TikTokとSnap元社員が作ったソーシャル音楽作成アプリmayk.itが約4.4億円調達

新型コロナパンデミックという世界的な大混乱を経験し、多くの労働者が自分のキャリアパスを再検討し始めている。TikTok(ティックトック)のグローバルマーケティング責任者を経て、Cameo(カメオ)のチーフ・マーケティング・オフィサーとなったStefan Heinrich Henriquez(ステファン・ハインリッヒ・ヘンリケス)氏もそのうちの1人だ。

「TikTok時代から音楽のことを考えていて、本当は自分で何かを作ってみたいと思っていたのですが、最終的に行動に移す勇気を出すまでにさらに1年かかりました。その後、パンデミックが始まったとき、多くの人が『自分は何のために生きているのだろう』というようなことを考えていたと思います」。とヘンリケス氏はいう。

ヘンリケス氏は、Snap(スナップ)のSpectacles(スペクタクルズ)のソフトウェアエンジニアだった共同設立者のAkiva Bamberger(アキバ・バンバーガー)氏とともに、2020年夏に「mayk.it(メイクイット)」の開発を開始した。米国時間9月7日、このソーシャルミュージックアプリがiOSに登場し、Greycroft(グレイクロフト)、Chicago Ventures(シカゴ・ベンチャーズ)、Slow Ventures(スロウ・ベンチャーズ)、firstminute(ファーストミニッツ)、Steven Galanis(スティーブン・ガラニス)氏、Randi Zuckerberg(ランディ・ザッカーバーグ)氏、YouTuberのMr.Beasts(ミスター・ビースト)のNight media(ナイトメディア)、Spotify(スポティファイ)初代CMOのSophia Bendz(ソフィア・ベンツ)氏、Cyan Banister(シアン・バニスター)氏、アーティストのT-Pain(ティペイン)氏、音楽業界のベテランZach Katz(ザック・カッツ)氏などの投資家から400万ドル(約4億3900万円)のシードラウンドを受けたことを発表した。

mayk.itは、人々がスマートフォンだけで音楽を簡単に制作、所有、そして共有できるようにしたいと考えている。ユーザーは、自分で作ったビートをアップロードするか、他のユーザーが作った既存のビートを選択して、ボーカルを加え(恥ずかしければ、ボイスエフェクトや少し古臭い歌詞制作ジェネレータも利用できる)、Giphy(ギフィ)からビジュアルを追加する。作ったものをアプリ上に投稿すると、他のユーザーがディスカバリーページで閲覧することができる。ディスカバリーページでは、ジャンルではなく、フィーリングやテーマによって音楽が分類されている。

mayk.itでは「ペットは今、何を考えていますか」「初恋の人についての歌を作ってください」など「アイデア」や創造性を刺激するものも用意されている。また、曲を左右にスワイプできるTinder(ティンダー)のようなタブもあり、気に入った曲があれば、コメント(応援の意味を込めて「エンカレッジメント(激励)」と呼ばれている)を残したり、リミックスしたりすることができる。

画像クレジット:mayk.it(スクリーンショット)

もちろん、自分の作品にもう少し真剣に取り組みたいと思っているクリエイターにとって、リミックスやコラボレーションは、所有権の問題を引き起こす。誰かが作ったビートに他のユーザーが歌を乗せた場合、それは誰のものになるのだろうか?mayk.itでは音楽を収益化することはできないが、それをエクスポートして他の場所で販売する権利はある。ヘンリケス氏によると、アプリ上のオーディオクリップや曲の制作に関わった人は誰でも等しく分け前を得ることができるそうで、ビートメーカーは利益の50%、シンガーは50%を得ることができる。mayk.itが利益を受け取ることはない。

現状、mayk.itにはアプリ内課金はないが、ヘンリケス氏は、将来的にはブランドと協力したり、アプリ内のマーケットプレイスを確立したりすることで、利益を得ることができるかもしれないと述べている。今のところ、mayk.itはシード資金を使って、新機能の追加、製品の改善、創造性を刺激するツールの構築に注力している。ヘンリケス氏は、LGBTQ+である創業者として、ユーザーがアプリのソーシャル機能を通じてコミュニティを見つけられることが重要だと考えていると付け加えた。

「YouTubeで働いていた頃は、Adobe Premiere(アドビ・プレミア)やAfter Effects(アフターエフェクツ)の知識が必要でした。そして、Musical.ly(ミュージカリー)やTikTokで学んだことは、これらのことを経験しなくてもビデオクリエイターや役者になれるということです。ゲームではRoblox(ロブロックス)が、デザインツールではCanva(キャンバ)がそれを実現していると思います」。

mayk.itは、音楽の作曲や共有ができるRobloxやCanvaのような存在になりたいと考えている。現在のところ、mayk.itでは、Ableton(エイブルトン)をマスターしたアーティストが作ったようなサウンドを作ることはできないが、mayk.itで作ったもので、簡単にTikTokで話題にすることはできる。

mayk.itはApp Storeで公開されているが、アクセス権を得るためのウェイティングリストがある。また「vibe check(バイブ・チェック)」で自分のスキルを試すこともできる。これは、曲を作って、既存のユーザーがあなたを受け入れてくれるかどうかを確認するためのものだ。自慢ではないが、私たちは合格した。

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画像クレジット:mayk.it

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Akihito Mizukoshi)