より人間的なビデオ会議の実現に向け、mmhmmがMacroを買収

mmhmm(ンーフー)は、ビデオ会議の未来について、おそらく最も口うるさい見解を持っている。バーチャル会議は、楽しくて、柔軟で、そして最近同社が行った買収を見ると、感情を表せるものになるだろう。Evernote(エバーノート)の生みの親であるPhil Libin(フィル・リービン)氏が設立したこのビデオ会議ソフトウェアのスタートアップ企業は、米国時間11月19日、Macroを買収したと発表した。Macroは、バーチャル会議のプレッシャーを軽減する(そして、人間関係を構築するエネルギーを取り戻す)ためのフィルターやリアクション、ツールを開発している企業である。

Macroとmmmhmmは9月下旬に交渉を開始し、その数週間後に合意に達した。買収条件は公開されていないものの、mmhmmが最近1億ドル(約114億円)の資金調達を実施したことを考えると、アーリーステージの同社に資金の余裕があったことは明らかだ

Macroは、2019年にAnkith Harathi(アンキス・ハラチ)氏とJohn Keck(ジョン・ケック)によって設立されると、それから間もなく、FirstMark Capital(ファーストマーク・キャピタル)、General Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)、Underscore VC(アンダースコアVC)などの投資家から430万ドル(約4億9000万円)のベンチャー資金を調達した。

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ビデオ会議中にユーザーが配信する映像のカスタマイズに焦点を当てたmmhmmとは異なり、Macroはユーザーが実際に作業するインターフェースを変更できる。例えば、Macroの特徴的な機能であるAirtime(エアタイム)は、会議の中で誰が最も多く発言しているかを、参加者がひと目で理解するのに役立つ。参加者の映像のサイズが、各人の参加状況に応じて調整されるため、チームは会議に対する各参加者の影響力をより正確に把握することができ、誰に発言を促す必要があるかを知ることができる。

Macroには他にも、画面上で自分を「アンボックス」するためのカスタムウィンドウや、フィルター機能などが用意されている。Macroは、MacOSおよびすべてのZoomクライアントで利用でき、他のすべての参加者がMacroを使っていない場合でも使用できる。

Macroが最初の資金調達を行った後、ハラチ氏は共同設立者とともに、開発を続けるべきか、次の資金調達を行うべきか、あるいは他の会社と手を組むべきかを決めなければならなかったと説明する。他のZoomクライアントとの競争は激化しており、評価は高くても開発するには難しい需要があった。そこで彼らは、mmhmmがビデオ会議の分野で成功するために必要な機能の多くを備えていることに気づいた。

「どうすれば会議をもっと人間的なものにできるか?1人ひとりが個性と豊かな表現力を備えた参加者を、制約のある箱に押し込めるのではなく、ビデオ会議を私たちの人間性に適合させるためにはどうしたらいいか?」と、ハラチ氏はリービン氏のチームと行った初期の話し合いについて語った。「カメラを使う方法を採るか、それともクライアント側でアプローチする方法を採るか、議論を重ねていました。彼らは一方を選び、私たちはもう一方を選びました」。

「私たちは、このビデオ2.0の世界を制するのは、非同期と同期の間をシームレスに行き来する製品だと考えています」と、リービン氏は語る。「録画とライブの間をスムーズに行き来できるようにすることが、これからのビデオのあり方への近道です」。ハラチ氏は、分散型社会で人々が行うようになるコミュニケーション方法のすべてに、対応できるアプリにする必要があると付け加えた。つまり、その場でかける電話、思考を深める会合、重要なプレゼンテーションなどのすべてだ。

mmhmmの大きなビジョンは、リービン氏が最初から明確にしていたように、表現と関係構築のためのメディアとしてビデオを再定義することだ。それは文字通り、築き上げることが難しい信頼関係である。mmmhmmとMacroを使い、Zoomルームでより多くの表面積を提供することによって、話している相手を理解できる余地が増えることを、リービン氏は期待している。

「相手がどんな部屋を選んだか?どんなエフェクトをかけているか?これによって誰もがクリエイティブになり、自分の見せ方をカスタマイズできる機会が広がります」と、同氏はいう。「そしてそれは、あなたと私が実際に会って話し、お互いを知ることに少し近づきます。根幹が格段に表現豊かになります」。

Macroは、Mmhmmにとって現在までに2件目の買収となる。2020年、mmhmmはサンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業のMemix(メミックス)を買収すると発表した。Memixは、録画済みの動画とライブ動画の両方に適用できる一連のフィルターを提供しており、照明や背景、画面全体に表示される内容などを調整することができる。リービン氏によると、Memixの技術は現在、mmhmmの製品における中核となっているという。

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Macroは11月末までに事業を終了する予定だが、7人のチームメンバー全員が、Mmhmmに参加して開発を続けることに決めている。

画像クレジット:mmhmm

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

刷新したZoom用スキンで自己表現とインクルージョンにフォーカスする「Macro」

生産性は多くの大企業にとって、パンデミック以前からの重要課題であり、それ以降、ますます重要になっている。しかし、Macro(マクロ)のファウンダーAnkith Harathi(アンキス・ハラチ)氏とJohn Keck(ジョン・ケック)氏は違う方法をとろうとしている。

同スタートアップのZoom SDKを利用したプロダクトは、開発チームによって再構築されたのち、米国時間8月25日に再スタートを切った。

430万ドル(約4億7000万円)のシード資金をFirstMarkのリードで調達したMacroがベータ版を公開したとき、基礎となるアイデアは、Zoom会議には本当に役立つ(かつ誰にでも使える)インフラストラクチャーがないということだった。同社はソリューションとして、ユーザーが会議の最中にToDoリストや結論などを書き込めるZoom用オーバレイを開発した。Macroはその情報をGoogleドキュメントに転送し、参加者に送る。

同プロダクトはユーザーがレイアウトを選択するオプションも提供しており、参加者のサムネイルを全画面を占有させずにブラウザーや好きなアプリケーション上に表示するスキンもある。Airtime(エアタイム)という、参加者がミーティング中にどれだけ話していたかを表示して、全員の声が届くようにする機能もあった。

その最後の機能、そしてMacroユーザーからのフィードバックが、今回の改定バージョンを生み出した。当初の生産性中心から、自己表現へと焦点をシフトしたのだ。

「未来のビデオコミュニケーションは、最も親密なコミュニケーションの1つとなり、高度にパーソナライズされると私たちは信じています。あなたと私は基本的にまったく異なる人間です」とハラチ氏はZoomを通じて私に話した。「しかし私たちは現在、Zoom時代にいて、全員が同じジェネリックなインターフェイスを使っています。どんなに違う人であっても」。

新しいMacroでは、ユーザーが図形、カラー、フィルターなどを使ってインターフェースをパーソナライズして自分を表現できる。さらに同社は、あるビッグネームアーティスト(後日発表)とのコラボレーションでZoom会議中にユーザーが使えるスペシャルアクションを提供しようとしている。他のメンバーがMacroを使っていてもいなくても、あなたがMacroを使って表現したものを相手は見ることができる。

初期バージョンからあるMacroの機能も残っている、たとえばAirtimeだ。ハラチ氏とケック氏はTechCrunchに伝えたところによると、2020年7月の公開当初に受け取ったフィードバックで多かったのは、自己表現とインクルーシブの機能が最もユーザーに共鳴し、生産性機能を使っている人はほとんどいない、というものだった。

Macroは、ユーザーが別のアプリケーションで共同作業をしながらZoomで互いを見ることのできるスキンも再登場させる予定で「Rooms」と呼んでいる。Macroは現在MacOSで動作している。

会社はボトムアップアプローチを続けて成長している。プロダクトは使いたい人に無料で提供され、組織の全員が参加しなくてもよい。

Macroは、ビデオ会議の巨人が焦点をアプリエコシステムにシフトするのに合わせてZoomの波に乗っている。ハラチ氏とケック氏は、ビデオ会議にとってのMacroは、メールにとってのSuperhumanと同じだと信じているが、Macroは生産性よりも自己表現に焦点を合わせている点は異なる。

2人はビデオ会議の発展が続くにつれ、UIの勝者が多くを得ると信じていて、会社はその勝者になることを目指している。

 

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画像クレジット:Macro

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(文:Jordan Crook、翻訳:Nob Takahashi / facebook