パンデミックの最中に中国の食品配達大手Meituanが10.8兆円の評価額を達成

Meituan(美团、メイトゥアン)の株価は米国時間5月26日に過去最高を記録し、その評価額は1000億ドル(約10兆8000億円)を超えた。

香港に上場するこの大企業は、旅行と輸送もある程度手掛けつつも食品配達に注力している企業であり、評価額がこの記憶すべき大台に乗った中国で3番目の企業となる。Tencent(腾讯、テンセント)とAlibaba(阿里巴巴、アリババ)はそれぞれ2013年2014年にその大台を突破している。

Tencentが支援するMeituanは、第1四半期の売上高が計画よりも減少し、第3四半期連続の黒字の後に15.8億人民元(約239億円)の純損失を計上したが、5月26日には株価が138香港ドル(約1919円)まで上昇した。

全国的なロックダウンが食品配達の必要性を高めたのかもしれないが、中国の消費者たちは新型コロナウイルス(COVID-19)がきっかけで引き起こされた経済悪化の中で、引き締めも行っている。結果として、全体的な食品配達取引は減少している。Meituanはまた、パンデミックの最中に働く配達員たちにインセンティブを支払わなければならず、店舗が潰れてしまわないように補助金を支払わなければならなかった。

希望の兆しも見えている。Meituanの1日あたりの平均取引数は18.2%減少して1510万回になったが、注文ごとの平均価格は14.4%上昇している。これは、従来はオフィスワーカーの習慣と考えられていたデリバリー式の食事が、自宅隔離中の家族にとって当たり前のものになったからだ。第1四半期には、Meituanのフードデリバリーサービスに多数の高級レストランが加わった。それらはパンデミック後の時代でも、高額の注文を引き受け続けるだろう。

しかし現時点では、Meituanの幹部は新型コロナウイルスによってもたらされた不確実性について警告を発している。「残りの2020年では、進行中のパンデミック対策、オフライン消費活動に対する消費者の信頼の不足、および店舗閉鎖のリスクなどの要因が、引き続き当社の業績に潜在的な影響を与えると予想しています」。

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(翻訳:sako)

肉や野菜を注文から30分以内で配送、中国のフードデリバリー業界はMeituanの参入で競争激化

早くて安いフードデリバリーは、中国の多くの労働者の生活を変えるものとなっている。しかし、中には自分で食事を作るのを好む人もいる。そうした人たちは実在店舗で新鮮な食材を選ぶ時間がないかもしれない。そこで中国のスタートアップや大企業は、野菜や肉を玄関先まで届けて忙しい労働者が楽に自炊できるようにしようとしている。

EuromonitorHua Chuang Securitiesが集めたデータによると、中国における昨年の生鮮食品売上は49300億人民元(7300億ドル)で、2012年の33700億人民元から着実に成長している。これらの売買のほとんどは生鮮市場やスーパーマーケットで行われていて、オンラインでの売買は2016年は全体の3%を占めるに過ぎず、成長の余地は大きく残されている。

eコマースのリーダー、AlibabaJD.comはすでに総合オンラインショッピングモールに食品を加えている。これまでに14億ドルを調達したTencentがサポートするMissFreshはこの分野に参入したばかりだ。そしてこの業界は、Meituanの新規参入でやや混み始めている。MeituanTencentが支援しているフードデリバリーとホテル予約の大企業で、昨年、香港証券取引所を通じて42億ドルを調達した。

Meituanのオールインワンアプリとは別の、Meituan MaicaiまたはMeituan食品ショッピングという新しいアプリで利用できるこのサービスは、先週北京に進出する前に、今年1月上海で始まった。この動きは2018年中間決算で食品デリバリーに参入するという発表を受けたものだ。

玄関先まで食品を届けるためのMeituanのソリューションは同業他社のものとさほど変わらない。ヨーグルトから豚ロース肉まで1500もの食品の中から好きなものを選んでアプリのショッピングカートに入れ、携帯で決済をする、とMeituanTechCrunchに説明した。注文を受けるとMeituanはわずか30分以内に配送を開始する。

この素早い配達は、倉庫管理、梱包、配達を目的とするサービス・ステーションのサテライトを地域のあちこちに設けることで実現している。またオフラインハブを設けることで、データを駆使しているこのインターネット企業は周辺に住むユーザーの好みに基づいて倉庫のストックを最適化する。例えば、高所得者向けの住宅地域に住む人たちが食べたり購入したりするものは、おそらく他のエリアに住む人のものと異なる。

Meituanの食品ショッピング業界への参入は、中国人の食のあり方のコントロールをめぐるAlibabaとのバトルをさらに激しいものにしている。AlibabaHemaスーパーマーケットは、半径3キロ以内への30分配達を実現するためにローカルの店を倉庫・フルフィルメントセンターとして使うという、同じような手法で展開されている。何年もの間、Meituanのフードデリバリー部隊は、Alibabaが昨年出資したEle.meと互角の争いを展開してきた。そして最近ではAlibabaMeituanは、客の分析と利用増加を図れる独自のソフトウェアに登録するよう、レストランオーナーの囲い込み競争を繰り広げている。

なんでもアプリになるという最終ゴールの一環として、Meituanは新規株式公開の前振で多くの新たな試みを行なってきたが、それらをすぐに保留にもした。昨年4、バイクシェアリングのMobikeを買収したが、1年もたたずして経費節約のためにアジア全体の事業から撤退した。Meituanはまた、多くの懸念を抱える配車事業の拡大も見合わせている。

しかしグローサリー配達、Meituanの言葉でいえばビジネスは、Meituanの意中にある。この事業を行うためにMeituanは既存のインフラの活用を始めている。たとえば、ピーク時間帯に食品配達をするために同社のフードデリバリーのドライバーを呼び出すというものだ。Meituanが昨年の決算報告で言及したように、食品部門は巨大なユーザーベースと、すでにある世界最大のオンデマンドデリバリーネットワークを抱える都市テコ入れできるかもしれない。

Image Credits: Aleksandar Mijatovic / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)

中国Digi、乗客殺害事件を受けての安全策をさらに追加

女性乗客がドライバーに暴行・殺害されてから1カ月、中国最大のライドシェア事業者Didi Chuxing(滴滴出行)は新たなセキュリティシステムを展開する。この事件は同社のサービスHitchで起こった今年2件目の殺人事件だ。

今日Digiはいくつかの新たな安全機能を導入したと発表した。そこには、ドライバー向けの抜き打ちの生体IDテスト(自撮りを使った毎日のログインに加えて)と、警察に直接連絡がいくDigiアプリ内のSOSボタン導入が含まれる。Digiによると、SOS機能は“急を要する対応のプロセスを効率化する”ためのものだーこれには“特別な警察チーム”がDigiサービスでの問題に対処する。また、ドライバーのための疲労警告の機能もある。

今月初め、Digiはガイドラインとヘルプを盛り込んだセーフティーセンター機能を追加し、急ぎの要請がカスタマーサポートセンターにいくのではなく警察に直接いくよう乗客のアプリ内のSOSボタンをアップデートした。またDigiはExpressとPremierサービスで乗車中の音声録音機能を試験導入した。

これより先に、DigiのCEOと理事長は事業の成長よりユーザーの安全を優先すると述べていた。

どちらの殺人事件でもDigiのシステムに過失があったとして、Digiはかなりの批判を浴びていた。最初の殺人事件では、殺人を犯したドライバーはDigiのドライバー証明システムを飛び越えていて(父親のアカウントを使って)、しかもこの事件の前にこのアカウントに対してあったセクハラの届けはフォローアップされていなかった。

2つめの殺人事件ではさらに問題が露呈した。そのドライバーについては、女性乗客がドライバーに前の座席に座るように言われ、また降車後にしばらくつきまとわれたことからDigiに苦情を入れ、事件前日にはそのドライバーはDigiの安全チーム内で要注意となっていた。なのに、苦情を受けた安全センターのスタッフは2時間以内に調査を開始するという社のポリシーを実行しなかった。

Digiは2回目の殺人事件を受け、幹部2人をクビにしたーHitchの統括マネジャーとカスタマーサービス担当副社長だーそして今年2回目となるHitchサービスを一時停止する措置をとった。

中国は先月、ライドシェアに関する新たな規則を設けた。この規則では地方自治体に乗客安全委員会を設けること、事件を速やかに調査することを課している。

先週、香港でIPOを行い40億ドルを調達したDigiのライバル、Meituanは今年初めに配車サービス事業に参入した。MeituanはDigiとの競争に闘志を燃やしているが、おそらく現在の困難な状況を感じ取ってだろう、南京と上海以外のエリアに事業を拡大する計画を見合わせている。

Digiは2年前にUberの中国事業を買収して以来、強力な競争相手がいない状態だった。

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(翻訳:Mizoguchi)