASAではまず「初期ゲートウェイ」と呼ばれるプロトタイプを月軌道に投入する計画だ。

 

ロッキード・マーティンは1950年代から宇宙開発事業に携わってきたが、近年、宇宙ビジネスにおける民間企業の役割が飛躍的に増大している。 われわれはヒューソン氏からロッキード・マーティンの低軌道衛星事業を始め、近年ますます重要性を増している商用宇宙利用の実態を詳しく聞くことができるものと期待している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook